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Drosophila Newsletter No. 0

The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)

25 July 1992

Founding the Japanese Drosophila Research Conference (JDRC)
---- by Board Committee
Compiling Stock Lists etc.
---- by YAMAMOTO Masatoshi
News:

ショウジョウバエ通信 No.0

1992/7/25


この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるよう
ご配慮お願いいたします。


「日本ショウジョウバエ研究会」設立にあたって(設立運営委員会)
 ショウジョウバエ系統のソフト管理計画    (山本雅敏)
 情報伝言板
  ・Drosophila Information Newsletterの利用について
  ・The genome of Drosophila melanogasterの刊行について
  ・ショウジョウバエ通信編集局よりのお願い
  ・1992年秋の学会で開催されるDrosophila関係の集会・シンポジウムのお知らせ
  ・「日本ショウジョウバエ研究会」発足の会合のお知らせ


「日本ショウジョウバエ研究会」設立にあたって


 ショウジョウバエは、古典遺伝学の歴史において、数多くの発見をもたらしてくれ
た生物です。そして今、ショウジョウバエは、これまでのさまざまな知見を活かして
、多様な生命現象を解明するためのモデル系として注目されており、特にショウジョ
ウバエを用いた分子レベルの研究は、飛躍的な発展を見せています。
 これまで日本のショウジョウバエの研究者は、遺伝学会の際に開催されるDrosophi
la Meetingにおいて、遺伝学や進化学の研究者たちを中心とした交流を持ってきまし
た。この会は、1970年に発足して以来22回の歴史を数え、最近では90名ほどの参加者
を集めています。しかし、ショウジョウバエ関連の学会発表は遺伝学会だけでなく、
分子生物学会、動物学会、神経科学協会、生物物理学会、発生生物学会などの学会で
幅広く行われており、Drosophila Meetingに参加していない多くの人が、ショウジョ
ウバエを用いて研究を進めています。欧米に比べてまだ研究者人口の少ない日本のシ
ョウジョウバエ研究を発展させるためには、各分野のショウジョウバエ研究者間の交
流を促進する必要があります。アメリカ合衆国やヨーロッパでは、多くのショウジョ
ウバエの研究者が集う会合が持たれています。
 Drosophila Meetingでは、これまでの歴史をふまえてさらなる発展をめざし、この
会を「日本ショウジョウバエ研究会」として新しい研究交流の場に改革していくこと
を、1991年秋の会合において決定しました。現在、若手の研究者が中心となり、この
研究会のありかたを検討していますが、研究会の活動として、以下のことを計画して
います。
1)シンポジウムとポスターセッションを中心にした研究会を、遺伝学会や他の学会
とは  分離し隔年に開催する。
2)ショウジョウバエの系統や実験方法などの情報交換のため、ネットワークをつくる。
3)ニュースレターを発行する。
 さらに、今後の活動として、Drosophila関係のデータベースをDDBJ(日本DNA デー
タバンク、国立遺伝学研究所遺伝情報研究センター)との協力により便宜をはかるこ
とも、検討したいと思っています。このような活動のもとに、欧米のショウジョウバ
エ研究者との交流もはかりながら、わが国独自の研究の育成に貢献したいと考えてい
ます。
 今後の会の活動についての連絡を希望される方は、できれば研究グループを単位と
して、別紙にて事務局までご連絡下さい。すでにショウジョウバエを研究に使われて
いる方、これから使うことを計画されている方、ショウジョウバエに関心をもたれて
いる方、いろいろな方々の参加をぜひお願いいたします。


    日本ショウジョウバエ研究会設立運営委員

上田 龍 (三菱生命研)事務局担当   木村正人 (北大・理・生物)
日下部真一(広島大・総合)       小穴孝夫 (鉄道技研)
佐藤 隆 (ヤクルト中研)       谷村禎一 (九大・教養・生物)
西田育巧 (愛知ガンセンター)     松浦悦子 (お茶大・理・生物)
松田宗男 (杏林大・医)        山本明彦 (甲南大・理・生)
山本雅敏 (宮崎医大・生)



ショウジョウバエ系統のソフト管理計画

山本 雅敏 (宮崎医大・生)


 ショウジョウバエの系統維持に関しては、各研究室でそれぞれ異なった問題に頭を
悩ませておられることと思います。そのうちの一つは、系統数の増加とそれにともな
う系統管理に要する時間の問題ではないかと思います。
 そこで、皆さんが各研究室ごとに維持しておられる系統をすべて網羅して、国内の
ショウジョウバエ系統リストを作成し、コンピューター管理する、というのがこの計
画です。国内にどのような系統が維持されており、それらをいかに利用できるかなど
を知っていただくことにより、研究者間の便宜を計り、さらに意見を交換しあってよ
り良い方向に進めて行くのが目的です。今回はショウジョウバエの系統だけで発足し
ますが、近い将来にはショウジョウバエのゲノムレベルのDNA、 クローンリスト等の
ソフト管理も積極的に進めてゆきたいと考えています(山本、遺伝40:118-126
(1986)。
 具体的な方法として、以下のように進めたいと考えています。

・ショウジョウバエの系統を維持している各研究室のストックリストを送っていただく。
・系統の記載方法を統一し、リストを作成する。
・ストックリスト提供者にはニュースレター等でリストを公開する。
 将来の予算の関係では国内系統リストとしての完成版をフロッピイ等で還元できる
よう計画し ていく。
・国際的な系統リストを作成するため、海外の系統保存機関へ働きかける。
 そのために国内リストの完成を先行させる必要がある。
・系統リストのupdate化のために、一年に一度見直しをする。

       系統リストの送付先並びに問い合わせ先:
        〒889-16 宮崎郡清武町木原5200
             宮崎医科大学・生物学
                  山本 雅敏
              TEL: 0985-85-0992
              FAX: 0985-85-5567

 リストの第一版を今年度中に完成させることを目標にしていますので、10月末頃ま
でにはリストの提供をお願いします。今すぐ送っていただいても結構です。系統リス
トを作成する上では、以下の点に注意して下さい。

・現在維持しているものだけとし、廃棄したものは省く。
・系統として不確定のものはその旨記載する。
・系統の譲渡が不可能なものと現時点では譲渡できないもの等を必要なら明記する。
・系統に特有な形質等が存在する場合とか、新しい系統である場合など、コメントが
必要でしたらいくらでも書き加えて下さい。
・系統リストの提供はフロッピーディスクが望ましいが、手書きやタイプでも可。こ
ちらで入力します。

<遺伝子型の記載例>

 研究室によってはこれから系統のリストをインプットされるところもあるようなの
で、記載に当たっての統一例を示しておきます。
・データはすべて半角英字。
・相同染色体や染色体間の遺伝子記号等は/や;等を用い、前後にスペースを入れる。
・肩文字は^で示す。
・Y染色体への重複は、Y, genotype とし、付着X染色体の構造が不明な場合は、
C(1)? として 下さい。
・一つのデータは、ストック番号(各研究室の)、遺伝子型(genotype)、種(speci
es melano gasterの場合は省略可能)、コメントで構成して下さい。

 例:y^2 cv f^36a su(f)^4 / FM7c / Y, y^+ sc^8 ; CyO / Pm ; C(4)RM, ci ey^D
   C(1)DX, y w f / FM7c / Y, B^S / Dp(1;f)1205, y^+

<データの入力>

 フロッピーの種類としては、PC9801の場合3.5', 5', 8'の2DD か 2HD、IBM やAXの
場合 2DD、Mac の3.5'も可能。こちらでデータは変換します。ただし、データの原稿
はMS-DOS上で、必ずタイプコマンドでよめるテキスト形式あるいは ASCII形式のもの
とする。データの作成はワープロ、エディター、データベース等いずれで作成されて
も結構です。
 ただし、ワープロやエディターで作成する場合には、一つのデータを
    M30840        (各研究室でのストック番号)
    TM3 / ru l(3)63Aa st e  (遺伝子型)
              (species, 省略の場合はmelanogaster)
    ri has been lost     (コメント)
    next stock number
    next genotype
    next species or blank
    next comments or blank if no comments
以下、同様に で切って続けるformatを使用するか、

    M30840\TM3 / ru l(3)63Aa st e\\ri has been lost
の様に¥マークでそれぞれを区切って連続して記載するかのどちらかにしてください。

 データベースを使用される方は、上のように で区切るか、あるいは汎用性の高い
 "M30840","TM3 / ru l(3)63Aa st e","","ri has been lost"のformatにして下
さるとありがたいと思います。



情報伝言板

Drosophila Information Newsletterの利用について


 ショウジョウバエの研究、技術に関する情報は、これまで、Drosophila Informati
on Service誌を用いて公表されてきましたが、昨年度から電子メール版として、Dros
ophila Information Newsletter(DIN) の運用が開始されました。日本からも数名の
方が、この電子メールに登録されています。さらに最近、M. Ashburnerらの努力によ
り、様々な突然変異体、染色体異常系統、クローン、P因子挿入系統などがデータベ
ース化され、FlyBaseとして公表されています。また、Indiana, Bowling Greenのス
トックセンターの系統リストも入っています。これらは、ショウジョウバエの研究者
にとって、重要な情報源となっています。
 このショウジョウバエG通信では、DIN のなかから有用と思われる情報について紹
介していく予定です。また、ネットを介して個々に登録できない方、あるいはアメリ
カ合衆国のデータベースからファイルの転送ができない方のために、これらの情報の
フロッピィディスクでの配布も検討しています。

The Genome of Drosophila melanogasterの刊行について


 Red Bibleとしてショウジョウバエ研究者の必携である Genetic Variations of Drosophila
melanogasterの改訂新版がやっと刊行されました。in situ hybridizationによるマ
ッピングなどには欠かせないLeferveの唾腺染色体の図と写真は、単独でも注文可能
です。

           Dan L. Lindsley & Georgianna G. Zimm eds.
           The Genome of Drosophila melanogaster. $79.00
           Genome Map. $19.95
           Academic Press, Inc. 1992


ショウジョウバエ通信編集局よりのお願い


「ショウジョウバエ通信」は、ショウジョウバエの研究に関連する様々な情報の交換
の場を提供することをめざしています。最近の話題や発見、ショウジョウバエ関連の
学会等のニュースや見聞記、困っていることや知りたいこと、さらに、研究会への提
案等々、どんな内容のものでも結構ですので、下記のいずれかまで、お気軽にお寄せ
下さい。


編集局:
谷村 禎一                 松浦 悦子
 〒810 福岡市中央区六本松4-2-1     〒112 文京区大塚2-1-1
   九州大学教養部生物学教室      お茶の水女子大学理学部生物学教室
   Tel 092-771-4161(内線 433)     Tel 03-3943-3151(内線575)
   Fax 092-712-1587(生物図書室)    Fax 03-3942-2815(理学部事務室)


事務局:上田 龍
    〒194 町田市南大谷11
       三菱化成生命科学研究所細胞生物学研究室
       Tel 0427-24-6234
       Fax 0427-29-1252(研究所事務部)


1992年秋の学会で開催されるDrosophila関係の集会・シンポジ
ウムのお知らせ


 Drosophila Meetingでは、1992年の動物学会と遺伝学会において、以下の集会および
 シンポジウムを企画しています。

◆動物学会・集会 (世話人:渡辺隆夫)
  日時:1992年10月 7日(水)夜
  場所:仙台国際センター(仙台市青葉山、東北大学川内キャンパス隣)

  「ショウジョウバエの種分化」
    1)渡辺隆夫(遺伝研)  種分化の方向性
    2)松林 宏(筑波大)  隔離を弱める突然変異
    3)沢村京一(早大)   雑種致死の機構
    4)木村正人(北大)   種分化と移動
    5)北川 修(都立大)  D.nasuta亜群の種形成

◆遺伝学会・シンポジウム (世話人:大石陸生)
  日時:1992年10月22日(木)午後
  場所:仙台国際センター(仙台市青葉山、東北大学川内キャンパス隣)

「性決定の遺伝学」
  1)坂本 博(京大・生物物理) ショウジョウバエの性決定
                  ―RNAスプライシングによる制御―
  2)小穴孝夫(鉄道総研)  継卵感染性雄胚子特異的致死因子(SRO)の作用機構
                   ―Sxl遺伝子との相互作用―
  3)山本雅敏(宮崎医大・生物) 性比と精子形成
                   ―paternal sonless の遺伝学―
  4)長井幸史(福井医大・生物) 哺乳類の性決定
                   ―Retrospective and perspective―


「日本ショウジョウバエ研究会」設立に関する会合を、遺伝学会のシンポジウムの後
に開くことを計画しています。これまでの運営委員会の経過と、今後の活動計画につ
いて報告いたします。多数の方々のご参加をお願いいたします。


 日本ショウジョウバエ研究会
 設立運営委員会
 代表 小 穴 孝 夫
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