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Drosophila Newsletter No. 4

The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)

March 1995

Announcement of the Second Japanese Drosophila Research Conference
(JDRC: Kyoto, August 1995)
---- by YAMAMOTO Masatoshi
Postdoc Life : Herbert Jaeckle Lab.
---- by SUGIYAMA Shin
How to Fight against Mites
---- by MOGAMI Kaname
Damage of the Drosophila Researchers after the Kobe Earthquake
---- by GAMOU Sumiko
NEWS
  24mm Disposable vial / Bloomington Stock Center Fee /
  FlyBase News


ショウジョウバエ通信 No.4

1995年 2/28


この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるよう
ご配慮お願いいたします。

 
「日本ショウジョウバエ研究会」第2回研究集会のお知らせ    
   山本雅敏
Postdoc体験記 Herbert Jaeckle(はーばーと・いえくれー)研究室
    杉山 伸
ダニとの戦い
   最上 要
神戸・大阪地区のショウジョウバエ研究者の被害状況
   蒲生寿美子
お知らせ
  24mm Disposable vial / Bloomingtonストックセンター利用料金 / FlyBase News
  他
  事務局より
  編集後記


「日本ショウジョウバエ研究会」第2回研究集会
のお知らせ


日本ショウジョウバエ研究会では,第2回の研究集会を下記の要領で開催することに
なりました.第1回研究会が八王子であったことから,次は関西でという声もあり,
京都工芸繊維大学でお世話させていただくことになりました.研究集会では,シンポ
ジウムとポスターセッション,および懇親会を計画しています.シンポジウムの演者
のかたがたには,ご自分の研究について話されるまえに,その研究分野についてわか
りやすく紹介して頂くようにお願いする予定です.詳細は現在準備中です.ポスター
はこの前の研究集会と同様,研究成果のほか,実験技術や有用系統とその開発等,研
究に有効に活かせると思われる情報を大歓迎いたします.完結した研究内容ではなく
ても,予備実験程度の結果を提示して自由に意見を交換する場になればと思います.
特に大学院学生のかたがたにとって有効な議論の場になればと思います.もっと具体
的な研究会の内容,参加申し込の方法,参加費のお支払い方法等は,この次のショウ
ジョウバエ通信(4月半ば)でお知らせし,5月末までに参加申し込をして頂く予定
です.参加申し込時にシンポジウム・ポスターのタイトル等を提出して頂きます.

============  記  ===========

1.日時    1995年8月28日(月)13:00 〜 8月30日(水)12:00

2.場所    京都工芸繊維大学繊維学部および大学会館
     〒606 京都市左京区松ケ崎御所海道町
     大学までの時間は,京都駅から地下鉄で北山終点で下車(16分),東の
     方角に徒歩15-20分.
     京都駅から14番のバスで京都工繊大前下車(時間帯により要40-50分).
     京阪利用の方は出町柳で,叡山電鉄に乗り換えて修学院下車,西に徒歩10分.

3.シンポジウム(案)
 1 行動を支える神経機構の分子遺伝学          オーガナイザー 谷村禎一
     John Carlson     Olfaction: Molecular and Genetic Analysis
     山元大輔        性行動の分子遺伝学
     相垣敏郎        性ペプチドと交尾行動
     松本 顕        サーカディアンリズムの遺伝学


 2 分子進化                   オーガナイザー 館田英典
     田村浩一郎       ミトコンドリアの分子進化
     仁田坂英二       トランスポゾンの進化
     岩部直之         組織特異的発現遺伝子の進化
     Kreitman, M.
     Aguade, M.

3 パターン形成を支える細胞のふるまい  オーガナイザー 上村 匡
     林 茂生   (遺伝研)
   多羽田 哲也 (東大) ほか二名を予定

4.申し込〆切 5月末
  次号の「ショウジョウバエ通信」で詳細をお知らせします.
5.参加費・懇親会費  懇親会費と2日目の夕食費込で,有職者¥9,000、学生
¥7,000の予定.
  次号の「ショウジョウバエ通信」で発行する申し込み用紙を使用してください.
6.宿泊の件ですが,第1回研究会のように,全員が同じ施設に宿泊する必要はあり
ませんので,参加者が   グループであるいは個人で予約していただくようお願いし
ます.

<参考> 大学の近くのホテルは○印を付けています(シングル料金、電話番号).
○京都宝ヶ池プリンスホテル 12,000  075-712-1111
京都ロイヤルホテル 11,000   075-223-1234
京都東急ホテル        9,000  075-341-2411
京都新阪急ホテル   9,500   075-343-5321
京都新阪急ホテル       9,500  075-343-5321
からすま京都ホテル  9,500   075-223-2333
ホテル京阪京都        9,000  075-661-0321
ホテルサンルート京都 8,700   075-371-3711
○ホリディイン京都      8,500  075-721-3131
ホテルギンモンド   8,000   075-221-4111
ホテルニュー京都       8,000   075-801-1111
京都パレスサイドホテル 7,500 075-431-8171
ホテルアルファ京都      7,700   075-241-2000
京都ガーデンホテル 7,700   075-255-2000
○京都プリンスホテル     7,500   075-781-4141
ホテルリッチ京都  7,500   075-341-1131
サンホテル京都        7,500   075-241-3351
マルコーイン京都   7,000   075-361-0505
京都セントラル・イン     7,500   075-211-1666
   (宿泊費は1992年の分子生物学会の案内より引用のため多少の値上
げあり)
その他
KKR京都 くに荘   075-222-0092
御車会舘(文部省共済)      075-211-5626,7,8
○アピカルイン京都(NTT) 075-702-5000
京都パストラル(農林年金)    075-462-7746
京都弥生会舘(JR)    075-841-8411
コープ・イン・京都(大学生協)      075-256-6600
○(京都簡易保険会舘)かんぽーる京都    075-721-3111

かんぽーる京都は京都工繊大に非常に近く,会場から徒歩で2分足らずです.しかも
グループで和室を申し込むと1泊約3,000円で宿泊できますので,学生さんのグルー
プには最適かと思います.パンフレットを各研究機関あてに1通ずつ同封しておりま
すので,できるだけ早めに申し込みを済ませておかれることをお勧めします.京都は
旅行シーズンになりますと,宿泊の予約がなかなか困難であることを申し添えます.

7.研究会に関する問い合わせ先
 「日本ショウジョウバエ研究会」第2回集会実行委員  山 本 雅 敏
 〒606 京都市左京区松が崎御所海道町 京都工芸繊維大学繊維学部応用
生物学科
 電話:075-724-7781,FAX:075-724-7760, e-mail: jpn-fly@ipc.kit.ac.jp

  宿泊に関する問い合わせ先
 「日本ショウジョウバエ研究会」第2回集会実行委員   濱 田 和 成
 〒606 京都市左京区松が崎御所海道町 京都工芸繊維大学繊維学部応用
生物学科
 電話:075-724-7798,FAX:075-724-7760  e-mail: hamada@ipc.kit.ac.jp


Postdoc 体験記: 
Herbert Jaeckle (はーばーと・いえくれー)研究室

杉山 伸


 Max Planck物理生物化学研究所は古い大学街Goettingenを見おろす丘陵に建ってい
ます。窓からの眺めは牧場と森と云う中部ヨーロッパ特有の田園風景です。いつも見
ていた時は何とも思わなかった景色も、いま帰国して日本の都市に住むとすごく美し
いものとして思いだされます。
 大学院時代に初期パターン形成の実験発生学的な仕事をしていたことから、postdo
c は「本場」ドイツでしたいと思いました。ドイツの他の研究室が Zebra fish に乗
り換え始めていた為にそこへハエの仕事をしに行っても意味がないことと、それまで
Steve Cohen や Diethard Tautz など優秀な研究者を輩出したことが Jaeckle 研を
選択した主な理由です。自分の興味と希望を書き、preprint と併せて送ったら、来
ても良いというFAXがあっけないほど早くもどってきて、ドイツ行きがあっさり決ま
ってしまいました。少し、無理があると思ってもとにかくコンタクトを取ってみるも
のだと思いました。
 Herbert と初めて会ったとき彼は研究室のMacintoshで一生懸命Crystal Questとい
うゲームをやっていました。そのあと、いつ見ても大学院生とhigh scoreを競ってい
るので超一流の研究者は流石に余裕があるものだと感動し、それから始まるであろう
自分のすばらしい研究生活への期待で胸が一杯になりました。しかし、これは一時的
なことで、進行中だった新研究室の工事が完了すると彼がゲームをやっているところ
は残念ながら二度と見られませんでした。Herbert はいつも8:00から20:00まで食事
もせずにすごい集中力で仕事し、土曜日もでてきます。そのためか、ドイツではnine
to five営業の研究室が多い中で Jaeckle 研は年中無休、24時間いつも誰かが実験
していました。研究室が成功している一番の要因を聞かれるのならば、私はHerbert
の人柄と人格だと答えます。彼はすごい情熱で働いていますが、同時にすごく余裕が
あります。そう云うところが周囲の人にも作用し、研究室は生産性と楽しさが両立し
た理想に近い状態でした。そのようなことが可能だと知ることができただけでもドイ
ツへ行った意義があったと思っています。もちろん、研究室の精神的な余裕の背景に
はMax Planck Institute の予算、設備、technical support などの物理的な余裕の
他、研究室のメンバーのレベルの高さがありましたが、おかげさまで楽しい研究生活
を送ることができました。
 Jackle 研はhunchback, Krueppel, knirps, huckebein, forkhead, buttonhead,
spalt などの初期パターン形成に働く遺伝子のクローニングや発現調節機構の解析で
知られています。クローニングすべき既知の遺伝子が減少するなかで 、現在は神経
発生や器官形成など後期の発生過程に関わる遺伝子の解析が行われている他、gap 遺
伝子の発現調節機構の解析がより詳細に行われています。ショウジョウバエの初期パ
ターン形成遺伝子の発現調節機構が遺伝子発現のモデル系としてどれ程優れており、
転写調節分野の研究者らに如何に高く評価されているかはショウジョウバエの研究者
の間ではあまり認識されてないように思えます。発生生物学としてではなく、遺伝子
発現の問題として体節形成遺伝子が大きく注目される時が近い内にくると予想されます。
 Jackle 研の規模はMax Planck のものとしては中規模で、postdocが約10人、大
学院生約10人、technician, 秘書、パートのおばさんなどが約10人います。大
学院生が研究テーマを与えられるのに対して、postdocは比較的自由に好きなことを
させてもらえます。例えば、幼虫の摂食行動の突然変異体のスクリーニングをしてい
る人もいます。その人が幼虫に食紅を混ぜた餌を食べさせ、実体顕微鏡下で観察する
光景がしばらくの間続きました。研究室の人数が多いことの利点はdiscussionをする
相手が多いことで、お互いを刺激し合う相乗効果があります。コーヒーを飲みながら
話をして時間を潰しているだけでも得るものがあるのです。例えば、誰かが仕事をま
とめあげ、論文を投稿する段階になり、皆とのdiscussionの中で結果の解釈、つまり
売り込み方が変わり、専門誌も難しいといわれていたような仕事がNatureやScience
に載ったこともありました。日本でもショウジョウバエの分子生物学をやる研究室が
幾つか集まった研究機関があり、自由な交流があれば面白いだろうと思います。
 もし読者の中でpostdoc としてドイツに行くことを考えている人がいるのならば大
学ではなくMax Planck か EMBL に行くことを薦めます。研究費や設備がいいだけで
はなく、ドイツ人の学生よりも外国人の postdoc が多いため研究室内での公用語が
完全に英語になっています。このためドイツの常識も通用しない、無国籍の不思議な
環境での生活を体験することができると思います。

464-01名古屋市千種区名古屋大学理学部生物学科動物第2講座
TEL 052-789-5039  FAX 052-789-2511


ダニとの戦い

最上 要


 ショウジョウバエを使って研究している時に困ることとして、ダニの問題がありま
す。ハエにつくダニはヒトには寄生しませんので、汚染する可能性が高いのは野外か
らハエを取ってきたり、他の研究室からハエを分けてもらったりする時です。ダニは
小さいので普通のスポンジ栓程度は通り抜けてしまい、気がつかないでいると研究室
中のストックに感染してしまいます。ダニがいるとハエが弱くなりますし、またハエ
の遺伝子をクローニングしたつもりが実はダニの遺伝子だった、なんてことになって
は目もあてられません。ダニ退治の方法は昔からいろいろと開発されていますが、こ
こでは我々の研究室で行っている卵洗いによる方法をご紹介しましょう。 まず必要
な道具と薬品は以下のとおりです。

1. ハエに産卵させ、卵を集めるための道具一式。
これには各研究室ごとにいろいろな工夫があることでしょう。我々はスライドグラ
ス、ナイロンメッシュ、グレープジュース入りの寒天、50 ml のプラスチック遠心管
(コーニング)、スポンジ栓を使います。

2. 集めた卵を入れるステンレスメッシュ。
150 から 200 メッシュ程度のものを10cm 角に切り、まん中を直径 3cm 程度へこ
ませたもの。

3. シャーレ。

4. ピンセット。

5. コマゴメピペット。

6. 実体顕微鏡。

7. 卵を集めてエサに埋め込むためのヘラ。我々は歯医者さんや電子顕微鏡屋さんの
使うワックススパーテルを流用しています。先端のとがり具合が、卵を集めてエサに
埋め込むのにちょうどよいのですが、なければミクロスパーテルでもよいでしょう。

8. 洗ビン。

9. クレゾール石鹸液。

10. 次亜塩素酸ナトリウム溶液。

11. 蒸留水。

手順


1. まず産卵用の寒天を作ります。水 50 ml に寒天 2 g を入れ、1回沸騰さ
せてとかします。とけたらグレープジュース 50 ml と酢酸 1.2 ml、エタノール 1.2
ml を加えます。これをスライドグラス上に盛り上がるようにのせ、固まったら冷蔵
庫に保存しておきます。

2. ハエの準備ができたらスライドグラスを取り出し、寒天にナイロンメッシュをはり
つけ、とかした酵母を塗ります。これとハエを遠心管に入れて一晩産卵させます。暗
くした方がよく生みます。プラスチック遠心管は強くつかむと中のスライドグラスを
保持できるので、成虫だけを出す時に便利です。

3. スライドグラスを取り出し、ナイロンメッシュをはがすと卵がついてきますので、
洗ビンを使い、蒸留水で卵をステンレスメッシュに集めます。

4. 卵を蒸留水でよく洗います。

5. 実体顕微鏡で見て、卵以外の例えばハエの死骸などをピンセットで除きます。

6. シャーレに10% クレゾール石鹸液を入れ、ステンレスメッシュごと卵をつけて
9 分待ちます。この間、卵がよく洗えるように、メッシュの外側からクレゾール石鹸
液をコマゴメピペットで吸い、内側に戻す操作を繰り返します。9分というのは普通
の胚に耐えられるぎりぎりの長さです。もし系統によって孵化率が低いようでしたら
この時間を短くします。

7. メッシュを取り出し、蒸留水でよく洗います。

8. シャーレに50% 次亜塩素酸ナトリウム溶液を入れ、メッシュをつけて卵のコリオ
ンをはがします。2分位で済むはずですが、検鏡しながら確認します。

9. 蒸留水でよく洗います。

10. スパーテルで卵を集め、新しいエサに埋め込みます。ダニが死んでいたら、
その付近の卵は取らないようにします。またコリオンをはがした卵は乾燥しやすいの
で、エサに埋め込むようにしますが、あまり幅の広い溝を掘ってしまうとそこからエ
サと卵が乾燥します。

卵洗い法では胚が丈夫なことを利用しているわけですが、ダニ
もおそらく卵ならば頑丈なのではないでしょうか。他のダニ退治法ではこの点どうな
のでしょう。例えば蛹を100% エタノールで洗う方法がありますが、ダニの卵はエタ
ノールで死ぬのでしょうか。卵洗い法ではたとえダニの卵がついていたとしてもコリ
オンといっしょに取り除かれてしまいます。カビも除けますが、カビの胞子はダニよ
りも小さいので再汚染を防ぐにはより注意が必要です。 少々追加しますと、まずダ
ニのいるおそれのあるストックはできれば別の部屋に隔離した方がよいでしょう。大
きめの容器にクレゾール石鹸液を入れ、その中に飼育ビンを立てるようにすれば万一
ダニが出てきても死んでしまいます。安息香酸ベンジルで隔離する方法もあります。
ただし、これはダニを殺す効果はなく、粘度が高いので移動が抑えられるということ
のようです。値段は高いですが、普通のスポンジ栓よりも密でダニを通さないような
紙栓もあります。ダニがいないように見えても古い飼育ビンを放置しておくのは危険
です。もし汚染されていると、ハエがほとんど死に絶えたようなビンからでもダニが
無数に出てきます。我々は使い終わったビンは直ちに電子レンジにかけています。ダ
ニはハエよりも水気が少ないのか、ハエが死ぬ時間の倍ぐらいかけないとしぶとく動
きまわっています。もちろんオートクレーブでもダニを殺せます。もし部屋全体にダ
ニが広がっているようならバルサンを炊くのが有効です。しかしダニも卵の状態だと
バルサンが効かないので、1週間程度おいて2回以上炊くのがよいと発売元では言っ
てました。 ダニのやっかいな点は全くいないのか、いても少数なのでわからないの
か区別し難いことです。他の研究室からハエをもらう時は、たとえダニがいないと言
っていても相手が気がついていないだけかも知れません。また自分の方にダニがいる
ならば、他人にあげる時はその旨告げるべきでしょう。ストックセンターは割と安全
なのですが、過信は禁物です。センターはハエを送り出すだけではなく受け入れても
いるわけですから、汚染の危険は常にあります。ダニがいるかどうか確認したければ
、古い飼育ビンを厳重に隔離した上でこまめに観察すればわかります。もしダニがい
ると増えて実体顕微鏡で見つけやすくなります。ハエの排泄物程度の大きさで、ハエ
の幼虫でもないのに動き回っていたらダニです。色は白と赤があって、赤い方が悪質
であると言われています。しかしこのような確認作業はできるだけやらない方が無難
です。隔離が不十分だとかえってダニを増やしてまきちらすことになりかねないから
です。ダニはハエより世代交代時間が長いので、頻繁にトランスファーし、古いビン
を長く置かないようにすれば、少数のダニがまぎれこんでも駆逐されてしまいます。
日常そのような注意を払い、新しいハエを受け入れるときは卵洗いするようにすれば
、ダニに悩まされることはないでしょう。我々の研究室では数年前深刻な汚染に遭遇
しました。何百というストックを隔離し、卵洗いすることによって、ダニのない環境
にもどすことができましたが、その間に各人が払った犠牲はたいへんなものでした。
ここでご紹介した方法や経験は主に当時のスタッフと大学院生諸君とで開発したり遭
遇したものです。もし今ダニに汚染されていなければ、その環境を保ち続けられるよ
う注意されることをお勧めします。不幸にして汚染してしまった時は、卵洗いによっ
て駆逐できます。ストックの数が多いとたいへんですが、臨時アルバイトの方などに
お願いして、一気に洗ってしまった方が結局は楽でしょう。ここでは我々の経験を述
べましたが、多くの方の参考にしていただくためには、皆様方の研究室での経験・工
夫をさらにこの通信上でご紹介していただけるとよいのではないかと思っています。


神戸・大阪地区のショウジョウバエ研究者の被害状況

    大阪府立大学  蒲生寿美子


地震の被害報告について私の分かる範囲でご報告いたします。各教室の詳しいご様子
も分かりませんし、先生方の了解も取っておりません。例えば甲南大学の道之前先生
のところでは、理学部の建物は残っておりますが、内部が2度にわたり火災し、その
ときの消火作業の消火剤と水によって、研究データを始め、顕微鏡、電子顕微鏡、そ
の他すべてが被害を受けており、残っているのは冷蔵庫1台と黒焦げの滅菌器1台と
いうことです。ほしいものは山ほどあるが、それを入れる教室がいま工事中とのこと
です。電気がまだなので昼間はかたづけをし、夜は大学に避難しておられる方々のお
世話をなさっているそうで、頭が下がります。3分の1位に減ったハエは大阪府立大
学に避難していますので、1週間に1回ほど来られてお世話なさっています。神戸女
子短期大学の上野山先生の系統は辛うじて拾ってこられた12本(7種)をお預かり
しております。神戸大学の大石先生は大きな被害はなかったと申しておられます。い
ずれにしても神戸に研究室のある先生は皆さん大変なことだと存じます。大阪大学医
学部広吉先生のイエバエや藤堂先生、梁先生のハエも倒れ割れたがストックは残って
いるそうです。床の硫酸、塩酸が倒れたり、一部火災したが、今は復帰し大丈夫との
ことです。大阪外大の井上先生も大丈夫のようです。大阪市大の福永先生も家(西宮
市)は大変のようですが、学校のほうは無事らしいです。いま思い出せるのはこれ位
です。私の希望としては、これを機会に、研究室で余っているもの、また欲しいもの
をお互いに交換できる場を作っていただきたいです。宜しくお願いいたします。
                              1995年2月21日


お知らせ

24mm Disposable vial


ご存じのように「研究会規格ののplastic vial」(30mm)の発売が開始されました。し
かし、これまでカバヤなどの小型のバイアルを使っている研究室はこれを使うことが
できません。調査したところ、24mm Disposable vialも国内で年間20万本の需要が予
測されるので、できるだけ早く生産にはいってもらえるように依頼しています。今の
ところ、上部外部直径24.5 mm 、下部外部直径23.5 mm、高さ95 mm で、完全透明、
厚さ1 mmのものを考えています。(連絡責任者: 谷村)


重要!Bloomingtonストックセンター利用料金



今年1月からBloomington Stock Centerからのstock requestには、BUN(Bloomington
User Number)が必要になっています。BUN登録をしないでリクエストすると、まず登
録を求められます。一人の代表者、ひとつの住所の1グループにBUNが割り当てられ
ます。年間の使用量によって以下の3つの区分があり、使用料金の支払いが要請され
ています。ただし、年間の使用量が1)以下の場合の支払いは随意です。
 1) minimal  - up to 4 shipments or up to 20 stocks - $200 per year
 2) average  - up to 12 shipments or up to 100 stocks - $200 per year
 3) heavy    - more than 12 shipments or more than 100 stocks - $400
per year
Kathy Matthews(matthewk@indiana.edu)に代表者名、住所、カテゴリーと金額、そ
のグループに属してリクエストする人のリストを送るとBUNが割り当てられ、その後
、請求書が送られてきます。なお、stock centerとの連絡はできる限りe-mail を使
うように、またリクエストする系統名はFlyBaseの最新版のstock listを参照し、sto
ck numberでするようにとのことです(同じ番号でも以前と系統が変わっていること
があります)。週平均500系統ものハエがBloomingtonから発送されているそうです。
遺伝子の記載だけでリクエストするとたいへん迷惑をかけることになります。Bloomi
ngtonの情報はFlyBase/stocks/stock- centers/bloomington/bloomington.doc.をご
覧下さい。


BIOLOGY OF DROSOPHILA


 BIOLOGY OF DROSOPHILA (ed. M. Demerec, 1950)の復刻版が出版されました。注
文のための情報を以下に記載します。直接注文が可能です。ただし、Internetは無法
地帯ですからe-mailにcredit card no.を書くのは危険でしょう。ISBN 09-87969-441
-6; Cloth $39 To place an order, contact Cold Spring Harbor Laboratory Pres
s at cshpress@cshl.org, or fax them at 516-349-1946.
おまけ: CSH Pressがバーゲンをやっていて、M. Ashburner, Drosophila: A Laborat
ory Handbook(1989)が$90です。


FlyBase News


FlyBase WWW Home Page
Internetは日々進化しています。研究室でHome Pageを開設したところも増えてきま
した。最近、FlyBaseのHome Pageが開設されました。URLは、http://morgan.harvard
.edu/です。便利なのは、CytoSearchという検索方法で、例えば1Aと入れると、この
領域の遺伝子、染色体異常、クローンなどのすべての情報を一瞬のうちに得ることが
できます。さらにその個々の情報は他の情報源とリンクされています。パソコン上で
検索ソフトを用いて調べていたころと比べると夢のようです。

emailでGopherが利用できます
これまで、Gopherを利用するには、特定の機種でInternetに接続していることが必要
でした。親切な心配りをしてくれる人はいるもので(本当はその必要があったから)
、つい最近、emailでGopherの機能をフルに利用することが可能になりました。flyba
se-gopher@flybase.bio.indiana.eduに本文空欄でSubject:helpのメールを送ると使
い方の説明が送られてきます。

Genetic nomenclature for Drosophila melanogaster
flybase/nomenclature/nomenclature.textは、遺伝子命名の新しい規則を決めた文書
です。これが今後のスタンダードとなりますので、是非目を通しておくことをお勧め
します。




「日本ショウジョウバエ研究会」運営委員

木村 正人  北海道大学 地球環境科学研究科 生態遺伝学講座
 Tel: 011-716-2111 Fax:011-717-9394
最上 要    [編集・通信担当]
 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
 e-mail: mogami@tkyvax.phys.s.u-tokyo.ac.jp Tel: 03-3812-2111 内線4614
Fax: 03-3814-9717
青塚 正志  東京都立大学理学部 生物学教室 進化遺伝学講座
 Tel: 0426-77-1111 内線3727 Fax: 0426-77-2559
上田 龍    [事務局担当]
 三菱化学生命科学研究所 神経発生遺伝学研究グループ
 e-mail : ryu@libra.ls.m-kasei.co.jp Tel: 0427-24-6234  Fax : 0427-24-6314
山本 雅敏   [代表]
 京都工芸繊維大学 応用生物学科 遺伝学教室
 e-mail: yamamoto@ipc.kit.ac.jp Tel:075-724-7781 Fax: 075-724-7710, 075-724-7760
日下部 真一 広島大学 総合科学部 自然環境研究講座
 Tel: 0824-24-6507 /6512 Fax: 0824-24-0758
原田 光   九州大学 理学部生物学教室 細胞遺伝学講座
 e-mail: kharascb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp Tel: 092-641-1101 
 内線4407 Fax: 092-632-2741
谷村 禎一   [編集・通信担当] 九州大学 理学部生物学教室 細胞機能学講座
 e-mail: tanrcb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp Tel: 092-771-4161 
 内線433 Fax: 092-712-1587

事務局より
日本ショウジョウバエ研究会会員名簿について
通信No.3でお願いしました会員名簿更新のための情報が集まりましたので,1994年度
版の名簿を同封いたします。何人かの方のご協力をいただいて出来るだけバグは修正
したつもりですが,まだ入力ミス等があるかもしれません。お気づきの方は是非ご一
報お願いいたします(以下参照)。
1994年度版の発行が年度末になってしまいました。まもなく95年度が始まり,大学関
係では学生の入れ替わり等が起きることと思います。そこで94年度版の修正もかねて
95年度版を作りたいと思います。まことにお手数とは思いますが,同封のfax用紙に
訂正個所をご記入の上,事務局宛ご返送下さい。4月発行予定の通信No.5に新版を同
封する予定ですので締め切りを4月10日とさせていただきます。なお,名簿に登録す
るのはスタッフ以外は大学院生/研究生/ポスドクに限り,学部4年生は省略させて
いただきます。また巻末に海外留学中の方のaddressも載せました。お知り合いで研
究会に登録したいという方の情報がありましたらお知らせ下さい。
94年度版をご覧いただくとお気づきになられるでしょうが,e-mail addressをお持ち
の方が増えて参りました。現在,こちらで把握しているところへは郵送と同時にe-ma
ilでもお送りいたしました。addressをお持ちの方でまだ研究会名簿へ登録されてい
ない方は至急お知らせください。e-mailの方が修正変更の誤りがなく,事務局の手間
も軽減されますので宜しくお願いいたします。         事務局 上田 龍



編集後記
・「お知らせ」の雑多な情報は編集者がまとめたものです。有益な情報がありました
らお送り下さい。特にテクニカルな解説をお送りいただけないでしょうか。このニュ
ースで紹介したFlyBaseの情報を入手できない方はお知らせいただければお送りしま
す。・日本でもBioNet Drosphilaのような情報交換のためのニュースグループを開設
することが計画されています。・大学関係の地震の被害状況はマスコミの情報からは
全くわかりません。急遽、蒲生先生に報告していただきました。・次号は4月発行予
定で、第2回研究集会の参加申し込みが折り込まれます。  (TT)

編集: 谷村禎一・最上 要
発行:「日本ショウジョウバエ研究会」 三菱化学生命科学研究所内
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