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不完全なP 因子の不正確な切り出しは可能か?


Date: Sun, 28 Sep 1997 21:13:02 +0900
From: tmichiueアットマークhgc.ims.u-tokyo.ac.jp (Kaoru Saigo)
Subject: [Jfly] 不完全なP 因子の不正確な切り出し

Jfly の皆様

今、ある遺伝子の変異体を得るために、すぐ 5' 側にP-element の落ちた
トラップラインを用いて不正確な切り出しを行い、deletion mutant をまず
作製しようと計画しています。(そのトラップライン自身は興味のある
遺伝子の発現にはの影響を与えていないようです)
ところが、挿入点の周りのシーケンスを調べてみるとそのP element
は3' 側のinverted repeat 配列を完全に欠損していました。


ここでお聞きしたいのは、このようなP element を転移させて不正確な
切り出しを起こすことは果たして可能か?ということです。
それからそのことと関連すると思いますが、トランスポゼースの供給源
としてよく用いているP[delta 2-3 ] (99B) はどうして動かなくなったので
しょうか?inverted repeat 配列の欠損が原因しょうか?
御存じの方がいらっしゃればお教え下さい。
どのようなアドバイスでも結構です。よろしくお願いします。


大城 朝一(ともかず)
東大理学系研究科生化専攻、西郷研究室


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Date: Mon, 29 Sep 1997 01:46:08 +0900
From: tmichiueアットマークhgc.ims.u-tokyo.ac.jp (Kaoru Saigo)
Subject: [Jfly] 補:不完全なP 因子の不正確な切り出し

Jfly の皆様

先程のメールの語句について少し補足します

不完全なP 因子(defective P element)の不正確な切り出し(Imprecise excision)

のことです。念のため。

大城


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Date: Tue, 30 Sep 1997 17:18:59 +0900
From: shayashiアットマークlab.nig.ac.jp (Shigeo Hayashi)
Subject: [Jfly] 不完全なP 因子の不正確な切り出し

> それからそのことと関連すると思いますが、トランスポゼースの供給源
> としてよく用いているP[delta 2-3 ] (99B) はどうして動かなくなったので
> しょうか?

Fly Meeting で2個のP[delta 2-3]がタンデムに挿入されていると言う
話を聞きました。Publishされているかは知りません。

林 茂生


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Date: Wed, 1 Oct 1997 12:11:54 +0900
From: njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] 不完全なP 因子の不正確な切り出し

ERATO 山元行動進化プロジェクトの従二です。
この様な話題には、もっと詳しい方がいらっしゃるかと思いますが...

質問のポイントは、片側の inverted repeat を欠失した P が
再転移しうるかどうかということですね。
そのことを直接論じた reference をすぐにあげることは出来ませんが、
私は No だと思います。
ただこれは、自分で簡単に調べられることなので、
(例えば、delta2-3 とかけあわせて 次世代でモザイク眼が
reasonable な頻度で出てくるかを調べるとか)
林さんもおっしゃるように、まずやってみるといいと思います。
intact な P ですら、挿入場所によっては、再転移しにくいということは良くあり、
これは、実験の過程で初めてわかることです。

ところで、最終的な目的は、P 挿入近傍の deletion を取るということですから、
imprecise excision に依らないでこれを達成する可能性を2つ挙げたいと思います。

ひとつは、X 線やガンマ線で mutagenize して、P 挿入近傍の deletion を
P にのっているマーカー(w+など) の喪失を指標にスクリーニングする方法です。

もうひとつは、最近 Engels らが提唱している、half-element insertion (HEI) を
利用する方法です。これを、文章で説明するのは難しいのですが、
ある P 挿入を持つ染色体 (A とする)と持たない染色体 (B とする)の
heterozygote において、A の染色分体(A1, A2 とする) A1 上の P の片側の
wing と、A2 上の P の片側の wing とが、あたかも一つの P であるかのように
ふるまって B の染色分体に挿入すると、 P 挿入の近傍に、deletion や duplication
を起こした染色体ができるというものです。このとき、flanking marker の組換えを
伴うので、本来組換えを起こさないはずの雄でおきた、flanking marker の組換えを
指標にスクリーニングします。deletion を起こした後も P はそのまま残るので、
同様の操作を繰り返せば、どんどん欠失の範囲を広げられるそうです。
ただしこの現象は、A1 上の P の 5' wing と、A2 上の 3' wing で起こることとして
記載されているので、ご質問にあるような 5' wing しか生きていない P に
応用できるかどうかはわかりません。

なお、HEI による欠失体作成法や、その他諸々の P element にまつわる知見は、
Engels lab の HP
http://www.wisc.edu/genetics/CATG/engels/
に紹介されています。
P を仕事の道具として使っていながら、あやふやな理解のまま過ごしてきたことが
きっちり説明されていて、私も大変勉強になりました。

Naoto JUNI, Ph.D.  従二 直人   
東京都 町田市 南大谷 11 三菱化学生命科学研究所内
科学技術振興事業団 ERATO 山元行動進化プロジェクト
(phone) 0427-21-2334 (fax) 0427-21-2850
(E-mail) njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp


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Date: Thu, 2 Oct 1997 17:11:29 +0900
From: tohshiroアットマークhgc.ims.u-tokyo.ac.jp (Tomokazu Ohshiro)
Subject: [Jfly] Re: 不完全なP因子の不正確な切り出し

Jfly の皆様

いろいろと情報ありがとうございます。

いまdelta2-3 と掛け合わせ中ですので
もしモザイク眼がでたら結果をお知らせします。

大城