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ヘテロ接合とヘミ接合の用語の混乱?


Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous
Date: Tue, 22 Jun 99 09:42:01 +0900
From: Yasumitsu Takagi

Jーflyの皆様


ガン関係の雑誌を読んでいて、常染色体に乗っている遺伝子をターゲッティングし
て作製した(+/ー)のマウスをhemizygous と表現している論文に出くわしました
。どう読んでみても通常のheterozygous の意味としか考えられません。周囲の数人
に聞いたら『hetero とhemi は同じ意味で使います。』と言われて絶句してしまい
ました。でも悩んでいるのは私だけのようですし、掲載されている雑誌も一流誌な
のでだんだんと自信がなくなってきました。

そこでお尋ねします。

常染色体に乗っている遺伝子座について(+/ー)の遺伝型をhemizygous と表現す
ることがあるのですか?もしそうであるのならheterogygous と hemizygous の使い
分けはどのようにするのでしょうか?

マウスの論文でのことではありますが、遺伝学一般の質問として教えていただけれ
ば幸いです。


高木康光

福岡歯科大学・助教授
学術フロンティア研究センター
(〒814ー0193)
福岡市早良区田村2ー15ー1
電話;092ー801ー0411(内線230)
ファックス;092ー801ー0685
電子メール;ytakaアットマークcollege.fdcnet.ac.jp


===================================

Date: Tue, 22 Jun 1999 12:29:01 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 11:32 06/22/99 +0900, 上田龍 wrote:

>ヘミ接合というのは遺伝子が1コピーしかない状態,半数体が出しゃばらない(!)
>高等動物では例えば常染色体で片方の染色体が欠失を持つ場合の当該領域の(残って
>いる方の)遺伝子,あるいは性染色体がヘテロ接合型の個体での性染色体上の遺伝子
>について,その状態を指す言葉だと理解しています。
>従って,+/ーのマウスについては,[ー]が欠失であるならば,[+]遺伝子のヘミ接
>合体であるということになります。通常,ターゲッティングの場合は遺伝子の部分的
>な入れ替えですからamorphic alleleが残っており,ヘミ接合体とは言わないと思い
>ますけどねえ。私は幸い,そのような使い方をしている悩ましい論文にぶつかったこ
>とはありません。

私も基本的には同じ理解ですが、heterozygousとhemizygousはレベルが違う
ように感じます。大きな欠失などによって遺伝子が1コピーになったことを
明示ししたい場合には、hemizygousでいいと思いますが、そこまでの必要が
ない場合には、heterozygousといっても差し支えないのではないでしょうか。
実際、欠失ヘテロといった表現はごく普通に用いられていることですし。

ちょうど、劣性遺伝子とアモルフといった感じではないかと思います。つま
り、前者はより一般的・抽象的で、後者は、具体的な中身を示すといったこ
とです。したがって、劣性遺伝子≠アモルフです。

というのは、いかがなもんでしょうか?


--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Tue, 22 Jun 1999 11:32:54 +0900
From: 上田龍
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

生命研の上田です。
ヘミ接合というのは遺伝子が1コピーしかない状態,半数体が出しゃばらない(!)
高等動物では例えば常染色体で片方の染色体が欠失を持つ場合の当該領域の(残って
いる方の)遺伝子,あるいは性染色体がヘテロ接合型の個体での性染色体上の遺伝子
について,その状態を指す言葉だと理解しています。
従って,+/ーのマウスについては,[ー]が欠失であるならば,[+]遺伝子のヘミ接
合体であるということになります。通常,ターゲッティングの場合は遺伝子の部分的
な入れ替えですからamorphic alleleが残っており,ヘミ接合体とは言わないと思い
ますけどねえ。私は幸い,そのような使い方をしている悩ましい論文にぶつかったこ
とはありません。



At 9:42 AM +0900 99.6.22, Yasumitsu Takagi wrote:
> Jーflyの皆様
>
>
> ガン関係の雑誌を読んでいて、常染色体に乗っている遺伝子をターゲッティングし
> て作製した(+/ー)のマウスをhemizygous と表現している論文に出くわしました
> 。どう読んでみても通常のheterozygous の意味としか考えられません。周囲の数人
> に聞いたら『hetero とhemi は同じ意味で使います。』と言われて絶句してしまい
> ました。でも悩んでいるのは私だけのようですし、掲載されている雑誌も一流誌な
> のでだんだんと自信がなくなってきました。
>
> そこでお尋ねします。
>
> 常染色体に乗っている遺伝子座について(+/ー)の遺伝型をhemizygous と表現す
> ることがあるのですか?もしそうであるのならheterogygous と hemizygous の使い
> 分けはどのようにするのでしょうか?
>
> マウスの論文でのことではありますが、遺伝学一般の質問として教えていただけれ
> ば幸いです。
>
>
> 高木康光
>
> 福岡歯科大学・助教授
> 学術フロンティア研究センター
> (〒814ー0193)
> 福岡市早良区田村2ー15ー1
> 電話;092ー801ー0411(内線230)
> ファックス;092ー801ー0685
> 電子メール;ytakaアットマークcollege.fdcnet.ac.jp

............................................................................
上田龍
神経発生遺伝プロジェクト
プロジェクト研究センター
三菱化学生命科学研究所
〒194-8511 町田市南大谷11号
phone:042-724-6234
fax: 042-724-6314
...........................................................................


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Date: Tue, 22 Jun 1999 13:19:18 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 0:29 PM +1000 99.6.22, Yoshiaki FUYAMA wrote:
> At 11:32 06/22/99 +0900, 上田龍 wrote:

> >従って,+/ーのマウスについては,[ー]が欠失であるならば,[+]遺伝子のヘミ接
> >合体であるということになります。通常,ターゲッティングの場合は遺伝子の部分的
> >な入れ替えですからamorphic alleleが残っており,ヘミ接合体とは言わないと思い
> >ますけどねえ。私は幸い,そのような使い方をしている悩ましい論文にぶつかったこ
> >とはありません。
>
> 私も基本的には同じ理解ですが、heterozygousとhemizygousはレベルが違う
> ように感じます。大きな欠失などによって遺伝子が1コピーになったことを
> 明示ししたい場合には、hemizygousでいいと思いますが、そこまでの必要が
> ない場合には、heterozygousといっても差し支えないのではないでしょうか。
> 実際、欠失ヘテロといった表現はごく普通に用いられていることですし。

+/−の‘−’には、
 1:遺伝子の機能が**完全に**失われている(欠失など)。
 2:変異が起きて機能が大きく失われているが、厳密には機能が完全に失
   われているとは言い切れない。(point mutation など)
 3:変異が起きて、通常より機能が強くなったり、弱くなったり、他の機
   能に変わってしまったりしている。
の3つに分類できると思います。+/−は、1がヘミ、2、3:がヘテロと
いうことになるのでしょう。が、突然変異を扱う場合、2:を1:と同じよ
うに考えて処理してしまっている人・論文をときどき見かけます。そう考え
ると、2:もヘミ接合と言うことになります。

ヘテロとヘミを区別するかどうかは、その人が「突然変異=遺伝子の機能が
失われる」と単純に割り切って考えているかどうかに依存するかも知れませ
ん。

いとうκ


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Date: Tue, 22 Jun 1999 14:36:14 +0900
From: "YAMAMOTO, Masa-Toshi"
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

heteorozygosityとhemizygosityが話題になっているので、一言コメントさせてもら
います。
もともと、hemizygousとは染色体レベルの表現に使われるものであって、
heterozygousの一つに含まれるでしょう。
使い方としては、
Since normal males are haploid or hemizygous, heterozygosity in them is
prohibited.の様になります。これは、ハプロイドで雄となる性決定についての文章
のひとつです。

hemizygousとは、相同染色体あるいはその部分が存在しない場合に使用します。
ハプロイドはhemizygousですし、XYの場合、XもYもhemizygousです。これを発展
させて、染色体の部分的な欠失がheterozygousになっている場合、欠失内の遺伝子に
とっては、hemizygousになります。

この定義が広く遺伝子の詳細な点へ応用されようとしていることによる混乱ではない
かと思います。gene doseだけを表現したいのであれば、ひとつ、ふたつの遺伝子と
いうのが混乱のないところでしょう。

取急ぎ。
山本雅敏(京都工芸繊維大学・ショウジョウバエ遺伝資源センター)


> >ヘミ接合というのは遺伝子が1コピーしかない状態,半数体が出しゃばらない(!)
> >高等動物では例えば常染色体で片方の染色体が欠失を持つ場合の当該領域の(残って
> >いる方の)遺伝子,あるいは性染色体がヘテロ接合型の個体での性染色体上の遺伝子
> >について,その状態を指す言葉だと理解しています。
> >従って,+/ーのマウスについては,[ー]が欠失であるならば,[+]遺伝子のヘミ接
> >合体であるということになります。通常,ターゲッティングの場合は遺伝子の部分的
> >な入れ替えですからamorphic alleleが残っており,ヘミ接合体とは言わないと思い
> >ますけどねえ。私は幸い,そのような使い方をしている悩ましい論文にぶつかったこ
> >とはありません。
>
> 私も基本的には同じ理解ですが、heterozygousとhemizygousはレベルが違う
> ように感じます。大きな欠失などによって遺伝子が1コピーになったことを
> 明示ししたい場合には、hemizygousでいいと思いますが、そこまでの必要が
> ない場合には、heterozygousといっても差し支えないのではないでしょうか。
> 実際、欠失ヘテロといった表現はごく普通に用いられていることですし。
>
> ちょうど、劣性遺伝子とアモルフといった感じではないかと思います。つま
> り、前者はより一般的・抽象的で、後者は、具体的な中身を示すといったこ
> とです。したがって、劣性遺伝子≠アモルフです。
>
> というのは、いかがなもんでしょうか?


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Date: Tue, 22 Jun 1999 15:26:09 +0900
From: 上田龍
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

> 私も基本的には同じ理解ですが、heterozygousとhemizygousはレベルが違う
> ように感じます。大きな欠失などによって遺伝子が1コピーになったことを
> 明示ししたい場合には、hemizygousでいいと思いますが、そこまでの必要が
> ない場合には、heterozygousといっても差し支えないのではないでしょうか。
> 実際、欠失ヘテロといった表現はごく普通に用いられていることですし。

heterozygous for what?
レベルというよりも,何がヘテロ接合(あるいはヘミ接合)なのか,ということをは
っきりさせるべきです。

ヘミ接合(片方の遺伝子がない)の場合は当然,残っている遺伝子に関してヘミ接合
というのでしょうが,
ヘテロ接合は二つある遺伝子/染色体/染色体領域のどちらに関してヘテロ接合なのか
,言い方が二つできます。
通常は突然変異/その表現型に対して議論していることが多いので(かつその機能を
野生型遺伝子のそれと対比しているので),....gene[-]のヘテロ接合体の表現型は.
..という風に表記しますがこれは正確には....gene[-]とgene[+]のヘテロ接合体の表
現型は...ということになります。
「欠失ヘテロ」というのは,欠失染色体(に関して野生型染色体との)ヘテロ接合で
あり,残った遺伝子/染色体領域に言及しているのではないわけですね。欠失とのヘ
テロ接合体において残った遺伝子に特に言及する場合は,遺伝子X(変異型のことが
多いでしょうが)のヘミ接合体は....といわなければいけないと思います。(これは
変異がhypomorphであるか,amorphであるかの検定に使われます。)

というところで雅敏さんのpostがあって,そちらの方が明瞭に説明してありますね。


> ちょうど、劣性遺伝子とアモルフといった感じではないかと思います。つま
> り、前者はより一般的・抽象的で、後者は、具体的な中身を示すといったこ
> とです。したがって、劣性遺伝子≠アモルフです。
>

劣性か優性か,というのは突然変異の型(機能)とは区別して考えるべきではありま
せんか。
突然変異の型は,以前も討議されたことがあると思いますが,
1)amorph
2)hypomorph
3)hypermorph
4)antimorph
5)neomorph
の5型があって,多くの場合1)2)は劣性です。ただし,非常に重要な遺伝子(た
ぶん沢山の産物が必要な場合)はamorphあるいはhypomorphの(野生型との)ヘテロ
接合体でも何らかの異常が検知されることがあり(haplo-insufficiency),堀田先
生が大学院の講義の時,間接飛翔筋の蛋白の例をお話しされていたことを思い出しま
す。
ついでに啓さんの,

> +/−の‘−’には、
>  1:遺伝子の機能が**完全に**失われている(欠失など)。
>  2:変異が起きて機能が大きく失われているが、厳密には機能が完全に失
>    われているとは言い切れない。(point mutation など)
>  3:変異が起きて、通常より機能が強くなったり、弱くなったり、他の機
>    能に変わってしまったりしている。
> の3つに分類できると思います。

というのは変でして,通常[ー]と書くのはamorphであることが明かな(「機能が**完
全に**失われている」)場合のみです。このための変異としては「欠失」が一番確実
ですが,「point mutation」でもそれがORFの最初の方でflame shiftを起こしていれ
ば機能的な蛋白はできないわけで(neomorphの心配がある?),この場合でも[ー]と
書いていいのでしょう。
余り纏まりませんでしたが,とりあえず。

............................................................................
上田龍
神経発生遺伝プロジェクト
プロジェクト研究センター
三菱化学生命科学研究所
〒194-8511 町田市南大谷11号
phone:042-724-6234
fax: 042-724-6314
...........................................................................


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Date: Tue, 22 Jun 1999 17:08:27 +0900
From: njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 1:19 PM 6/22/99 +0900, ITO, Kei wrote:
>
>+/−の‘−’には、
> 1:遺伝子の機能が**完全に**失われている(欠失など)。
> 2:変異が起きて機能が大きく失われているが、厳密には機能が完全に失
>   われているとは言い切れない。(point mutation など)
> 3:変異が起きて、通常より機能が強くなったり、弱くなったり、他の機
>   能に変わってしまったりしている。
>の3つに分類できると思います。+/−は、1がヘミ、2、3:がヘテロと
>いうことになるのでしょう。が、突然変異を扱う場合、2:を1:と同じよ
>うに考えて処理してしまっている人・論文をときどき見かけます。そう考え
>ると、2:もヘミ接合と言うことになります。
>
>ヘテロとヘミを区別するかどうかは、その人が「突然変異=遺伝子の機能が
>失われる」と単純に割り切って考えているかどうかに依存するかも知れませ
>ん。
>
>いとうκ

これは、‘−’を mutant allele の意味だととると、まさに古典的なalleleの分類なのですが、‘−’は mutant allele 一般を示す記号ではないことをお忘れなく。学生さんなどと話しをすると、野生型が‘+’で表されるということの単純な連想から、 mutant alleleはすべて‘−’で表せると思いこんでいることに出くわすこともままありますが、厳密には そのlocus の欠失を意味していたとはずです。少なくとも3:の意味では絶対に使われることはないと思います。

hemizygote という概念は、元々は、細胞遺伝学的に調べた欠失領域や、性別によっては1本しかない性染色体などをみて、相同遺伝子が存在しない状態を表すためにできたのだと想像しますが、分子レベルでの遺伝子の理解が進んで、もっとミクロな遺伝子の変化がわかるようになった現在、locusは残っているけど機能を失っている状態も欠失と同様と見なされるようになってきているのでしょうか。


でも、あるmutant allele(仮にaとする)と欠失を組み合わせたとき、aがいわゆるnullだとしても、a のヘミ接合体と言いますよね(言わない?)。そうすると、やっぱり遺伝子の欠失と、ほかの理由で機能を失ったallele は区別しないと都合悪いのでは?
それともハエとネズミじゃシチュエーションがちがうのかな(ネズミじゃそうそう欠失なんか利用できないから、KOを欠失と同義に見なすとか)。
***
NJ


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Date: Tue, 22 Jun 1999 17:15:23 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

専門家に突っ込まれてしまいました。

At 3:26 PM +0900 99.6.22, 上田龍 wrote:

> ついでに啓さんの,
>
> > +/−の‘−’には、
> >  1:遺伝子の機能が**完全に**失われている(欠失など)。
> >  2:変異が起きて機能が大きく失われているが、厳密には機能が完全に失
> >    われているとは言い切れない。(point mutation など)
> >  3:変異が起きて、通常より機能が強くなったり、弱くなったり、他の機
> >    能に変わってしまったりしている。
> > の3つに分類できると思います。
>
> というのは変でして,通常[ー]と書くのはamorphであることが明かな(「機能が**完
> 全に**失われている」)場合のみです。このための変異としては「欠失」が一番確実
> ですが,「point mutation」でもそれがORFの最初の方でflame shiftを起こしていれ
> ば機能的な蛋白はできないわけで(neomorphの心配がある?),この場合でも[ー]と
> 書いていいのでしょう。
> 余り纏まりませんでしたが,とりあえず。

たしかに3:を‘−’と呼ぶ人は、さすがに居ませんよね。訂正します。

言いたかったのは上田さんの後半にあるように、欠失でない変異(point
mutation や エンハンサートラップなどのプロモーター部への挿入変異)
の場合に、著しい hypomorph(上記の2)に過ぎないのに、amorph
(上記の1)と見なしてしまうことがあるような、ということでした。
むかし、Notch の機能解析に使われていた変異系統は loss of function
とされていたけれど欠失変異ではなかったので、もしかしたら非常に弱い
けれどレセプター活性があるんじゃないか、という議論を Campos-Ortega
としたことがあったのを思いだしたものですから。

いとうκ


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Date: Tue, 22 Jun 1999 17:32:46 +0900
From: njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

先ほどの記事、名乗りもせず、しかも身内用のsignatureで投稿してしまい、失礼しました。NJ こと山元プロジェクト従二でした。
***********************************************************
Naoto JUNI, Ph.D.  従二 直人  (じゅうに なおと) 
Yamamoto Behaviour Genes Project, ERATO, J.S.T.
c/o Mitsubishi Kasei Institute of Life Sciences
11 Minamiooya, Machida-shi, Tokyo 194-8511, JAPAN
194-8511 東京都 町田市 南大谷 11 三菱化学生命科学研究所内
科学技術振興事業団 ERATO 山元行動進化プロジェクト
(phone) 042-721-2334 (fax) 042-721-2850
(E-mail) njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp
***********************************************************


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Date: Wed, 23 Jun 1999 09:04:23 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous


群馬大学行動研の吉原です。

伊藤さんからの訂正が出た後で間が悪いのですが、
従二さんからの以下のご意見に関しまして、それに関する文献ならびに論拠を教えて
いただけないでしょうか?
私は遺伝学を教えている身で恥ずかしながら、この件に関して正確な認識をもってお
りませんでしたので、この機会に是非勉強させていただこうと思います。「この種の
記号ならびに用語は遺伝子産物に関して十分な理解が得られる以前に使われていたも
のなので、かなり曖昧に使用されており、nullでなくてもマイナスを使用することも
あった。」というのが私の理解で、手元の教科書で、そのような書き方がされている
ものが実際にあります。従二さんはご専門で確信を持っておられるようなので、はっ
きりしたところをご教示いただけたら幸いです。

> これは、‘−’を mutant allele の意味だととると、まさに古典的なalleleの分類な
>のですが、‘−’は mutant allele 一般を示す記号ではないことをお忘れなく。学生さ
>んなどと話しをすると、野生型が‘+’で表されるということの単純な連想から、
>mutant alleleはすべて‘−’で表せると思いこんでいることに出くわすこともままあり
>ますが、厳密には そのlocus の欠失を意味していたとはずです。少なくとも3:の意味
>では絶対に使われることはないと思います。
>

****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
****************************************


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Date: Wed, 23 Jun 1999 10:20:19 +0900
From: njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

山元行動進化プロジェクトの従二です。

専門家なんてとんでもないことです。
出処は単に、Red book、Gray book、Flybase の nomenclature の項です。ですから、ショウジョウバエ以外ではルールが違うかもしれません。”厳密には”と書いたのは、practical には欠失以外の null allele や ”null と見なされる allele” を表すために使われていることも多いことを実感しているためです。

At 9:04 AM 6/23/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:
>群馬大学行動研の吉原です。
>
>伊藤さんからの訂正が出た後で間が悪いのですが、
>従二さんからの以下のご意見に関しまして、それに関する文献ならびに論拠を教えて
>いただけないでしょうか?
>私は遺伝学を教えている身で恥ずかしながら、この件に関して正確な認識をもってお
>りませんでしたので、この機会に是非勉強させていただこうと思います。「この種の
>記号ならびに用語は遺伝子産物に関して十分な理解が得られる以前に使われていたも
>のなので、かなり曖昧に使用されており、nullでなくてもマイナスを使用することも
>あった。」というのが私の理解で、手元の教科書で、そのような書き方がされている
>ものが実際にあります。従二さんはご専門で確信を持っておられるようなので、はっ
>きりしたところをご教示いただけたら幸いです。
>
>> これは、‘−’を mutant allele の意味だととると、まさに古典的なalleleの分類な
>>のですが、‘−’は mutant allele 一般を示す記号ではないことをお忘れなく。学生さ
>>んなどと話しをすると、野生型が‘+’で表されるということの単純な連想から、
>>mutant alleleはすべて‘−’で表せると思いこんでいることに出くわすこともままあり
>>ますが、厳密には そのlocus の欠失を意味していたとはずです。少なくとも3:の意味
>>では絶対に使われることはないと思います。
>>
>
>****************************************
>Motojiro Yoshihara, Ph.D.
>Institute for Behavioral Sciences
>Gunma University School of Medicine
>Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
>****************************************
***********************************************************
Naoto JUNI, Ph.D.  従二 直人  (じゅうに なおと) 
Yamamoto Behaviour Genes Project, ERATO, J.S.T.
c/o Mitsubishi Kasei Institute of Life Sciences
11 Minamiooya, Machida-shi, Tokyo 194-8511, JAPAN
194-8511 東京都 町田市 南大谷 11 三菱化学生命科学研究所内
科学技術振興事業団 ERATO 山元行動進化プロジェクト
(phone) 042-721-2334 (fax) 042-721-2850
(E-mail) njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp
***********************************************************


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Date: Wed, 23 Jun 1999 10:54:35 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。


> 山元行動進化プロジェクトの従二です。
>
> 専門家なんてとんでもないことです。
> 出処は単に、Red book、Gray book、Flybase の nomenclature の項です。ですから、
>ショウジョウバエ以外ではルールが違うかもしれません。”厳密には”と書いたのは、
>practical には欠失以外の null allele や ”null と見なされる allele” を表すため
>に使われていることも多いことを実感しているためです。

いえいえ、私がお尋ねしたかったのは(1)「マイナス」が細胞遺伝学の用語である
「欠失」と対応しているという認識が一般的かということと、(2)より一般的には
、全くnullでないものもマイナスと書いていいのではという2点だったのですが。
確かに、Red Bookには、"Absence of a particular locus" とありますが、ハエの
世界の中だけでも、これを染色体の欠失と考えるべきなのか、どなたかはっきりした
ことを教えていただけませんか(山本雅敏先生をご指名させていただくのが適当かと
存じますが)?
****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
****************************************


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Date: Wed, 23 Jun 1999 20:22:08 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

なにせ、ちゃんとした遺伝学の講義というものをいちども受けたことがない
ので、こんなことも分かっていなくて済みません。ついでに聞かせて下さい。


At 0:29 PM +1000 1999.6.22, Yoshiaki FUYAMA wrote:

> ちょうど、劣性遺伝子とアモルフといった感じではないかと思います。つま
> り、前者はより一般的・抽象的で、後者は、具体的な中身を示すといったこ
> とです。したがって、劣性遺伝子≠アモルフです。

劣性遺伝子≠アモルフ というのはその通りだと思うのですが、前者が抽象的、
後者は具体的な中身というところが、ちょっとよく分かりません。

アモルフというのは、その変異によって、産物であるタンパク質の機能が完全
に失われる(タンパクが産生されなくなる、フレームシフトでとんでもないア
ミノ配列に変わってしまう、活性部位に致命的な構造異常が生じる、などいろ
いろな場合があるでしょうが)のかどうかという問いに還元されますから、確
かに具体的で、割と分かりやすいです。

いっぽう「劣性」というのは、私はある表現型に着目したときに、その原因と
なっている遺伝子が2本とも変異型の場合になっているときだけその表現型が
見られるような変異、優性というのは片方の遺伝子座が変異型なら見られるよ
うな変異、というふうに理解しているのですが、そうすると、一つの変異によっ
て発生、構造、行動など様々な場所で異常な表現型が見られる場合(多くの変
異がそうですね)、表現型によってはヘテロでも出てくるので優性、いっぽう
別の表現型はホモにしないと見えないので劣性、ということになり、一つの
DNA 異常で優性劣性両方の変異が生じることになってしまいます。すると遺
伝子そのものについては、優性とか劣性とかいうことが出来なくなってしまい
ます。あくまで結果としての個々の表現型についてだけ、優性とか劣性とかい
えるように思えるのです。

そもそも、ある遺伝子に変異が起きれば、分子生物学的な細かいレベルで見れ
ばヘテロの状態でも必ず何らかの異常は生じている(たとえば、mRNA 量の
減少や、mRNA のうち半数に配列異常が見られるのは、ほぼ確実でしょう)
わけですから、厳密には劣性の突然変異などというものは、この世に存在しな
くなってしまいます。

こう考えると「劣性遺伝子」というのは、「その遺伝子座の異常によって引き
起こされうるもろもろの異常のうち、細かいところには目をつぶって、目に付
きやすい所で起きる目に付きやすい“代表的な変異形質”が、ヘテロ接合でな
くホモ/ヘミ接合の場合にだけ観察されるような遺伝子(目に付きにくい所で
はヘテロ接合でも何か細かい異常が起きてるかも知んない)」という、甚だあ
いまいな定義になってしまいます。これでいいのでしょうか?
(なんか自分がすごく間違っていそうな気もするのですが。)

というわけで、「優性や劣性というのは DNA 異常によって最終的に生じる表
現型についての話、アモルフやハイポモルフは産物であるタンパクレベルでの
機能の有無の話、ということで、両者は全く別の概念である、という理解では
まずいのでしょうか?

いとうκ


===================================

From: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous
Date: Wed, 23 Jun 1999 21:09:37 +0900

Reply to the mail from "ITO, Kei"
arrived on 1999/06/23 20:22:08 +0900 about [Jfly] heterogygous versus hemizygo
us.

私もちゃんとした遺伝学の講義というものをいちども受けたことがないのですが、
伊藤 啓さんの疑問に対して私の考えを少し述べさせてください。

>劣性遺伝子≠アモルフ というのはその通りだと思うのですが、前者が抽象的、
>後者は具体的な中身というところが、ちょっとよく分かりません。
>
>アモルフというのは、その変異によって、産物であるタンパク質の機能が完全
>に失われる(タンパクが産生されなくなる、フレームシフトでとんでもないア
>ミノ配列に変わってしまう、活性部位に致命的な構造異常が生じる、などいろ
>いろな場合があるでしょうが)のかどうかという問いに還元されますから、確
>かに具体的で、割と分かりやすいです。
>
>いっぽう「劣性」というのは、私はある表現型に着目したときに、その原因と
>なっている遺伝子が2本とも変異型の場合になっているときだけその表現型が
>見られるような変異、優性というのは片方の遺伝子座が変異型なら見られるよ
>うな変異、というふうに理解しているのですが、そうすると、一つの変異によっ
>て発生、構造、行動など様々な場所で異常な表現型が見られる場合(多くの変
>異がそうですね)、表現型によってはヘテロでも出てくるので優性、いっぽう
>別の表現型はホモにしないと見えないので劣性、ということになり、一つの
>DNA 異常で優性劣性両方の変異が生じることになってしまいます。すると遺
>伝子そのものについては、優性とか劣性とかいうことが出来なくなってしまい
>ます。あくまで結果としての個々の表現型についてだけ、優性とか劣性とかい
>えるように思えるのです。

優性 vs.劣性というのはメンデルの定義で、これは操作論的(operational)な
定義だということです。従って、どういう実験でどんな表現型について判定する
のかを合わせてのベル必要があります。

一方、null、欠失、Gain of function, Loss of function とかいうのは 実
体論的な定義です。したがって両者は必ずしも平行しません。
Loss of function が 優性 であることもあります。(最上・小穴・堀田 など
の間接飛翔筋の筋収縮蛋白質の例など)。また Gain of function でも量的に
不十分なら実験操作によっては 劣性 になり得ます。

また一つの遺伝子がある実験操作では優性で、他の実験では劣性になることも容
易に想像されます。一つの遺伝子の異なる「表現型」に着目すればいくらでもそ
うなります。従って、優勢劣性の記載は「操作」を述べなければ意味をなさない
ことになります。

>そもそも、ある遺伝子に変異が起きれば、分子生物学的な細かいレベルで見れ
>ばヘテロの状態でも必ず何らかの異常は生じている(たとえば、mRNA 量の
>減少や、mRNA のうち半数に配列異常が見られるのは、ほぼ確実でしょう)
>わけですから、厳密には劣性の突然変異などというものは、この世に存在しな
>くなってしまいます。

本質に近付いて「形質」を定義すればするほど、遺伝子は優性(半優性)になる
のは上記の説明から明白です。私は昔から、あたらしい遺伝子を研究し始めると
きには、いろいろな実験操作や表現型の判定をして優性になるものを探す努力を
します。

>こう考えると「劣性遺伝子」というのは、「その遺伝子座の異常によって引き
>起こされうるもろもろの異常のうち、細かいところには目をつぶって、目に付
>きやすい所で起きる目に付きやすい“代表的な変異形質”が、ヘテロ接合でな
>くホモ/ヘミ接合の場合にだけ観察されるような遺伝子(目に付きにくい所で
>はヘテロ接合でも何か細かい異常が起きてるかも知んない)」という、甚だあ
>いまいな定義になってしまいます。これでいいのでしょうか?
>(なんか自分がすごく間違っていそうな気もするのですが。)

上記の私の記述のように考えるべきで、曖昧さは全くありません。定義の意味を
正確に考えることが重要です。

>いとうκ

大学院時代の教育の追加というわけではありませんが、独立行政法人化などの対応
に追われている毎日でいらいらしているついでに、一言。

堀 田 凱 樹
-----------------------------------------------
堀田凱樹 (ホッタ ヨシキ)
国立遺伝学研究所 所長・総合研究大学院大学 教授
〒411 静岡県三島市谷田 1,111
電話: (0559) 81-6700, FAX: (0559) 81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
-----------------------------------------------
-----------------------------------------------
Yoshiki Hotta, Director-General & Prof.
National Institute of Genetics
Mishima, Shizuoka 411-8540 Japan
Tel: +81-559-81-6700
Fax: +81-559-81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
-----------------------------------------------


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Date: Wed, 23 Jun 1999 22:32:45 +0900
From: Takuma Yamada
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

やまだ@いでんけん です。

なんだかどんどん話が広がっているようですが、要はギリシア語の語源にかえって
homo: 同じ、同質の
hetero: 異なる、異質の
そして
hemi: 半分
なんだという原則さえ知っていればいまおこっている議論のかなりの部分が説明でき
ると思いますので一言。

なにかあるもの(必ずしも遺伝子でなくてもかまいません)をAとして、Aと全く同じ
ではないものをA'としますと(Nullも含みます。)
AAはホモで
AA'はヘテロ
です。そしてAAに対して
Aがヘミ
ということになります。あとはAをどう定義するかの問題ですが、それに関しては他
のより適当な方々におまかせ致します。



山田 琢磨 (Takuma Yamada)
〒411 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所 発生遺伝
TEL 0559-81-6809 (研究室)
0559-72-7989 (自宅)
FAX 0559-81-6768


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Date: Thu, 24 Jun 1999 01:51:15 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。

御体登場の上に、山田さんのギリシャ語講義まで出て(そういえば今年はまだ水性
hemiptera=半し目を採ってませんが)、あまりに盛り上がってきたので、ちょいと蛇
足で補足させてください。

堀田先生の以下のコメントに関しまして、

> 本質に近付いて「形質」を定義すればするほど、遺伝子は優性(半優性)になる
> のは上記の説明から明白です。私は昔から、あたらしい遺伝子を研究し始めると
> きには、いろいろな実験操作や表現型の判定をして優性になるものを探す努力を
> します。

お言葉ですが、これは半優性(semidominance=incomplete dominance、不完全優性)
ではなく、このようなことで悩む方々(我々?)のために共優性(codominance、両
方の形質が出る)という用語が定義されています。Text bookには鎌形赤血球貧血症
の例がでています。半優性は中間雑種を生ずるものですので、この場合にはあたりま
せん(勿論この場合も、基準によっては半優性と判断できるとへりくつこねることも
可能ですが)。堀田門下でも、高校、大学共に「ちゃんとした遺伝学の講義」を受け
ている人間もいることをお忘れなく。。。

とにかく、明朝の講義で、優性、劣性というのは恣意的な定義(堀田先生の用語をお
借りするとoperationalな定義)であって、見方によって変わるものだということを
たたき込んでくるつもりです。これが遺伝学を理解する上で一番の落とし穴であるか
らです。ちなみに、前にJFLYで提言した、「DNAから初めて分子遺伝学と古典遺伝
学の関係を理解させる」やりかたを試していますが、いまのところうまく行っている
ようです。

伊藤さんの

> 表現型によってはヘテロでも出てくるので優性、いっぽう
> 別の表現型はホモにしないと見えないので劣性、ということになり、一つの
> DNA 異常で優性劣性両方の変異が生じることになってしまいます。

という話は、実は高校の教科書に出ている事項で(高校の教科書を馬鹿にしてはいけ
ない!)、賢い高校生なら理解していることなのです。ねずみの黄色遺伝子(体色に
関しては優性)がホモになると致死になるので、致死という形質に関しては劣性であ
ると書いてあります(ちなみに、これは最初の致死遺伝子の発見にあたるので、教科
書にでてるのでしょう)。

ついでに、初学者の方々だけの為に老婆心でつまづきやすい点を指摘しておきます(
多くの方には釈迦に説法ですので読む必要ありません)。
議論のなかでも「遺伝子」という言葉が曖昧に使われていますが、解りやすくするた
めにroughな言い方を敢えてすると、「遺伝子」が、(1)業界でいうところの「
allele」とほぼ同義で使われる場合(例えば「satoriはfruの(と)alleleだった」
という場合。古典遺伝学でいうところの「遺伝子」。)と、(2)「locus」に近い
ものをさす場合(遺伝子クローニングの時代になって流布されたと思われる。)、の
二通りが混在して使われています。優性、劣性を論じるときの「遺伝子」はもちろん
(1)です。


****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
****************************************


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Date: Thu, 24 Jun 1999 10:37:11 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 01:51 06/24/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:

>とにかく、明朝の講義で、優性、劣性というのは恣意的な定義(堀田先生の用語をお
>借りするとoperationalな定義)であって、見方によって変わるものだということを
>たたき込んでくるつもりです。これが遺伝学を理解する上で一番の落とし穴であるか
>らです。

恣意的というのはちと言い過ぎという気がします。優性、劣性というの
は、表現型と遺伝子型の関係を表わす用語であり、表現型をきちんと定
義すればあいまいさはなくなると思います。operationalというのは、
そのように理解しましたけど、堀田先生違いますか?

鎌型赤血球貧血症の例ですと、臨床症状という表現型では劣性、ヘモグロ
ビンレベルでは共優性、赤血球の形状に関しては、高酸素分圧下では劣性
であるが、低酸素分圧下では、不完全優性。もう一つおまけに、マラリア
流行地域における適応度でみると超優性、それ以外の地域では劣性といっ
たあんばいです。

>議論のなかでも「遺伝子」という言葉が曖昧に使われていますが、解りやすくするた
>めにroughな言い方を敢えてすると、「遺伝子」が、(1)業界でいうところの「
>allele」とほぼ同義で使われる場合(例えば「satoriはfruの(と)alleleだった」
>という場合。古典遺伝学でいうところの「遺伝子」。)と、(2)「locus」に近い
>ものをさす場合(遺伝子クローニングの時代になって流布されたと思われる。)、の
>二通りが混在して使われています。優性、劣性を論じるときの「遺伝子」はもちろん
>(1)です。

geneとalleleという全く別の言葉が、遺伝子と対立遺伝子と訳されたことが
このようなあいまいさを生ずる原因になったのでしょうね。私は、(2)の
意味で使うときには、なるべく「遺伝子座」と言うことにしていますが、
先日、ある大学の授業で、「遺伝子座」ってなんですかと質問されました。
高校の生物では教わらなかったということですが、教科書には出てこない
用語なんでしょうか?

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 24 Jun 1999 11:53:38 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。

> 恣意的というのはちと言い過ぎという気がします。優性、劣性というの
> は、表現型と遺伝子型の関係を表わす用語であり、表現型をきちんと定
> 義すればあいまいさはなくなると思います。operationalというのは、
> そのように理解しましたけど、堀田先生違いますか?

「恣意的」に語弊あったかもしれませんが、言いたかったのは「どうにでも任意に決
めることができる」ということで、いい加減やあいまいということでは全くありませ
ん。布山先生には誤解されたようですが、いいたかったのは逆で、その「正確に任意
に決める」ことが必須で、このことによって、単なる言葉の問題ではなく、遺伝の本
質が浮かび上がってくる(昔お聞きした堀田先生の言を借りると、本質が「えぐり出
される」)、というのが遺伝学の理解で一番重要なことだといいたかったわけです。
「任意」というポイントを強調したかったのですが、「operational」と言う方が誤
解されなくていいかもしれませんね。

> geneとalleleという全く別の言葉が、遺伝子と対立遺伝子と訳されたことが
> このようなあいまいさを生ずる原因になったのでしょうね。私は、(2)の
> 意味で使うときには、なるべく「遺伝子座」と言うことにしていますが、
> 先日、ある大学の授業で、「遺伝子座」ってなんですかと質問されました。
> 高校の生物では教わらなかったということですが、教科書には出てこない
> 用語なんでしょうか?


ここらで少なくとも、「遺伝子」だけにでもきっちりした定義を与えられないもので
しょうか?両者の混在は本当に学生の理解を妨げていると思います。 

****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
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Date: Thu, 24 Jun 1999 12:37:35 +0900
From: "YAMAMOTO, Masa-Toshi"
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

> > 専門家なんてとんでもないことです。
> > 出処は単に、Red book、Gray book、Flybase の nomenclature の項です。ですから
>、
> >ショウジョウバエ以外ではルールが違うかもしれません。”厳密には”と書いたのは
>、
> >practical には欠失以外の null allele や ”null と見なされる allele” を表すた
>め
> >に使われていることも多いことを実感しているためです。
>
> いえいえ、私がお尋ねしたかったのは(1)「マイナス」が細胞遺伝学の用語である
> 「欠失」と対応しているという認識が一般的かということと、(2)より一般的には
> 、全くnullでないものもマイナスと書いていいのではという2点だったのですが。
> 確かに、Red Bookには、"Absence of a particular locus" とありますが、ハエの
> 世界の中だけでも、これを染色体の欠失と考えるべきなのか、どなたかはっきりした
> ことを教えていただけませんか(山本雅敏先生をご指名させていただくのが適当かと
> 存じますが)?

昨夕はメールを見る時間がなく、返事が遅くなりました。指名されてしまったため、
ひと言。

「マイナス」はショウジョウバエ遺伝学では遺伝子座の欠失を意味します。
ある遺伝子、例えばforked (f)の遺伝子座が欠失している場合、f[Df]かf[-]で表し
ます。f[Df]の表記は現在非常に少ないというか見ることはありませんが、1940
年代の論文だと出てくると思います。欠失だと確認できる場合だと、Ybb[-]という表
記で、Y染色体上のbb遺伝子の欠失を表したものが、1933年頃にあります。Y[
S]が正常の約1/3に短くなっていることを確認したことから「マイナス」を使用し
たものです。
 唾腺染色体の分析が行われる様になると、マッピングの結果として、欠失部位に含
まれる遺伝子座を表すのに、w[-] N[-] spl[-]などと表現されることもよくありま
す。よく利用する、attached-X染色体のなかにもy[-] ac[-]/ y acとヘテロになって
いるものもありますね。

ショウジョウバエ以外の生物における遺伝学では、「マイナス」はある遺伝子の表現
形が“野生型ではない=突然変異形質を示す”ということを意味する場合があるよう
です。

ショウジョウバエ以外で、染色体の欠失を詳細に分析できるシステムはなかったとい
う点で理解してもらえるのでは。ただし、ある遺伝座の欠失を「マイナス」で表記す
るとしたら、部分的な欠失は「マイナス」ではないのかという議論が出てくると思い
ます。もっともな疑問ですが、これを許すというか発展させると、1ヌクレオチドの
欠失も「マイナス」で書けるということになり、混乱してしまいます。表現形はほと
んど変わらない、野生型である、のに、分子生物学的に塩基配列を調べると欠失して
いた−>すなわち「マイナス」だと。極端な例ですが、このような混乱に発展しない
ように、注意すべきだと思います。

植物、カビ、哺乳類などの記述法はショウジョウバエとは異なるところが多いので、
何とかしなければならないのでしょうが。遺伝学会の編集委員会でも話題になったこ
とがありました。

この件とは全く関係ありませんが、Genes & Genetic Systemsへの皆さんの論文投稿
をお待ちしています。よろしくお願いします。

山本雅敏(京都工芸繊維大学・ショウジョウバエ遺伝資源センター)


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Date: Thu, 24 Jun 1999 13:42:57 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 11:53 06/24/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:

>ここらで少なくとも、「遺伝子」だけにでもきっちりした定義を与えられないもので
>しょうか?両者の混在は本当に学生の理解を妨げていると思います。 

「遺伝子」を定義しようなんて、そんな無謀な(*_*)  もっと泥沼は
必定でしょう。

先だって、オーバーラップした2つの遺伝子から、全く機能の異なる
2種類のタンパクが作られ、しかも、生じた突然変異が、どちらとも
non-coplementaryになるというケースのあることを聞き、遺伝子の定
義をどうしてくれるんだと質問しました。21世紀には「遺伝子」と
いう言葉は消滅すると予言している人がいるというのがその答でした。

「種」という言葉が誰も定義できないのに、みんなが平気で使ってい
るのと同様に、「遺伝子」もコミュニケーションさえとれればいいと
割りきるしかないような気がいたします。

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 24 Jun 1999 13:08:33 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。

山本先生、お忙しいところ明快なご説明ありがとうございました。大変勉強になりま
した。ご指名させていただいた失礼、どうぞお許しください。

ちょっとこだわりますが、「恣意的」はDavid Suzukiらの教科書、An Introduction
to Genetic Analysis(Freeman社。私は気に入っています。院生諸氏にもお薦めしま
す。)にしつこくarbitrary, arbitraryと書いてあるので、"arbitrary"を訳したの
が「恣意的」でした。学生に説明するときに「優性劣性は任意だ」というのも間がわ
るいので、「優性劣性は恣意的な概念だ」という調子でやってたのですが、布山先生
ならどう訳されるのか教えていただけたらうれしいです(ご指名ばかりで恐縮ですが
、)。
****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
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Date: Thu, 24 Jun 1999 14:12:43 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 13:08 06/24/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:

>ちょっとこだわりますが、「恣意的」はDavid Suzukiらの教科書、An Introduction
>to Genetic Analysis(Freeman社。私は気に入っています。院生諸氏にもお薦めしま
>す。)にしつこくarbitrary, arbitraryと書いてあるので、"arbitrary"を訳したの
>が「恣意的」でした。学生に説明するときに「優性劣性は任意だ」というのも間がわ
>るいので、「優性劣性は恣意的な概念だ」という調子でやってたのですが、布山先生
>ならどう訳されるのか教えていただけたらうれしいです(ご指名ばかりで恐縮ですが
>、)。

ははは。辞書を引いてみました。確かに、恣意的という訳語が出てきますね。
私の日本語の語感では、「勝手気まま」といった印象を受けたのですが、吉原
さんのご説明で、私の方が誤解しており、意見の食い違いはないことがわかり
ました。

arbitraryの意味は正確には知りませんが、'arbitrary unit' というような
使い方をするところをみると、確かに、優性劣性にも当てはまりそうですね。



--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 24 Jun 1999 13:27:52 +0900
From: njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] What's Minus? (was: heterogygous versus hemizygous)

山元行動進化プロジェクトの従二です。

At 10:54 AM 6/23/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:
>群馬大学行動研の吉原です。
>
>
>> 山元行動進化プロジェクトの従二です。
>>
>> 専門家なんてとんでもないことです。
>> 出処は単に、Red book、Gray book、Flybase の nomenclature の項です。ですから、
>>ショウジョウバエ以外ではルールが違うかもしれません。”厳密には”と書いたのは、
>>practical には欠失以外の null allele や ”null と見なされる allele” を表すた
>>め
>>に使われていることも多いことを実感しているためです。
>
>いえいえ、私がお尋ねしたかったのは(1)「マイナス」が細胞遺伝学の用語である
>「欠失」と対応しているという認識が一般的かということと、(2)より一般的には
>、全くnullでないものもマイナスと書いていいのではという2点だったのですが。
>確かに、Red Bookには、"Absence of a particular locus" とありますが、ハエの
>世界の中だけでも、これを染色体の欠失と考えるべきなのか、どなたかはっきりした
>ことを教えていただけませんか(山本雅敏先生をご指名させていただくのが適当かと
>存じますが)?

ハエのalleleの記載法しか頭になかったので、これを機会に、95年にTrends in Gene
tics の付録でついてきた、 genetic nomenclature guide という冊子を引っぱり出
してきて、ほかの生物のルールも見なおしてみました。ざっと目を通しただけなので
見落としや勘違いがあるかもしれませんが、わかったのはwildtypeを+で表すという
のはほとんどの生物で共通していますが(植物、chick(ヒトも?)を除く)、ーの
使用法が規定されているものはほとんどないということです。ーが使われる例は、ba
cteria 、yeastやArabidopsis の mutant phenotype を表す場合(allele の表記と
しては許されていない)、Chlamydomonas のmating type を表す場合(mt+ vs mt-)
、zebra fish の mutant allele を表す場合、ショウジョウバエの locus が欠失(
で言葉が不適当なら、不存在? 原文は、absence。でも欠失でないabsenceって?)
している状態を表す場合(特定のalleleを示すものではない)などだけで、ほかの多
くの生物ではーは表記法として出てこないか、alleleの表記に使わない旨が書かれて
いるかです。

従ってーがlocusの欠失を表すのは、やはりショウジョウバエだけに当てはまるルー
ルだったようです。nullでなくてもーで表すというのは、zebra fish ではふつうの
ようですね。とにかく、ーの使われ方が生物によっていろいろだということで、遺伝
学一般に通用するルールはないようです。思うに、遺伝子の機能が失われている状態
をーで表すというのは実は、慣習的、便宜的なものであってauthentic なやり方では
ないのでしょう(「仮にこの状態をAと置く」といったようなもので)。

このMLには、ショウジョウバエ以外の生物を扱っておられる(扱っておられた)方も
多数参加されておりますので、いろいろな種での実際のところをお聞きかせ願えれば
幸いです。

さて、吉原さんのおっしゃる、
At 9:04 AM 6/23/99 +0900, Moto Yoshihara wrote:
>群馬大学行動研の吉原です。
(略)
>りませんでしたので、この機会に是非勉強させていただこうと思います。「この種の
>記号ならびに用語は遺伝子産物に関して十分な理解が得られる以前に使われていたも
>のなので、かなり曖昧に使用されており、nullでなくてもマイナスを使用することも
>あった。」というのが私の理解で、手元の教科書で、そのような書き方がされている
>ものが実際にあります。従二さんはご専門で確信を持っておられるようなので、はっ

これは、かつてそういうこともあったが今は違うという含みがあるようにもとれます
が、その教科書の文脈ではどうなっているのでしょう。少なくとも、積極的に「null
でないalleleもーで表しましょう」と言っているのではないですよね。

それはさておき、zebra fish のような例があることを知った今ではやや自信がない
のですが、私は、ーは多くの場合、nullやamorphを便宜的に表すために使われている
と信じています(啓さんのあげた例1)。私も「nullでなくてもーが使用されること
もある(あった)」という見解に異議を唱えるものではありません。しかし、それは、

1.そのときの分析精度ではnullであると思われたけれど、後に本当はnullでない事
がわかったとか、
2.遺伝学的にはamorphだが、分子レベルでは全く機能的産物がないわけではなかっ
たとか、
3.痕跡的な機能は残っているかもしれないけど、少なくとも注目している形質には
何ら positive な影響をあたえないのであえてnullと見なしたとか

いった場合(意味が重複しているかな)をさして言っているのじゃないかと思うんで
す。ですから、場合によっては啓さんの例2は含まれるかもしれないけれど、最初か
らhypomorphだとわかっているものもや、ましてneomorph、hypermorphにあたるもの
(例3)までーで表されることはないというのが啓さんの投稿に対するコメントの主
旨です(この辺はご理解いただけていると思いますが)。
***********************************************************
Naoto JUNI, Ph.D.  従二 直人  (じゅうに なおと) 
Yamamoto Behaviour Genes Project, ERATO, J.S.T.
c/o Mitsubishi Kasei Institute of Life Sciences
11 Minamiooya, Machida-shi, Tokyo 194-8511, JAPAN
194-8511 東京都 町田市 南大谷 11 三菱化学生命科学研究所内
科学技術振興事業団 ERATO 山元行動進化プロジェクト
(phone) 042-721-2334 (fax) 042-721-2850
(E-mail) njuniアットマークfly.erato.jst.go.jp
***********************************************************


===================================

From: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous
Date: Thu, 24 Jun 1999 13:58:22 +0900

Reply to the mail from Moto Yoshihara
arrived on 1999/06/24 13:08:33 +0900 about [Jfly] heterogygous versus hemizygo
us.

国立遺伝学研究所の堀田凱樹です。

>群馬大学行動研の吉原です。
>
>ちょっとこだわりますが、「恣意的」はDavid Suzukiらの教科書、An Introduction
>to Genetic Analysis(Freeman社。私は気に入っています。院生諸氏にもお薦めしま
>す。)にしつこくarbitrary, arbitraryと書いてあるので、"arbitrary"を訳したの
>が「恣意的」でした。学生に説明するときに「優性劣性は任意だ」というのも間がわ
>るいので、「優性劣性は恣意的な概念だ」という調子でやってたのですが、布山先生
>ならどう訳されるのか教えていただけたらうれしいです(ご指名ばかりで恐縮ですが
>、)。

 前に書いたように優勢劣性の概念は操作論的に定義されたものです。恣意的とか
arbitrary というのは不適当なのでは?

 操作的に定義された遺伝子の概念の最たるものは、Benzer による cistron, recon,
Muton などです。もっとも cistron 以外はほとんど使われませんが。

 操作論的な定義ですから、何を「表現型」としたのか、どういう判定基準によるのか

どういうかけ合わせか、場合によってはどういう遺伝的背景で実験したか、などを明確
に定義しないといけないことになります。また、優性劣性は遺伝子そのものの性質だと
いう訳にはいかないということになります。(同じ遺伝子がある表現型については優性
だが、他の表現型については劣性など)

 ついでですが、X染色体の不活性化がおきる哺乳類などでは、X-linked の遺伝子に
ついては本当は優劣をいうのは不適当と思います。赤緑色盲は劣性と書いてある本がよ
くありますが、どういうもんでしょうか。ヘテロ♀網膜の錐体はモザイクになっていて、
個々の錐体は正常か異常になっています。その♀は実は網膜の一部しか正しい色が見え
ていないのですが、(生まれつきこんなものと思っているせいか)正常と見なされます。
網膜の細胞系譜は一般に放射状になっているので、網膜中心部には高い確率で正常細胞
もあるので、仮に色覚検査をしても目玉をうまく動かして正しい色の見える部分を使っ
ているのでしょう。このような遺伝子を何と呼ぶか、だれかご存じなら教えてください。
検査で正常なら「操作論的定義」で劣性と呼ぶのを許しておいてよいのでしょうか。

堀 田 凱 樹
-----------------------------------------------
堀田凱樹 (ホッタ ヨシキ)
国立遺伝学研究所 所長・総合研究大学院大学 教授
〒411 静岡県三島市谷田 1,111
電話: (0559) 81-6700, FAX: (0559) 81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
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Date: Thu, 24 Jun 1999 16:15:31 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 13:58 06/24/99 +0900, yhottaアットマークlab.nig.ac.jp wrote:

> ついでですが、X染色体の不活性化がおきる哺乳類などでは、X-linked の遺伝子に
>ついては本当は優劣をいうのは不適当と思います。赤緑色盲は劣性と書いてある本がよ
>くありますが、どういうもんでしょうか。ヘテロ♀網膜の錐体はモザイクになっていて
>、
>個々の錐体は正常か異常になっています。その♀は実は網膜の一部しか正しい色が見え
>ていないのですが、(生まれつきこんなものと思っているせいか)正常と見なされます
>。
>網膜の細胞系譜は一般に放射状になっているので、網膜中心部には高い確率で正常細胞
>もあるので、仮に色覚検査をしても目玉をうまく動かして正しい色の見える部分を使っ
>ているのでしょう。このような遺伝子を何と呼ぶか、だれかご存じなら教えてください
>。
>検査で正常なら「操作論的定義」で劣性と呼ぶのを許しておいてよいのでしょうか。

哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外というの
が正しい扱いではないでしょうか。

昔のMcKusickのカタログでは、常染色体上の変異は優性と劣性に分けて
カウントされていましたが、X染色体上のは分けていませんでしたね。
私は、こういう見識によるものと(勝手に)解釈しておりました。

OMIMのサマリーでは、常染色体の変異も分類されていません。当然
のことですが。
--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 24 Jun 1999 18:50:53 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] heterozygous on X chromosome

教育的指導、ありがたく承りました。

At 1:58 PM +0900 99.6.24, yhottaアットマークlab.nig.ac.jp wrote:

>  ついでですが、X染色体の不活性化がおきる哺乳類などでは、X-linked の遺伝子に
> ついては本当は優劣をいうのは不適当と思います。赤緑色盲は劣性と書いてある本がよ
> くありますが、どういうもんでしょうか。ヘテロ♀網膜の錐体はモザイクになっていて
> 、
> 個々の錐体は正常か異常になっています。その♀は実は網膜の一部しか正しい色が見え
> ていないのですが、(生まれつきこんなものと思っているせいか)正常と見なされます
> 。
> 網膜の細胞系譜は一般に放射状になっているので、網膜中心部には高い確率で正常細胞
> もあるので、仮に色覚検査をしても目玉をうまく動かして正しい色の見える部分を使っ
> ているのでしょう。このような遺伝子を何と呼ぶか、だれかご存じなら教えてください
> 。
> 検査で正常なら「操作論的定義」で劣性と呼ぶのを許しておいてよいのでしょうか。

赤緑色盲のヘテロ♀の場合、網膜上に正常・異常のヘテロな細胞が混在している
けれど、眼という組織レベルでは正常(ほぼ正常と言うべき?)に機能している
わけですが、たとえば常染色体上にあるレセプター分子遺伝子の異常による劣性
の表現型では、ヘテロ接合では細胞膜上に正常・異常のヘテロなタンパク分子が
混在しているけれど、細胞レベルでは正常(ほぼ正常と言うべき?)に機能して
いるわけですから、色盲の場合とは1段階「ミクロさ」がずれているだけですね。
赤緑色盲を劣性と呼ぶのを許すべきかどうかは、正常異常の表現型というのを必
ず細胞レベルでとらえるべきなのか、組織・個体レベルでとらえても構わないの
か、という問いに置き換えられるのではないでしょうか。

色盲の場合、正常・異常の細胞がモザイクとして画然と分割固定して保持されて
いますからちょっと不自然な気もしますが、血球細胞の異常で、ヘテロ♀では
正常・異常の細胞が血液内には入り混じっているから全体として機能に異常がな
い、というような突然変異があるとしたら(本当にあるかどうか知りませんが)、
そういう変異を「劣性」と呼ばれても、思わず納得してしまいそうな気がします。


話はずれますが、個人的には、左右の眼のうちどちらかの視細胞が全部変異型、
他方が野生型というモザイクになった女性に是非お会いしてみたいです。いった
いぜんたい見え方がどう違うものなのか、聞かせて欲しいです。でも色覚検査を
する際、ちゃんと片目づつ調べてくれることはほとんどないですから、このよう
なモザイクの人も、「正常」に分類されてしまっているのでしょうね。ちょっと
残念です。

いとうk


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Date: Thu, 24 Jun 1999 13:17:23 +0000
From: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp (Murata, RIKEN Tsukuba)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

村田アットマーク理研です。

>ここらで少なくとも、「遺伝子」だけにでもきっちりした定義を与えられないもので
>しょうか?両者の混在は本当に学生の理解を妨げていると思います。 

定義についての言及ではなく、「学生の理解を妨げている」についての言及ですが..
..............

遺伝という現象が存在するがその実体を担う「モノ」が何であったかがわから
なかった昔の話から始めればいいのではないでしょうか?
しかし、概念的な思考に慣れていないと、さらに混乱するかもしれませんが。
ぼくの理解では「遺伝子=遺伝を担う因子」です。
遺伝と染色体の挙動の因果関係が明らかにされ、染色体上に遺伝子が存在することが
推測され、この研究の発展が現在の「遺伝子=DNA」という認識になったのだと思い
ます。
「遺伝子座」は遺伝子の存在する場所(座)という理解になります。
これでいいですか?

以上、ぼくの認識でした。これに関する出典は、今は思い出せません。

で、この話をするときにいつも思い出すのが、「鏡の国のアリス」のなかで
騎士とアリスがある歌についての話をする場面です。
これも今ここにかければいいのですが、資料が手元にありませんので、省略します。
その歌はイギリスの民謡のようなのですが、その歌を呼ぶ呼び方と、歌の題名と、
歌の題名をどう呼ぶのかについて、騎士が説明をしています。

//
Takehide MuraTa Ph. D.
e-mail: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp
personal HP: http://ac3.aimcom.co.jp/~tmurata/fly/
phone: +81-298-36-3612, fax: +81-298-36-9120

Tsukuba Life Science Center,
The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN)
Tsukuba Science City, Ibaraki 305-0074, Japan.
>>>> Japanese Address <<<<
村田 武英
305-0074 茨城県 つくば市 高野台 3-1-1
理化学研究所 ライフサイエンス筑波研究センター
//


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Date: Thu, 24 Jun 1999 23:48:04 +0900 (JST)
From: ryuアットマークpo.cc.yamaguchi-u.ac.jp (Ryutaro Murakami)
Subject: [Jfly] heterozygous on X chromosome

山口大、村上です。
網膜のモザイキズムの話題で、昔の仕事を思い出しました。
かつて、精巣性女性化症というX染色体上の突然変異マウス(Tfm:雄性ホルモン受容
体の欠損)で生殖器の雄性ホルモン感受性を調べていました。Tfm の雄では精巣はあ
るけれども外部生殖器が雌型となります。従ってTfmホモの雌は存在せず、系統の維
持は Tfm ヘテロ雌を選別して行います。当時同僚だった武田洋幸氏(現ゼブラ屋、
遺伝研)が、ヘテロ雌胎児の前立腺原基(ちゃんとあるのです)の間充織で雄性ホル
モン結合細胞をオートラジオグラフィーで検出したところ、ホルモン受容体を持つ正
常細胞と変異細胞が均質に入り交じっていました。網膜でのモザイキズムが細胞系譜
を反映した放射状のパターンを維持できるのは、前立腺間充織とは異なって上皮細胞
特有の接着性で細胞の混合が制約されるからでしょう。前立腺では間充織が上皮に対
して雄性ホルモン依存性の誘導作用を示すので、ヘテロ雌胎児に雄性ホルモンを投与
した場合の反応の表現型は込み入ったものになると予想されます。優性、劣性などの
用語はここでは当てはめにくいと思います。現象の理解が精緻になれば、それ以前に
は有効だった用語、定義、概念が力不足ないし不適切になる、ということなのでしょう。

******************************************************************
Ryutaro Murakami, Dr.Sci  

Department of Physics, Biology and Informatics
Faculty of Sciences 
Yamaguchi University   
Yamaguchi 753,
Japan

TEL: 0839-33-5696, 5707
FAX: 0839-33-5696
E-mail:ryuアットマークpo.cc.yamaguchi-u.ac.jp
******************************************************************


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Date: Fri, 25 Jun 1999 02:59:29 +0900
From: Takuma Yamada
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

やまだ@いでんけん です。

このツリーはもはや社会現象と化しつつあるようですが、堀田先生の2つ目のメール
は2つの点で間違っていると思いますので二言。

1)
> >  前に書いたように優勢劣性の概念は操作論的に定義されたものです。恣意的とか
> arbitrary というのは不適当なのでは?

まずこの文ですが私は吉原さんあるいは訂正後の布山先生がおっしゃるように
arbitraryという言葉が不適当だとは思いません。
堀田先生は
> 優性 vs.劣性というのはメンデルの定義で、これは操作論的(operational)な
> 定義だということです。従って、どういう実験でどんな表現型について判定する
> のかを合わせてのベル必要があります。
とか、あるいは
>  操作論的な定義ですから、何を「表現型」としたのか、どういう判定基準によるのか
> どういうかけ合わせか、場合によってはどういう遺伝的背景で実験したか、などを明確
> に定義しないといけない
という言葉を書いておられましたが、吉原さんが強調したいことはここで
「どういう実験でどんな表現型について判定するのか」という部分がarbitraryなも
のである、 というふうに私は理解しています。したがってarbitrary という言葉が
操作論的 という言葉と相容れないとは思いません。ところで恣意的という訳語は確
かにそうかと思いますが、いまどきの学生が聞いて分かってくれるんですかね。吉原
さんがんばってください。

2)
>  ついでですが、X染色体の不活性化がおきる哺乳類などでは、X-linked の遺伝子に
> ついては本当は優劣をいうのは不適当と思います。赤緑色盲は劣性と書いてある本がよ
> くありますが、どういうもんでしょうか。
> 検査で正常なら「操作論的定義」で劣性と呼ぶのを許しておいてよいのでしょうか。

このコメントに対しだれもはっきりと反論する人がいないようなのが不思議です。赤
緑色盲に関しては「どういう実験でどんな表現型について判定するのか」という部分
に関し、多少のバリエーションはあるでしょうが社会的にまた国際的に 認められた
一般的な判定法があり、その検査に従う限りほとんどのヘテロの女性はパスするとい
う現実がある場合、それが「操作論的定義」に基づいて、劣性(またはほぼ劣性)で
あるといって全く問題ないと思います。
1)で述べたように優劣の判定法は無数にあるでしょうし、 そのおのおのの判定法
に対し、優勢劣性ががらがら変わる事は鎌型赤血球貧血症に関し布山先生が出した例
をあげれば十分でしょう。私がいいたいことは色盲の判定法にはスタンダードがあり
、それに基づいて赤緑色盲を劣性ということは、一向にかまわない。ただし、それは
別の判定法で優劣が決められなくなる可能性を否定するものではない、ということで
す。
従って布山先生の「哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外 と
いうのが正しい扱いではないでしょうか。」というコメントに関しては同意いたしか
ねます。もちろんどなたでも私の解釈の間違いを 指摘していただければよろこんで
拝聴させていただきます。

Alta Vista でcolor NEAR blindness NEAR recessive で探すと重複も多いですが1
32件のヒットがありそのうちかなりのページで
Colour blindness is the result of a recessive X-linked gene. とか
X-linked red-color blindness is a recessive trait.
というようなことを言っています。その中でUniversity of Arizonaが作っている
The Biology Project の一環のColor Blindness Problem Set
http://www.biology.arizona.edu/human_bio/problem_sets/color_blindness/
intro.html
は良くできていると思います。homo, hetero, hemi の復習にいかがですか。


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Date: Fri, 25 Jun 1999 11:17:12 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。

締め切りをすぎた報告書やらなんやらで追い立てられてる状況なので、正直言ってこ
の議論ちょっと疲れてきたのですが、山田さんがせっかくご助言くださいましたので
、手短にもう一言。

前にご紹介いたしましたDavid Suzukiさんたちが書かれたText Bookには、

Sickle-cell anemia illustrates that the terms incomplete dominance and
codominance are somewhat arbitrary. The type of dominance depends on the
phenotypic level at which the observations are being made--organismal,
cellular, or molecular.

と、あります。

私は浅学の故、堀田先生にご指摘いただくまで、この表現が不適当であることを気づ
かず、明快な説明だと関心してしまっていましたし、いまだに理解できないでいます

そこで堀田先生にお願いなのですが、この"arbitrary"がどういう根拠でどのように
不適切なのか教えていただけないでしょうか?確かに、「操作論的な」という表現の
方が実際をより反映しているようには思えますが、この教科書は学生用の入門書なの
で、ちょっと不適切でもより口語的な表現を使いたかったのでは、と今の所は考えて
います。私が教えるときも、恣意的なと言うだけではわかりにくいので、そのあとに
「勝手に決めてよいけれども、基準をしっかりと決めなければならない」という説明
をしています。これもすこぶるいい加減な言葉の使い方で、お叱りもあるかとあるか
と思いますが、遺伝学を専門としない学生の一般教養としては、そのほうが「操作論
的な」といっておちこぼれをだすよりましかという判断でした。

いまさら「大学院時代の教育の追加」をお願いするのもずうずうしいとは存じますが
、他の方々の勉強にもなると思いますので、堀田先生、よろしくお願いします。
****************************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
****************************************


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Date: Fri, 25 Jun 1999 15:12:51 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 02:59 06/25/99 +0900, Takuma Yamada wrote:

>従って布山先生の「哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外 と
>いうのが正しい扱いではないでしょうか。」というコメントに関しては同意いたしか
>ねます。もちろんどなたでも私の解釈の間違いを 指摘していただければよろこんで
>拝聴させていただきます。

あらためてOMIMを見てみたのですが、常染色体の変異については、
優性、劣性が記述されているのですが、X染色体の場合は、やはり記述
がないようです。TEXTには記述されていることもありますが、CLINICAL
SYNOPSIS の項では、私の見た範囲では、例外なく、X-linkedとしか書か
れていませんでした。

この理由を説明したような文書は見つけることはできませんでした。なぜ
こういう扱いになっているかのか、どなたかご存じでしたら、教えて下さ
い。

>Alta Vista でcolor NEAR blindness NEAR recessive で探すと重複も多いですが1
>32件のヒットがありそのうちかなりのページで
> Colour blindness is the result of a recessive X-linked gene. とか
>X-linked red-color blindness is a recessive trait.
>というようなことを言っています。その中でUniversity of Arizonaが作っている
>The Biology Project の一環のColor Blindness Problem Set
>http://www.biology.arizona.edu/human_bio/problem_sets/color_blindness/
>intro.html

X染色体上の変異に対して、劣性とか優性とかいった記述が現実に多数
存在することは否定しませんし、かく申す私自身も使いますが、本来は
やはりおかしいのではないかというつもりでした。


--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Fri, 25 Jun 1999 21:03:01 +0900
From: Takuma Yamada
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

布山先生

お返答ありがとうございました。指摘されて初めてOMIMを開けてみました。
と言う訳できちんと見ているかどうか自信がないのですが、一応私の見解を下にしる
します。

1)
> あらためてOMIMを見てみたのですが、常染色体の変異については、
> 優性、劣性が記述されているのですが、X染色体の場合は、やはり記述
> がないようです。TEXTには記述されていることもありますが、CLINICAL
> SYNOPSIS の項では、私の見た範囲では、例外なく、X-linkedとしか書か
> れていませんでした。

OMIMサイトとして
http://www3.ncbi.nlm.nih.gov/Omim/searchomim.html
をあけClinical Synopsisをクリックしたあと
X-linked recessiveでサーチをかけると147件ヒットしClonical Synopsis
のなかに
313200: X-linked recessive (Xq12, increased CAG repeat number)
302950: X-linked recessive milder form has cerebral involvement
X-linked dominant form lethal in hemizygous males
300009: X-linked recessive
などの例を容易に見つける事ができました。従ってX-linked recessiveという用語が
OMIMでは使われないということはないと言っていいと思います。
> 哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外というの
> が正しい扱いではないでしょうか。
という意見にはやはり納得致しかねます。

2)ただ、その間に気がついたのですが、当然のことですが同じ遺伝子でもアリルに
よってrecessive, dominantがあることがしばしばあって例えば308100などには
X-linked dominant ichthyosisとX-linked recessive ichthyosis 両方があるようで
す。またたとえrecessive でもアリルによって症状の判定法が異なったりすることも
容易に予想されますのでその場合はClinical SynopsisにはっきりX-linked
recessiveと書く事ができないケースが多々あると思います。しかしアリルを限定し
、症状の判定法が確立している場合recessive, dominantを使うことは問題ないと私
は理解します。そしてそれがTEXTに使っていてもCLINICAL SYNOPSISには書かれてい
ないことが多い理由の少なくとも一つではないかと私は推察します。また生物の常と
してまれに例外的な現象がありますのが、(その一例は(4)を御覧下さい。)研究
が進めば進むほど例外がでてくるのはなにも色盲遺伝子に限らないと思います。
いずれにせよこれが
> この理由を説明したような文書は見つけることはできませんでした。なぜ
> こういう扱いになっているかのか、どなたかご存じでしたら、教えて下さい。
に対する私なりの意見です。

3)以上は色盲とは直接関係ない話でしたが303800 COLORBLINDNESS, PARTIAL,
DEUTAN SERIES; CBDがいわゆる赤緑色盲のことを言っているのだと思います。しょっ
ぱなから話がそれますがこの色盲のそもそもの発見者は分子量表記にいまだに顔をだ
す物理学者として有名なDalton (born 1766, died 1844)であることは知る人ぞ知る
事実です。(興味があれば文末も御覧下さい。ちょっといい話です。)話をもとに戻
しますと、TEXTの中にThe characteristic X-linked recessive pedigree pattern
of colorblindness was probably first pointed out by Swiss ophthalmologist
Horner in the 1870s.という記述があり要するにこの赤緑色盲のすべてではないにし
ろ、典型的な大多数の赤緑色盲の家系はX-linked recessiveに従って遺伝するといっ
てよいと私は解釈します。しかしこの典型的な遺伝に従わない一部の家系がある可能
性は否定しません。

4)しかし、それでもまれにヘテロの女性が判定をパスできない例があることは前の
メールでも指摘しました。(それが「ほぼ劣性」といった理由です。)その原因の一
つとしておそらく堀田先生も興味あるかと思われる事例が同じTEXTの中に紹介されて
いましたのでここに紹介します。
Jorgensen et al. (1992) studied 2 female monozygotic twins who were
obligatory heterozygotes for X-linked deuteranomaly associated with a
green-red fusion gene derived from their deuteranomalous father. On
anomaloscopy, however, one of the twins was phenotypically deuteranomalous
while the other had normal color vision. The color vision-defective twin had
2 sons with normal color vision and 1 deuteranomalous son. Using a
methylation-sensitive probe, M27-beta, for differentiating the active and
the inactive X chromosomes, Jorgensen et al. (1992) showed that the skin
cells of the color vision-defective twin had almost all paternal X
chromosomes with the abnormal color vision gene as the active one, thereby
explaining her color-vision defect. In contrast, a different pattern was
observed in the skin cells from the woman with normal color vision; her
maternal X chromosome was for the most part the active one. However, in
blood lymphocytes, both twins showed identical methylation patterns with
mixtures of inactivated maternal and paternal X chromosomes. Deuteranomaly
in one of the twins was explained by extremely skewed X inactivation, as
shown in skin cells. Failure to find this skewed pattern in blood cells was
explained by the sharing of fetal circulation and exchange of hematopoietic
precursor cells between twins. They reviewed other cases of monozygotic
twins in which only one was affected by this particular disorder and cited
an example of female MZ triplets in which only one had deuteranomaly (Yokota
et al., 1990).

5)結局私は
>本来はやはりおかしいのではないかというつもりでした。
という先生の真意がいまだに理解できません。ただ初めにのべたようにOMIMを見
たのは初めてなのでもし考え違いがあれば指摘を賜れば嬉しいです。

6)最後に
http://www.hiten.himeji-tech.ac.jp:8080/chem/omeme16.html
からの文を引用させていただきます。

水が水素と酸素の原子からなる過程を説明しようとしたドルトンは後に分子の理論を
提唱したアボガドロと対立しますが,近代化学に原子の概念を持ち込んだ大御所であ
り,イギリスの偉大な化学者の一人でもあります。6人兄弟の貧しい家に生まれたド
ルトンは兄ジョナサンと共に苦学して数学と自然科学の教師として務めていました。
ドルトン26才の時に兄と貯めたお金で愛する母親の誕生日のお祝いに靴下を贈った
のです。母親の喜ぶ顔を期待していた兄弟に母親は無惨にもこんな派手な靴下は穿け
ないと突き返すのです。兄弟は動揺します,折角母親に似合うと思って買ってきた靴
下は決して派手ではなく,母親の年齢に合った落ちついた茶色に見えていたのだから
です。 この動揺に冷静に対処したドルトンはやがて「色盲」と言う論文を出しこれ
が大評判となって前述の旅客船の座礁事故の調査にまでつながって行くのです。英語
で赤緑色弱をDaltonismと呼ぶのはここからなんです。さて,日本の大学の
入試の時に成績は抜群だが色弱がある学生をどうするかと入 試委員会で問題となっ
た時に,たった,一言「ドルトンも色弱だった。」と述べたらみなうなずいて入学を
認めたと東大の渡辺正雄教授が書いておられました。 大学人とはこうでないとなら
ないと思いました。


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From: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous
Date: Fri, 25 Jun 1999 22:10:04 +0900


吉原さんのメールへの私の考えを手短に示します。
なお、会議や出張で多忙で、これ以上この議論に加わる余裕がないので、
すみませんが、今後は多分書けないと思いますので、お許しください。

布山さん、必要があったらフォローをお願いします。

Reply to the mail from Moto Yoshihara
arrived on 1999/06/25 11:17:12 +0900 about [Jfly] heterogygous versus hemizygo
us.

>前にご紹介いたしましたDavid Suzukiさんたちが書かれたText Bookには、
>
>Sickle-cell anemia illustrates that the terms incomplete dominance and
>codominance are somewhat arbitrary. The type of dominance depends on the
>phenotypic level at which the observations are being made--organismal,
>cellular, or molecular.
>と、あります。
>
>私は浅学の故、堀田先生にご指摘いただくまで、この表現が不適当であることを気づ
>かず、明快な説明だと関心してしまっていましたし、いまだに理解できないでいます

>そこで堀田先生にお願いなのですが、この"arbitrary"がどういう根拠でどのように
>不適切なのか教えていただけないでしょうか?確かに、「操作論的な」という表現の
>方が実際をより反映しているようには思えますが、この教科書は学生用の入門書なの
>で、ちょっと不適切でもより口語的な表現を使いたかったのでは、と今の所は考えて
>います。

 私は優性・劣性の概念が arbitrary だと言われたと思ったので前回の回答をした
のですが、上の英語は incomplete dominance, codominance という術語が somewhat
arbitrary といっているので意味が違っていました。これらは、メンデルが操作的な
概念として(第一次近似として)スカッと割り切ったのを第二次近似にまで踏み込んだ
ものですから somewhat arbitrary になるのは当たり前で、それは結構です。しかし、
だから優性・劣性の概念が arbitrary というわけではありません。また、somewhat
という形容をつけて訳さないのは誤りだと思います。(1) not arbitrary, (2) some-
what arbitrary, (3) arbitrary と並べると、(2)は(3)より(1)に近いという風に
私は解釈しますが、どうですか? また日本語の「恣意的」という言葉の語感は、「気ま
ぐれに意図的に」というニュアンスがあるように私には思われ、英語の arbitrary と
少し違うようにも聞こえます。もっとも私の語学力は怪しいので、この点はあまり主張
しません。

 要するに優性劣性の概念が恣意的だというのには反対ですが、David Suzukiの文章は
全く問題ないと思います。

>私が教えるときも、恣意的なと言うだけではわかりにくいので、そのあとに
>「勝手に決めてよいけれども、基準をしっかりと決めなければならない」という説明
>をしています。これもすこぶるいい加減な言葉の使い方で、お叱りもあるかとあるか
>と思いますが、遺伝学を専門としない学生の一般教養としては、そのほうが「操作論
>的な」といっておちこぼれをだすよりましかという判断でした。

 それでもよいと思いますが、「恣意的」という言葉が、「いいかげん」という思いを
学生に与えることが心配です。遺伝学ほど「いいかげんさ」の少ない分野は生物学では
珍しいと思っていますので。生物学と遺伝学との関係は、自然科学と物理学との関係と
「相似」だと思います。(だから国立遺伝学研究所が大事なんだよ〜ん)

吉原君、こんな回答でよいでしょうか。今後はこの議論はe-mail上では行う時間的余裕
がないと思います。よろしく。

堀 田 凱 樹
-----------------------------------------------
Yoshiki Hotta, Director-General & Prof.
National Institute of Genetics
Mishima, Shizuoka 411-8540 Japan
Tel: +81-559-81-6700
Fax: +81-559-81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
-----------------------------------------------


===================================

From: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous
Date: Fri, 25 Jun 1999 23:25:12 +0900

Reply to the mail from Takuma Yamada
arrived on 1999/06/25 02:59:29 +0900 about [Jfly] heterogygous versus hemizygo
us.

やまだ@いでんけん さんの疑問(の一部)への回答です。
なお、多忙のため、これ以上は本件の E-mail 討論に加われませんのでご了解く
ださい。

>1)
>> > 前に書いたように優勢劣性の概念は操作論的に定義されたものです。恣意的とか
>> arbitrary というのは不適当なのでは?
>

この件は別便の吉原さんへの回答に述べました。吉原さんの示した原文には「優性・劣
性」が「arbitrary」と書いてあるのではなくて「共優性」が「somewhat arbitrary」
と書いてあるので、それは問題ありません。ただし、「恣意的」という日本語は「意図
的に曲げることが出来る」「いいかげん」の語感が私には感じられるので、この場合で
も訳として当てるのは不適当と思います。


>2)
>> ついでですが、X染色体の不活性化がおきる哺乳類などでは、X-linked の遺伝子に
>> ついては本当は優劣をいうのは不適当と思います。赤緑色盲は劣性と書いてある本
>> がよくありますが、どういうもんでしょうか。
>> 検査で正常なら「操作論的定義」で劣性と呼ぶのを許しておいてよいのでしょうか

>
>この(堀田の)コメントに対しだれもはっきりと反論する人がいないようなのが不思
>議です。

> 中略

>従って布山先生の「哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外 と
>いうのが正しい扱いではないでしょうか。」というコメントに関しては同意いたしか
>ねます。もちろんどなたでも私の解釈の間違いを 指摘していただければよろこんで
>拝聴させていただきます。

  優劣の概念の適用外というのがまさに私の言いたいことです。
「許しておけない」のは、優性劣性という言葉の定義の中に、対立遺伝子が一個の細
胞の中で働くということが暗黙に了解されているからです。それを複数の遺伝子型の
細胞がモザイクに混じった個体の全体の表現にまで広めると、そのメカニズムを考え
る時に、「X染色体関連の場合は別途かんがえるとして・・・・」といちいちいわな
いとならなくなるから困ると思うんです。むしろ、メンデルが定義した際には知らな
かったX不活性化がかかわるX関連遺伝子については、優性劣性の概念は当てはめな
い事とすべきだと思います。それをまもっている文献はたくさんありますが、時折、
学生用の教科書などに記載があるので、昔からまずいと思っています。いくら操作論
的定義といっても、メカニズム的に違うことが分かっている場合は、それに基づく
混乱を出来るだけ避けるべきだと思います。

 最初にも述べましたが、この議論にこれ以上使う時間がないので、今後は回答しま
せんがあしからず。

堀 田 凱 樹
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Yoshiki Hotta, Director-General & Prof.
National Institute of Genetics
Mishima, Shizuoka 411-8540 Japan
Tel: +81-559-81-6700
Fax: +81-559-81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
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Date: Sat, 26 Jun 1999 11:35:50 +1000
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

At 21:03 06/25/99 +0900, Takuma Yamada wrote:

>http://www3.ncbi.nlm.nih.gov/Omim/searchomim.html
>をあけClinical Synopsisをクリックしたあと
>X-linked recessiveでサーチをかけると147件ヒットしClonical Synopsis
>のなかに
>313200: X-linked recessive (Xq12, increased CAG repeat number)
>302950: X-linked recessive milder form has cerebral involvement
> X-linked dominant form lethal in hemizygous males
>300009: X-linked recessive
>などの例を容易に見つける事ができました。従ってX-linked recessiveという用語が
>OMIMでは使われないということはないと言っていいと思います。

えー、そんなに出てきましたか(*_*)  私は、Clinical Synopsis全体に
サーチをかけるといううまい手は思いつきませんでしたので、赤緑色盲、
血友病、DMDといった典型的なのをみただけでした。

したがって、この部分については、前言撤回ですが、McKusickのカタログ
では、X染色体の変異について、優劣を区別していなかったことは事実で
すので、これがどのような理由によるのかは依然興味があります。

>> 哺乳類のX染色体上の変異に関しては、優劣の概念の適用外というの
>> が正しい扱いではないでしょうか。
>という意見にはやはり納得致しかねます。

前に書いたように、優劣の概念は、表現型と遺伝子型の関係を表わすも
のと理解しています。哺乳類のX染色体の遺伝子の場合、表現型の定義
は、モザイシズムという厄介な問題があるにしても、見方次第ではクリ
アーできると思います。問題は、遺伝子型をどうやって定義するかです。
相同染色体の一方がリタイアーしている状態を、はたしてヘテロ接合体
と呼べるのかどうかということです。

とはいうものの、法律論ではありませんから、用語の定義にあまりこだ
わっても仕方がないと思います。内容の理解に食い違いがあるわけでは
ありませんので。適用外を強硬に主張して、仮に高校の教科書を書き換
えるといったことになると、混乱に輪を掛けることになりかねません。

ただ、Xの不活化(あるいは、遺伝子量補正一般)は高校でも教えた方
がいいと思っています。補足遺伝だの中間遺伝だのといったことを教え
るよりはましではないでしょうか。




--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Sat, 26 Jun 1999 18:21:13 +0900
From: Takuma Yamada
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

布山先生

最新のメールを読ませていただき、「内容の理解に食い違いがあるわけでは
ありません」ということで安心しました。布山先生のロジックは明晰で私に 理解で
きる言葉で書いて下さるので助かります。 昔の人が予想もしなかっ た現象がでてき
た場合、使用に関しては注意が必要ですがx-linked recessive に代わるmammalian
geneticsだけにしか通用しない新しい 用語を作る必要はないのでは。という私の考
えが許されない訳ではないよう なので、私としてはこれ以上議論を大きくするつも
りはありません。 もちろんMcKusickのカタログとかDavid Suzukiの教科書で
somewhat のついていないarbitraryの使用例はないのかとか謎はつきないのですが基
本的にお互いの言いたい事の共通点が見いだせたようなのでここで満足いたします。
この二日ばかりいろいろ勉強させていただきました。 有難うございます。

蛇足になりますがこの問題を提起したのは色覚異常の判定法が敏感すぎるの ではな
いかという声が広がりつつある現在の社会の趨勢のなかで、社会的に 色覚には全く
問題ないとされているヘテロの女性たちに対してまで彼女達の 網膜の一部は理論的
に色盲のはずだから正常人とは区別されるべきである。 ということをなんで声高に
言わなならんのや、というやや浪花節的な反発を感じてしまったからでした。(関西
弁の使い方間違えてたらごめんなさい。)

またよろしく御指導のほどお願い致します。

山田 琢磨 (Takuma Yamada)
〒411 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所 発生遺伝
TEL 0559-81-6809 (研究室)
0559-72-7989 (自宅)
FAX 0559-81-6768


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Date: Tue, 29 Jun 1999 08:29:36 +0900
From: Moto Yoshihara
Subject: [Jfly] heterogygous versus hemizygous

群馬大学行動研の吉原です。

堀田先生、お忙しいところ卒後指導ありがとうございました。

この本書いた人たちは"arbitrary"が好きなようで他の箇所でも、

Of course, the delineation of characters is somewhat arbitrary.

と使ってたりするので(またsomewhatですが)、私も気に入ってarbitraryを使って
たのですが、勿論、優性、劣性の定義自体はarbitraryではなく、各形質(character
)に関する着目の仕方がsomewhat arbitraryなので、私の言い方も少々misleadingで
あったように思います。私の気持ちとしては、今DNAの話とごちゃごちゃになってい
て、「遺伝子=DNA」と思っている人が多いので、実体としてのDNA自体が優性や
劣性なのだと誤解しないように、という思いが強くてちょっと極端な言い方になって
しまったかもしれません。もうちょっとよく表現法を考えてみます。

>  それでもよいと思いますが、「恣意的」という言葉が、「いいかげん」という思いを
> 学生に与えることが心配です。遺伝学ほど「いいかげんさ」の少ない分野は生物学では
> 珍しいと思っていますので。生物学と遺伝学との関係は、自然科学と物理学との関係と
> 「相似」だと思います。(だから国立遺伝学研究所が大事なんだよ〜ん)

学問そのものとしてだけでなく、今の時代、本当に遺伝学の知識が一般教養として非
常に重要になっていると思います。遺伝子治療、クローンの問題と、遺伝学的知識が
ないと国民が進むべき方向を決められない問題が山積みなのに遺伝学の正しい知識を
持っている人がインテリ層を含めて驚くほど少ないです(みんなメンデル、えんどう
豆、3対1は知ってるのですが)。ですから、堀田先生(他の偉い先生方にもお願い
します)、機会あれば、高校教育を変えるよう言っていただけませんか?私のような
チンピラが言ってもなかなか世の中聞いてくれないのです。前に思いあまって、(1
)教科書を改善する(2)大学入試にしょうもない計算問題をださない、の2点を提
案する文を朝日の論壇に投稿したのですが、rejectされてしまいました。その後朝日
の社説に、「遺伝子治療の倫理委員会のメンバーの多くが遺伝学の基礎知識がないの
は深刻な問題だ」ということが指摘してありましたので、民意として少しは反映され
たとは思いますが。

まだ従二さんの問いかけに答えておりませんし、まだ言いたいことあるのですが、私
もこれ以上議論を続ける余裕がなくなってしまいましたので(mailで議論するのはも
のすごく時間食いますね)、このへんで失礼します。従二さん、すみません。また研
究会ででも直接お会いしたときに議論いたしましょう。これ以上やってると「論文も
書かんで何しとんねん」という共同研究者からのお叱りがとんできそうなので。  
今回の議論はとても勉強になりましたので、諸先生方に感謝いたします。



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Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, JAPAN
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