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胚にインジェクションするときのプラスミド調製


Date: Thu, 24 Feb 2000 21:56:56 +0900
From: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp (Murata, RIKEN Tsukuba)
Subject: [Jfly] Plasmid prep for P mediated transformation.

村田アットマーク理研つくばです。

pUASTをembryoにinjectionするときに、CsClやカラムでscDNAを
調製してからですが、教えてください。

1. なぜそうしなければいけないのか?
2. アルカリ法で粗調製したplasmidではだめなのか?

//
Takehide MuraTa Ph. D.
e-mail: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp
personal HP: http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2002/
phone: +81-298-36-3612, fax: +81-298-36-9120

Tsukuba Life Science Center,RIKEN
Tsukuba Science City, Ibaraki 305-0074, Japan.
>>>> Japanese Address <<<<
村田 武英,研究員
305-0074 茨城県 つくば市 高野台 3-1-1
理化学研究所 ライフサイエンス筑波研究センター
//


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Date: Fri, 25 Feb 2000 19:56:36 +0900 (JST)
From: huedaアットマークlab.nig.ac.jp (Hitoshi Ueda)
Subject: [Jfly] Plasmid prep for P mediated transformation.

遺伝研、上田です。

>pUASTをembryoにinjectionするときに、CsClやカラムでscDNAを
>調製してからですが、教えてください。
>
>1. なぜそうしなければいけないのか?
>2. アルカリ法で粗調製したplasmidではだめなのか?
>

2. について

うちでは、最近は、アルカリ法(クラボウのプラスミド調整機)でとったプラスミド
をNH4OAc沈澱、RNaseA処理、ProteinaseK処理、PEG沈澱、Phenol-Chloroform抽出、
エタノール沈澱の順で精製して、インジェクションバッファーに溶かしたあと、Mill
iporeのサンプレッサー4(T)ーHVで濾過して使っていますが、問題はありませ
ん。インジェクションは、エタノール法でやっていています。針の違いがあるので、
CsClやQIAGENカラムで精製したものとの違いは、比較できませんが、効率が悪いとい
う印象は、ありません。、2サイクルもやると、いやというほど赤目のはえが出てく
ることもあります。もっと精製をさぼれるかどうかは、ためしていません。


上田 均
国立遺伝学研究所
形質遺伝研究部門

〒411-8540静岡県三島市谷田1111
TEL:0559-81-6774
FAX:0559-81-6776
email:huedaアットマークlab.nig.ac.jp


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Date: Fri, 25 Feb 2000 20:12:13 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Plasmid prep for P mediated transformation.

> 村田アットマーク理研つくばです。
>
> pUASTをembryoにinjectionするときに、CsClやカラムでscDNAを
> 調製してからですが、教えてください。
>
> 1. なぜそうしなければいけないのか?

・mRNA やタンパクの混入を最小限に抑えたい。

・キアゲンみたいなカラムだと、プラスミド DNA に微小なニックが入って
 しまい、効率が落ちるのであまり良くない。

という理由から、出来れば2回 CsCl で遠沈するのが一番いい、と昔言われ
ましたが、本当にこういう理由なのかは確認したことがありません。


> 2. アルカリ法で粗調製したplasmidではだめなのか?

これはパス。上田さんの話を読ませていただくと、mRNA やタンパクを酵
素処理で除くのでも、うまく行くみたいですね。

いとうκ


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Date: Mon, 28 Feb 2000 18:13:48 +0900 (JST)
From: njuniアットマークmn.waseda.ac.jp (Naoto JUNI)
Subject: [Jfly] Plasmid prep for P mediated transformation.

早稲田大学 山元研究室、従二です。所属変わりました。

> 村田アットマーク理研つくばです。
>
> pUASTをembryoにinjectionするときに、CsClやカラムでscDNAを
> 調製してからですが、教えてください。
>
> 1. なぜそうしなければいけないのか?
> 2. アルカリ法で粗調製したplasmidではだめなのか?


確かに教科書にはCsClやカラムで精製しろとは書いてあっても、「何のために」とい
う事を明確に論じているものは見たことがありません。話としては、Supercoiledで
なければ形質転換効率が悪いからだとか、RNAやタンパク質のコンタミが何か悪影響
を及ぼすからだ、といった見解は耳にします。しかし、高純度精製が要求される真の
理由であると私が信じるのは、粗精製では除去できない大腸菌由来の毒素(endotoxi
n、リポ多糖)や残留する毒性のある試薬(SDSなど)を取り除き、embryoのダメージ
を防ぐということです。

トランスフォーメーションを初めて手がけた頃に、泳動でチェックしてSupercoiled
がきれいに取れているなら通常のアルカリ/SDS法だけでも十分だろうと考えて、それ
以上の精製を省いてしまったことがありましたが、とにかく孵化率が悪すぎて実用的
でありませんでした。これは、プラスミド調製をCsCl法にしただけで劇的に改善され
た記憶があります。厳密な比較実験をしたわけではありませんので、ごくおおざっぱ
な話ですが、CsClで精製したプラスミドをインジェクションした場合、悪くても5割
くらいの個体は生き残るのに対し、アルカリ/SDS法で精製しただけ場合、生存率は数
%かそれ以下でした。ただし、生き残りのうち、形質転換体を生じる個体の頻度は、
精製法にかかわらず1割から2割といったところで変わりありませんでした(粗精製で
も、数百から数千のembryoに打てば、数十個体が生き残り、その中からなんとか形質
転換体が得られる...)。精製度は形質転換効率に影響するというより、注射されたe
mbryoの生存率に大きく影響するファクターだと思われます。
一方、特にサイズの大きいプラスミドなどは、精製の過程や保存中に、大部分がOpen
Circularになってしまうということもありますが、それでも形質転換体の出現頻度が
ことさら下がったという印象はないので、Supercoiledであることがそれほど重要だ
とは思えません。

世にプラスミド精製キットはたくさんありますが、その中には、endotoxinをいかに
よく除去できるとか、transfectionに使用した場合、細胞の生存率がどれほどいいか
などを売りにしているものも多い(またそれらはどれも、CsCl法と同等の純度をうた
っている)ということから考えても、うなずける話ではないかと思います。うちは最
近はもっぱらQIAGENです。

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従二 直人(じゅうに なおと)
早稲田大学人間総合研究センター 東伏見バイオ実験室 山元研究室
〒202-0021 東京都保谷市東伏見2-7-5
TEL: 0424-50-5824 FAX0424-50-5825