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唾腺ポリテン化の制御遺伝子はないか?


Date: Sat, 3 Feb 2001 01:34:26 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?

お風呂に入っていて思いついた、専門外のはなしなのですが・・・。

ショウジョウバエの唾腺やその他の細胞で観察されるポリテン染色体
の形成を制御あるいは誘導する遺伝子、もしくは普通の2倍体細胞で
染色体がポリテン化しないように抑制している遺伝子、は調べられて
いるのでしょうか?たとえば、唾腺染色体が全然形成されなかったり、
細い唾腺染色体しか形成されないような突然変異って、あるのでしょ
うか?

ハエだと唾腺染色体のパフを観察することで、染色体のどの部分がア
クティブになっているかをある程度観察できるわけですが、哺乳類だ
とそんなことはとても難しい。ハエ染色体のポリテン化の遺伝子があ
れば、それのホモログを探してノックアウトや強制発現系を作れば、
HeLa などの培養細胞をポリテン化して、培養液の条件によって染色
体のどこが活性化されるかを調べられないかなぁ、という妄想なので
す。

いとうκ


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Date: Sat, 3 Feb 2001 10:19:30 +0900
From: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp (Murata, RIKEN Tsukuba)
Subject: [Jfly] Re: 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?

村田アットマーク理研つくばです。
いとうκさんの疑問に的確に的確に答えていないかもしれませんが、
思いあたったので以下の文献をお示しします。

Edgar BA, Lehner CF
Developmental control of cell cycle regulators: a fly's perspective.
Science. 1996 Dec 6;274(5293):1646-52. Review.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Entrez/query_old?uid=8939845&form=6&d
b=m&Dopt=b


//
Takehide MuraTa Ph. D.
e-mail: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp
fax: +81-298-36-9120; phone: +81-298-36-3612

Tsukuba Institute, RIKEN
Tsukuba Science City, Ibaraki 305-0074, Japan.
>>>> Japanese Address <<<<
村田 武英 (研究員)
305-0074 茨城県 つくば市 高野台 3-1-1
理化学研究所 筑波研究所
//


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Date: Sat, 03 Feb 2001 13:21:44 +0900
Subject: [Jfly] 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?
From: Matsuda

杏林大の松田です。伊藤さんの多糸化の制御についての答えではなく、新たな質問で
す。どなたか唾腺の培養について、条件とか文献についてご存じの方教えていただけ
ませんか。

--
松田 宗男
杏林大学医学部生物学教室
181−8611 三鷹市新川6−20−2
Tel 0422-47-5512 3642 or 3652
Fax/tel 0422-71-1220
Email matsudamアットマークkyorin-u.ac.jp


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Date: Sun, 4 Feb 2001 16:41:00 -0600
From: kageyamaアットマークbcm.tmc.edu (Yuji Kageyama)
Subject: [Jfly] 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?

Baylor College of Medicine の影山です。

わたしも専門外なので、間違ったことを書いていたら誰か指摘していただける
と有り難いです。多糸化は(個人的には)非常に面白い現象だとは思うのです
が、あまり研究されていないところをみると、実際にやるのは大変なのかもし
れませんね。

At 1:34 AM 2/3/01, ITO, Kei wrote:
> ショウジョウバエの唾腺やその他の細胞で観察されるポリテン染色体
> の形成を制御あるいは誘導する遺伝子、もしくは普通の2倍体細胞で
> 染色体がポリテン化しないように抑制している遺伝子、は調べられて
> いるのでしょうか?たとえば、唾腺染色体が全然形成されなかったり、
> 細い唾腺染色体しか形成されないような突然変異って、あるのでしょ
> うか?

染色体が多糸化するには、endoreplication によるゲノムの多倍体化と相同染色
体の体細胞における対合の、少なくとも二つが必要ではないかと思います。
endoreplication によるゲノムの多倍体化に必要な遺伝子は、細胞分裂や複製関
連遺伝子を含めていくつか知られているようです。普通の2倍体細胞で染色体が
多倍体化しないように抑制している遺伝子には、遺伝研の林さんが研究された
esg や Dmcdc2 があります(ほかにもあるのかもしれません)。相同染色体の対
合については細胞学的な研究はいくつかありますが、遺伝的制御に関しては全く
何もわかっていないと言った方が正しいのではないでしょうか。減数分裂時の対
合に必要な遺伝子のうち、少なくともいくつかは体細胞のそれには必要ないよう
なので、これらはいくぶん異なった機構で制御されているようです。

ハエでは endoreplication がおこると2倍体細胞でも染色体の多糸化が起こるの
で、多倍体化イコール多糸化なのかもしれません。林さんがその昔、Dmcdc2 の
変異体の optic lobe の細胞で多糸化が起こっているのを示されたのは、わたしに
とってはちょっとおどろきでした。というのも、双翅目昆虫以外では多倍体化が
起こっても多糸化が起こらない(例外もあるのでしょうか?)ので、当時のわた
しは「細胞分裂の制御によって多倍体化を起こさせても、多糸化はしないだろう」
と思っていたためです。今から思えば、ハエでは2倍体細胞でも相同染色体の対
合がおこるので、倍数化すると自動的に多糸化するということなのかもしれませ
ん。もっとも他の昆虫では体細胞での相同染色体の対合が起こらないかどうかは
よく知らない(すくなくとも膜翅目では起こらなかったはずですが)ので、誰か
御教授くださると幸いです。

> ハエだと唾腺染色体のパフを観察することで、染色体のどの部分がア
> クティブになっているかをある程度観察できるわけですが、哺乳類だ
> とそんなことはとても難しい。ハエ染色体のポリテン化の遺伝子があ
> れば、それのホモログを探してノックアウトや強制発現系を作れば、
> HeLa などの培養細胞をポリテン化して、培養液の条件によって染色
> 体のどこが活性化されるかを調べられないかなぁ、という妄想なので
> す。

パフだけで遺伝子の活性化を見るのは無理でしょうけれど、成功すれば(^^;)一
つの指標にはなりそうですね。ところでパフの形成機構も全くといっていい程わか
っていないので、そちらの研究も待たないといけないかもしれませんね。

--
影山裕二
HHMI, Baylor College of Medicine


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Date: Mon, 5 Feb 2001 19:21:06 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?

山口大学、村上です。
多糸化について。
消化管後腸の発生で細胞分裂が endoreplication に移行する時期(st11 ぐらい)
は、区画化や発生運命の決定などクリティカルな事象の完了と対応しているように思
います。細胞分化の過程において、クリティカルな細胞周期というものがいかにもあ
りそうですが、endoreplication への切り換えは、それに対応するように思えます。
つまり、多糸化する動物種では同じ種類の細胞を普通の細胞分裂で殖やすかわりに
(横着にも)多糸化と細胞の大型化を進めているのではないでしょうか?10年程前
に初めてショウジョウバエ幼虫消化管を顕微鏡で見、核と細胞の巨大さに驚きまし
た。マウスやニワトリの細胞はずっと小さいのです。ちなみにイモリの細胞も巨大で
すが、確かこの動物のゲノムサイズは巨大だと思います、あまり関係ないかも知れま
せんが。

質問を一つ:林さんが観察した多糸化した optic lobe の細胞は普通よりも大きかっ
たですか??


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Date: Mon, 5 Feb 2001 20:04:56 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] 唾腺ポリテン化の制御遺伝子?


> > ハエだと唾腺染色体のパフを観察することで、染色体のどの部分がア
>> クティブになっているかをある程度観察できるわけですが、哺乳類だ
>> とそんなことはとても難しい。ハエ染色体のポリテン化の遺伝子があ
>> れば、それのホモログを探してノックアウトや強制発現系を作れば、
>> HeLa などの培養細胞をポリテン化して、培養液の条件によって染色
>> 体のどこが活性化されるかを調べられないかなぁ、という妄想なので
>> す。
>
>パフだけで遺伝子の活性化を見るのは無理でしょうけれど、成功すれば(^^;)一
>つの指標にはなりそうですね。ところでパフの形成機構も全くといっていい程わか
>っていないので、そちらの研究も待たないといけないかもしれませんね。

1980年頃(古い!)に、堀田研の助手だった広瀬さん(故人)と同じような議論
をしたことを思い出しました。確か、センチュウの細胞を多糸化できたら最強のモデ
 ル動物になる、というような他愛のない話でした。
唾腺以外の細胞では、多糸化が進んでもなかなか染色体をきれいに見分けることは難
しい気がしますが、そもそも唾腺細胞で、どんな遺伝子が発現しているかを染色体と
対応させて調べた研究はあるのだろうか?