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ハエを飢餓処理する方法


Date: Mon, 16 Jul 2001 10:52:17 +0900
Subject: [Jfly] 飢餓処理の方法
From: 由比良子

Jflyの皆様初めまして、私お茶の水女子大学M2の
由比良子と申します。

現在、薬剤をスクロース水溶液に混ぜてハエに食べさせようと
しているのですが、より効率的に食べてもらうために
飢餓処理をしようと考えています。
しかし論文等には「starved for ○h」と書いてある
だけで、詳しい方法が分かりません。空のバイアルに
入れれば良いのでしょうか?

方法を御存じの方にぜひ教えていただきたいと思い
質問させていただきました。
よろしくお願いいたします。

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 由比 良子 (Ryoko Yui) 
  お茶の水女子大学大学院 
  松浦研究室 M2  
  g0040463アットマークedu.cc.ocha.ac.jp


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Subject: [Jfly] 飢餓処理の方法
Date: Mon, 16 Jul 01 13:46:31 +0900
From: 館野実

由比さま

名大理・館野と申します。

以前EMSをハエに食べさせた時、「飢餓処理」しました。
具体的にはおっしゃる通り、空のバイアルに成虫を入れて放置しました。私がやっ
たときは3時間脱水しました(もっと長い時間脱水させるよう、本には書いてあっ
たと記憶していますが)。

ご参考になればと思います。

たての


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         館野 実
     〒464-8602 名古屋市千種区不老町
 名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻       
  TEL : 052-789-2508 FAX : 052-789-2511
E-mail : mtatenoアットマークbio.nagoya-u.ac.jp


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Date: Tue, 17 Jul 2001 00:05:44 +0900
From: Teiichi Tanimura
Subject: [Jfly] 飢餓処理の方法

> 現在、薬剤をスクロース水溶液に混ぜてハエに食べさせようと
> しているのですが、より効率的に食べてもらうために
> 飢餓処理をしようと考えています。

私たちは味覚の行動テストために(絶水はしなく)絶食するのに以下の方法
を用いています。

バイアルの底に短冊状に切ったキムワイプをいれ、最低量の水を入れて押し
固める。
新しい培地に数時間以上いたハエを入れて20時間おく。

この条件であれば、例えば、0.1 M sucroseを与えればハエは1時間以内に
満腹になります(糖溶液の与え方にもよります)。
薬剤を投与するのが目的であれば、薬物が、何らかの摂食阻害効果を示すこ
とに注意が必要でしょう。

対策
-糖濃度を上げる。
-糖溶液に食用色素を混ぜておいて腹部の着色で摂食を確認する(これは個
体間の摂食量の違いを確認するにも役立ちます)。

一時的に投与するのが目的であれば絶食するのがよいですが、そうでない場
合は、培地に混ぜることもできます。

以上、参考になれば幸いです。


谷村 禎一

九州大学大学院 理学研究院 生物


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From: tanakaアットマークbio.phys.s.u-tokyo.ac.jp
Date: Tue, 17 Jul 2001 12:22:38 +0900
Subject: [Jfly] 飢餓処理の方法

谷村先生へ。

初めまして、東大理D1の田中宏昌と申します。

私も0.1Msucroseを使ってEMSをハエに投与する突然変異誘発実験を最近始めたところ
です。
そこで、以下の内容について質問があります。

> バイアルの底に短冊状に切ったキムワイプをいれ、最低量の水を入れて押し
> 固める。
> 新しい培地に数時間以上いたハエを入れて20時間おく。
> この条件であれば、例えば、0.1 M sucroseを与えればハエは1時間以内に
> 満腹になります(糖溶液の与え方にもよります)。

絶水と比べて、こちらの方が効率よく飲ませられますか?

> -糖溶液に食用色素を混ぜておいて腹部の着色で摂食を確認する(これは個
> 体間の摂食量の違いを確認するにも役立ちます)。

どのような色素を実際に用いましたか?

コメントを読んでいて、色素を混ぜて腹部の着色で摂食を確認したいと思いました。
お手数ですが、ご返答よろしくお願いします。


東京大学理学系研究科物理学専攻能瀬研

田中宏昌


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Date: Tue, 17 Jul 2001 15:15:31 +0900
From: Teiichi Tanimura
Subject: [Jfly] 飢餓(EMS)処理の方法

ご質問にお答えします。

> 絶水と比べて、こちらの方が効率よく飲ませられますか?

絶食+絶水はかなりハエにとってシビアですね。
絶食+絶水は12時間までに留めたほうがよいでしょう。
室内の湿度やハエの系統によって絶水の状態は異なってきます。
水は与えるという条件は、少しだけハエにとって優しいと思います。

EMS処理の場合は、適度のdoseがありますので、基本的にLewis and Bacher(1968)の定法
に従うのが良いと思います。sucroseは1%ですから、87.6 mMです(100 mMとあまり変わ
りませんが)。

絶食+絶水を12時間行った場合の致死率の変化は、Ashburnerのハンドブックの348ページ
に書いてあります。

何らかの理由でdose上げたい場合には、EMSは摂食阻害効果があるためEMSの濃度を上げ
ても摂食量が比例するわけではない(前掲347ページ)ことも考慮に入れる必要がありま
す。

また、EMSは水溶中で分解しますので、12時間後には濃度はたしか半分ほど?になってい
るはずです。

要約すると、EMSの摂取量は、ハエの空腹状態、EMS濃度、糖濃度に依存しており、空腹
状態、EMS濃度は時間とともに変化します。

そこで、食用色素によるマーキングが有用です。

用いる食用色素は「食用青色1号」(東京化成F147)で、2.5〜1.25 mg/mlの濃度で使用
します。ショウジョウバエに対する安全性は確かめられています。


追加(老婆心から)

EMSの取り扱いにはくれぐれも注意すること。
EMSは水に溶解しにくいのでよく混和すること。
分解液0.5% mercaptoacetic acid in 1 M NaOHを用いて分解処理を行うこと。

谷村 禎一


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From: tanakaアットマークbio.phys.s.u-tokyo.ac.jp
Date: Tue, 17 Jul 2001 17:09:24 +0900
Subject: [Jfly] 飢餓(EMS)処理の方法

谷村先生へ。

迅速で親切なご返答ありがとうございました。
安全第一で実験を進めたいと思います。

東京大学理学系研究科物理学専攻能瀬研

田中宏昌


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Date: Wed, 18 Jul 2001 15:38:16 +0900
Subject: [Jfly] 飢餓処理の方法
From: 由比良子

お茶の水女子大の由比良子です。

たくさんのご助言を頂き、ありがとうございました。
大変参考になりました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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 由比 良子 (Ryoko Yui) 
  お茶の水女子大学大学院 
  松浦研究室 M2  
  g0040463アットマークedu.cc.ocha.ac.jp