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ショウジョウバエの培養細胞系統と形質転換ベクター


From: "Takeshi Akasaka"
Subject: [Jfly] cell line
Date: Wed, 29 Aug 2001 11:53:02 -0400

この春より、ミシガン大学でショウジョウバエを用いて心筋細胞の初期分化について
研究を始めた赤坂 武といいます。
Department of Molecular, Cellular and Developmental BiologyのRolf Bodmer研究
室に所属しています。

今までハエを扱ったことがなく、まだまだ手探りの状態ですが、よろしくお願いいた
します。
最近ようやくハエを顕微鏡で見ていて、かわいいと思えるようになりました。

自分たちの教室では細胞培養を行っておらず、よくわからない点がおおいので、今回
メールを出させていただきました。

私たちは、tinman周辺の遺伝子カスケードを調べています。。
いくつかの遺伝子をクローニングしているのですが、これらを細胞で実験したいので
すが、調べてもあまりcell line数がないし、embryonic cellとしか書いてないので
どう使っていいものかと思っています。
やりたいことは、ひとつはstable cell line を作ること。
もうひとつは、transgenicなどのコンストラクトの発現を、前もって知ること、ある
いはタンパク相互作用、transcriptional activationの活性を見る。
さらに、mutant タンパクの細胞内での分布をしらべること。
といった内容です。

実際、transfection の効率とか、stableの作りやすさはどうか、プロモーターはど
のようなものがそれぞれの細胞に適しているのか、など疑問だらけです。

初歩的な質問になるのですが、よろしくお願いいたします。
もし、参考になる文献などご存知でしたら、教えていただければと思います。

これからもよろしくお願いいたします。


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Takeshi Akasaka , M.D. Ph.D.

Department of Molecular, Cellular and Developmental Biology,
University of Michigan
830 N University, Ann Arbor, MI 48109-1048

Tel: 734-764-6791/Fax: 734-647-0884
E-mail: takasakaアットマークumich.edu
akasaka-cbaアットマークumin.ac.jp
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Date: Thu, 30 Aug 2001 16:44:28 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] cell line

At 11:53 AM -0400 01.8.29, Takeshi Akasaka wrote:
> いくつかの遺伝子をクローニングしているのですが、これらを細胞で実験したいので
> すが、調べてもあまりcell line数がないし、embryonic cellとしか書いてないので
> どう使っていいものかと思っています。

ショウジョウバエではあまり使いやすい cell line がありませんが、
やはり Schneider 2 (S2) が「定番」だと思います。

> 実際、transfection の効率とか、stableの作りやすさはどうか、プロモーターはど
> のようなものがそれぞれの細胞に適しているのか、など疑問だらけです。

後からハエ個体の形質転換にそのまま使うためにも、コンストラクトは
UAS の下流につないだものを作ればいいでしょう。よく出回っている
pUAST ベクターにサブクローニングするだけです。UAS ベクターには
Andrea Brant が作った UAST と、Peter Rorth が作った UASP がありま
すが、
  Brand, A. H., and Perrimon, N. (1993) Development 118, 401-415
  Rorth, P. (1998) Mech. Dev. 78, 113-118
両者は微妙に GAL4 への反応性がことなります。確か卵巣の細胞では、
UAST につないだコンストラクトはうまく発現せず、 UASP を使った方
が良かったはず。逆に、UAST ならうまく発現するけど、UASP だとうま
く発現しない細胞もあります。

培養細胞で UAS の発現をドライブするには、遺伝研の広海さんが作られ
た pWAGAL4 プラスミドと UAS+発現させたい遺伝子 のプラスミドを等
量混ぜて co-transfection すれば簡単です。 pWAGAL4 は細胞性アクチン
のプロモーターをコードしているので、基本的にはどの細胞でも発現をド
ライブできます。S2 細胞では、UAST でも UASP でも、この方法でうまく
発現をドライブできます。

細胞の飼い方と形質転換は、

  Oda, H., Uemura, T., Harada, Y., Iwai, Y., and Takeichi, M. (1994)
  Dev. Biol. 165, 716-726

なんかに出ているはず。

いとうκ