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抗ヒストン抗体ってどうやって作る?


Date: Fri, 16 Jul 2004 18:04:00 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3734)

夏休みの自由研究ということで:

講義をしていて突っ込まれて、うまく答えられなかったのですが、
どなたかうまい説明をいただけませんでしょうか?

<問題>
抗体を作らせるときは、マウスやラットやウサギやヤギに抗原を
注射して抗体を産生させます。生物は、自分自身が持つタンパク
等の抗原に対して免疫反応を起こさないよう、胸腺において自己
を認識するような抗体を作る免疫細胞を除去しています。種間の
差がある程度大きいタンパクならば、たとえばマウスのタンパク
をウサギに作らせることは可能でしょうが、ヒストンのように種
間のホモロジーが非常に高いタンパクだと、マウスのヒストンに
対する抗体をウサギに作らせたら、その抗体は必ずや自身のヒス
トンも攻撃してしまい、自己免疫疾患(というのか?)になって
しまいそうな気がします。モノクローナル抗体でも、そもそも自
己を攻撃するような抗体を作る細胞は体から除かれているはずで
すから、そういう細胞は殖やせないような気がします。でもそう
いうタンパクに対する抗体も、市販されていたり論文で見かけた
りします。こういう抗体って、どうやって作るのでしょう?

いとうκ


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Date: Fri, 16 Jul 2004 18:49:27 +0900
From: Tadashi Uemura
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3735)

免疫学の知識に基づいた正確な説明はできませんが、、、

「アジュバンドと混ぜて抗原を動物体内に送り込めば、種を越えてアミノ酸配列がよ
く保存されたタンパク質であろうと、自分自身のタンパク質であろうとガンガン抗体
ができることが多いです。」

と、理解してます。実際にそのような抗体を作製しました。

上村


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Date: Fri, 16 Jul 2004 19:35:43 +0900
From: Akira Komatsu
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3736)

実際にできちゃんだから、という答えですね。では、下のいとうさんの質問には
どう答えるんでしょう?

> その抗体は必ずや自身のヒストンも攻撃してしまい、自己免疫疾患
>(というのか?)になってしまいそうな気がします。

低分子量の神経伝達物質(ドパミンとかセロトニンとか。ウサギも持ってます)
に対する抗体は高分子タンパクの BSA とか KLH とか(ウサギにはない)にグル
タールアルデヒドかなんかでくっつけて作らせていますよね。ヒストンに対する
抗体を作ると きには、こんなことはしないんですか?

小松 明
東京女子医科大学・医学部・第一生理学教室


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Date: Fri, 16 Jul 2004 19:42:35 +0900
From: Yuji Kageyama
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3737)

At 6:04 PM +0900 04.7.16, ITO, Kei wrote:
>こういう抗体って、どうやって作るのでしょう?

私が使っている抗ヒストン抗体はペプチド抗体で、KLHに共有結合させたも
のが抗原です(ヒストン研究に使われるものは同様ではないかと思います)。
KLHなどのキャリアを使っているせいで抗原性が上がると理解しています。
もっともキャリアを使うとなぜ抗原性が上がるのか、やっぱり免疫学的な
理由はよく知らないのですが... 誰か詳しい方、教えてください。

こういう抗体を持った動物が健康なのかどうかが気になりますが、力価が上
がったところでご臨終のはずですので、心配は要らないのかもしれません。

--
影山裕二
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科


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Date: Fri, 16 Jul 2004 20:43:04 +0900
From: 高久 学
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3738)

皆様

最初に申し上げますが、小生は免疫に関しては素人です。最近はハエにも素人ですが。

それはともかく、
「アジュバンドと混ぜて抗原を動物体内に送り込めば、種を越えてアミノ酸配列がよ
く保存されたタンパク質であろうと、自分自身のタンパク質であろうとガンガン抗体
ができることが多いです。(上村先生)」
という実験結果から、

「生物は、自分自身が持つタンパク等の抗原に対して免疫反応を起こさないよう、
胸腺において自己を認識するような抗体を作る免疫細胞を除去しています。(い
とう先生とバーネット?)」
とはいうものの、
「完全には除去できていない。」と考えられているそうです。

ですからヒトでも自己を認識する抗体を産生するB細胞は、体内の
どこかで(血液循環で泳いでるかも)、普段は細胞増殖も抗体産生もほとんどあるいは
全くおこなわず、じっとしています。泳いでいてもじっとしています(ツマラン)。

しかし、大量に、あるいは繰り返して自己の成分が
血液中に出現したり、老化したり、
などの原因でこの「じっとさせておく制御」がはずれると、
自己抗体が産生され(あるいはキラーT細胞が活性化して、詳細は省略)自己免疫疾患
になる可能性があるそうです。

最後にも改めて申し上げますが、小生は免疫に関しては素人です。
以上は昔に免疫の専門家に聞いた話です。
あのヒトの言ったこと、ほんとに正しかったんだろうか?

三菱化学生命科学研究所
高久 学


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Date: Sat, 17 Jul 2004 11:18:04 +0900
From: "MuraTa, T (RIKEN BRC)"
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3739)

なんとなくのイメージですが......
ヒストン等核内の蛋白質は生きた細胞だと免疫系にさらされる機会が少ないの
で、自 己免疫を予防する機構が働かないので同種動物でも抗体ができるものだと
想像してお りましたが、正しいでしょうか?

それで、今、苦労しているのですが、ヒストン抗体を用いた蛍光染色の良い方法
をど なたか教えて下さい。うちにヒストンH3 に対する抗体が二種類あって、と
もに同じ 配列のペプチドを抗原としていますが、一方はリン酸化、他方は修飾無
しです。リン 酸化の方は通常のホルマリン固定で十分な感度が得られています
が、修飾無しの方は 同じ条件では染まりません。添付資料にはrecommendation
が記載されておりませ ん。
どうぞよろしく。

理化学研究所 筑波研究所
バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室 (DNA Bank)
村田 武英,先任研究員


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Date: Sat, 17 Jul 2004 19:47:21 +0900
From: Yasumitsu Takagi
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3740)

私も免疫学の専門家ではないのですが、、、、。

抗原として認識されるにはある程度の大きさがあった方が好ましいようです。手
元のある本には、一般的に分子量5000以上が望ましいと書いてあります。ですか
らペプチドを担体蛋白質に結合させるのは必須ではないが、免疫原性を高 め成功
率を上げるためと理解してます。ただあまり強い免疫原性を持つ担体を使うとそ
れ自身が抗原となります。力価が上がらなかった失敗抗体でも、担体に対する抗
体がたくさん出来ている場合もあるでしょう。(そんなこと調べる暇人はいない
と思いますが、、、。)

また、あまりポピュラーではありませんが、抗原ペプチドだけでクロスリン をど
んどんと架けていって作ったペプチドの固まりを免疫するというやり方も ありま
す。

それから伊藤さんの質問に対する回答としては、私も上村さんと同様に、アジュ
バントのおかげで普通は抗原となりにくいものが認識されると理解をしていま
す。ただその場合でも、私の周囲の限られた情報では「ホモロジーが高い抗原ほ
ど強い抗体をつくるのは難しい」という傾向は残っているような印象で す。

高木康光
福岡歯科大学・助教授
学術フロンティア研究センター


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Date: Sat, 17 Jul 2004 23:08:23 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3741)

皆さま、色々教えていただき、ありがとうございます。

亜襦袢度(じゃないアジュバンド・・)を混ぜれば抗原部位の状態が
変わるので抗体が作れる、というのは何となく分かるのですが、それ
でも、できた抗体はアジュバンドなしの「ナマ」のヒストン(もしく
はそのほか種間のホモロジーが非常に高いタンパク等)を認識できる
わけですよね。ポリクロ抗体を精製できるほどの大量の抗体を作らさ
れるホストのウサギちゃんやヤギちゃんは、大丈夫なのでしょうか?
それとも、このような生体に普通に存在するような物質に対する抗体
は、大量産生のステップを生体内でなく培養シャーレーでやれるため、
ポリクロでなくモノクロの方がうまく作れたりするのでしょうか?

いとうκ


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Date: Sat, 17 Jul 2004 16:16:14 +0100
From: Masataka Okabe
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3744)
[Jfly ML (3744)]
岡部@ロンドンです。

私も専門家ではないので、耳学問でですが。

自己抗原に対する抗体、つまり自己抗体が自分自身の組織に抗原抗体反応を
引き起こし慢性炎症を生じる病気を自己免疫疾患といいますが、そういった
病気の患者さんの血清でヒトの組織を免疫組織で染めると細胞の核が染まる
ことが多く、そういった抗体を抗核抗体なんてよんだりします。
こういった抗体が認識する抗原は、 RNA結合タンパク質とか、核孔構成タン
パクとか、セントロメア構成タンパクだったりします。
自己免疫疾患はウイルスの感染とか腫瘍とか、なんらかの異常な事態が体に
生じたあとに生じたり、例えばシリコンのつまった風船をいれた豊胸手術の
後にシリコンが漏れることによって、本来自己組織である膠原組織(コラー
ゲンなど)に対する抗体が生じて各種膠原病を生じることがあったりするので、
正常の発生においては、抗原として認識されうる物質も免疫器官へのさらさ
れ方によっては物理的に攻撃対象から逃れられていることがあるのだと思い
ます。シリコンがある種のアジュバンド効果を示すことによって、抗コラー
ゲン抗体のようなものができてしまうように、うまくアジュバンドを使えば
ヒストンに対する抗体もできてしまうのだと思います。よって、きっとそんな
ものを免疫されたウサギさんは、自己免疫疾患の患者さんなみに、慢性炎症
に苦しむのではないでしょうか。

一方で、外来抗原に生体がさらされたときには、初期にはいろんな抗原
(エピトープ)に反応するクローンが活性化され、IgMをつくると思いますが、
2ヶ月くらいたつとその中でも強力に反応するクローンが数個だけ選択され、
それらが増殖しIgGを産生し、ポリクロをつくります。
よって初期には弱く反応するいろいろなリンパ球(形質細胞)が増殖する
はずで、実際に免疫を始めた初期にマウスから脾臓をとりだしてハイブリドーマ
をつくると、通常のプロトコールで作成するモノクロよりも多くの種類の
抗原に反応するクローンを得ることができます。
問題は得られるもののほとんどがIgMを産生するものなので、あとで免疫組織
等をする上でいろいろと扱いにくいことがあるということでしょうか。
よって、どうしてもモノクロがとれない抗体に対しては、 IgMでもよければ
免疫した初期に細胞融合を行うということでとれるかもしれません。


岡部


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From: Kazuhiko Kume
Date: Sun, 18 Jul 2004 01:24:43 +0900
Subject: [Jfly] 抗ヒストン抗体ってどうやって作る? (3746)

熊本大学の粂です。一応、医者です。(^_^;)

抗体って、血液中にできるものですよね。核の中だけにある蛋白質に対して抗体がで
きたとしても、すぐに、重大な問題にはならない気がします。臨床的には、抗核抗体
は、10倍以上の血清で光れば一応、陽性と判断しますが、強陽性でも健康上の問題
は、全くない人も多々います。

抗体蛋白は、核までは、簡単には入らんでしょう。だから、同種の抗体でも、比較的
容易にできるのでは?

それより、作りにくいのは、リンパ球などの表面抗原の一部じゃないですか?免疫反
応を抑えるようなタイプの抗原は、抗体を作りにくいと思われます。

それと、アジュバンドを使って作った、ペプチド抗原に対するモノクローナル抗体は、
ネイティブの蛋白を認識しないことも多いですね。つまり、モノクローナル抗体には、
1.変性条件ウェスタン、
2.ネイティブ条件のウェスタン、
3.免疫組織染色、
4.免疫沈降などの、条件で、
全て使えるもの、1.のみ使えるもの、など、いろいろです。1.のみ使えるような
ものは、生体内では、あまり悪影響がないような気がします。

熊本大学発生医学研究センター  粂 和彦