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唾腺 in situ のシグナルが弱いときの対策
Date: Thu, 22 Jun 1995 11:10:31 +0900
From: uemuraアットマークvirus.kyoto-u.ac.jp
Subject: [Jfly] hs-GAL4/UAS-lacZ
伊藤様
ネットの開設とMailing list に加えて頂いたことをお礼申し上げます。遺伝研の
林氏や東大の多羽田さん(ttabataアットマークhgc.ims.u-tokyo.ac.jp、先週メールアドレス
を開かれたばかりです)などもリストに加えて頂いてはいかがでしょうか。もち
ろん彼らが「いやや。」と言えば別ですが。
>それから、GAL4 を ubiquitus に出すと細胞毒性のためうまく行かないという噂
>を聞いたことがあります。すくなくとも発現の unbiquitus な GAL4 系統はなか
>なか取れません。
>
>伊藤
私が聞いた古い話しは、Pat O'Farrell lab でアクチンプロモーターに GAL4 を
つないだら不妊になったというものです。谷村先生のお役には立ちませんが。
ネットの皆様へ
ずっと次のような奇妙な問題で、延々困っています。この件は今週、すでに上田さ
んや冨樫さんと、工繊の山本先生にはご相談申し上げています。
私共でショウジョウバエの新しいカドヘリン(DN-cadherin)遺伝子の cDNA ク
ローンを分離しました。ところが納得のいかないことには、以下にご説明いたし
ますように、chromosome in situ hybridization をいくら試みても、この遺伝子
だけは唾腺染色体上にシグナルを検出できないのです。全くお笑いになるでしょ
うが、アドバイスを頂戴できれば幸いと存じます。
(1)分離した DN-cadherin 遺伝子が確かに Drosophila melanogaster 由来で
あることの根拠。
cDNA クローン(もちろん Drosophila melanogaster のライブラリーから分離さ
れた、互いにオーバーラップしない4.5kb と 2.8kb)をプローブとして、ノザ
ン、ゲノムサザン、そして胚の in situ のいずれでも明瞭なシグナルが得られ
た。
(2)我々の行なった chromosome in situ hybridization の実際。
唾腺染色体: Oregon R
プローブ作製の方法: DIG random labeling
プローブの鋳型: cDNA クローン(互いにオーバーラップしない4.5kb と 2.8kb)
ゲノムDNA クローン(部分配列を決定済みの互いにオーバーラッ
プしない3kb と 7kb、これらのゲノムクローンの分離にも実は
てこずったのです。)
いずれもここ2年にわたって別々に実験し、その都度、別の遺伝
子のプローブ(ポジコン)では明確なシグナルを得ています。私
自身もトライしたし、院生も試みました。
その他の手順: 谷村先生のプロトコールにほぼ従っています。いままでにこの
プロトコールで数個以上の遺伝子の位置を決定してきました。シグナルが得られ
ないのは DN-cadherin 遺伝子のみ。
(可能性と対策1)
この遺伝子を含む領域は、唾腺染色体では十分に多糸化されていない可能性。
(ただし、成虫から回収したゲノムDNA でも、胚から回収したゲノムDNA でも、
サザンでは似たような強さのシグナルを得たのですが。)centromere 以外にある
ヘテロクロマチン領域については、その場所などがわかっているのでしょうか?
DIG random labeling ではなく蛍光標識のプローブを用いると、感度はかなり
上がるのでしょうか?通常より唾腺染色体の多糸化が進む変異株(giant ?)が
あると聞いたことがありますが、なにかご存じでしょうか?
(可能性と対策2)
この遺伝子を含む領域に蛋白質が強固に結合して、マスクされているためにプ
ローブがアクセスできない可能性。唾腺のプレパラートを protenaseK などで前
処理するなど、耳にされたことがおありですか?
いずれかの可能性が正しいにしても、しばらくゲノムをウオークして、(呪われ
たこの魔の領域を抜け出し)chromosome in situ のシグナルが得られるファージ
クローンを探しだす、というのが現実的かもしれません。しかし一体、何 kb ウ
オーキングすればいいことやらあてのない話です。
(対策3)
もうひとつ、これは UCLA の(確かと思える)人から体験談として伺いました。
そのひとはあるコスミドクローンに関して random labeling でプローブを作って
いるうちは、どうしてもシグナルは得られなかったのに、nick translation で
やったらうまくいったとマジメに言うのです。私には到底信じられませんが。
生命研の冨樫さんから、FISH などでは nick を使うプロトコールがほとんどだと
いうご指摘を頂き、とにかく nick でプローブを作ってやってみます。
他のラボの院生に FISH の話しを聞いているときに、私の大学院時代のボスの柳
田さんが通りかかり、「昔から唾腺が多糸化するときには、ゲノムの7%かそこ
らがなくなるとかいう話しや。おまえの遺伝子は唾腺染色体にはないのとちゃう
か。」と死刑宣告が下りました。判決が覆るかどうかはともかく、ゲノムの一部
が消えるという話しをご存じですか?
お忙しいところお騒がせしますが、よろしくお願いします。
上村匡
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Date: Sat, 24 Jun 95 21:09:39 GMT+9:00
From: MOGAMI%40.536.DECnetアットマークtkyux.phys.s.u-tokyo.ac.jp
どうも
しょうもない話の元祖です。どうやら皆様 Mac で Eudra をお使いのようで
それ以外は私と吉原君のところだけでしょうか。こちらもメールサーバーを
立ち上げようとしていますので、いずれお仲間入りさせていただきます。
(伊藤様 AddMail ありがとうございました。頑固な 98 好きーボスーがい
るので Mac だけ楽にするわけにもいきません。とにかく今の環境ではエデ
ィターが動かないとかで Subject もつけられない。)
それより上村さんの話、ラボのみんなに公開してもよろしいでしょうか。
解決のお役にはたてないとは思いますが、みんなにもたいへん興味あるので
はないかと思います。
もがみ
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Date: Wed, 19 Jul 1995 22:16:47 +0900
From: uemuraアットマークvirus.kyoto-u.ac.jp
Subject: [Jfly] chromosome in situ
京都大の上村です。
先月、私のグループの抱えているchromosome in situ hybridization に関する問題
について、皆様のアドバイスを頂戴しておりました。遅くなりましたが、結果が出まし
たので簡単に報告致します。
問題になっていたのは、こちらで研究している遺伝子の中で、ただひとつだけ(もちろん
ショウジョウバエの遺伝子であるにもかわらず)in situ hybridization をいくら試みて
も唾腺染色体上にシグナルを検出できないものがあることでした。chromosome in situ
の実際は、3、4年前から谷村先生に頂いたものに沿っており、プローブは DIG random
labeling で作製していました。
今回、互いにオーバーラップしない二つのゲノムクローン (それぞれ7kbと3kb)
を鋳型に、DIG の nick translation でプローブを作製し、取り込みをチェックした後、
ハイブリしました。その結果、7kbのプローブでシグナルを検出できました。RNase
処理したプレパラートでも、しなかったものでもシグナルは得られました。肝心のシグ
ナルがあるバンド36と37あたりが、ほとんどの染色体できれいに伸びておらず(
なぜ?)、詳細な位置の決定には至りませんでしたが。
ただし、3kbプローブではシグナルは得られませんでした。また、7kbプローブで
検出できたシグナルも、ポジコン(他の遺伝子の cDNA プローブ)のシグナルに比べ、
弱かったり、一枚のプレパラート上の染色体間で強度のばらつきが大きいのは明らか
でした。
従って何かの原因で、シグナルが検出されにくいことは確かと思われます。以前に同じ
鋳型からrandom labeling で作製したプローブではシグナルは検出できませんでしたが、
今回はそのプローブでのハイブリを並行してやっていないので、プローブ作製の方法
に問題があるのかは、結論は出ていません。
いずれにしても現在ゲノムのファージクローンを分離しつつありますので、今回のプ
ローブから少し離れた領域のプローブを用意し、cytological position の確認を行
なう予定です。とにかく少しほっとしてます。
アドバイスを頂戴した皆様にお礼申し上げます。