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胚で筋肉に DiI を注入して運動ニューロンを観察する方法


Date: Thu, 30 Nov 1995 13:32:22 +0900
From: akomatsuアットマークresearch.twmc.ac.jp

東洋大学の山岡景行先生からのメールに対する返事ですが、以前 jfly 上で話が出た
DiI 染色のことですので、up しておきます。

-------------- 山岡 -----------------------
胚の筋肉にDiIを投与してsomataを染めておいでとのこと、
私も幼虫ですが、それを試みているのですが、未だに上手く行きません。
ethanolに溶かしたり、サラダオイルに溶かしたりして、キャピラリーで
圧力で筋に注入しているのですが、または小さな結晶を筋に乗せてもみました
が、結局筋の膜は染まりすぎるくらい染まりまっすが、neuron(s)は、だめ
です。
 胚のやり方で結構ですが、溶媒に何を使われたか、濃度はどれくらいか、
注入方法はどうされておいでか、についてお教え下さい。
-------------- 山岡終わり -----------------------

胚で筋肉に DiI を注入して運動ニューロンを観察する方法:
胚(ステージ16-17)をスライドグラス上で解剖して鏡筒上下式の顕微鏡で水浸 x40
のレンズで観察。DiI は 0.25 mg / 100ul DMF または 0.25 mg / 100 ul of 95% Et
OH 。DiI 溶液(冷蔵庫保存)をエッペンドルフチューブに入れておいてプラーで引
いた電極(芯入りガラス管使用)を立てると毛管現象で先端(と芯のあるところ)だ
け溶液が入る。この状態では黙っていても電極先端から DiI が漏れ出て団子になっ
ているので、そのまま筋肉に刺入して放置、約20分。電極を抜いて1-2 時間後には運
動ニューロンが染まって見えます。
*固定後 DAB (+Ni) で処理して UV 照射(1時間)すると茶(+Niで黒)に染まります。
*胚の筋肉はgap junction でつながっているので DiI は回りの筋細胞に拡散してい
きますが、ある程度数をこなせば、その筋肉に innervate している運動ニューロン
を同定できると思います。
*ピコポンプを使って圧入すれば注入に20分もいらないと思います。また、ピコポ
ンプを使えば刺入前に陰圧を加えておいて、電極先端からの漏出を防げると思います。

成虫で DiI を使った例は次の論文を参照してください。私が上手くいかなかったの
は恐らくフィルターの選択の仕方だと思うのですが...。DiI が見えてハエの自家蛍
光が見えなければよいのですから。
Whitlock, KE and Palka, J (1995): Development of wing sensory axons in the
central nervous system of Drosophila during metamorphosis. J. Neurobiology,
26(2), 189-204.

東京女子医科大学 第一生理
小松 明




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Date: Fri, 1 Dec 95 12:32:22 JST
From: yamaoka kageyuki bun 6631

東洋大の山岡です。私もこの夏休みにDiIとDiOを幼虫の体壁筋にinjectして
neuro-muscular junctionを通してup-takeされるかどうか、色々試したので
すが、上手く行きませんでした。筋細胞膜は、染まりすぎる程で、蛍光が
強く、周囲を「照らす」程ですが、motorのsomataはおろか、axonさえも
染まりませんでした。どなたか、in situで筋側からmotor neuron(s)の
somataを染める方法を、お試しの方がおられれば、お教え下さい。
 私は、dyeをabs.EOHまたはサラダ油に溶かして、筋のvaricosityがある
あたりに圧で注入し、あわよくばneuroterminalsを傷つけ、そこからdye
がneuronの膜に拡散してくれないものか、と色々試みたのですが、成功
しませんでした。
 成功した方がおられれば、溶媒、濃度、applyの方法について、ご教授
賜りたく、宜しくお願いします。

山岡景行  Kageyuki Yamaoka
drosアットマークhakusrv.toyo.ac.jp
東洋大学自然科学研究室 Natural Science Lab., Toyo Univ. Asaka Campus


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Date: Fri, 1 Dec 95 12:41:03 JST
From: yamaoka kageyuki bun 6631

小松様:
 DiIに関する情報、有り難う御座いました。幼虫筋の縦走体壁筋6と7が
共通のmotorで支配されている、という話を、電気生理学的に確認しよう
と、努力したのですが、上手く行かず、出来れば、筋6と7にDiIとDiOを
別々に注入し、somataを染め分けられるかどうか、確かめたかったものですから
、色々と努力したのですが、上手く行きませんでした。
 ご教授の方法を、試してみます。

山岡景行  Kageyuki Yamaoka
drosアットマークhakusrv.toyo.ac.jp
東洋大学自然科学研究室 Natural Science Lab., Toyo Univ. Asaka Campus


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Date: Sat, 2 Dec 95 19:19:32 JST
From: yamaoka kageyuki bun 6631

小松様:私は胚ではなく、3齢幼虫体壁筋を相手にしておりますので、
条件は異なるし、かなり大きいので、比較は出来ませんが、圧でdyeを
体壁筋に注入すると、確実に注入した筋の細胞膜全体が染まりますが、
motorのsomataはおろかaxonは、全く染まりませんので、困っているわ
けです。
>3)運動ニューロンが染まることに関しては、電極が神経終末に当たっていてそこか
>ら取り込まれて運動ニューロンが染まったという可能性があります(普通はこう考え
とありますが、私はむしろそれをねらってみました。
 それ以外の可能性があるとすれば、上手く行っても良いと思うのですが!
 いずれにせよ、油と水、ですから、扱いが難しく、アルコールに溶かせば
電極先端でエマルジョン様になりますし、オイルに溶かせば表面張力で球状
液的になり、目的物に正確に付着させたり注入したりが、再現ある状態で、
出来ないことが、私にとっては困った問題です。
 最近のNatureのカバーにあったアフリカツメガエルの様な上手い方法が
あればよいのですが。

山岡景行  Kageyuki Yamaoka
drosアットマークhakusrv.toyo.ac.jp
東洋大学自然科学研究室 Natural Science Lab., Toyo Univ. Asaka Campus


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Date: Fri, 1 Dec 95 10:16:16 JST
From: motojiroアットマークnews.sb.gunma-u.ac.jp (Moto Yoshihara)

群馬大の吉原です。

小松さんの
>胚で筋肉に DiI を注入して運動ニューロンを観察する方法:
に関するコメント及びご質問ですが、

小松さんのおっしゃる方法だと、DiIをintra cellularにとりこませるということだ
と思うのですが、それだとtrans-synapticにlipophilic dyeが伝わるということに
なります。そういうこどは本当におこりうるのでしょうか?そのようなことはおこり
にくいように私には思えるのですが如何でしょう。

>*胚の筋肉はgap junction でつながっているので DiI は回りの筋細胞に拡散してい
>きます

についてですが、lipophilic dyeがgap junctionでcoupleしている細胞間を伝わる
というのは一般的なことでしょうか?私は意外に思えたのですが、単に私が知らんだ
け、ということかもしれませんので、おしえていただけたら幸いです。

他の諸先輩方にもこの件に関してご意見いただけたらと思います。

群馬大学行動生理 吉原基二郎


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From: akomatsuアットマークresearch.twmc.ac.jp
Date: Fri, 1 Dec 1995 19:43:20 +0900

東京女子医科大学の小松です

うん、なるほど。不用心だったかも。"gap junction でつながっているので DiI は
回りの筋細胞に拡散していく" という表現は、まずいかもしれませんね。まず、事実
を確認しておきましょう。
"電極先端から DiI が漏れ出て団子になっている" 状態で電極を刺入しています。こ
の DiI の団子は刺入時に細胞の外に取り残された状態になっているようです。また
、DiI は隣の筋細胞だけでなくその次の細胞にも広がります。
1)電極の刺入時に膜を傷つけていますから、DiI は膜にも取り込まれていると思い
ます。膜を介して DiI が拡散していくとすると、筋細胞の膜の間に lipophilic dye
が拡散する "通路" があることになります。
2)電極の刺入後も DiI は電極から漏出しています。"細胞内に注入" された状態に
なっていることと推察されます。lipophilic dye ですから、gap junction を介して
細胞間を伝わるには DiI は何かにくっついている必要があるかも知れません。ある
いは細胞内のような狭い閉空間に DiI が溶媒のエタノールや DMF といっしょに放り
込まれた時にどんなことが起きるかを考えてみる必要があるかもしれません。
3)運動ニューロンが染まることに関しては、電極が神経終末に当たっていてそこか
ら取り込まれて運動ニューロンが染まったという可能性があります(普通はこう考え
るのかな)。ただ印象としては、筋細胞の刺入位置に関係なく運動ニューロンが染ま
っています。なお、筋細胞によっては運動ニューロンと同時に TN exit glia も染ま
ってきます。

ご意見をお待ちしております。

東京女子医科大学 第一生理
小松 明