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Date: Thu, 5 Nov 1998 11:07:34 GMT
From: nishidaアットマークbiol1.bio.nagoya-u.ac.jp (Yasuyoshi Nishida)
Subject: [Jfly] ハエの駆除に関する質問

J-Fly の皆様

私のところに、下記のようなメールが届きました。チョウバエはいざ知らず、ショウ
ジョウバエがマメ科植物の幼苗に産卵するということで、他のハエと混同されている
のではないかと思います。何か、この方の質問に対して、参考になるようなことがあ
りましたら、お寄せ願います。

西田

***************************************

突然のメールで失礼致します。私どもは水耕栽培で数種類の野菜を栽培し全国
に販売しておりますが、特に今年は高温多湿な時期が長く続いたせいかショウジョ
ウバエとチョウバエが豆科植物の幼苗に多数飛来し、産卵しまして消費者の方がた
からうじ(幼虫)が混入しているというクレームが多発しました。

この度は、ハエ類に有効と思われる殺虫剤を一時的に使用してわずかに成果を
得ましたが今後、このような事態をくりかえさぬよう来春までに対策を講じたい
と思います。

それにはまず、敵を知ることから始めなくてはと考え、ハエの生態に詳しい方の
ご意見を賜りたく存じますが、まったく面識がなく、西田さんにお伺いすること
に致しました。どうぞご指導くださいませ。また、私どもの知りたい内容につい
て特にお詳しい方がいらっしゃれば是非、ご紹介くださいませ。

大変、お手数ではございますが、私どもが最初に知りたいハエの情報としまして
は以下のような点でございます。

1)卵、幼虫、さなぎ、成虫の状態での生育期間(温度など環境との関係)
平均温度が25度では何日で成虫になるのか、また、15度ではどうか
35度ではどうかなど。

2)駆除の方法
ハウス周辺の清掃や日々の衛生管理が基本的に重要であると感じております
が、薬剤による駆除は早期解決のために必要です。駆除は卵や幼虫に対して行う
のが効果的なのか成虫に対して行うことが効果的なのか。ショウジョウバエ、
チョウバイにはどのような薬がよく効くのか。保健所などから一般的な資料は集
めたのですが、本当に一般的な害虫全般についての資料なのでもう少し詳しい資
料がほしいのです。

3)それぞれのハエはどのようなえさ(におい)が好きなのか。
経験上、ショウジョウバエは明るい場所で、また、チョウバエは暗い場所で
よく見かけるように思うのですが、色々な面で好みが違うように思います。

研究会の趣旨からすると的はずれな質問かと思いますが、なにかしらご回答いた
だければ幸いです。最後までご一読いただきありがとうございました。


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西田 育巧
名古屋大学 大学院理学研究科 生命理学専攻
  形態統御学講座 発生生物学研究グループ


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Date: Thu, 5 Nov 1998 22:37:45 +0900
From: tmurataアットマークrtc.riken.go.jp (Murata, RIKEN Tsukuba)
Subject: [Jfly] ハエの駆除に関する質問

村田アットマーク理研です。
ある程度、情報がまとまって、かつ、修正が入ったほうがいいかと思いまし
てMLに投稿します。

水耕栽培ということですので、下水などによく見かけるチョウバエが水槽に
発生することはあると思います。また、ヒョウモンショウジョウバエは、フ
ルーツ以外にも生ごみや腐ったミルクなどにも発生するようです。以前、研
究室内の観葉植物の鉢の中でサナギを見たことがありますし、水洗トイレで
数百匹を見かけたこともあります。また、つい最近、オートクレーブをかけ
てから捨てた大腸菌用の寒天培地に大発生していて、理研内のハエ屋さんが
あらぬ疑い(突然変異のハエが大発生したという)をかけられたこともあり
ました。また、ノミバエも生ごみによくつきますので、これをDrosophila
と見間違えた可能性もあります。

一般に、黄色より長い波長の光は、昆虫には見えにくいということもあって
か、塗装やさんとかパン工場では、まどに黄色いフィルムを張って、ムシに
目立つ光を外に出さないようにしているところもあります。

チョウバエ対策の殺虫剤としては、幼若ホルモン製剤があります。
この辺は、アース製薬などの害虫専門の子会社に専門家がいると思います。
というのも、学部のときに体験就職ということで、業務の手伝いをさせて
もらったことがありますので。

私が入っている筑波昆虫科学会のMLに転載しましょうか?
おそらくそのほうが専門家が多いと思います。

村田 武英
305-0074 茨城県 つくば市 高野台 3-1-1
理化学研究所 ライフサイエンス筑波研究センター


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Date: Sat, 7 Nov 1998 21:05:02 +0900
From: Yuki Eshita
Subject: [Jfly] ハエの駆除に関する質問

衛生昆虫、特に蚊の研究を行っております、江下優樹です。

ハエの駆除に関する質問について、私の知人の一人に聞いてみましたので、御参考ま
でに内容をお知らせいたします。

なお、野菜の栽培を行っておられるように拝読致しましたので、殺虫剤による駆除を
される場合には専門の方に相談されたほうがよろしいかと思われます。御希望がある
ようでしたら、日本衛生動物学会のmailing list(今年発足したばかりです。ホーム
ページはhttp://wwwmez.med.uoeh-u.ac.jp/~mez/)に情報を流すことが可能です。必
要でしたら、御一報下さい。

以下の内容が知人からの情報です。
-------------
 ショウジョウバエは発酵する食物につき(成虫が寄ってきて産卵し、幼虫が
育つ)、チョウバエは下水槽や浄化槽の汚泥、厨房、下水処理施設などの多湿
で暗い場所に発生するそうですが、チョウバエについてはあまり知りません。
これは、後述の、松崎・武衛著「都市害虫百科」朝倉書店1993、\5,600から引
用させていただきます。

 ショウジョウバエは、食材等の腐敗しかけたものについて発生していると思
われますが、チョウバエは、幼虫が半水棲(? 幼虫は空気呼吸をし、水中は
泳げない。呼吸管を水面上に出して汚水中のスカムや汚泥の表面をはい回る、
とあります)なので排水溝等で発生して食品に紛れ込んだと思われます。

【ショウジョウバエ】
1)成長
 どのショウジョウバエか、また、地域的な違いによってそれぞれ違ってくる
と思いますが、実験昆虫として有名なキイロショウジョウバエでは、以下のよ
うなデータがあります。

卵から羽化(成虫)までに要するおよその日数
(Ashburner and Thompson 1978)
摂氏(T) 日数(D)
------------
12  50以上
16  25
18  19
20  14.5
22  11
25  8.5
28  7
30  11
-----------

 有効積算温度法則として知られている当てはめを行うと、およそ

 D=135/(T-10)

となります。しかしあくまで目安で、この場合、その繁殖しているハエについ
て調べないとはっきり言えません。文献で見ると、摂氏25度で、種類により、
成長期間は 4.5日から20日までの幅が見られました。また上の表では30度のと
ころでそれ以下の温度での傾向からはずれており、「高温障害」(成長が遅れ
気味になる)が出ております。幼虫の発育は、27度付近から「高温障害」が出
てくるようです(これも種類や地域的な違いがあります)。温度と成長期間の
関係は、温度が下がると共に成長期間は長くなる、ということですが、その傾
向を外挿して、発育ゼロ点(上のような当てはめ上、発育ができないと想定さ
れる温度。上の表では約10度です)と呼ばれる温度がありますが、実際に発育
できない温度というわけではありません。低温障害や反対の抑制が起きる場合
もあります。

 羽化まで約8.5日の場合、卵、幼虫各期、蛹の成長期間はおよそ次のようで
す。

発育期 日数
-----------
卵   1
1令   1
2令   1
3令   2
蛹   3.5

2)駆除の方法
 松崎・武衛(1993)から---
 「食品を扱う工場や飲食店では、これらのハエが侵入しないような防虫対策
を考えなければならない。小さいので、金網の目が粗いと侵入してくるので、
できるだけメッシュの細かいものが望ましく、人や物品の出入り口についても
侵入防止の工夫が必要である。食品屑や残飯などはハエの誘引源となるので、
建物から隔離し、毎日処分した後清掃する。工場に隣接した樹木の落下や落果
などの処理も大切である。」

3)それぞれのハエはどのようなえさ(におい)が好きなのか。
 松崎・武衛(1993)から---
 「樹液、腐果実、キノコ、ゴミためなど、発酵した腐植物質に集まり、また
これらが発生源となる。ゴミために集まるハエは、棲息環境が雑多で、より広
い食性を有し、室内にも入る傾向が強い。成虫は室内の灯火にもよく誘引され
る。」
 「..日周活動は、朝夕に活動の山があり、夕方の方が低い二山形を示すのが
普通だが、..」
 「ショウジョウバエの食物はイーストであり、自然界にはイーストの培地は
至る所にある。成虫はイーストにより発酵した腐植物に対して敏感に反応して
集まってくるし、産卵し、発生場所にもなる。小さいが飛翔力は大きく、種々
の食品にとまったり、産卵したりするので、特に果汁、パン、乳製品などの工
場、酒、醤油、味噌などの醸造工場では食品衛生上重要な害虫である。」

【チョウバエ】
1)成長
 幼虫は4令あり、温度条件が分かりませんが、ホシチョウバエで、卵は2日で
かえり、幼虫期間は9〜15日、蛹は約2日とあります(松崎・武衛 1993)。オ
オチョウバエで、摂氏27度で、卵2日、幼虫約10日、蛹3〜4日、全発育約15日
(森谷ら1969を引用)などとなっております。

2)駆除の方法
 松崎・武衛(1993)から---
 「浄化槽や下水処理施設に発生するチョウバエの幼虫駆除には、ダイアジノ
ン、バイテックス、スミチオンなどが有効だが、一般にチカイエカ幼虫に比べ
て薬剤に強いので、薬量を多くする必要がある。しかし、高濃度では漕内微生
物に対し悪い影響を及ぼすので注意が必要。その点では幼若ホルモン用物質メ
トロプレンの効果が評価される。これを0.25ppmの濃度処理でチョウバエの発
生を1ヶ月以上抑制できる(亀井ら, 1982)。
 成虫に対しては、屋内にペルメトリンやスミチオンを噴霧器で散布したり、
ULVやくん煙処理をしたり、DDVP樹脂蒸散剤を設置するなどして駆除する。
 浄化槽は定期的に点検し、マンホールの隙間をなくし、排気管に網を張るな
どして、成虫の親友、脱出を防止する。暖気型の浄化槽では、漕内の内壁を清
掃して、付着した汚泥やスカムなどを除去する。
 食品工場などでは、配水管へ送る途中の配管や、漕から流出する配管中に付
着した汚泥やスカムを洗浄除去する。」

3)それぞれのハエはどのようなえさ(におい)が好きなのか。
 日本には30種余りいるそうですが、最も普通に見られる種類がホシチョウバ
エとオオチョウバエだそうです。

 松崎・武衛(1993)から---
 「浄化槽、汚泥のたまった下水槽、畜舎の排水溝など、有機物の多い汚れた
水域に広く発生する。下水処理施設の撒布濾床からは大量に発生するので、濾
床バエとも呼ばれる。食品工場では、排水溝やパイプに付着した汚泥やスカム
が発生源となる。」
 「乾燥には弱く、気温29度、湿度58%の条件下におくと、約2時間半で死亡す
る。
 成虫は一般に夜間活動性で、昼間は薄暗く、湿気の高い厨房、湯殿、トイレ
などの壁に静止している。飛翔力は弱い。」

 ショウジョウバエの駆除についてはよく分からなかったのですが、食品工場
などで既に防除策を講じて成果を上げているところも多いと思われ、それらの
資料を入手されるのが近道と思われます。ホームページ検索では出てきません
でした。

 ショウジョウバエの防除策情報に欠ける点をお許し下さい。

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以上です。
御参考になりましたら、幸いです。
江下。


Yuki Eshita
Department of Parasitology
Kurume University School of Medicine

67 Asahi-machi, Kurume-shi, Fukuoka 830-0011, Japan
Tel: Int+ 81-942-31-7550, Fax: Int+ 81-942-31-0344
(Tel: 0942-31-7550, Fax: 0942-31-0344 in Japan)
e-mail: yeshitaアットマークmed.kurume-u.ac.jp
http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/para/index.html