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Cy3 蛍光の他波長帯へのシグナルの漏れ


Date: Wed, 3 Mar 1999 01:48:06 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

Jfly のみなさま、

これまで蛍光二重染色には Texas Red を使っていたのですが、遅まきな
がら最近はやりの(?)Cy3 conjugate の二次抗体を使ってみました
(Jackson anti-mouse IgG, anti-rat IgG)。

たしかに大変よく染まり、強い光が見られるのですが、強すぎて、ローダ
ミン(赤)励起だけでなく FITC (青)励起でも光が見えてしまいます。
FITC ラベルと同じくらい、はっきり見えます (^_^;)。 メーカーに文句言っ
たら、Cy3 は FITC 励起領域(488 nm あたり)でもピークの 10 %程
度の強さの励起が起きるそうで、二重染色の場合には FITC / GFP 側に
狭い band pass のフィルターを使って Cy3 の光の漏れを低減させるか、
抜本的には Cy3 の替わりにローダミンや Texas Red を使え、と返事し
てきました。

二重、三重、四重染色には Cy3 は最近よく使われているように思うので
すが、このような漏れって、常識なのでしょうか?Cy3 をお使いの方、
この問題にはどのようにして対処していらっしゃいますか?

いとうκ


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Date: Tue, 2 Mar 1999 13:23:42 -0500 (EST)
From: mihoアットマークsunspot.nci.nih.gov (Miho Tanaka-Matakatsu)
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

伊籐啓様

私はこちらの研究室(NIH)に移って、Bio-Radのコンフォーカル顕微鏡を使い始めて
すぐに、同じ経験をしました。いとけいさんのはコンフォーカルではなく、蛍光顕微
鏡でしょうか?
 私の場合はCy3のsingle
stainingのサンプルにたいして、アクシデンタリ−にdouble stainingのdetection
modeで絵をとってしまい、FITC
側に美しい全く同じ絵がでてきて、凍りついたことがきっかけです。
遺伝学研究所、林研にいたときはZeiss
410を使っていたので、Bio-RadとZeissの比較ですが。問題は、こちらの研究室に満
足できるだけのEmission filter
setがなかったこと、optionでつけられるMirrorが入っていない事がequipmentの事情
だとおもいました。それから、Bio-RadとZeissのコンフォーカルのmachineryな差で
す。Bio-Radはかなり、レーザー強度を弱く設定してレーザ−をあてる事ができます
。これはサンプルの退色を極力さけるためだとおもいます。現実、なかなか退色しま
せん。しかし、これは逆にバックグラウンドレベルの弱いシグナルも、それから、Cy
3のFITC
あたりのピークも拾います。バックグラウンドシグナルをartificialにmodify可能で
あることも確認しました。私はしばらく、何が真実なのか、絶望の淵をさまよってい
ました。もちろん、これは私が初めから、難しい抗体染色にチャレンジしていたから
のことで、成績のよい抗体を使っていれば、あまり経験しない事だとおもいます。
それから、Cy3以外にもTOTO-3(Far-red, DNA
dye)もCy3あたりにかぶってきます。昨日は、Cy2もCy3側にかぶってきました。(強
制発現のサンプル)
 で、これらの対処法は、Band-pass filterを使うこと。Cy
Dyeを1000〜2000倍希釈で使う事にしています。
 こちらのコンフォ−カルはBand-pass
filterを使うためには1枚ずつ画像をとって、あとで、重ねる作業をしなくてはなり
ません。laser beam entryが1
pointであるBio-Radのメリットがいかせません。しかも、zoomをかけてとった画像は
image
depthが足らないのでmargeできない!とコンピューターが文句を言ってきます。他に
もあげるときりがないくらい、不満がでてきますが、文句を言うよりも、自分のテク
ニックをimprove することにしたので、今は何とかやってます。

それではまた。

Miho Tanaka-Matakatsu
************************************
Lab. of Biochemistry , NCI, NIH
Bldg. 37 / Rm. 4C17
9000 Rockville Pike,
Bethesda, MD, 20892-4255
tel: (301) 435-2815 fax: (301) 402-3095
e-mail: mihoアットマークsunspot.nci.nih.gov
************************************


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Date: Wed, 3 Mar 1999 17:07:48 -80640
From: akimaruアットマークrtc.riken.go.jp (Hiroshi Akimaru)
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

伊藤 啓 様;

Cy3, RhoのシグナルがFITCに入り込む(逆の方が多いのですが)現象(Bleed-through)
は、避けがたい問題で、蛍光顕微鏡を使用している場合の解消法としては、Band Pass
の短いフィルターを使用する以外にはありません。Cy3はemisson波長がシャープなので、
FITC側にかぶることは余りないので、かぶりの問題が生じているのなら、Cy3の濃度を
もう少し薄くして使われたらどうでしょう。また、confocalを使っている場合でしたら、
Zeiss(510に限りますが)なら、multi-track configurationというモードを使うと、
488nmと568nmのレーザーラインとdetectorを交互に素早く切り替えることで、両者
のcross-talkするシグナルがない綺麗な画像を得ることができます。Leica(TCS NT)
には今のところ、その様なモードはありませんが(近日中にversion upされて、Zeissと同
じことができるそうです)、single laser lineでFITCとCy3の画像を別々にscanすると、
両者のシグナルのかぶりはなくなります。ただ、各channel毎にlineを切り替える面倒く
ささと、mergeした画像を作るのに、適当なsoftwareを使って手作業でmergeしなけれ
ばならない大変さがありますが......。


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From: tuemuraアットマークtake.biophys.kyoto-u.ac.jp
Date: Wed, 3 Mar 1999 17:38:53 +0900
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?


>Cy3, RhoのシグナルがFITCに入り込む(逆の方が多いのですが)現象(Bleed-through)
>は、避けがたい問題で、
>また、confocalを使っている場合でしたら、
>Zeiss(510に限りますが)なら、multi-track configurationというモードを使うと、
>488nmと568nmのレーザーラインとdetectorを交互に素早く切り替えることで、

BioRad のコンフォーカルの場合、同時画像取得をせずに、シークエンシャル取得に
すれば、Bleed-through は大きな問題にはならないですが。細胞工学 Vol.14 1212-1
221 に解説がでてます。

上村

上村 匡 (UEMURA, Tadashi)
京都大学 大学院 理学研究科
生物科学専攻 生物物理学教室
〒606−8502 京都市左京区北白川追分町
(電話)075−753−4195(直)
(ファックス)075−753−4197(直)
(メール)tuemuraアットマークtake.biophys.kyoto-u.ac.jp


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Date: Wed, 3 Mar 1999 20:52:41 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

皆さんありがとうございます。Cy3 は二重染色の同時観察には使え
ない、というのは、どうも常識だったようですね。確かに最近のコ
ンフォーカルは、シーケンシャルに2波長を切り替えて撮影ができ
るようです。ただ、band pass の波長幅を狭くすると、それだけ
FITC 側が暗くなってしまいそうな気がします。Texas Red なら
FITC 域でのかぶりはほとんどないので、コンフォーカルでも肉眼
でも容易に同時観察でき、褪色も300セクションのスキャンくらい
は問題なく可能なレベルなのに、そうまでして Cy3 を使うメリット、
というのは、どこにあるのでしょう?これだけ Cy3 が普及してき
たからには、何か強力なメリットがあるのだろうと思うのですが。

いとうκ


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Date: Wed, 3 Mar 1999 21:46:13 +0900 (JST)
From: motojiroアットマークakagi.sb.gunma-u.ac.jp (Moto Yoshihara)
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

群馬大の吉原です。

上村さんの御意見、

>BioRad のコンフォーカルの場合、同時画像取得をせずに、シークエンシャル取得に
>すれば、Bleed-through は大きな問題にはならないですが。細胞工学 Vol.14 1212-1
>221 に解説がでてます。

に関してですが、例えsequentialにしてもFITCを見ようとしたときにCy3のsignalが
かぶってくるのは普通のfilterだと避けられないと思います。実際にはあまり気にな
らないことが多いですが、本当にきわどい仕事の場合はTexas Redを使用するべきだ
というのが私の理解です。
 スペクトルを見ると、Cy3からの裾野は少ししか広がっていないようにみえるので
すが、実際はCy3は非常に明るいので問題になる場合があります。

というわけで、伊藤さんの

>そうまでして Cy3 を使うメリット、
>というのは、どこにあるのでしょう?これだけ Cy3 が普及してき
>たからには、何か強力なメリットがあるのだろうと思うのですが。

に対する回答は、
1)非常に明るい
2)退色しにくい
の2点だと思います。

私もいろんなfilterを使って試したわけではありませんので、秋丸さんのおっしゃる
ような抜本的な解決方があるのかもしれません。ちなみに、私が今までCy3を非常に
愛用していたのは、Cy3からのかぶりが絵にしたときに全く問題にならないケースだ
ったからです。何かさらに有用なinformationをお持ちの方おられたら是非お知らせ
ください。

*********************************
Motojiro Yoshihara, Ph.D.
Institute for Behavioral Sciences
Gunma University School of Medicine
Showa-machi, Maebashi, 371-8511 Japan
*********************************

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Date: Tue, 16 Mar 1999 16:23:18 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

Jfly メンバーではありませんが、郵政省通信総研の平岡さんから、
貴重なご意見を頂きました。回覧いたします。   いとうκ

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伊藤様/Jfly

私はJfly のメンバーではないので、これを全員に回すすべを知りません。必要なら
、回覧をお願いします。

平岡泰
郵政省通信総合研究所 生物情報研究室
_____________________
Jfly のみなさま、

日常的に蛍光顕微鏡で4重染色を行っている者です。

少し前にJfly で、伊藤さんからのメールと、それに続くいくつかのメールで、FITC
/ GFPとCy3の波長間のかぶりが問題になっていました。FITC / GFPとCy3の二重染色
は問題なく可能です。

使用している Jackson のanti-mouse IgG と anti-rat IgG が互いに minimum cross
reactivity であること(つまり、mouse IgG と rat IgG をそれぞれ特異的に認識し
ており、抗体レベルでのかぶりがないこと)を前提にして、話します。

この問題の根本的な解決は、適切なフィルターの組み合わせ(励起フィルター、ダイ
クロイックミラー、バリアフィルター)を用いることです。

どのような市販の蛍光顕微鏡でも標準で装備されている励起フィルター、バリアフィ
ルターは、透過率がある波長をピークとしてなだらかに上昇し、なだらかに下降する
ものです。このような山形の透過率特性では、一方の蛍光色素を見ている時に、他方
の蛍光波長の裾野を透過させてしまい、かぶりが生じます。bandpass の幅を狭くし
ても透過率特性に裾野があれば、かぶりを完全には除けません。多重染色する場合は
、山形のなだらかな透過率特性ではなく、矩形の透過率特性を持ったフィルター(
square bandpass filter) が必要です。つまり、透過率が、ある波長で急激に立ち上
がり、ある波長で急激に落ちる(ある波長幅だけを透過し、それ以外の波長をいっさ
い通さない)フィルター。そして、2つの波長に対するバリアフィルターの透過率特
性に互いにオーバーラップがないことが必要です。このようなフィルターに交換すれ
ば、かぶりはなくなります。山形透過率のフィルターは単一染色の場合でも、背景光
が高くなります。通常の蛍光顕微鏡であれ、共焦点顕微鏡であれ、フィルターを最適
化することが、市販の蛍光顕微鏡を最も安上がりに改良する方法です。

そのようなフィルターはChroma Technology 社から手に入ります。Cy2, Cy3, Cy5 の
ほか GFP, CFP, YFP 用なども標準で市販されています。手持ちの顕微鏡のメーカー
に相談するのがよいでしょう。

では、なぜ市販の蛍光顕微鏡には多重染色に適さないフィルターを装備しているかと
いうと、次のような理由によると思います。(1)安い。(2)肉眼でみるときに、
背景が高くても、明るいほうが望まれる。(3)多重染色を想定していない。

ユーザーの求めるものが変われば、顕微鏡メーカーも変わるでしょう。私のところで
は、蛍光顕微鏡を購入する時に、始めから標準のフィルターをいっさい購入せずに、
浮いた予算で好みのフィルターを別に購入しています。矩形bandpassフィルターは標
準のフィルターの2ー3倍程度の価格(1枚、2ー3万円に対し5ー6万円程度と思
う)です。

資料としては、次の小冊子をChroma Technology 社が出しています。
Handbook of optical filters for fluorescence microscopy.
(Chroma Technology Corp.) Reichman, J. (1994).

顕微鏡に関する日本語の解説書としては、
羊土社だったか、無敵のバイオテクノロジーシリーズのなかの野島博編 顕微鏡のな
んたらかんたら(私の書棚から誰か持ち出していて、正確な書名がわかりません)が
あります。よく書けた本です。ちなみに、私はこの本の著者ではないので、第三者と
して中立的立場から推薦できます。

At 10:31 AM +0900 99.3.4, ITO, Kei wrote:
> Jfly のみなさま、
>
> これまで蛍光二重染色には Texas Red を使っていたのですが、遅まきな
> がら最近はやりの(?)Cy3 conjugate の二次抗体を使ってみました
> (Jackson anti-mouse IgG, anti-rat IgG)。
>
> たしかに大変よく染まり、強い光が見られるのですが、強すぎて、ローダ
> ミン(赤)励起だけでなく FITC (青)励起でも光が見えてしまいます。
> FITC ラベルと同じくらい、はっきり見えます (^_^;)。 メーカーに文句言っ
> たら、Cy3 は FITC 励起領域(488 nm あたり)でもピークの 10 %程
> 度の強さの励起が起きるそうで、二重染色の場合には FITC / GFP 側に
> 狭い band pass のフィルターを使って Cy3 の光の漏れを低減させるか、
> 抜本的には Cy3 の替わりにローダミンや Texas Red を使え、と返事し
> てきました。
>
> 二重、三重、四重染色には Cy3 は最近よく使われているように思うので
> すが、このような漏れって、常識なのでしょうか?Cy3 をお使いの方、
> この問題にはどのようにして対処していらっしゃいますか?
>
> いとうκ


Yasushi Hiraoka
Section Chief, Structural Biology Section
Kansai Advanced Research Center
Communications Research Laboratory
588-2 Iwaoka, Iwaoka-cho
Nishi-ku, Kobe 651-2401, Japan
phone 81-78-969-2240
FAX 81-78-969-2249
E-mail yasushiアットマークcrl.go.jp


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Date: Wed, 17 Mar 1999 13:51:21 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

郵政省通信総研の平岡さんから、さらに追加で貴重なご意見を頂
きました。回覧いたします。たしかに CCD は、肉眼より赤領域の
感度は高いようですね。

脱線しますが、私は赤緑色盲なので、赤+緑の二重蛍光染色だと、
緑だけの部分と緑に赤がかぶさった部分(黄色)の区別が出来ま
せん。フィルム写真の場合にはどうしようもないのですが、コン
フォーカルなどの電子画像が発達したおかげで、ローダミン領域
で撮った絵を赤のかわりに青チャンネルで表示して青+緑の画像
にすることで、赤緑色盲の人でも区別が出来るようになりました。
青緑色盲や全色盲は比較的まれですが、赤緑色盲は白人男性の1
割を占めます。名前は挙げませんが、教科書など書いているよう
なかなり高名なショウジョウバエ研究者にも、赤緑色盲の人は何
人も居ります。男女同数・200人の国際学会のセッションで赤+
緑の二重染色像のスライドを見せる場合、聴衆のうち10人には全
く意図が伝わらない、という事実は、認識しておいていただけま
すと嬉しいです。というわけで、論文やポスター・スライドを作
られる際は、どうしても赤+緑の組み合わせが避けられない場合
以外は、青+緑にするとか、各波長の単独画像と重ね合わせ画像
の両方を併置するなどしていただけると、「障害者に優しいプレ
ゼンテーション」になるので助かります。三重、四重染色でカラー
の組み合わせ写真“だけ”を載せるのも、同様の理由でなるべく
避けていただけると幸いです。
(余談ですが、マッキントッシュコンピューターのプログラマー
向けのガイドラインには、赤緑色盲の人でも判別できる色づかい
で画面をデザインすること、という1項が入っていました。)
                         いとうκ


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伊藤様/Jfly

再び、おじゃまします。

先ほどのメールで、フィルターのことばかり言いましたが、蛍光色素の選択について
、ひとつだけつけ加えて置いたほうがよいかと思います。

FITC と二重染色するのであれば、Cy3 やローダミンよりは、やはり Texas Red のほ
うが望ましいと思います。もちろん、現実的には、どの蛍光抗体が commercial に
available かによりますが。Texas Red は、もともとFITC とローダミンの間のかぶ
りを減らすために、ローダミンを mother compound として、より長波長にshift さ
せた derivative です。FITC/GFP とCy3/ローダミン を分けるには、bandpass の狭
い矩形フィルターが必要で、やはり明るさが犠牲になります。FITC/GFP とTexas Red
を分けるほうが容易であり、その分bandpass を広くとることができ、明るさをかせ
ぐことができます。

もうひとつ、考慮に入れないといけないのは、人間の眼の感度特性が FITCの蛍光を
ピークとして、ローダミン、 Texas Redと鈍くなることです。肉眼では FITC は明る
く、ローダミンは暗く、 Texas Red はさらに暗く感じます。しかし、CCD などのカ
メラを使うのであれば、赤から赤外にかけて感度のピークがあり、Texas Redは明る
く、逆にFITC は暗めです。

顕微鏡で最終的に得られる明るさは、蛍光色素そのものの分光学的な明るさだけでは
なく、用いるフィルターの透過特性やカメラの感度特性が関係します。また、どこま
で明るさを犠牲にできるか、どこまでかぶりを妥協できるか、いろいろな対立する要
素の兼ね合いになってきます。だから、それぞれの顕微鏡システムの事情でベストな
選択は異なってきます。だから、一言で言うのはむずかしいのですが、あえて2重染
色を成功させる秘訣を一言で言うと:

波長が互いに分別しやすい蛍光色素の組み合わせを使用し、
その蛍光色素に最適化した矩形フィルターを使うこと。

ところで、野島編の本の題名は、顕微鏡の使い方ノートです。

以上です。私はJflyメンバーではないが、私の研究室の原口徳子がメンバーなので、
この問題に関しては、私に回されてきた次第です。

At 4:23 PM +0900 99.3.16, ITO, Kei wrote:
> Jfly メンバーではありませんが、郵政省通信総研の平岡さんから、
> 貴重なご意見を頂きました。回覧いたします。   いとうκ

Yasushi Hiraoka
Section Chief, Structural Biology Section
Kansai Advanced Research Center
Communications Research Laboratory
588-2 Iwaoka, Iwaoka-cho
Nishi-ku, Kobe 651-2401, Japan
phone 81-78-969-2240
FAX 81-78-969-2249
E-mail yasushiアットマークcrl.go.jp


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Date: Wed, 17 Mar 1999 16:44:46 +0900
From: maokabeアットマークlab.nig.ac.jp (Masataka Okabe)
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?


> 脱線しますが、私は赤緑色盲なので、赤+緑の二重蛍光染色だと、
> 緑だけの部分と緑に赤がかぶさった部分(黄色)の区別が出来ま
> せん。フィルム写真の場合にはどうしようもないのですが、コン
> フォーカルなどの電子画像が発達したおかげで、ローダミン領域
> で撮った絵を赤のかわりに青チャンネルで表示して青+緑の画像
> にすることで、赤緑色盲の人でも区別が出来るようになりました。
> 青緑色盲や全色盲は比較的まれですが、赤緑色盲は白人男性の1
> 割を占めます。名前は挙げませんが、教科書など書いているよう
> なかなり高名なショウジョウバエ研究者にも、赤緑色盲の人は何
> 人も居ります。男女同数・200人の国際学会のセッションで赤+
> 緑の二重染色像のスライドを見せる場合、聴衆のうち10人には全
> く意図が伝わらない、という事実は、認識しておいていただけま
> すと嬉しいです。というわけで、論文やポスター・スライドを作
> られる際は、どうしても赤+緑の組み合わせが避けられない場合
> 以外は、青+緑にするとか、各波長の単独画像と重ね合わせ画像
> の両方を併置するなどしていただけると、「障害者に優しいプレ
> ゼンテーション」になるので助かります。三重、四重染色でカラー
> の組み合わせ写真“だけ”を載せるのも、同様の理由でなるべく
> 避けていただけると幸いです。
> (余談ですが、マッキントッシュコンピューターのプログラマー
> 向けのガイドラインには、赤緑色盲の人でも判別できる色づかい
> で画面をデザインすること、という1項が入っていました。)
>                          いとうκ

白人ほど有病者は多くないもの、日本人でも6%くらいの人が赤緑色盲です。有病率の
高い障害なのです。障害を持つ人々の行動を抑止する規定はあちこちにある割に、障
害を持つ人のことを考慮した対策はあまりないように思います。私も同じ障害を持っ
ていますが、自分に不利に働く状況では「生まれつきだからしょうがない。」と納得
してきました。トンネルの黄色のライトと出口にある赤信号を見分けるのに苦労した
り、学会のレーザーポインターが見えなかったりします。もう少し、障害を持つ人が
口に出して言えばいいんでしょうかね。医学部では「色覚に異常がないこと」が入学
の条件になっているところがほとんどです。自分が受験したときには、健康診断が2
次試験にないところを探すことからはじめました。自分の入学した大学(入学後健康
診断があるところ)では、入学後の健康診断で自分を含め数人の人が色覚検査に引っ
掛かり、みんな同じ理由でこの大学を受験したことを知り、同じことを悩む人が多く
いることを知りました。

そんなことで、僕は蛍光顕微鏡が大嫌いだったわけですが、コンフォーカルのおかげ
で2重染色を実験に使えるようになりました。でも学会で「緑の中に黄色がある」と
、まったく理解できません。
いとけいさんと同じ希望を持っていますが、今僕が書いている論文のfigureは「赤と
緑」の写真です。疑似カラーをつけた後は自分で見てもよくわかりません。やはり、
障害を持つ人から行動に出た方がいいのでしょうかね。このような運動が日本のショ
ウジョウバエ研究会からでも広がっていってくれるとありがたいですね。


岡部@遺伝研


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Date: Sat, 20 Mar 1999 11:34:32 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Cy3 not for double labelling?

At 4:44 PM +0900 1999.3.17, Masataka Okabe wrote:
> そんなことで、僕は蛍光顕微鏡が大嫌いだったわけですが、コンフォーカルのおかげ
> で2重染色を実験に使えるようになりました。でも学会で「緑の中に黄色がある」と
> 、まったく理解できません。
> いとけいさんと同じ希望を持っていますが、今僕が書いている論文のfigureは「赤と
> 緑」の写真です。疑似カラーをつけた後は自分で見てもよくわかりません。やはり、
> 障害を持つ人から行動に出た方がいいのでしょうかね。

Nature, Science など figure の枚数に厳しい制限のある雑誌だと難しい
でしょうが、full paper の雑誌なら、1つの染色標本について、抗体A
(白黒)、抗体B(白黒)、二重像(擬似カラー赤緑 or 青緑)の3枚を
並べるといいと思います。このようにやってある論文も、よく見かけます。
これは、色盲でない人にも2つのメリットがあります。

1:白黒印刷に比べ、カラー印刷は再現できる明暗レンジが狭い。従って、
  強い染色のある部分(白に近い部分)の階調が、白黒印刷ならつぶれ
  ないのに、カラー印刷だとのっぺりとした色につぶれてしまうことが
  あります。色がつぶれないようにするには、単に2枚の画像を重ね合
  わせるだけでなく、フォトショップで「ビュー→色域警告」をオンに
  して印刷すると色がつぶれそうな領域をえらび、「階調レベル」や
  「彩度」を細かく修正する必要がありますが、これは結構大変な時間
  と職人技が要求されますし、色も少し変になってしまい、scientific
  には「ちょっと。。。」になってしまいます。白黒データをそのまま
  印刷してもらった方が、素直にきれいな印刷が出来ます。

  Development 1997 年 3 月号 (Vol. 124 (4)) の表紙は、この号の
  私の論文の P. 767 にある Fig. 5B 左の図を拡大したものです。P. 767
  の本文中の絵は青と緑の画像をそのまま重ね合わせた擬似カラーで、
  2色の差はよく分かるものの、染色が濃いところの階調がのっぺりと
  つぶれてしまっています。(この写真はステレオで、2色それぞれの
  白黒版を併置すると場所を異様に食ってしまうので、断念しました。)
  表紙の方は、表紙用と言うことで気合いを入れて階調レベルや彩度を
  修正してあり、色をきれいにするのだけに1時間くらいかかっていま
  す。おかげで印刷はつぶれていませんが、2色の差は少し小さくなっ
  てしまい、科学的データとしての情報は減ってしまっています。(修
  正の結果、青・緑・赤の各チャンネルに、他のチャンネルの画像がす
  こしずつ混じり合ってしまっています。)

2:カラー印刷だと、カラーコピーしないと訳が分からなくなるけれど、
  白黒ならふつうの白黒コピー機でもかなりきれいにコピーできる。金
  持ちのラボだと写真は白黒だろうがカラーだろうが全部カラーコピー
  しちゃう人も多いようですが、世界的にはやはりカラーコピーがそれ
  ほどバンバン使えない人の方が majority でしょう。白黒のハッチン
  グで区別できるような概念図に、やたらと色を付けたがるのも、最近
  の悪い風習ですね。別刷りを請求するのでなく雑誌をコピーして読む
  人が大半である現状を考えると、「見栄えがいい」ことでなく、「コ
  ピーしても意図が伝わる」ことに重点をおいて図を作るのは、意外に
  大切な発想だと思います。

いとうκ