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マイクロインジェクター、デジカメ、DNA精製装置選定


Date: Fri, 13 Oct 2000 13:42:46 +0900
From: Shin SUGIYAMA
Subject: [Jfly] マイクロインジェクター

名大の杉山です
科研費申請の学内締めきりが来週なので、
機器選定に関する助言をお願いします。

1)マイクロインジェクター
ハエをtransformation するのにはエタノール法でのマイクロインジェクションをし
ていますが、
注入量はガラスシリンジを使って手動で空気圧で調節しています。
顕微鏡、マイクロマニピュレーターの操作も同時にするので結構煩雑です。
そこで電動のマイクロインジェクターでも欲しいのですが、
ハエの卵にDNAを射つのに適した機種があったら教えてください。
針詰まりの対処ができるか、針へのエタノールの逆流がないのかが心配です。

2)顕微鏡用デジカメ/ビデオ
200万画素以上。
高いものから安いものまでいろいろあると思いますが、
実際に使用した感想などを聞かせていただけるとありがたいです。
安いものを数年ごとに買い替えるか、
ある程度投資して長く使うか迷っています。
通常のビデオ撮影装置(30万画素ぐらい?)は既にあります。

3)DNA自動分離装置(Miniprep machine)
2-3年前にKURABOの人に話を聞いた時には
うちの研究室での需要からして価格(>500万)やランニングコストが高すぎると感
じましたが、
それからもっと安価でいい機械がどこかから出ているでしょうか?
使われている方がいましたら価格に見合うだけ有用だと感じているかどうか教えて下
さい。
主な使用は大腸菌からのプラズミドの少量精製です。

いずれも買うかどうかは決めておらず、
理想的なものがあった場合に申請するつもりです。


名古屋大学大学院生命理学研究科
生命統御大講座発生統御グループ助手
杉山伸

名古屋市千種区不老町
〒464-8602
052-789-5039(Phone)
052-789-2511(FAX)
Shin SUGIYAMA


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Date: Fri, 13 Oct 2000 16:54:55 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] マイクロインジェクター

At 1:42 PM +0900 2000.10.13, Shin SUGIYAMA wrote:
> 科研費申請の学内締めきりが来週なので、
> 機器選定に関する助言をお願いします。

> 1)マイクロインジェクター
> 3)DNA自動分離装置(Miniprep machine)

パス。。。

> 2)顕微鏡用デジカメ/ビデオ
> 200万画素以上。
> 高いものから安いものまでいろいろあると思いますが、
> 実際に使用した感想などを聞かせていただけるとありがたいです。
> 安いものを数年ごとに買い替えるか、
> ある程度投資して長く使うか迷っています。

私たち科学者は、よい写真をメディアに発表して読者の共感を得る、
という点で「プロの写真家」なわけですから、安いものを買うと、
露骨に作品の質(=実験データの説得力)に跳ね返ってしまうと思
います。通常のカメラの場合と同様、コンシューマー用に比べプロ
用クラスのデジカメはモデルチェンジが比較的ゆっくりですから、
むしろ貧乏な場合ほど、懐が許す限りの良いものをひとつ買って長
く使う方が、何度も買い換えるよりも結局安上がりなのではないか、
と個人的には思います。たとえば1993年発売の顕微鏡用デジタル
カメラ・コントロンProgress 3012は、8年経った現在でも、
“十分な明るさのある標本ならば”画質・解像度とも未だにトップ
クラスの性能で、買い換えの必要を感じません。(但し暗い蛍光標
本はぜんぜん駄目ですが。)これの後継機種 AxioCam は、価額も
半分近く、解像度も感度もレベルアップしています。現時点ではマッ
キントッシュ用のインターフェースが未発売で、Windows マシン
が必要になるのが人によっては欠点でしょうが、そこを気にされな
ければ、お勧めします。(一応マック対応版も発売予定、とのこと
です。)

実際に論文に載る絵のサイズを考えると、200万画素より大きいサ
イズは、事実上不要だと思います。DTP では写真原稿は 300 DPI
(1インチ=2.5センチにつき300画素)の解像度を要求されますか
ら、キャビネサイズで論文に絵を出そうという場合でも、15×10
センチ=6×4インチ=1800×1200=216万画素あれば十分です。
そんな大きいサイズで出すことはほとんどないでしょうから、ほと
んどのばあい150万画素(1500×1000)程度で十分です。表紙を
狙う場合でも (^ ^)、この場合は解像度はあまり要求されない場合が
多いので、よほどシャープな銀染色の写真を顕微鏡学会の会報に出
すのでもない限り、150万画素程度でじゅうぶんだと思います。

また顕微鏡の原理からして、光学的解像度(2つの点がひとつに融
合しないで見えるギリギリの距離)は
   光の波長/2×対物レンズの開口数
なので、開口数1.4の最高の油浸レンズを使った場合でも、緑色の
光(550nm)で解像度は200 nm =0.2 ミクロンです。20倍の対
物レンズですと、開口数0.5ですから解像度は0.5 ミクロン、10倍
だと開口数0.3で解像度は0.9ミクロン程度です。

顕微鏡用デジカメで撮影できる視野は、機種によって少々違うと思
いますが、ツァイスの顕微鏡+0.6倍アダプター+Progress の場合
で、10倍対物レンズで画面に映る範囲の横幅は1360ミクロンでし
た。100ミクロン当たり110個の点しか解像できないのですから、
これを撮影するには1500画素(150万画素CCDの横幅)があれば
十分です。ツァイスの対物レンズの中で視野の広さの割に一番解像
度が高い20倍・開口数0.75のレンズでも、視野は680ミクロン、
解像度0.367ミクロンなので横幅1850画素でじゅうぶん。100倍・
開口数1.4のレンズなら、視野は136ミクロンしかないので、692
画素あれば実は十分なのです。それ以上の画素数は、「画面の滑ら
かさ」には影響しますが、実質的な情報量は増えません。

というわけで、デジタルカメラが今後どんなに性能向上して安くな
ろうとも、300万画素クラス以上の解像度は、あまり意味がないと
いうことになります。むしろ画素数がむやみに大きいデジカメは、
画素1つ当たりのサイズが小さいので、色再現性やノイズ発生の点
で不利です。(この理由で、市販の10万円弱のデジカメはすべて、
300万画素クラスより200万画素クラスのものの方が、ノイズが少
なく発色がきれいで、暗いところや逆光に強いと言われています。)

なお、ノマルスキーや明視野でなく、蛍光を撮影されるのが主目的
であれば、カラーのカメラは色フィルターが入っている分、どうし
ても不利です。単色蛍光を観察するのであれば、割り切ってモノク
ロタイプを買った方がノイズなどの点で満足できると思います。二
重三重染色などの場合は、フォトショップなどで自由に色を付けら
れますから。日本ローパー(ライカ扱い)の冷却 CCD カメラ
MicroMax はお勧めできます。

いとうκ


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Date: Fri, 13 Oct 2000 20:11:05 +0900
From: 上田龍
Subject: [Jfly] マイクロインジェクター

> 1)マイクロインジェクター

どなたか返信があるかと思いましたが...
Eppendorfのトランスジェクター5246を使ってます。いまはフェムトジェットという
機種に変更になったのかな。新しいモアイみたいなインジェクターは簡素化されて幾
分安くなっていますが、使い勝手は悪そうです。

5246ではなにより針を自分で作らなくても出来合を購入できるのがうれしいですね。
針詰まりがご心配のようですが、はっきり言って詰まります。これはフェムトチップ
という針の内径が0.5umであることに起因するのですが、1)プラスミドの精製をセ
シウムで行うと実用上問題ありません。あるいは最近、2)カラムで精製したプラス
ミドをいったん0.45umのフィルターを通し、それからEt沈するとほぼ問題ないことが
わかりました。ただし菌の中で非常に増えにくいプラスミドの場合は、一定量のDNA
を得るために濃縮をかけなければいけないのですが、その場合はやはりゴミが集まる
のでしょう、苦労します。また、3)フェムトチップの代わりにトランスファーチッ
プという、内径4um/外径7umの先端を斜めに研いだ針を売ってますが、これだとおそ
らく針詰まりの問題は起きないと思います(まだ試していません)。これらの針は手作
業で作っているから(あたりまえか)、結構太さにばらつきがありますが、自分で作
っていたときより遙かにラクチンで、是非使用されることをお勧めします。

話は飛びますが、トランスファーチップに関してエッペンドルフ・ヤトロンに聞いた
とき、東大の先生がハエの卵にインジェクションするのにこれが適しているからとい
って愛用されているということでした。もしこのMLをご覧になっていたら情報をいた
だけると嬉しいです。

もう一つ、杉山さんが心配されている、エタノールの逆流ですが、これらのインジェ
クターは一定の内圧を維持圧としてかけられるので逆流は起きないと思います。(私
は相変わらずオイルに沈めて打ってます(正確には、打って貰ってます(^-^;))。)


> 2)顕微鏡用デジカメ/ビデオ

啓さんのポストに加えて。
NIKONのDXM1200というのはZeissのAxioCamの対抗機種ですが、価格は1/3に近いくら
いでお買い得です。ピエゾでCCDを動かして1200万画素を実現しているところはコン
トロン/ツァイスの特許に触れなかったのかしら。
AxioCamとDXM1200をデモして貰ったところ、私には差は感じ取れませんでした。それ
よりも実体顕微鏡の性能の方が遙かに影響大です。前者は感度を上げるため軽く冷却
しており、後者はソフト的に感度を上げています。明るい蛍光は取れると書いてあり
ますが、顕微鏡で試す時間はありませんでした。
それよりも1200万画素で撮ったデモ画像を今開いてみたのですが、30MBもあって現実
的ではないですね。それと今気が付いたのは(ニコンの方で)、ハエの剛毛のような
コントラストの高い被写体には陰の部分で偽色が出てますね。もちろん全体としては
現在使っているHC-1000(古い!)に比較して遙かに綺麗に見えますけど。

>
> 3)DNA自動分離装置(Miniprep machine)
>

パスです。


............................................................................
上田龍
発生遺伝研究グループ
先端研究部門
三菱化学生命科学研究所
〒194-8511 町田市南大谷11号
phone:042-724-6234
fax: 042-724-6314

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Date: Mon, 23 Oct 2000 16:10:03 +0900
From: Shin SUGIYAMA
Subject: [Jfly] マイクロインジェクター

名大の杉山です
科研費の書類は出しました。
いとけい、上田さん、助言ありがとうございました。

マイクロインジェクターはフェムトジェットがいいと他からも言われました、
デジカメは高解像度ならばNIKONのDXM1200がいいのではないかと思っていますが、
やはりwindowsしか対応してないのは少し抵抗があります。
導入する事になってもかなり先になりますが、
その時は報告します。