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翅原基の細胞周期とハエのX線感受性


Subject: [Jfly] Genome sequencing of other species
From: Takao Koana
Date: Mon, 17 Dec 2001 16:51:56 +0900

Jflyの皆様

 鉄道総研の小穴です。文献(梁 環境変異原研究 9 55−65、1987)
によるとX線の変異原性を翅毛スポットテストで見ると、変異スポットの出現頻度
が2齢から蛹の初期までの約80時間に1000倍に増える、ということです。
これがすべて標的細胞の増加によるとすると2の10乗が1024なので、翅の
原基細胞の分裂周期は8時間という計算になりますが、これは正しいでしょうか。
どなたか翅原基の細胞周期を教えて下さいませんか。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
小穴孝夫
(財)鉄道総合技術研究所 環境工学研究部・事業推進室
〒185-8540 国分寺市光町2-8-38
tel 042-573-7316 fax 042-573-7349
JRtel 053-7316 JRfax 053-7349
e-mail koanaアットマークrtri.or.jp


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Date: Tue, 18 Dec 2001 00:57:12 +0900
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc
From: "Koichi YAMAGUCHI"

小穴様 Jflyの皆様

広島大学大学院M2の山口孝一です。

最近読んだ論文に小穴先生の質問に関係することが書いてありました。
参考になるかどうかわかりませんけれど。

E. W. Vogel "Test for recombinagens in somatic cells of Drosophila"
(Mutation Research, 284 (1992) 159-175)

上記の論文によると、翅原基の細胞分裂の平均時間は8.0-10.6時間で、
一齢幼虫の初めには約10個だった原基の細胞数が蛹の初期には30000個に達する、
とまとめられています。

また、この根拠として他の論文を引用しています。

P. J. Bryant Dev. Biol., 22 (1970) 389-411


それから(これは質問なのですけれど)、翅スポットの出現頻度は
target cells の数だけでなくX線の照射時期による死亡個体の数にも
影響を受けるということはないのでしょうか?
三齢幼虫よりも一齢幼虫のほうが、X線をあびたときに
死にやすそうな気がしたものですから。

--
山口孝一 YAMAGUCHI, Koichi
広島大学生物圏科学研究科 生物機能科学専攻
細胞遺伝学 日下部研究室
koichiアットマークhiroshima-u.ac.jp [laboratory]
koichiyamaguchiアットマークpdx.ne.jp [cellular phone]

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Subject: [Jfly] Wing imaginal disc
From: Takao Koana
Date: Tue, 18 Dec 2001 12:25:21 +0900

山口孝一様

>上記の論文によると、翅原基の細胞分裂の平均時間は8.0-10.6時間で、
>一齢幼虫の初めには約10個だった原基の細胞数が蛹の初期には30000個に達する、
>とまとめられています。
>
貴重な情報をありがとうございました。


>それから(これは質問なのですけれど)、翅スポットの出現頻度は
>target cells の数だけでなくX線の照射時期による死亡個体の数にも
>影響を受けるということはないのでしょうか?
>三齢幼虫よりも一齢幼虫のほうが、X線をあびたときに
>死にやすそうな気がしたものですから。

確かにそういうこともありそうですが、ハエのX線感受性はヒトよりも
ずっと鈍く、野生型のLD50はヒトの10倍近い値ですので、原基細胞の
アポトーシスは別として、個体としての致死効果は5Gy程度の照射では
考えなくてもいいと思います。

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小穴孝夫
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Date: Wed, 19 Dec 2001 12:47:25 +0900
From: 上田龍
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

> 確かにそういうこともありそうですが、ハエのX線感受性はヒトよりも
> ずっと鈍く、野生型のLD50はヒトの10倍近い値ですので、原基細胞の
> アポトーシスは別として、個体としての致死効果は5Gy程度の照射では
> 考えなくてもいいと思います。

ハエはゲノムサイズの割に修復機構が発達しているのでしょうか?
致死遺伝子の割合がハエとヒトとで大幅に違うということは考えにくいのですけれど
も。

............................................................................
上田龍
遺伝子機能研究ユニット
トランスレイショナル研究部
三菱化学生命科学研究所
〒194-8511 町田市南大谷11号
phone:042-724-6234
fax: 042-724-6314
...........................................................................


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Date: Wed, 19 Dec 2001 13:34:45 +0900
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

At 12:47 12/19/01 +0900, 上田龍 wrote:

>> 確かにそういうこともありそうですが、ハエのX線感受性はヒトよりも
>> ずっと鈍く、野生型のLD50はヒトの10倍近い値ですので、原基細胞の
>> アポトーシスは別として、個体としての致死効果は5Gy程度の照射では
>> 考えなくてもいいと思います。
>
>ハエはゲノムサイズの割に修復機構が発達しているのでしょうか?
>致死遺伝子の割合がハエとヒトとで大幅に違うということは考えにくいのですけれど
>も。

5Gyというのは、成虫に照射した場合の話ですよね。成虫の体細胞は
分裂しないので、染色体がずたずたになってもなんとかやっていけると
いうことではないでしょうか。

ですから、生殖細胞のように分裂している細胞はだめで、減数分裂期に
5Gy照射したら、ほとんど不妊になってしまいます。成熟精子でも、
いわゆる「優性致死」突然変異がいっぱい生じ、孵化率は極端に下が
りますね。

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Wed, 19 Dec 2001 13:57:52 +0900
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc
From: Naoto JUNI

想像ですが、polytene化しているからじゃないですか。一本の染色体が切断されても、
ほかのコピーで修復したり、機能をカバーしたり出きるのでは。
一本の矢はたやすく折れるけれど、3本の矢を束ねると折れないというやつで。
反対に、polytene化していない原基細胞や生殖細胞に対しては、より低いDoseで影響
が現れるのではないでしょうか。
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従二 直人 じゅうに なおと
早稲田大学 人間科学部 人間基礎科学科 遺伝学教室(山元研究室 東伏見)
〒202-0021 東京都 西東京市 東伏見2-7-5
Phone: 0424-50-5824 Fax: 0424-50-5825
e-mail: njuniアットマークmn.waseda.ac.jp
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Subject: [Jfly] Wing imaginal disc
From: Takao Koana
Date: Wed, 19 Dec 2001 15:13:00 +0900

>>ハエはゲノムサイズの割に修復機構が発達しているのでしょうか?
>>致死遺伝子の割合がハエとヒトとで大幅に違うということは考えにくいのですけれど
>>も。
>
>5Gyというのは、成虫に照射した場合の話ですよね。成虫の体細胞は
>分裂しないので、染色体がずたずたになってもなんとかやっていけると
>いうことではないでしょうか。
>
言葉足らずでしたが、これは幼虫に照射した場合の話です。mei-41のホモでも
1Gyくらいで羽化率が下がることはありません。ただし奇形が増えます。
ヒトよりもハエでよく働く修復機構があるとすれば光回復だと思います。ヒトの
場合、光回復酵素の活性は同じでも皮膚以外では働かないのではないせしょうか。

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Date: Thu, 20 Dec 2001 10:12:30 +0900
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

小穴様 上田様 皆様

At 15:13 12/19/01 +0900, Takao Koana wrote:

>>5Gyというのは、成虫に照射した場合の話ですよね。成虫の体細胞は
>>分裂しないので、染色体がずたずたになってもなんとかやっていけると
>>いうことではないでしょうか。
>>
>言葉足らずでしたが、これは幼虫に照射した場合の話です。mei-41のホモでも
>1Gyくらいで羽化率が下がることはありません。ただし奇形が増えます。
>ヒトよりもハエでよく働く修復機構があるとすれば光回復だと思います。ヒトの
>場合、光回復酵素の活性は同じでも皮膚以外では働かないのではないせしょうか。

すみません。前の記事で、数字を1桁間違いました。ほとんど不妊にな
るというのは50Gyくらいの話でした。5Gy程度では致死効果は考えなくて
いいというのはそのとおりですね。
(いまだにGyとradの換算を間違えます(^^ゞ) 
以前に、学生実習で翅のspot testをやっていたことがありますが、その
ときは、幼虫に10Gy位照射していました。3令幼虫ですと、このくらい
照射しても羽化率はほとんど下がりませんが、1〜2令幼虫の場合には、
ハエの数を集めるのに苦労した記憶があります。やはり、細胞がどんどん
増殖している時期には感受性が高いと思います。

という次第で、ショウジョウバエの修復機能が高いというのは、ちょっと
信じ難いような気がします。自然突然変異率や、Muller以来の放射線誘発
突然変異率の推定値をみても、他の多細胞生物と大差ないですし。(これ
は生殖細胞の話だといわれると、それまでですが)


--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 20 Dec 2001 14:20:31 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

At 10:12 AM +0900 01.12.20, Yoshiaki FUYAMA wrote:

> 以前に、学生実習で翅のspot testをやっていたことがありますが、その
> ときは、幼虫に10Gy位照射していました。3令幼虫ですと、このくらい
> 照射しても羽化率はほとんど下がりませんが、1〜2令幼虫の場合には、
> ハエの数を集めるのに苦労した記憶があります。やはり、細胞がどんどん
> 増殖している時期には感受性が高いと思います。

ぜんぜん脱線しますが、「放射能の恐怖」の話題が出るたびに気になってい
たので、ついでに質問させて下さい。

過去100年近く、放射線をハエに当てて突然変異を起こさせる実験が大量に
行なわれてきたわけですが、「ハエが巨大化した!」例というのはあるので
しょうか?ゴジラほどではなくとも、せめて1割か2割でも。

いとうκ


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Date: Thu, 20 Dec 2001 15:28:17 +0900
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

伊藤様 皆様

At 14:20 12/20/01 +0900, ITO, Kei wrote:

>過去100年近く、放射線をハエに当てて突然変異を起こさせる実験が大量に
>行なわれてきたわけですが、「ハエが巨大化した!」例というのはあるので
>しょうか?ゴジラほどではなくとも、せめて1割か2割でも。

成虫では知りませんが、幼虫だとl(2)giant larvaeというのがありますね。
FlyBaseによれば、l(2)gl[2]というのはUV照射でとれたんだそうです。

唾腺染色体を見るのに便利だから欲しいという注文がときどきあります。

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Thu, 20 Dec 2001 16:33:16 +0900
From: Hiroshi Matsubayashi
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター松林です。

> 過去100年近く、放射線をハエに当てて突然変異を起こさせる実験が大量に
> 行なわれてきたわけですが、「ハエが巨大化した!」例というのはあるので
> しょうか?ゴジラほどではなくとも、せめて1割か2割でも。
> > いとうκ
>
放射線で取ったのか知りませんが

Drosophila Tsc1 Functions with Tsc2 to Antagonize Insulin Signaling in
Regulating Cell Growth, Cell Proliferation, and Organ Size.
Cell, Vol. 105, 357-368, May 4, 2001

The Drosophila Tuberous Sclerosis Complex Gene Homologs Restrict Cell
Growth and Cell Proliferation.
Cell, Vol. 105, 345-355, May 4, 2001

なんていうのがあります。この突然変異では細胞自体も大きくなり、論文の写真で見
ると複眼(体細胞モザイク)などかなり大きくなってます。


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Date: Thu, 20 Dec 2001 09:20:55 +0100
Subject: [Jfly] [Jfly] Wing imaginal disc
From: Tomoatsu Ikeya

on 01.12.20 6:20 AM, ITO, Kei at itokeiアットマークnibb.ac.jp wrote:
いとけい様 
単にX rayを当てただけの巨大ハエ、スクリーニングの例については
私の勉強不足でしりません。ただ、Xray照射による、FRT/FLP screening
では、gigas/TSC2 が最も、いとけいさんの答えとして相応しいかもしれません。
ただ、基本的にcell cycleが絡み、overgrowthを伴う、tumor suppressorの遺伝子が
取れてくることが多いので、その多くはlethalのような気がします。

EMSを用いた、私が目にしたもので、最も巨大な成虫はPTENのweak alleleです。
homozygoteでviableなのですが、これを18℃で飼ったものは

それは、形はハエですが、140%くらい巨大です。笑っちゃいます。
この間、ラボで、そのハエが飛べるかどうか、賭をしました。
結果は、飛べない、いや、正確に言うと、飛びたくない
つまり、insulinシグナルがonになりっぱなしなので、
彼等は代謝的に満たされており、動きたくないのだろう
というのが、discussionでした。

従って、より巨大なハエがXrayによって出現したとしても、彼等は
決して正月映画のスクリーンにでてくるほど、凶暴ではなく、
コタツでみかんでもすすりながら、正月番組をみているのではないかと
想像されます。

あまり、よい解答では、ありませんでしたが、、。

私も来年は、より大きなハエの作製に専念したいと希望します。

いけや


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Date: Fri, 21 Dec 2001 20:53:49 +0900
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc
From: Naoto JUNI

蛇足ですが、mutagenesisを盛んにやっていた頃、不思議に思っていたことなので、
もう少し引っ張らせてください。

ショウジョウバエにガンマ線・X線でmutagenesisをかけるとき、妊性をほぼ完全に
保ったまま変異率を最大にするというdoseということで30-40 Gyが適当だと言います。
ガンマ線・X線のばあい 1 Gyは約1 Svなので、このdoseは、30-40 Svに相当します。
ところが、放射線取扱者講習で習ったところによると、ヒトでは、7 Sv以上の全身照
射で100%死亡(ほぼ即死だったと記憶します)、生殖腺に5 Svの照射で不可逆的不妊
というではないですか。これにはちょっと驚きました。まあ、頭を切り落とされても、
しばらくはひょこひょこ歩き回っているような奴らだから、ヒトのような繊細な生き
物とは違うのかなあ、くらいに思っていました。

あらためてGray Bookをひいてみると、成虫に照射した場合、寿命の短縮が起こり始
めるのが20 kR (200 Gy 相当!)以上で、寿命が半分になるのが50 kR (500 Gy 相
当!!)、100 kR以上あてると約4日で死ぬ(4日も生きてる!!!)とあります(換算合っ
ているかな?)。また、このように放射線耐性が高いのは、双翅目と鱗翅目に一般的
であるという記述も見られます。

いずれにしろ、少なくとも致死性とか妊性などの表面的な現象だけ見る限りでは、ショ
ウジョウバエはヒトとは比べものにならないくらい放射線耐性があるのですね。不妊
化が生殖細胞の放射線感受性をダイレクトに反映しているとすると、生殖細胞です
ら10倍以上の耐性があることになります。

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従二 直人 じゅうに なおと
早稲田大学 人間科学部 人間基礎科学科 遺伝学教室(山元研究室 東伏見)
〒202-0021 東京都 西東京市 東伏見2-7-5
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Date: Sat, 22 Dec 2001 16:16:16 +0900
From: fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp (Yoshiaki FUYAMA)
Subject: [Jfly] Wing imaginal disc

従二様 皆様

At 20:53 12/21/01 +0900, Naoto JUNI wrote:

>ところが、放射線取扱者講習で習ったところによると、ヒトでは、7 Sv以上の全身照
>射で100%死亡(ほぼ即死だったと記憶します)、生殖腺に5 Svの照射で不可逆的不妊
>というではないですか。これにはちょっと驚きました。

東海村の臨海事故で亡くなった大内さんの被曝線量は17Svと推定されて
いますが、即死ではなかったですよ(約2ヶ月後に亡くなった)。もち
ろん、致死線量をはるかに越えていましたから、助からないとは思いま
したが、死因は、造血機能や腸の粘膜細胞、皮膚などの分裂組織がだめ
になったためですね。

というわけで、「細胞が分裂しないから」説に、まだ、こだわります。

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiakiアットマークc.metro-u.ac.jp


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Date: Mon, 24 Dec 2001 15:50:37 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] [Jfly] Wing imaginal disc

At 9:20 AM +0100 01.12.20, Tomoatsu Ikeya wrote:

貴重なご意見、ありがとうございます。

> 従って、より巨大なハエがXrayによって出現したとしても、彼等は
> 決して正月映画のスクリーンにでてくるほど、凶暴ではなく、
> コタツでみかんでもすすりながら、正月番組をみているのではないかと
> 想像されます。

たしかにハエの食餌様式を考えると、ミカンも「すする」という感じに
なりそうですね。

巨大怪獣たちは、もとになった(はずの)イグアナなどの生物にくらべ、
図体がでかいので破壊力は大きいようですが、スケールあたりで考える
と、行動はむしろ鈍重になっているように見えます。また、日本の作品
ですと、彼らがものを食べているシーンは、ほとんど出てきません。従っ
て、

> つまり、insulinシグナルがonになりっぱなしなので、
> 彼等は代謝的に満たされており、動きたくないのだろう
> というのが、discussionでした。

というのは、ゴジラたちにも当てはまりそうです。一方ハリウッド版ゴ
ジラでは、ゴジラは時速数百キロでビルの谷間を走り回り、魚を捕まえ
てバクバク食べていましたから、insulinシグナルがonになりっぱなしで
はないようです。つまり、東宝版とハリウッド版では、同じ放射線によっ
て巨大化したのであっても、変異を起こした原因遺伝子は異なると推察
できますね。 (ホントか?)

ただ、体長がたとえば2倍になった場合、腕を振り回すのに必要なエネ
ルギーは、単純に質点近似するとして腕の先の運動エネルギーが1/2mv^2
ですから、m(質量)はスケールが2倍なら2の3乗で8倍に、v(速度)
は単純に2倍、従って運動エネルギーとしては2の5乗で32倍必要にな
ります。体長の大きな生物が、小さな生物と同じように敏捷に体を動か
す動き回るには、ものすごく量のエネルギーが必要と言うことになりま
すね。いちどに食べられる量は腸内の体積に比例するので2の3乗で8
倍、吸収効率は腸の表面積に比例するので2の2乗で4倍にしかなりま
せんから、代謝系にはかなりの負担がかかりそうです。大きな生物ほど
鈍重に見えるのは、仕方ないことなのかも知れません。

ということで、

> 私も来年は、より大きなハエの作製に専念したいと希望します。

ぜひ体長の変化に対応した、代謝系諸遺伝子の発現量調節の変化を、運動
量の変化と関連づけて、調べてみて下さい。^_^;


蛇足ですが、一時制作が中断していたゴジラの復活第一作(沢口靖子のデ
ビュー作のやつ)では、ゴジラに立ち向かう主人公の科学者は、「ショウ
ジョウバエの遺伝子組み替え」が専門ということになっています。新宿の
超高層ビルに私設の研究所を構えて、ハエのバイアルをたくさんならべて
研究してます。こういうばあい、組み換えDNA実験の安全委員会はどうす
るのだろうとか、悩んでしまいますが。

いとう


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From: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] [Jfly] Wing imaginal disc
Date: Mon, 24 Dec 2001 16:38:56 +0900

Reply to "ITO, Kei" about [Jfly] [Jfly] Wing imaginal disc.

>蛇足ですが、一時制作が中断していたゴジラの復活第一作(沢口靖子のデ
>ビュー作のやつ)では、ゴジラに立ち向かう主人公の科学者は、「ショウ
>ジョウバエの遺伝子組み替え」が専門ということになっています。新宿の
>超高層ビルに私設の研究所を構えて、ハエのバイアルをたくさんならべて
>研究してます。こういうばあい、組み換えDNA実験の安全委員会はどうす
>るのだろうとか、悩んでしまいますが。


 このゴジラ復活第一作に出てくるハエのバイアル、プラスチックス性の
「高度封じ込め装置」などは当時の東大堀田研の提供です。動き回ってい
るハエも瞬間的ですが出演してます。お見逃しなく。私は役得として撮影
中の現場を見せてもらって「なんという大*役者だ!」と言いながら沢口
靖子と握手してきました。こんなに有名になるとは予想出来ませんでした。
(沢口さんがですよ) ゴジラの縫いぐるみの中で演技しているおじさん
役者の滝のような汗がとても印象的でした。こちらは無名のままです。

堀田凱樹
--------------------------------
Yoshiki Hotta, Director-General
National Institute of Genetics
Mishima, Shizuoka 411-8540 Japan
Tel: +81-559-81-6700
Fax: +81-559-81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
---------------------------------------
国立遺伝学研究所 所長
総合研究大学院大学
 生命科学研究科 遺伝学専攻長  〒411 静岡県三島市谷田 1,111
電話:(0559) 81-6700, FAX:(0559) 81-6701
E-mail: yhottaアットマークlab.nig.ac.jp
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