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抗体の作製法


Date: Wed, 25 Sep 2002 12:19:05 +0000
From: Hiroshi Matsubayashi
Subject: [Jfly] 抗体作製

LFlyの皆さま
京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センターの松林です。
ショウジョウバエのタンパク(一つは885aa、もう一つは944aa)に対する抗体を作製
したいと考えています。主な用途は組織染色です。タンパクの扱いも不慣れなことも
あり外注にだそうと考えています。そこで質問なのですが、

1、合成ペプチドで作製する抗体と大腸菌等で合成したタンパクを抗原として作製す
る場合のメリット、デメリットについてお教え願います。
2、大手から小さいところまで様々な所で抗体作製やっていますが、ずばり御薦めの
会社があったら教えてください。抗体作製に対する技術はもちろんですが、値段、う
まく行かなかったときの保証等、どんなことでもいいですから情報お願いします。

松林宏
京都工芸繊維大学
ショウジョウバエ遺伝資源センター


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Date: Mon, 7 Oct 2002 09:21:50 -0500
Subject: [Jfly] Re: [Jfly] 抗体作製
From: Shintaro Tanoue

松林様:

ヒューストン大生物・生化学学部の田ノ上です。私自身抗体作成の経験
があるのですが、タンパク質分子そのものの特性の研究をされる予定
がなければ、コストは高くつくけど合成ペプチドを抗原とされた方が時間のロス
が少ない、確実に純度の高い抗原が得られる、という点からお勧めします。
タンパク質を抗原とする場合、問題点として(1)大腸菌等で高い効率で発現
できるか(同じ生物種由来のタンパク質なら高い効率で発現可能ですが、違う
生物種の場合うまくいかない例が多いです。松林さんの場合、アミノ酸配列
が855aa、944aaと高分子蛋白なので、分子量をなるべく4万以下になるような
ドメインを探された方がいいでしょう)(2)大腸菌から抗原蛋白を高純度で
精製できるか(たいていグルタチオンチオトランスフェラーゼや
ヒスチジンタグを融合させて発現させてこれらの特性を利用して、効率良く精製
している方法が数多くの論文でとられています)(3)蛋白精製は大変な
肉体労働である、ことがあげられます。一方、合成ペプチドを抗原とする場合、
問題点として(1)設計したペプチド配列がタンパク質分子の表面に存在
するかは三次元構造が分からない限り、構成するアミノ酸の親水性から推定
するしかない(2)設計したペプチド配列部分が生体内では糖鎖、リン酸化
などの化学修飾を受けている場合がある、があげられます。抗原とするタンパク
質の特性についていろいろと文献を調べるしかありませんね。あと設計される
ペプチド配列と類似の配列を持つタンパク質が存在しないことを
ショウジョウバエゲノムデータベースのBLASTsearchで確認された方
がいいでしょう。ペプチドであれば合成もルーチンワークで業者に頼めば確実に
作成してくれるでしょう。ただペプチド配列によっては合成時、副生成の
ペプチドができたりするケースがありますので、業者と相談された方
がいいでしょう。私自身、20残基のペプチド合成をある業者(正確に記憶
していません。申し訳ありません)に依頼したことがありますが、
「マススペクトル解析による純度検定の結果、副生成ペプチドが存在
しますので、キャンセルされるか、さらに2か月ほどかかりますが新しく作り直
します」という返事をもらった経験があります。
では、いい結果が得られることを祈っています。

田ノ上 信太郎