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日本の学会発表も英語でやるべきか?


Date: Tue, 19 Nov 2002 00:36:33 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

ハエとはちょっと離れますがひとつ議題提起。

先日縁あって、韓国の分子生物学会のサテライトシンポジウムに参
加させていただきました。我々のシンポジウムは半分が外国人スピー
カーだったので、口演も英語、付随するポスター発表も英語だった
のはまあ日本と同様なのですが、面白かったのはメインの学会の一
般発表が、予稿集もふつうのポスター発表も、ぜんぶ英語だったこ
とです。日本の学会同様、外国人ゲストはいくつかのシンポジウム
に招待されているだけなので、日本のふつうの学会なら当然のごと
く予稿集や一般発表は全部日本語(下手をするとシンポジウムでも
外国人演者以外は日本語)にするところですが、韓国の分子生物学
会では、それが全部英語なわけです。

これは助かりました。これなら韓国語ができない私でも、安心して
韓国に留学したり、ポスドクに行ったり、教授にアプライしたりで
きそうです(笑:韓国の他の学会がどうなのかは、調べる必要があ
りますけど・・・)

いや、これって笑い事じゃなくて、日本の学会って予稿集も発表も
ほとんど日本語ですよね。外国の人にはとても辛いと思います。シ
ンポジウム等に外国から誰かを招待した場合、他の発表は日本語ば
かりですから、シンポのオーガナイザーはゲストに「シンポのとき
以外は適当に他の発表でも聞いててね」と言うことができません。
仕方ないので自分も学会を休んで、名所観光に連れてったりするわ
けです。

私たちが国際学会に呼ばれたときって、自分の出番以外は他の発表
を自由に聞いて、知的刺激や情報を得るところがとても多いです。
でも日本の学会のシンポに招待される外国人には、そういう機会が
奪われていて、名所観光しかさせてもらえない。これってある意味
かなり「意地悪」ですよね。

日本に留学している学生さんや、修行に来ているポスドクの人は、
もっとかわいそうです。ある国に留学したりポスドクとして働いた
りというのは、所属する研究室でいろいろ教わるだけでなく、その
国のその分野の科学のコミュニティーに仲間に加えてもらい、いろ
いろ知り合いを作り、教えてもらうというメリットも大きいと思い
ます。というか、それがないと意味がないと思う。でも、よほど日
本語ペラペラにならない限り、そこに参加するのは難しいわけです。

私はポスドクはドイツで修行しました。いくつか参加してた学会は、
「ヨーロッパ○○」のような学会はもちろんローカルの学会でも、
アブストラクトも発表も英語の場合が多かったです。ドイツの学会
では、近隣のデンマークとか北欧諸国からも参加する人が多いので
すが、これらの人が集まると、共通のコミュニケーション手段は英
語しかありません。だから、アメリカ人やイギリス人がまったく会
場に居なくても、みな英語でしゃべる。別に語学学習の努力を怠っ
ている英米の怠け者(笑)に合わせてやってるんじゃないわけです。

とはいえ、科研費の重点研究の班会議(のドイツ版)なんかだと、
さすがに発表もドイツ語ばかりです。こういう時はやはり辛かった
です。ドイツにポスドクに行ったのは別にドイツ語ペラペラになる
のが目的じゃありませんから、研究の合間にドイツ語の習得にさけ
る時間には限りがあります。たとえ辞書を引き引きバッハの宗教曲
をぜんぶ訳せる程度にはドイツ語ができたって(自慢 ^_^;)、予稿
集や発表、ディスカッションのドイツ語を理解するのは無理です。
日常会話でなるべく現地の言葉を覚えてそこの社会に溶け込むべき
だという話と、自分の将来がかかった職業の場では語学のせいでハ
ンディを負いたくないという話は、別次元の話です。私にとって、
もしドイツの学会がドイツ語ばかりだったとしたら、ドイツに何年
居たって、自分のラボの周囲の限られた人間以外には知り合いも増
えず、全体の動向もよく分からず、非常に悔いの残るポスドク体験
になったことでしょう。

いま日本に来ている外国人の留学生、ポスドクの人は、そういう目
に遭っているんだと思います。日本語ペラペラになる覚悟がない限
り、せっかく世界でも有数のレベルに達している(はず)の日本の
各種学会から、刺激を受けることができない。冷静に情勢判断がで
きる優秀な研究者(の卵)なら、そんな日本にわざわざ来ようとは
あんまり思わないでしょう。大学院やポスドクに来たいという相談
を外国の方から受けることもありますが、学会での交流が非常にハ
ンディキャップであることを考えると、どうしても日本に来ること
を手放しで推薦できません。ましてや PI として日本に来て、スムー
ズにコミュニティーに溶け込んで活躍することは、ほぼ絶望的です。

ネイティブのアメリカ人やイギリス人なら、外国語の1つくらい覚
えた方が本人のためですから日本語の修得を義務づけてもいいと思
いますが(笑)、他のヨーロッパ人やアジア諸国の人に、英語に加
えて日本語もペラペラになることを要求するのは、ちょっとかわい
そうな気がします。また、アジア諸国の経済に余裕ができ、今アメ
リカでバリバリやってる韓国人や中国人が本国に戻りだすと、10年
20年後にはどんどん一級の科学大国になってくると思いますが、い
まヨーロッパがやっているようにアジア地域の諸国が密接に交流し、
まとまって力を発揮していくことを考えた場合、日本が今後アジア
地域の科学振興にイニシアチブを取ることは難しそうです。これら
の国の人は日本の学会に飛行機で数時間で参加できるわけですが、
語学の壁がある限り、彼らが日本の学会にわざわざ参加してみよう
という気にはならないでしょうから。

外国からの研究者を増やそうと、所内のセミナーやアナウンスを英
語にしてがんばっている研究機関等もありますが、1施設がどんな
に努力しても、研究者のコミュニケーションの場である学会が今の
状況では、なかなか難しいものがあります。

「発表はぜんぶ英語にしちゃおうよ」という学会は、なんでまだ現
われないのでしょう?「学会なんて別に英語にしたっていいんじゃ
ないの?」と言われる方もいらっしゃいますが、現実問題としてそ
ういう動きを示した学会は、私の知る限り皆無です。やはり、抵抗
は大きいのでしょうか?
・・・・・・

と思ってこのメールを書きかけていたところへ、日本神経科学会か
ら来年の学会の案内が来ました。来年の大会ではこれまでと打って
変わって、
  ・演題、アブストラクトは全て英語
  ・ポスター発表も原稿は全て英語(ただし日本語の要約も付ける)
  ・口演は、シンポジウムは全て英語
  ・一般の口頭発表のみ英語もしくは日本語
となるそうです。

「本大会には常に外国からの参加者があり、最近は近隣アジア諸国
からの参加者を増えつつあります。このような状況を受けて」学会
内の各種委員会で検討した結果、「国際化を図るという観点から」
上記のように変えたそうです。


学会を英語にするメリットは以上のような、
 ・日本語は上手でないがサイエンスは優秀である人が、日本の科
  学コミュニティーに参加して活躍しやすくなる。
というポイント以外に、
 ・研究の着想のプライオリティーを国際的に主張しやすくなる。
  (ノーベル賞だって、論文は遅くても学会発表がライバルより
   早ければそれなりに考慮されるみたいだし。)
 ・英語と日本語、2種類のスライドやポスターを用意しなくて済
  む。
 ・学生や若手ポスドクが海外の学会に行くときに、英語でいきな
  り苦労しないための練習の場になる。
などのメリットがありそうです。

一方デメリットは、
 ・やっぱりネイティブの日本人には、日本語の方が理解しやすい。
 ・英語じゃ突っ込んだ議論がしにくい。
 ・発表内容がすぐ世界的にばれてしまう (^_^;)
 ・学生の予稿や発表の内容指導が、英語のミス直しに忙殺されて
  しまい、英語以前の発表内容や論理構築の面での議論や指導が
  おろそかになってしまう。
などがあるかしら。

英語での学会がぜんぜん増えてこない裏には、やはりデメリットの
方が大きいという判断があるのでしょうか?それとも、「日本の学
会なんて、外国の方が参加して内容を理解していただくほどの価値
もないですよ」という謙譲の心の裏返しなのでしょうか?あるいは、
「これまで日本語だったから、別にこれからも日本語で、なんとな
く、まあ・・・」というだけなのでしょうか?

どうも、上記のような話題をさまざまな立場の人がさまざまな視点
から自由に議論しうる場所って、あまり多くないようです。神経科
学会の場合も、各種委員会というと偉い人ばかりですから、学生や
ポスドクの人の意見は、あまり反映されていないことでしょう。そ
の点 Jfly はショウジョウバエ研究者だけの集まりではありますが、
学部生から大御所まで、上下くまなく対等に幅ひろく参加していま
す。こういう場で自由に議論を行なえば、さまざまな学会の運営に
携わっている方にとっても、きっと参考になるのでは、と思います。

そこで特定のどの学会ということでなく、一般論として、今後学会
を英語にしていくことを検討する意味があるのか?日本語であるこ
とに積極的に価値を見いだすべきなのか?さまざまな方に自分の立
場から忌憚のない意見を伺えると嬉しいです。よろしくお願いしま
す。

建前だけでなく、「でも学会を英語でやるなんて、きつすぎるっす
よぉ」みたいな意見も重要だと思います。賛成論だけでなく慎重論・
反対論も、どしどし期待しています。

(たとえばこの国際化時代に、Jfly は日本語オンリーですよね。外
 国人の方が居るラボでは、対処に困っている場合もあると思いま
 す。申し訳ありません。ただ今の段階で Jfly を英語にすると、
 今のように気軽にいろいろ書いて下さる方はどうしても激減して
 しまうと思います。また、現在の居心地の良さは、参加者がせい
 ぜい数百人で互いに利害関係があまり存在しないから、成立して
 いると思います。全世界の人が参加できる英語版の bionet.
 drosophila が議論の場としてあまり成功していないのを見ると、
 議論が成立しやすいサイズに人数を絞る手段として、「日本語が
 分かる人」というカテゴリーは、まだしばらくは有効かなと思っ
 ています。もちろんこれに対して「Jfly だって英語でやろうよ」
 と考え、実践して下さる方がいてももちろん構いませんし、そう
 いう意見が多ければぜんぶ英語化しても全然結構ですが。) 

いとうκ


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Date: Tue, 19 Nov 2002 11:30:02 +0900
From: "Murata, T (RIKEN BRC)"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

ぼくは、どうせ論文は英語で書くし、学会発表の要旨や図の説明の文句を論文に取り
入れることもあるし、海外の学会にポスターやスライドを持って行くこともあるし、
等の理由で、英語で図や文章を作っています。発表はその場にあわせて言語をえらび
ます。

学会が英語オンリーにならない一つの要因に、投稿されたアブストラクトを見る時
に、編集委員が楽では無い、というのもあるかもしれません。ぼくは経験がありませ
んが、編集委員をやったことのある方は、どうですか?

前者はみんなが勝手にそうすれば、学会の英語化が自然にできるかもしれない期待を
含んでいますが、後者が大きいとすれば、係りにあたった者がどのくらいがんばれる
かによっているとおもいます。

原稿は、英語にしましょうよ。
おしゃべりは、難しいかな?でも、シンポくらいならOK。
日本神経科学会の
  ・演題、アブストラクトは全て英語
  ・ポスター発表も原稿は全て英語(ただし日本語の要約も付ける)
  ・口演は、シンポジウムは全て英語
  ・一般の口頭発表のみ英語もしくは日本語
がいいです。でも、日本語の要約は要らんと思う。

しかし、アブストラクトが英語になると、うちのバンクで困ることがあります。毎
年、学会アブストラクトを見て、「遺伝子を寄託して下さい」のお願いを部屋のみん
なでやってますが、全部英語になると、この作業をできる人が半分以下になってしま
います。

むらた

理化学研究所 筑波研究所
バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室 (DNA Bank)
村田 武英,研究員


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Date: Tue, 19 Nov 2002 11:35:33 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Katsuo Furukubo-Tokunaga

Dear colleagues,

I completely support Kei Ito's opinion on lungage. Let's have the next
Japanese fly meeting in English. In Switzerland, where multiple languages
are spoken, the domestic meetings are in English. That was a very
interesting experience to me when I worked there. In addition, most of the
Swiss grant application are written in English and sent abroad for review,
effectively breaking up the domestically closed underground clubs.

English is the language of Science. I presume that many might have found
the following article on Nature very interesting concerning to these issues.

Breaking down the barriers
SUMMARY: Many Japanese researchers are concerned that they don't compete on
a level playing field when it comes to international science. Language and
cultural barriers may...

Nature419, 863 (31 Oct 2002) Opinion

Take care,

Katsuo Furukubo-Tokunaga, D. Sc.
Institute of Biological Sciences
University of Tsukuba


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Delivered-Date: Tue, 19 Nov 2002 21:41:58 +0900
From: "ADACHI,Yoshitsugu"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

筑波大学古久保-徳永研究室の安達といいます。
議題からは少しそれますが。

> いま日本に来ている外国人の留学生、ポスドクの人は、そういう目
> に遭っているんだと思います。日本語ペラペラになる覚悟がない限
> り、せっかく世界でも有数のレベルに達している(はず)の日本の
> 各種学会から、刺激を受けることができない。冷静に情勢判断がで
> きる優秀な研究者(の卵)なら、そんな日本にわざわざ来ようとは
> あんまり思わないでしょう。大学院やポスドクに来たいという相談
> を外国の方から受けることもありますが、学会での交流が非常にハ
> ンディキャップであることを考えると、どうしても日本に来ること
> を手放しで推薦できません。ましてや PI として日本に来て、スムー
> ズにコミュニティーに溶け込んで活躍することは、ほぼ絶望的です。

いまウチにバングラデシュからの留学生がいるんですが、外国人留学生向けの奨学金
の大半は、彼等に日本語の読み書きを要求しているみたいです。応募要項の記入や面
接等で。別に日本語を勉強しに来たわけじゃないのでちょっとかわいそうかも。留学
生が日本で奨学金を得ようとすると専攻に関わらず日本語力を要求されるものなんで
しょうか。日本語を要求しない留学生向け奨学金の情報があればお教えいただきたい
と思います。

> ネイティブのアメリカ人やイギリス人なら、外国語の1つくらい覚
> えた方が本人のためですから日本語の修得を義務づけてもいいと思
> いますが(笑)、他のヨーロッパ人やアジア諸国の人に、英語に加
> えて日本語もペラペラになることを要求するのは、ちょっとかわい
> そうな気がします。

そんなわけで激しく同意します。でも正直、Jflyは日本語が良いです。僕もこうして
参加できますし。

Yoshi
Katsuo's lab.
Sorry, I can not speak English....


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Date: Tue, 19 Nov 2002 23:51:43 +0900
From: "Murata, T (RIKEN BRC)"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

>いまウチにバングラデシュからの留学生がいるんですが、外国人留学生向けの奨学金
>の大半は、彼等に日本語の読み書きを要求しているみたいです。応募要項の記入や面
>接等で。別に日本語を勉強しに来たわけじゃないのでちょっとかわいそうかも。留学
>生が日本で奨学金を得ようとすると専攻に関わらず日本語力を要求されるものなんで
>しょうか。日本語を要求しない留学生向け奨学金の情報があればお教えいただきたい
>と思います。

確か、以前のSTAフェローは申請書も英語だった。パンフレットも、英語版がありま
した。現在は、別の制度に引き継がれています。
http://www.jsps.go.jp/j-fellow/main.htm

むらた

理化学研究所 筑波研究所
バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室 (DNA Bank)
村田 武英,研究員


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Delivered-Date: Wed, 20 Nov 2002 13:09:39 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Masaki Sone

京都大学医学研究科の曽根です。

高校生の時は、比較言語学者になりたいと思っていました。今でも、いつか「分
子言語学」の研究をしたいと思っているので、この話題には興味があります。

「異文化コミュニケーション」の大切さを説く伊藤さんの趣旨には全面的に賛同
します。ただ、現実的なことを考えると、うーんと思うところがあります。

今年の神経科学学会でポスター発表をした時に、インストラクションに「ポスタ
ーの説明は英語」と書いてあったので、英語でポスターを作ったところ、実は大
多数の人のポスターが日本語だったために、苦い経験をしました。多くの人が、
日本語のポスターだとざっと目を通してくれるのに、英語のポスターだと足早に
前を通り過ぎてしまうように感じたのは、たぶん気のせいではないと思います。
今後学会を国際化していくという積極的な目的意識があるにせよ、ポスターの説
明は、日本語と英語完全併記にするというのが妥当な線だと思います。予稿集も、
できれば日本語と英語の両方で作成するべきだと思います。(神経科学は、今年
までは、日本語と英語の両方の予稿集を作っていました。)

あまり大げさなことは言いたくないですが、言語には、思考様式であり、文化で
あるという側面があるので、おろそかにできない面があります。地球上にはおよ
そ3000の言語がありますが、そのうちの90%が消滅の危機に瀕していると
言われています。コミュニケーションの効率だけを考えれば、それらの少数言語
には存在意義がないということになってしまいますが、私はそうは思いません。
日本語は指折りのメジャー言語なので、今のところ消滅の危機にはないですが、
インターネットの発達とグローバリゼーションの中で、英語的思考様式の波をか
ぶりつつあるのだと思います。

そもそも、いま英語がサイエンスの世界で事実上の標準語になっているのは、た
またま20世紀がパックス・アメリカーナの時代だったからだけで、21世紀後
半には、最大の話者人口を持つ中国語が標準語になるかもしれないというのは、
荒唐無稽な話ではないと思います。日本語だって、いつか標準語になる可能性は
ゼロではない。あるいは、翻訳機が発達して、標準語という概念がなくなるかも
しれない。

いずれにしても、サイエンティストの世界を含めて、日本語のコミュニティと文
化を守っていくことは、実はおろそかにできない大切なことなのではないかと思
います。学会発表に関しては、意見が分かれるところだと思いますが、Jflyに関
しては、貴重な日本語コミュニティであり続けてほしいと、個人的には思います。

曽根雅紀    Masaki Sone, Ph. D.
京都大学医学研究科腫瘍生物学講座


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Date: Wed, 20 Nov 2002 13:30:01 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

At 1:09 PM +0900 02.11.20, Masaki Sone wrote:
> 多数の人のポスターが日本語だったために、苦い経験をしました。多くの人が、
> 日本語のポスターだとざっと目を通してくれるのに、英語のポスターだと足早に
> 前を通り過ぎてしまうように感じたのは、たぶん気のせいではないと思います。

そうなんですよね。「学会を英語にすればいいじゃん」とかけ声かけるの
は簡単なんですが、このへんの実際的な問題が、案外大切になると思いま
す。発表を英語にしたのはいいけれど、ディスカッションも低調になっちゃっ
た、では意味がないですから。

> そもそも、いま英語がサイエンスの世界で事実上の標準語になっているのは、た
> またま20世紀がパックス・アメリカーナの時代だったからだけで、21世紀後
> 半には、最大の話者人口を持つ中国語が標準語になるかもしれないというのは、
> 荒唐無稽な話ではないと思います。

昆虫の神経科学の分野では、1900年より前だと英語の論文はまともなも
のは少なく、重要なものはたいていドイツ語かフランス語です。(これら
の国で神経解剖学が盛んだったという事情もありますが。)その100年前
はラテン語でしたし。その意味で英語が今後も中心であり続けるとは限ら
ないというのは事実かも知れません。しかし18世紀や19世紀と異なり20
世紀以降は、母国語でなく共通コミュニケーションの手段として外国語で
ある英語を使う人口だけで中国人の半分を軽く越えているでしょうから、
もう英語以外がこの地位に取って代わるのは難しい気はいたします。


まったくの余談ですが、日本でいま一番使われている外国語というと、何
語だと思われますか?もしかしたらポルトガル語だと思います。中国語や
朝鮮・韓国語を話す在日外国人に比べ、近年増えてきたブラジル系の方の
ほうが、言葉の壁が厚く自国語を喋る率が高そうに見えます。岡崎の駅前
にあるコンビニに唯一置いてある外国語の新聞って、ポルトガル語の新聞
です。「横文字の外国語イコール英語」という短絡的発想は、確かに間違
いですよね。先日、愛知万博の運営の方がバリアフリー対策の相談に来ら
れたのですが、会場の案内やアナウンスは、日本語、英語、韓国語、中国
語の4つだそうです。「日本語の不自由な外国人で愛知県で一番多いのは、
ポルトガル語系なのではないですか?」と言ってやりました。

ただ、日本人、中国人、韓国人、バングラデシュ人、ブラジル人などの研
究者が集まったとき、共通に話せる言語というと、やっぱり英語しかない
と思います。人口多いんだからお前も中国語覚えろ、といわれるのはちょっ
と辛いです(笑)。

日本語があまり得意でない人が実際にいまラボに居られる所の人にお伺い
したいのですが、どのように困ってらっしゃいますか?それは学会が英語
になると、ある程度改善されますか?

伊藤


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Date: Wed, 20 Nov 2002 21:10:16 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Shuji Hanai

花井@筑波大学基礎医学系生化学です

中長期的に見れば、学会は英語にした方がよい(すべき)と思います。
自分のスライドやポスターは極力英語にしています。楽(手抜き?)のため。
でも、Jflyは日本語希望です。

> いま日本に来ている外国人の留学生、ポスドクの人は
研究室に限っても、うち(三輪研究室)では会合を英語にしていた時期も有りましたが
不評でした。重要な連絡が日本人に伝わらない、学生の発言が不活化する。勿論、世
界に羽ばたけという面での利点も大いに有ったのですが、今は日本語です。重要な点
だけ翻訳するとかして対応している感じです。

> アジア諸国の経済に余裕ができ、10年20年後にはどんどん一級の科学大国になって
日本がどんどん置いて行かれていまいますね。国際化しないと。
そのころ日本経済も破綻したらば、単なる辺境の島国になってしまいますね、、、

> 「でも学会を英語でやるなんて、きつすぎるっすよぉ」みたいな意見
ヒアリングに限れば日本人の英語なら問題ないし、ネイティブも日本人の事を考えて
話しているように見えます。でも国際学会のネイティブの早口は辛、、、

> Jfly・・・ 現在の居心地の良さは・・
こういう有意義なメーリングリストも珍しいのでは。貴重です。
つくば限定で生命科学一般のメーリングリストが欲しいと思いつつ難しいです、、、

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

追伸 物理的封じ込めに関して、私信も含め多数の貴重な情報やご意見を頂き、有り
難うございました。遅ればせながらこの場を借りて御礼申し上げます。m(_ _)m

結論的には、ハエはその特性から文科省指針よりも、機関毎の裁量が重要なようです。
前室はP1,2の問題でなく「個別の特性=飛ぶ組換え体」への対策ということですね。
一律の形式でなく、実際に逃さないという事が重要という事になりそうです。
(生物的封じ込めがないのが痛いですね。野外で生きられない系統が有れば便利? 
少なくとも飛べなくするとか)

おまけ 藪蛇物語
昔々あるところにおじいさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは南蛮渡来のトウキビの種を手に入れて蒔いてみました。
そのトウキビには南蛮の魔術が掛かっていて虫がつかないという触れ込みでした。
育ったトウキビを見ると、なんと、虫がいるではありませんか!
怒ったおじいさんは、南蛮問屋に「なんで虫がつくんだべか!」と文句を言いました。
ところが、驚いたのは南蛮問屋。
大和の国ではそのトウキビを蒔くには奉行所の御許しが必要だったのです!
逆切れした?南蛮問屋が奉行所に届け出たとかで事が明るみになったとさ。

昔々あるところで、お寺の住職が沢山の弟子たちを育てていました。
住職の名声は天下に知れ渡り、御上から寺に褒美をいただけるようになりました。
そればかりか、優秀な弟子たちにも御上から俸禄を頂けるようになっていました。
ところが、住職は弟子たちの俸禄の上前をはねてしまいました。
怒った弟子が御上に直訴したからさあ大変!
寺に入れるべき御褒美の使い込みまで発覚してしまいましたとさ。
 (フィクションです。念のため)
何か藪蛇をつつく時は、結局は内部や関係者の告発という事が多いようです。悪いこ
とは元々いけないですが、うっかり間違えない人は居ないし、完璧に清廉潔白な研究
室など少ないと思います。藪蛇をつつかない為には人の和が大切と思いました。
特に、業者や学生に対して教官は有利な立場(上下ともいえますが言いたくない)に
あるので、傲慢になりがちですが、むしろ逆に謙虚にしておくぐらいでないと後でしっ
ぺ返しが無いとは限りませんよね〜


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Date: Wed, 20 Nov 2002 22:35:55 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

>そうなんですよね。「学会を英語にすればいいじゃん」とかけ声かけるの
>は簡単なんですが、このへんの実際的な問題が、案外大切になると思いま
>す。発表を英語にしたのはいいけれど、ディスカッションも低調になっちゃっ
>た、では意味がないですから。

英語でできるのが理想ですが、現在の自分および学生の listening & speaking 力で
はトホホと言うほかありません(日本の英語教育はよくないよなあ、、、)。
「聴くだけで英語耳になれる CD 」の宣伝につい目がいってしまいます。あれって本
物?それともひと昔前の「睡眠学習機」みたいなシロモノ?買った人がいたら(こっ
そりでもいいから)教えて下さい。

山口大 村上


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Date: Wed, 20 Nov 2002 23:03:14 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

>何か藪蛇をつつく時は、結局は内部や関係者の告発という事が多いようです。悪いこ
>とは元々いけないですが、うっかり間違えない人は居ないし、完璧に清廉潔白な研究
>室など少ないと思います。藪蛇をつつかない為には人の和が大切と思いました。
>特に、業者や学生に対して教官は有利な立場(上下ともいえますが言いたくない)に
>あるので、傲慢になりがちですが、むしろ逆に謙虚にしておくぐらいでないと後でしっ
>ぺ返しが無いとは限りませんよね〜

これはマジな話です。
国立大学の法人化とからんで、遺伝子組み換え実験に限らず、研究室での危険物の取
り扱い、廃棄物処理などに関して「内部告発」を促すシステムを作ることが推奨され
る方向にあります。「労働安全衛生法」とかいうものを意識したマニュアルと内規を
作る準備が学部内でもはじまりました。私も委員です。ハァーー、、、


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From: "Shigeo Hayashi"
Subject: [Jfly] RE: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
Date: Thu, 21 Nov 2002 00:57:26 +0900

理研CDBの林です。私は学会発表は英語でおこなうべきだという立場でショウジョウ
バエ研究会、その他の学会で少なくとも外国人を招くシンポジウムでは他の演者も英
語で講演してもらうような配慮をしてきました。従って伊藤さんのご意見に賛成で
す。

 しかしすでに村上さんからご指摘があったとおりに学生を抱える身としては彼らが
ちゃんと英語の講演についていけるかどうか一抹の(実は大いに)不安はあります。
おそらく「発表が全部英語になったら大変だ、やめてほしいよ。でも藪をつつくのは
まずいので黙っていよう」と固唾を呑んでこの議論の行方を見守っている人も多いの
ではないでしょうか?そんな人のためのお話を二題。

 198x年、秋。某都大学狸学部の研究室でのよるのこと。隣のベンチではイヤホンを
つけて一心に卒業研究の実験に励む同級生。なにかと思ったら先日おこなわれた国際
会議で招待された欧米の某大物教授の講演の録音テープをきいているとか。一回聞い
たら十分ではないか、と冷やかしながらも繰り返しテープを聴いている彼に内心感心
しておりました。その彼も今では魂のこもった気迫の講演を英語で行い聴衆をうなら
せております。

 かく言う私も留学中にボスから代理で講演を命じられてその練習を自宅でおこなう
ためにスライドプロジェクターまで買い込んだ覚えがあります。講演の前は緊張で眠
ることも出来ず睡眠不足で発表に望んだものです。

 英語を母国語としない我々が英語で講演する事は大変な作業です。しかし英語能力
の取得に骨身を惜しむべきではありません。サイエンスの共通言語が英語であること
は動かしようがありません。それに英語は日本語に比べて曖昧な表現を許さないとい
う意味で明確な論理を組み立てるのに適していると思います。そして英語をうまく使
いこなすことで日本のサイエンスの実力を世界に認めさせる事が出来ると信じます。
そのためにもショウジョウバエ研究会はより積極的に英語化に取り組むことが必要だ
と考えます。


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Delivered-Date: Thu, 21 Nov 2002 14:25:21 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Masaki Sone

京都大学医学研究科の曽根です。

林さんのおっしゃるように、英語力は研究者にとっては必須のスキルだと思いま
す。おそらく、多くの研究者は、学位取得後に英語圏に留学することによってこ
の点をクリアしてこられたのでしょう。私にとっては、理由はあるようなないよ
うなですが、日本でポスドクのキャリアを重ねていますので、この点は結構深刻
な問題です。余談になりますが、教官募集要項に「留学経験のある方が望ましい」
とか「外国人の推薦書が必要」とか書かれていると、なにくそと思います。

本当はあまり人前で話したくない話だったのですが、私は、比較的高給のポスド
クだった時代に、ン百万円を某英会話スクールに投資して、週2回のレッスンを
受けていました。未だに、不自由なくディスカッションできるレベルには遠いの
で偉そうなことは言えませんが、ヒアリングとスピーキングを含め、目に見える
上達効果はあったと思います。

要するに何が言いたいのかというと、確立したカリキュラムに従って訓練をすれ
ば、英語力はおそらく確実に上達するということです。しかし実際には、大学院
生や薄給のポスドクにとっては、ン百万円のレッスン代を払うのは難しいでしょ
う。ここで中学高校の英語教育の問題を議論してもたぶん始まらないでしょうが、
アカデミックリサーチャーを目指す大学院教育のカリキュラムの中に、実践的な
英会話教育を組み込むことは不可能でしょうか。たとえば、それぞれの
instituteの中にいる留学生の人に講師になってもらうとか、あるいは、どこか
のお金から大学院生の駅前留学に給付金を払うとかいうのは難しいでしょうか。
無理かなあ。

曽根雅紀    Masaki Sone, Ph. D.
京都大学医学研究科腫瘍生物学講座


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Date: Thu, 21 Nov 2002 14:45:36 +0900
From: Atsushi Wada
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター、林研研究員の和田と申します。

僕は現在30代半ばですが、やはりずっと国内で過ごしてきていて、
英語には不自由を感じています。僕の場合、前任地で、サバティカルで
アメリカからやってきたprofessorの相手を数ヶ月間させられたことがあり、
その時期の終わり頃にはなんとか英語が出てくるようになっていましたが、
現在では元の木阿弥に近い状態です。

痛感するのは、やっぱり言葉は使わなければダメだということです。
さらに僕のような凡人の場合、強制的に使わなければいけないような
状況にならないとなかなか日常的に訓練することは難しいです。
学生のうちから英語を使わなければならないような状況に身をさらす
ことは、決してマイナスにならないでしょう。

ただ、質疑応答のことを考えた場合「ポスターは英語で書くこと、英語の
説明も準備しておくこと、ただし学生に限り質疑応答は日本語でも可」
くらいに条件を緩めておかないと、発表件数が激減しそうな気はしますが…。

At 2:25 PM +0900 02.11.21, Masaki Sone wrote:
>アカデミックリサーチャーを目指す大学院教育のカリキュラムの中に、実践的な
>英会話教育を組み込むことは不可能でしょうか。たとえば、それぞれの
>instituteの中にいる留学生の人に講師になってもらうとか、あるいは、どこか
>のお金から大学院生の駅前留学に給付金を払うとかいうのは難しいでしょうか。
>無理かなあ。

京大の生命科学研究科では、来年からそういうカリキュラムが始まるのでは?
先日の「トップ**」に選ばれた折り、柳田充弘研究科長が朝日新聞に、
若手研究者・院生向けの人材育成の一環として英語教育を行う旨、書いて
おられたと思います。うらやましい…。

☆ 和田 淳 @ 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター ★
★ 形態形成シグナル研究グループ ☆


Date: Thu, 21 Nov 2002 14:56:32 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

At 2:25 PM +0900 02.11.21, Masaki Sone wrote:
> 英会話教育を組み込むことは不可能でしょうか。たとえば、それぞれの
> instituteの中にいる留学生の人に講師になってもらうとか、

忘れもしない、大学院生のころ始めて書いた論文。隣のラボにいたオック
スフォード大学出身だというポスドクに、英語チェックをしてもらいまし
た。「いつもこれくらい貰っている」と言われるままに、3万円払って。

で、論文は、「英語が文体、文法ともムチャクチャである」という理由で
リジェクトされました・・・。

私は、外国人に日本語をちゃんと教える自信はありません。同様に日本に
来ているアメリカ、イギリス、オーストラリアの人も、本当にちゃんとし
た英語を教えられるかと言われると、困る人が多いのでは?やはり餅は餅
屋。英会話はちゃんとしたメソッドのある人に頼んだ方がいいかも。

いとうκ@3万円返せ。。。


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Date: Thu, 21 Nov 2002 15:03:35 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] RE: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

> おそらく「発表が全部英語になったら大変だ、やめてほしいよ。でも藪をつつくのは
> まずいので黙っていよう」と固唾を呑んでこの議論の行方を見守っている人も多いの
> ではないでしょうか?

固唾を呑んで見守ってる皆さん、ぜひ藪をつついてみて下さい。
(どうせ蛇くらいしか出てきませんから。^_^;)

「発表が全部英語になったら大変だ、やめてほしい」という人が実際に
は多いのに、無理やり英語にして、学会の本来の意義である
  ・進行中の研究を今後どう進めるかについての、第三者からの
   アドバイスとディスカッション
  ・研究室の枠を越えた幅広い人脈作り
  ・有能なポスドク・助手・助教授・教授・・・の候補を探して
   いる人へのアピール
などの活性が低下するようでは、学会を英語化したって単なる表面的
なファッションにしかなりませんよね。

実際、Jfly は日本語の方がいいのに、どうして学会は英語にしても構わ
ないのか?というのは、ちょっと理不尽な面もあります。また学会でな
くクローズドなワークショップを企画する際などは、議論を盛り上げる
ために、たとえ招聘費用が十分にあってもあえて外国人を呼ばず、日本
人だけでやることもあります。学会活動がぜんぶ外国語である英語になっ
ているスイスのような国はヨーロッパでも例外的かも。前に書いたよう
に、外国人がいればすぐ英語にスイッチしてペラペラしゃべれるドイツ
人たちは、ローカルな学会はドイツ語でやってることが多いです。外国
人には辛くはありますが、それを上回るメリットがあると判断している
のかも知れません。

Jfly は別に結論出したりアピールしたりする場ではなく、普通の学会の
運営委員会では出てこない色々な意見を聞きたいという意図ですから、
「英語にするとこういうデメリットがある」という議論や、「日本語で
やることにはこういう意義がある」という意見もぜひお願いします。

まだあまり議論が出てきていない
  ・学会発表を「指導される側」の若い方
  ・功なり名遂げた大御所の方
も、賛成・反対、ぜひご意見お願いします。

各ラボのボスの皆さま、自分のラボのメンバーから「英語はやめましょ
うよ」という投稿が出ても「お前は修行の熱意が足らん」と怒らないで
下さいね。

いとうκ


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Date: Thu, 21 Nov 2002 15:16:32 +0900
From: saigo@biochem00.biochem.s.u-tokyo.ac.jp
Subject: [Jfly] RE: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

> まだあまり議論が出てきていない
>   ・学会発表を「指導される側」の若い方
>   ・功なり名遂げた大御所の方
> も、賛成・反対、ぜひご意見お願いします。

東京大学の西郷です。特に議論に参加するつもりは有りませんが、来年度のショウジ
ョウバエ研究会の責任者として興味深く読ませていただいております。大いに議論さ
れたらよいかと思います。英語化賛成の人は、Katsuo Furukubo-Tokunagaさんのよう
に全て英語で主張していただけると、学生さんの勉強にもなってよいかもしれません
。来年度の研究会のあり方については、今年中に、公告を出すつもりですが、若い人
(学生さん)に口頭発表をしてもらう機会を大幅に増やことになると思います。日本
語でという枠はつけないと思いますので、英語でやりたい人は、大いに挑戦して下さい。

 ただ、今回、口頭発表を増やす方針にした背景には、若い人が自分の研究成果を口
頭で発表する機会が、近年大幅に減ったということの他に、若い人の国語力が最近と
みに大幅な低下を示しているという、大学教師としての、少なからぬ危機感がありま
す。どの言語を用いるにせよ、言語は、論理的思考の基であり、それが崩れてしまっ
ては、どうにもなりません。日本の乞食は、日本語を、アメリカの乞食は英語を極め
て流暢に話すかもしれませんが、ともにその多くは、サイエンスを語れません。日本
語でも英語でも結構ですが、論理的思考の産出に耐える程度の語学力はつけてもらい
たいものです。よい科学をすれば、相手が(言語的に)対応をしてくれるばずで、い
ま日本で、学会や授業やその他で英語化が叫ばれているのは、まさに文化人類学でい
う文化変容の自然の結果ということでしょうか。
                  西郷 薫

Kaoru Saigo
Department of Biophysics and Biochemistry,
Graduate School of Science,
University of Tokyo,


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Date: Thu, 21 Nov 2002 15:22:31 +0900
From: Yasushi Hiromi
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

遺伝研の広海です.学会に外国人参加者がいる場合,そういう人達に配慮したプレゼ
ンテーションをするのは当然です.私もフランスの分子生物学会に呼ばれ,2日間何
もわからずじっとと堪え忍んだ経験があります.もちろん,「フランスはメシが旨い
」という宣伝にのせられた私が悪いのですが...

最近は学生が学会年回タイプの会で口頭発表できる機会が少なくなっていますから,
ショウジョウバエ研究会での発表が口頭発表デビューという学生・ポスドクも多いで
しょう.そういう人達にとって,英語でのプレゼンが極めて大きな負担になることは
想像に難くありません.問題は,プレゼンを「指導する」側も能力に限界があるため
,効果的なアドヴァイスが出来ないということです.私はこれまでに何回か英語のプ
レゼンの指導をしましたが,まだどういうやり方がよいのか悩んでいるところです.
むろん,自分の持っている知識・経験を総動員して特訓する事は可能です.しかし,
それで生まれるのは,多くの欠陥を持つ指導者のクローンです.ひょっとしたら,発
音やイントネーションの誤りまでコピーされるかもしれません.指導教官の仕事は学
生の個性を伸ばすことですから,冗談のパターンまで教え込むのは考え物です(冗談
は人格と強くリンクしていますから,別の人が言っても受けないことが多いというこ
とも学びました).

国際的な学会に必要なのは,必ずしも「英語化」ではなく,参加者全員に対する「バ
リアフリープレゼンテーション」です.そのためには,たとえ日本語で講演しても,
英語の「字幕」を付ければよいのです.既にみなさんもスライドの上部に「タイトル
」を付けることによって情報伝達の効率化を図っておられることと思います.文字ば
かりのスライドは決して推奨されるべきものではありませんが,図を使った説明をす
るときにその説明文を字幕風に下部に入れれば,講演に使われている言語を知らない
人でもかなりの情報が得られます.最近はPowerpointなどを使ったプレゼンが主流で
すから,10〜15分程度の講演に字幕を付けるのはそんなに手間ではありません.
アニメーションを使って,文章が1文づつ出てくるようにすることも可能でしょう.

もしこういう方式を採るなら,外国からの参加者にも字幕の使用を勧めると良いと思
います.つまり,英語での講演にも英語の字幕を付けてもらうわけです.英語の映画
に字幕が付いていると台詞が断然聞き取りやすい,という経験をしたのは私だけでは
ないでしょう.私は標準的なアクセントの英語ならあまり不自由はしませんが,ちょ
っと訛りが強くなると急に聞き取りが難しくなります.字幕は英語に不慣れな
non-native speakerにとって便利であるだけでなく,聞き取りがむつかしい英語の方
言・なまり(Japanese English, French accent, Indian accentなど)を理解する助
けにもなります.さらに,hearning impairedの人達にとってのバリアフリープレゼ
ンテーションにもなるでしょう.将来的には,会場のラップトップから無線LANを使
って音声(マイク)に頼らない質問も出来るようになるかもしれません.(質問に対
する「答え」をどうやって映像化するか,アイディア募集します.)

私は決して「英語での講演能力を培う必要はない」と主張しているのではありません
.公用語である英語で議論する能力を持つことは研究者としては必須です.お金をか
けて,海外や駅前に留学する価値は充分あります.林さんのおっしゃるように,英語
を用いることによって議論の論理性が高まることも事実です.しかし,字幕のための
英語を考えるだけでも,論理を構築する助けになります.英語で講演する場合でも,
少し英語の発音に自信がなくても字幕で補えるから,英語での講演に必要な
activation energyが低くなるという効果もあるかもしれません.

英語字幕付き日本語講演を手始めに,英語講演でも英語字幕付きが学会の標準的なス
タイルになるきっかけを作り,それによって多くの人に理解されやすい講演形式が学
会発表の原則となるよう,努力しませんか?

総合研究大学院大学・遺伝学専攻
国立遺伝学研究所
広海 健

<<<<< コマーシャルのページ >>>>>

総合研究大学院大学(総研大・SOKENDAI)では,アカデミックリサーチャーを目指す
大学院教育のカリキュラムの中に,実践的なプレゼンテーション教育を組み込むこと
を計画しています.既に遺伝学専攻では,アメリカから講師を呼んで1週間の「英語
論文書き方講習会」を開いたり,国内講師による「プレゼンテーション法講習会」を
開催しています.堀田専攻長による「万人のためのプレゼンテーション」講演会も企
画中です.

総合研究大学院大学・遺伝学専攻
http://www.nig.ac.jp/jimu/soken/index-j.html

英語論文書き方講習会
http://www.nig.ac.jp/labs/DevGen/yhiromi/writing_workshop.html

プレゼンテーション法講習会
http://www.nig.ac.jp/labs/DevGen/yhiromi/presentation_workshop.html

12月11〜14日にパシフィコ横浜で開催される大25回日本分子生物学会年回の
展示会場で,遺伝研・遺伝学専攻説明会を開きます(http://www.nig.ac.jp/jimu/
soken/NIGbosyuu.html).遺伝研で研究することに興味のある方は是非お立ち寄り下
さい.

総合研究大学院大学・遺伝学専攻
国立遺伝学研究所・英語論文添削センター
広海健


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Date: Thu, 21 Nov 2002 18:08:32 +0900
From: Kaoru Saigo
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

広海先生;来年度のショウジョウバエ研究会では、広海さんの提案を100%活かす
方向でやりたいということで、準備委員会としては既に結論がでていると理解してお
ります。適切なご提案有り難うございました。  西郷 薫

Kaoru Saigo
Department of Biophysics and Biochemistry,
Graduate School of Science,
University of Tokyo,


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Date: Thu, 21 Nov 2002 21:32:55 +0900
From: Taishi Yoshii
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

はじめまして。山口大の修士2年の吉井です。

学生からの意見が足らないようなので、少しだけ学生からの見解を。(決して学
生代表ではありません。)

率直にいって学会発表が英語onlyになったら嫌ですね。自分が英語で発表、質疑
応答なんて考えただけでも気が重くなってしまう。
しかし、それじゃいつまでたっても英語がうまくならんという気持ちも確かにあ
ります。克服しなきゃお先真っ暗ですし。。。
さてどうするべきか?と自問してみても答えは見つかりません。
もし学会発表がすべて英語になったとしたら、私はなんとか乗り切れるように努
力するでしょう。質疑応答なんてまともにはできないでしょうが、それでもいい
経験になると思います。私にとっていいことであるには違いないのですが。。。
気が重い。。。

>  ・進行中の研究を今後どう進めるかについての、第三者からの
>   アドバイスとディスカッション
>  ・研究室の枠を越えた幅広い人脈作り
>  ・有能なポスドク・助手・助教授・教授・・・の候補を探して
>   いる人へのアピール
>などの活性が低下するようでは、学会を英語化したって単なる表面的
>なファッションにしかなりませんよね。

確かに私はこれらの点で活性が低下するでしょう。その一方、それを乗り越える
ことが大切だという気持ちもあります。

ということで私は結論なしです。なんの意見にもなりませんね。「じゃあ書く
な」と言われそうですね。

村上先生

> 「聴くだけで英語耳になれる CD 」の宣伝につい目がいってしまいます。あ
> れって本 物?それともひと昔前の「睡眠学習機」みたいなシロモノ?買った
> 人がいたら(こっ そりでもいいから)教えて下さい。

買っています。とりあえずMDに録音しているのですが、まだちゃんと聞いていま
せん。

吉井大志


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Date: Fri, 22 Nov 2002 10:48:11 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

>来年度のショウジョウバエ研究会では、広海さんの提案を100%活かす
>方向でやりたいということで、準備委員会としては既に結論がでていると理解してお
>ります。適切なご提案有り難うございました。  西郷 薫

広海さんのアイデア(英語講演+英語字幕 or 日本語講演+英語字幕)で問題は大幅に
改善されますね。
さらに座長 が日本語の質問を翻訳して演者に伝え、演者の答えを日本語に翻訳して
質問者に伝える、ということをしてくれれば、至れりの尽くせりです。

研究者を志す学生が、公的支援なしに涙ぐましい努力(と出費)を密かにしなければ
ならない状況は当分続きそうですが、これには大学も責任を感じなければいけません
ね。
山口大、村上
(ところで吉井君、CD 貸して下さい)


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From: Kohei Ueno
Date: Fri, 22 Nov 2002 12:18:27 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

群馬大学医学部の上野です。

私は海外でのポスドクや留学経験なしに現在に至っております。
そもそも学生時代から英語は苦手な科目であり、その後もたいして
勉強をしてこなかったので英語で会話をすることが大きな壁と
なっており、また苦痛でもあります。
ですから英語でプレゼンをするという学会形式には基本的に反対です。
もっとも海外から招聘した方々に話をわかってもらうことは礼儀と
してもです大事なことであると思いますから、その人達が参加している
シンポジウムなどでは英語が望ましいとは思いますが、それでも
広海先生が書いておられたような字幕や同時通訳などを使うことで
解消される方向を望みます。

研究者は論文を書くことが求められる結果ですが、現在その論文は
英語のものしかほとんど認められない現状になってしまっています。
その流れ自体私はやや異常なことだとも思いますが、それはさておき
ネイティブではない人間にとってこれは競争の上で明らかに時間の
ロスであり不利な状況だと思います。さらに英語でポスターなども
発表するとなるとその準備は私にとっては絶望的な時間の消費になり
ます。そこで、「だから英語を勉強しろ」、というのではなく英語が
できない人間のある意味バリアフリーな研究社会にならないかなと
思ってたりします。

あと以前に参加した動物学会では地元の高校生のポスター発表も一緒に
ありました。またその内容も非常に優れたものでした。なんでもかんでも
英語でとなるとそういうこともできなくなります。多くの学会は一応
形式としては参加料を払えば誰でも会場に入り、話を聞くことができます。
日本国民の税金で行われている日本で行っている学会である以上、それは
たとえ研究者ではない日本の人々にもある程度その内容がわかるもので
あった方が社会に理解してもらえる学会という意味でも良いのではないか
と私は思います。
以上は若輩の戯言と思ってくださると幸いです。

Kohei Ueno
Institute for Behavior Sciences
Gunma University School of Medicine


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From: yhotta@lab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
Date: Fri, 22 Nov 2002 12:35:02 +0900

金もない、外人など1年間に数人にしか会わない、コピー機などないから
英文の論文を筆写した、という大学時代を過ごしたロートルからも一言。

 英語の聞き取りと発表能力はサイエンティストとなるのなら必須条件です。
英語が下手でなかったらもっと世界に売り出せたはずなのにという人は何人
もいます。その意味では思いきって学会発表は全部英語にする、研究室セミ
ナーも英語のするのは良いと思います。ただしその場合はついてこれない人
が脱落するのは(いずれ脱落するのだから)やむを得ないという覚悟がいりま
す。もっとも、そういう試みをしたラボは既にいくつか知っていますが、多
くの場合挫折しています。もしそう踏みきるなら、(国の財政政策ではない
が)「セーフティネット」の配慮がいるかもしれませんね。大学院生やポスト
ドクに対する英語教育コースの設置などでしょうか。

そこで、私のささやかな経験から重要だと思う点をご参考までに。

(1) 英語のテクニックの前に「論理性」が重要です。最近の学生の論文の読
み方を見ていて感じるのは、論文を情報のソースとして結論だけ見る傾向が
強いことです。その論理構造を押さえて批判する人が少なくなっていると感
じるのは私が老人になったせいでしょうか。私の「良い論文」の定義は「何
度でも読み返したい」「読み返す度に新しい発見がある」というものです。
そういう論文を選んで何日もかけて輪読をするなどの努力を院生などの自主
性で行なうなどの努力が英語のテクニックの修得以前に必要です。

(2) 英語力の方は、一銭も(一円もと言うべきか)使わないで上達する方法を
考えるべきです。ウン十万円使っても多分同じです。第一はヒアリングの上
達で、才能はあまり関係なく、単に練習でうまくなります。無料でできる第
一段階は英語ニュースをほぼ完全に理解できるようになることです。私の頃
はラジオの FEN 位しかありませんでしたが、今はテレビの CNN などで多重
言語になっているものを英語チャンネルにすれば完璧です。深夜などのもの
もありますが、ビデオに録って繰り返し聞くこともできます。さらに英字新
聞を買って読んでおいてそれからニュースを聞くと勉強になること確実です。
私は今でもこれを実践しています。しばらくすると誰でもほぼ理解できるよ
うになります。時事関係や政治の単語を覚える必要がありますが、外人と世
間話ができるようにならないと真の交流ができません。あとはなまりのある
英語の理解ですが、これは慣れるしかありません。

(3) しゃべる方は別問題です。これは明らかに才能依存性(遺伝子)で、だめ
な人はアメリカに十年いてもめちゃくちゃな英語をしゃべってます。したが
って、才能のない人は上手になることはあきらめて、しかし下手な英語であ
っても言いたいことを理解させることに努めるべきです。そこでもっとも重
要なのは、向こうが聞きたいと思う内容を持つと言うことです。あちらさん
がぜひとも聞きたいと思えば、どんなに下手な英語でも一生懸命に聞いてく
れます。反対に流暢なキングズイングリッシュやアメリカンでも内容が空疎
だと誰もまじめには聞きません。テクニックではなくて内容です。とくに個
人個人のユニークな思考法です。こればかりは王道はありませんね。

(4) 少し才能のある人へのおすすめは、全てを英語で考えるトレーニングで
す。人知れず練習を積んでください。ブロークンでもかまいません。できた
ら英英辞典や Thesaurus を座右において、考えに詰まったり適切な英語表
現が思い浮かばなかったら辞書を引く事が重要です。例文がたくさんのって
いる辞書、類似語や反意語が素早く引ける辞書を頻繁に引く事、一度引いた
らその前後を刻銘に読むことが上達の秘訣でしょう。辞書は引くだけではダ
メで、読むことが体節(大切のあやまり)です。1-2 年で普段から英語で考え
ることができるようになり、英語で夢を見れるようになったら完成です。
あとは内容です。

というわけで、当たり前のことしか書けませんでした。若い人達は脱落しな
いように頑張ってください。乱文乱筆・誤変換御免。英語でなくて御免。


堀田 凱樹
国立遺伝学研究所 所長
総合研究大学院大学
 生命科学研究科 遺伝学専攻長


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Date: Fri, 22 Nov 2002 13:24:17 +0900
From: "Etsuko T. Matsuura"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?/シンポジウムの予定

みなさま

学会発表での言語の議論が続いていますが、関連してお知らせを。

今年、韓国の分子細胞生物学会のサテライトミーティングとして、日本からもショウ
ジョウバエ研究者が招かれて韓日を主としたシンポジウムがありました。来年、日本
でその第2回の開催が計画されております。

ちょうど研究集会のある年と重なることから、研究集会準備委員会には了承をいただ
き、研究集会と同じ場所、連続した日程で現在検討を進めております。まだ具体的に
は何もお知らせできない状態なのですが、英語がコミュニケーションツールとして有
効となりうる状況が来年にあることを、とりあえずお知らせいたします。

松浦悦子
お茶の水女子大学理学部生物学教室


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Date: Fri, 22 Nov 2002 13:34:01 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Katsuo Furukubo-Tokunaga

Dear colleagues,

I am also the one who expect lots of disasters when the Japanese meetings
are changed to English speaking ones. It will be certainly so for the
initial few years, hence the need for ways of assistance as Yash proposed.

But when are you ready for the disasters and reconstruction? Why is that
what is already possible in Korea, Switzerland and many other non-English
speaking countries is not yet possible in Japan, who succeeded in
Westernization in many aspects of its society long time ago at the end of
Samurai period?

Let me cite the following sentences form the Nature article.

“But officialdom isn’t the only thing that has to change. ---
In the end, the internationalization of Japanese science is in the hands of
individual scientists and their ability to get around language or other
supposed barriers.”

It’s up to you.

Katsuo

Katsuo Furukubo-Tokunaga, D. Sc.
Institute of Biological Sciences
University of Tsukuba


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Date: Fri, 22 Nov 2002 13:41:48 +0900
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
From: Masahiko Sakaguchi

JFLYの皆様。英語に自信のない信州大坂口です。今後のショウジョウバエ研究会など
での要望ですが、

林先生のメール
>国際会議で招待された欧米の某大物教授の講演の録音テープをきいているとか。繰り返
しテープを聴いている、、、
掘田先生のメール
>今はテレビの CNN などで多重言語になっているものを英語チャンネルにすれば完璧です
。深夜などのものもありますが、ビデオに録って繰り返し聞くこともできます。

にもあるようにもし、講演、ポスターでの応答を録画、録音させてもらえくり返し聞
くことができれば、英語力向上につながると思います。しかし、上村先生が以前おっ
しゃっていたような問題もあると思いますので、これは録音してもいいよというよう
なネイティブスピーカーのセッションがあれば、とてもうれしいです。御考えいただ
ければ幸いです。あるいは会場内でだけでも、くり返しビデオで講演を聞けるなどの
御配慮があるととてもうれしいです。

PS文科省&学術振興会の科学研究費補助金の計画調書も英語で書いてよいということ
でしたが、日本語で育った日本人で、あえて英語で書かれてる方は何人くらいおられ
るんでしょう?

PS2英語化と演題締めきりの早期化はどうしても連動してしまうのでしょうか?

信州大学教育学部生物
坂口雅彦


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Date: Fri, 22 Nov 2002 13:49:17 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

なるほど、こういう視点もあったか・・・。

> 群馬大学医学部の上野です。

> あと以前に参加した動物学会では地元の高校生のポスター発表も一緒に
> ありました。またその内容も非常に優れたものでした。なんでもかんでも
> 英語でとなるとそういうこともできなくなります。

最近は「スーパーサイエンススクール」という制度が出来て、進学校
を中心に少数の高校で、重点的に高度な科学教育をさせるというシス
テムがあります。岡崎でも研究所の裏にある高校がこれに採択された
ので、小林さんと一緒にハエの実験を見せてお手伝いしたりしてます。
「学会等でも発表できますから、ぜひ頑張って下さい。」と励まして
きたばかりなのですが、学会がみんな英語になってしまうと、確かに
こういうのは困難になりますね。


> 日本国民の税金で行われている日本で行っている学会である以上、それは
> たとえ研究者ではない日本の人々にもある程度その内容がわかるもので
> あった方が社会に理解してもらえる学会という意味でも良いのではないか

例えば日本でも天文学は、プロ(大学や天文台の人)とアマチュア
(研究組織に属していない天文愛好家)の間には分野の棲み分けがあ
るだけで、ある意味レベルには差がありません。プロは大きな観測装
置が必要な研究に特化し、超新星や小惑星の日常的な探索は、完全に
アマの人の活動に依存しています。天文学会では天文部の高校生など
が、動物学会のような高校向けの特別の企画ではなく、一般演題で堂
々と発表しているそうです。

生物でも、生態学の分野などアマが我々プロと双補的に活動できる分
野は少なくなく、学会で、もっとアマの人に参加してもらうことは重
要かも知れません。でもアマの人には、「将来活躍するために必須な
のだから、英語を勉強しなさい」とは言えませんよね。

ゲノム科学の分野では、一般の人にゲノム研究の現場を知ってもらう
と言うことで、特定領域研究の一環として「ゲノムひろば」という企
画を今年から始めています。全国数カ所で、その地域の研究者に集まっ
てもらって一般の人を対象に学会形式のポスター発表をしてもらうと
いう企画です。よくある公開講演会などと違い、有名教授でなく大学
院生やポスドクなど現場の研究者と市民に接点を持ってもらう、とい
うのがミソです。しかしこれも、どこかの学会のために用意した日本
語のポスターを持っていくだけでよいから我々も簡単に協力できるわ
けで、いつもの学会発表が完全に英語なのに、一般向けにわざわざ日
本語の発表資料を作ってくれと言われると、協力者が減ってしまいそ
うです。

科学者と一般社会との交流というのは、今後ますます重要になると思
いますが、学会を英語化するというのはこの流れに逆行しますね。

ううん、むずかしい・・・。

いとうκ


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Date: Fri, 22 Nov 2002 16:35:31 +0900
From: Toshiro Aigaki
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

相垣@都立大です。

At 0:35 PM +0900 02.11.22, yhotta@lab.nig.ac.jp wrote:
> 英語の聞き取りと発表能力はサイエンティストとなるのなら必須条件です。
>英語が下手でなかったらもっと世界に売り出せたはずなのにという人は何人
>もいます。その意味では思いきって学会発表は全部英語にする、研究室セミ
>ナーも英語のするのは良いと思います。

国内の学会のあり方はさまざまで、現実に英語化できる環境にある学会は限られてく
ると思います。伝統を重んじる抵抗勢力がいたり、実際には英語を喋る人がほとんど
いなかったりすると、かけ声倒れになります。そんな中で、ショウジョウバエ研究会
は極めて英語化への条件がそろっている会の一つだと思えます。コミュニティーの規
模、性格(構成メンバーの性格でもある)がよいことです。保守派の長老がブレーキ
をかけるわけでもなく、むしろ柔軟な発想で若い世代に刺激を与えてくれています。
世界の第一線をいく研究者も抱えており、英語化に十分たえられる研究者の数も一定
数をこえています。JDRCが英語化されれば、大学院生やポスドクが世界デビューする
ための貴重な研鑽の場として役立つに違いありません。さらに、他のメリットとし
て、近隣アジア諸国のショウジョウバエ研究者にとってバリアーフリーになることが
あげられます。研究会の活性化につながるだけでなく、人材不足で悩んでいる国内の
PIにとっては、優秀な大学院生やポスドクをゲットするよい機会にもなるでしょう。

>ただしその場合はついてこれない人
>が脱落するのは(いずれ脱落するのだから)やむを得ないという覚悟がいりま
>す。もっとも、そういう試みをしたラボは既にいくつか知っていますが、多
>くの場合挫折しています。もしそう踏みきるなら、(国の財政政策ではない
>が)「セーフティネット」の配慮がいるかもしれませんね。大学院生やポスト
>ドクに対する英語教育コースの設置などでしょうか。

都立大生物では、専門家を招いて大学院の科学英語(speaking and writing)の授業
を毎年開講しています(宣伝)。人気科目の一つで多くの院生が意欲的に参加してい
ます。英語の必要性を認識し、積極的に取り組む姿勢を植え付けるのに役立っていま
す。失敗した時のセーフティネットというより、集団予防接種ですね。

Toshiro Aigaki, Ph.D.
Department of Biological Sciences
Tokyo Metropolitan University


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Date: Sun, 24 Nov 2002 22:57:32 +0900
From: Masukichi Okada
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

 英語は敵国の言葉だから習うことも使うことも禁止されていた時代に中学に入
学した者として、孫達が結構真剣に議論しているので、縁側に座ってニコニコと
楽しんでおりましたが、だんだんに一言云いたくなってきました(岡田益吉)。
                   
 科学者として英語を習得するための努力をすることと、国内の学会発表で用い
る言語に英語を取り入れるかどうかを議論することとは別の問題だと思います。

 先ず英語の勉強ですが、戦後突如として、昨日まで「鬼畜米英」と叫んでいた
人に実用英語の重要性を云われ、カムカム英語(知っていますか?)から始め、
大学に入ってからは明治のバックボーンを持った教授先生から「同じ単語を2度
も辞書をひくようでは、語学の才能はありません」などとパンチを食らい、ヴィ
デオは勿論、テープレコーダーもなく・・・・というような、辞書を筆写した蘭
学の時代よりは多少ましな条件で、英語を勉強した世代にとっては、現役で活躍
しているはずの人達が、英語についての泣き言や言い訳を云うのが理解出来ませ
ん。彼らは我々の世代の人間よりも、遙かに上手に英語を操れて当然と思うから
です。

 従って、国内学会での発表も英語でやるかどうかの議論には、研究発表をす
る、あるいは討論に参加するプロの研究者の英語の上手下手は問題にすべきでな
いと思いますし。国内学会を英語でやることで、国際学会に出る練習をしようと
いうのも、心情的には理解出来ますが、問題の本質からは外れています。研究室
でのゼミを英語でやることから始めればよろしい。
 
 問題は、その学会を作った目的が何かということで、もしも日本人の研究者・
学生間のみでの情報交換だけが目的であるならば、敢えて英語でやる必要はない
でしょう。しかし、最初に いとう さんが提起したような、外国人の参加が重要
であり、また外国人に対するサービスを重要である、と学会のメンバーが考える
ならば、断じて実行すればよいと思います。その学会に出席することが絶対に必
要であるならば、参加希望の日本人は、何としてでも英語を習得するでしょう。

 学会員が必ずしもプロの研究者だけでないならば、英語・日本語の併用もやむ
を得ないでしょう。多くの日本人にとっては、やはり英語より日本語の方がよく
理解出来るし、読むのも速いでしょうから、ポスターが英語だけ、というのは効
率が悪いでしょう(質問者が日本人だったら、敢えて英語で答えなくても良いの
ではないでしょうか)。口頭発表は英語で、スライドを工夫するという提案があ
りましたが、一考の価値があると思います。

 一言云いたい、などと張り切って書き出しましたが、さして新しい提案でもな
いようです。しかし、この問題が提起されたことは素晴らしいことです。全ての
学会で、少なくとも運営委員会では、真剣に討議すべき問題と思います。

岡田益吉


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Date: Mon, 25 Nov 2002 19:28:12 +0900
From: Hiroshi Matsubayashi
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?

京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センターの松林です。
 海外へは留学はおろか行った事さえ無い、英語コンプレックスの固まりのような人
間の個人的な意見ですが、一般論として、日本語による科学がもっと当たり前になっ
てほしいと思っています。
 科学の知見は万国共通であり、人類の知的財産と思いますが、そうであれば尚更ど
んな言語で行っても良いように思います。なにか今の状況を見ていると、英語で科学
をするのが一段上で、日本語で発表したりすることが下に見られているような感じが
します。言葉の壁の問題が出てきますが、将来的には自動翻訳だとか、専門の職が充
実するとかすれば良い気がします。克服すべきは、科学が輸入された物だから、輸入
元の人に認められなければならないという劣等意識ではないでしょうか?
 一方、誰かもおっしゃっていましたが言葉は文化です。日本語で科学を行うことで
出てくる発想もあるでしょう。そう言う意味でも科学が、万国で、たった一つの言語、
英語で行われる事は逆に科学という営みの将来を考えた場合においてもマイナスでは
ないかと考えます。科学自体が英語と言う文化の上に育まれた文化であり、そういう
科学のみが正しいのだとすれば話は別ですが。そうであれば日本語など無くし全てを
英語に置き換えでもしない限り、英語を母国語とする人たちに太刀打ちできないでしょ
う。これは僕だけかも知れませんが、英語の論文で読んだ内容は、明らかに記憶に残
りにくい気がします。夢さえ英語で見るような人になれば違うのかも知れませんが。
 もちろんこの主張と英語の勉強が必要でないと言う事は別問題です。すくなくとも
現段階では、ほぼ全ての論文が英語で書かれており、まともな自動翻訳など存在しま
せん。それを理解するのに英語力は重要です。英語圏の人とコミュニケートするのに
も必要でしょう。良い研究をするには知識の幅を広げておく必要があるのは当然です。
 夢かもしれませんが、日本発のNatureやScienceと並ぶ、日本語による科学の総合
雑誌が刊行されば良いと思います。英語圏の人も当然、無視できないでしょうから自
動翻訳なりで読むでしょう。それには、オリジナルな論文を日本語で書く習慣、その
発表の場が必要でしょう。そしてなにより各研究者の発想の転換が必要でしょう。
 日本語で科学をする事の重要な点はあと2つ。教育と産業への波及効果という点で
す。最先端の科学が日本語で発表されて、上で述べたような日本語による科学雑誌が
当たり前になれば、子供や一般の人にとって科学が非常に身近な物として認知される
でしょう。その教育的な効果は絶大だと思います。一方、日本発の科学上の成果を応
用しようと考える産業界の人にとっても最先端の成果が日本語で読めるのであれば、
非常なメリットではないでしょうか?
 XX村の太郎兵さんが、家の孫はこんな事やってるだよ、とその日本語で書かれた
論文を周りに自慢しているような日が来ると良いと思っています。

 長々と抽象的な理想論になってしまいましたが、結論として日本の学会なのだから
日本語でやることは当然ではないかと。もちろんいくつか問題点があるのは認めます
が。


From: "Sawamura, Kyoichi"
Subject: [Jfly] 日本の学会発表も英語でやるべきか?
Date: Tue, 26 Nov 2002 12:29:16 +0900

研究集会準備委員の方へのお願い

英語云々、興味深く拝見させていただいております。

来年度のショウジョウバエ研究集会では、「発表は言語バリアフリーをめざして
スライド等の書き込みを工夫する」というアイデア、大賛成です。もう1つ、海
外からの参加者による発表で、こうしていただけると有難い、という点を提案さ
せてください。

提案:「英文抄録にキーワード(鍵となる用語)の日本語解説を付ける」

ご参考まで、昨年の個体群生態学会の国際シンポジウム(ショウジョウバエ研究
会からの参加者は皆無に等しいかも)では、このような教育的配慮があって、大
変助かりました。さらに、専門の近い方による簡単な日本語解説(プラス参考文
献リスト)があると、異分野の人にとってもっと勉強のチャンスが広がると思い
ます。

澤村

追伸:先日、「セミナーのお知らせ」において、問合せ先の市外局番が間違って
おりました。正しくは、0298-53-4909, 4669です。
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