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ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め


Date: Thu, 07 Nov 2002 02:44:03 +0900
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め
From: Shuji Hanai

筑波大学の花井です。 差し障りのない範囲でお教え頂ければ幸いです。

ショウジョウバエ飼育室(もちろん組換え体)の物理的封じ込めは皆さんどのように
許可してもらっていますでしょうか?

○昆虫飼育室に前室は必須でしょうか?
 扉の中にアミド扉をつける、二重のカーテン(洋服の試着室のような)で仕切るとか
 では通じないものでしょうか? P1かP2に依存しますでしょうか?
 以前「飼育施設には前室を作って」(jfly2002.10.2伊藤先生)とありましたので。

○P2を取得していますでしょうか?
 文部科学省の指針ではショウジョウバエでは全部P2になってしまいます。
 (宿主=動物、DNA供与体=動物でP2以上、ベクター=別表2(1)?→P2 合ってます?)
 危険性が低いとしてP1格下げ申請が一般的か、がんばって部屋をP2にするか。

○P2を取られた場合、次の装備は必須でしかた?
 天井の滅菌灯(ハエにダメージ有りますよね、、、)
 安全キャビネット(エアロゾルを回収。ハエには必要ないはず)
  両方とも筑大ではP2に必須とされるようです。
   指針では無しで済みそうなので、ショウジョウバエの伝統が古い研究室で
   「うちではこれでP2が通っている」という情報を実名可で頂ければ心強いです。

文科省の指針が絡むので、一般論的な事や完全合法な事はJFlyメーリングリストに、
裏事情的な情報は shanai@md.tsukuba.ac.jp にお知らせ頂ければ幸いです。個人宛
の内容は何処・誰の話か口外しませんしもしメーリングリストに送る場合は匿名化致
します。

つくばではヤブからヘビがでたようで、、、、


************************************

Date: Thu, 7 Nov 2002 10:49:59 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

この手の話題、微妙な内容も含むと思われますが、先日の郵便の件のよう
に「え、本当はそういうきまりになっていたの?知らなかったぁ」という
ケースを防ぎ、組み換え実験の安全に関する共通認識を高めるためにも、
なるべく私信でなくメーリングリスト上で議論するのがいいと思います。

  註:Jfly のメールは登録者だけに配送されるクローズドなものなので、
    不特定多数への公開にはなりません。実をいうとホームページのアー
    カイブにまとめて転載する際には、内容をチェックして、明らかに
    公開すると誤解を招きかねないような部分は削除したりしています。

> ショウジョウバエ飼育室(もちろん組換え体)の物理的封じ込めは皆さんどのように
> 許可してもらっていますでしょうか?
>
> ○昆虫飼育室に前室は必須でしょうか?
>  扉の中にアミド扉をつける、二重のカーテン(洋服の試着室のような)で仕切るとか
>  では通じないものでしょうか? P1かP2に依存しますでしょうか?
>  以前「飼育施設には前室を作って」(jfly2002.10.2伊藤先生)とありましたので。

ハエが飼育スペースから簡単に自由空間に逃げ出さないように工夫してあ
る、というような記述は必要かなぁ、と思いますが、どうなんでしょう。
ただ実際には私のところでは、その「前室」でハエの麻酔や掛け合わせを
やっているので、実質的には「二重扉の封じ込め」にはなってないかも。

> ○P2を取得していますでしょうか?
>  文部科学省の指針ではショウジョウバエでは全部P2になってしまいます。
>  (宿主=動物、DNA供与体=動物でP2以上、ベクター=別表2(1)?→P2 合ってます?)
>  危険性が低いとしてP1格下げ申請が一般的か、がんばって部屋をP2にするか。

取得してません。基生研では、P1で承認が下りています。来年度はうち
のラボは東大分生研に移る予定ですが、こちらでの申請書類も従来同じ分
生研の多羽田さんたちはP2で出していましたが、現実により適合したP
1で申請しましょうよ、ということで、話を合わせてP1に格下げする方
向で話を進めています。(これで通るかどうかは、まだ分かりませんが。)

ご存じの通り多くのラボのハエ飼育室の実態は、P2とはほど遠いもので
す。あまり実態と乖離した申請を出していると、トラブルの際にかえって
問題になりかねないと危惧しています。昔とちがって情報公開法で、この
手の申請は誰でも請求すれば入手できるようになってますから。昔は、と
りあえず書類上はいかにも万全そうな基準で計画を出しておいて、実態は
それとかなり違う、というのがかなり当たり前でしたが、これからは、必
要十分な最低限の基準で計画を出しておいた方がいいのではないかな、と
思います。原発の安全基準などでもそうみたいですが、守れっこない基準
を作っても、かえって裏の不法行為を助長するだけです。でもいくら申請
書の内容がナンセンスでも、それを守っていないことがバレた場合にマス
コミ等から攻撃されるのは私たちです。「科学的に見て問題がなく、研究
者がみな守れるような基準で申請する。それで申請が通らないようなら、
そういう申請を認めないナンセンスな指針の方を変えさせるよう申し入れ
等の運動をする」というのが、今後はより健全なやり方なんじゃないかなぁ
と思います。日本は民主主義の国でしたよね?

なお、基生研では、実験後のハエの死滅処理も、オートクレーブでなく
「-25℃、72時間の冷凍処理」で申請を通しています。オートクレーブで
書類を出しつつ実際には冷凍処理や電子レンジ処理しているケースもある
ようですが、ハエ個体が完全に死滅することが明らかな処理ならば、実際
にやっている処理を申請に書いておく方がいいのではないかと個人的には
思っています。
(ただし東大では、廃棄物の体積を圧縮する必要があるという観点から、
 冷凍処理ではまずいみたいです。)

いとうκ


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Date: Thu, 7 Nov 2002 12:33:34 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

山口大学、村上です。人材不足のため延々と組み換え DNA 実験安全委員をやらされ
ています。

ショウジョウバエ(D.m.) の組み換え体を「用いる」実験は基本的に(各機関の委員
会での検討経て)機関届け出実験だと思います。実験室は P1 が常識的だと思いま
す。封じ込めの基準は「出入り口等に逃亡と侵入防止の措置を講ずる」とあります。
小さなラボでハエをインキュベーター内で飼育する場合は(言い換えると、密閉性の
飼育容器つまり飼育チューブを密閉性の恒温器に入れて二重に密閉して飼育、、とな
ります)、実験室を P1 区画として、室内に捕獲装置を備える(電撃殺虫器とか、誘
因性の水盤トラップとか)、で許可されています。部屋自体が飼育室の場合は(大学
ごとの委員会の判断しだいですが)、前室か網戸、カーテンなどがあるのが無難な感
じがします。

組み換え体の作製実験はコンストラクトの作製は P2、インジェクションは「宿主の
変更」に準じると解釈すればP1 でよいと思いますが、これも委員会の判断しだいで
しょう。P1区画とP2区画が区切れない場合は、実験室をP2 で申請することになりま
すが、この辺は微妙。

P2 に安全キャビネットは必ずしも必要でなく、組み換え体の飛散を防ぐ対策があれ
ば OK です。例えば、P2 操作はクリーンベンチなど特定の区画内でのみ行う、と
か。

ここ数年来、医学関係の組み換え実験は、危険を伴うウイルスベクターを使うものが
目白押しです。ショウジョウバエの実験では危険性のある実験は通常考えられないの
で、「逃げないように飼育している」という動物実験の基本に沿っていることを強調
するのがよいと思います。文部科学省の指針は「原則」で、実際的な場面では委員会
が科学的・合理的な判断をすることを前提としており、理不尽なことにはならないと
思います(なったら委員会が悪い)。

今回の指針改定で厳しくなったと感じる点は、「実験従事者の名簿、健康診断記録な
どの作成・保存」に関するところで、これは大学など実験従事者の大幅な変更が毎年
ある所では、事務的な仕組みを考える必要がありそうです。山口大学では放射線関係
(こっちの方が規則に対応した事務的制度が整っている)の健康診断の時期に合わせ
た形で、従事者の変更届けを出す仕組みを考えています(科研の締めきりの真っ最中
に!)。組み換え体の保管、廃棄に関する記録保存も、憂鬱なところです。法人化後
には、「記録の保存」が自治体による検査対象として一番手頃でしょうから。


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Date: Thu, 07 Nov 2002 15:21:35 +0900
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め
From: Katsuo Furukubo-Tokunaga

花井様

 筑波大学でもこれまでP1実験室で承認されています。P1実験室の中にさらにハエの
恒温室があれば完璧です。なくてもハエの逃亡に具体的な配慮がなにかあれば大丈夫
なはずです。電撃殺虫器とか、誘因性の水盤トラップとか

古久保 - 徳永 克男 (Furukubo-Tokunaga, Katsuo)
筑波大学 生物科学系


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Date: Thu, 7 Nov 2002 16:40:05 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

>ご存じの通り多くのラボのハエ飼育室の実態は、P2とはほど遠いもので
>す。あまり実態と乖離した申請を出していると、トラブルの際にかえって
>問題になりかねないと危惧しています。昔とちがって情報公開法で、この
>手の申請は誰でも請求すれば入手できるようになってますから。昔は、と
>りあえず書類上はいかにも万全そうな基準で計画を出しておいて、実態は
>それとかなり違う、というのがかなり当たり前でしたが、これからは、必
>要十分な最低限の基準で計画を出しておいた方がいいのではないかな、と
>思います。原発の安全基準などでもそうみたいですが、守れっこない基準
>を作っても、かえって裏の不法行為を助長するだけです。でもいくら申請
>書の内容がナンセンスでも、それを守っていないことがバレた場合にマス
>コミ等から攻撃されるのは私たちです。「科学的に見て問題がなく、研究
>者がみな守れるような基準で申請する。それで申請が通らないようなら、
>そういう申請を認めないナンセンスな指針の方を変えさせるよう申し入れ
>等の運動をする」というのが、今後はより健全なやり方なんじゃないかなぁ
>と思います。日本は民主主義の国でしたよね?

他大学でも同じでしょうが、山口大学の組み換えDNA実験安全委員会では、判断の難
しい実験の場合、専門家が多い有名大学での慣例を問い合わせて決めることがよくあ
ります。東大のショウジョウバエ屋の誰かが犠牲となって学内の委員を引き受け、ハ
エの実験についての審査基準のすっきりした慣例を作れば国内の相当数のショウジョ
ウバエ研究者が恩恵を受けると思うのですが、、、でも委員会なんぞで研究の時間が
減るのも知的資源の浪費だし、、、。

Date: Thu, 7 Nov 2002 16:47:16 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

At 0:33 PM +0900 02.11.7, Ryutaro Murakami wrote:
> す。封じ込めの基準は「出入り口等に逃亡と侵入防止の措置を講ずる」とあります。
> 小さなラボでハエをインキュベーター内で飼育する場合は(言い換えると、密閉性の
> 飼育容器つまり飼育チューブを密閉性の恒温器に入れて二重に密閉して飼育、、とな
> ります)、実験室を P1 区画として、室内に捕獲装置を備える(電撃殺虫器とか、誘
> 因性の水盤トラップとか)、で許可されています。部屋自体が飼育室の場合は(大学
> ごとの委員会の判断しだいですが)、前室か網戸、カーテンなどがあるのが無難な感
> じがします。

部屋の中に密閉性の恒温器もしくは飼育室があるとして、実際のハエの
トランスファー(植え継ぎ)や麻酔等は、その手前の実験室で行ないま
すよね。日本でも外国でもハエの研究室を訪問すると、廊下から実験室
のドアを開けて「こんにちは」と言うと、すぐそこで研究者がハエのバ
イアルをトントンやっていて、「やあ、いらっしゃぁい」となることが
多いです。さて、この状況は「出入り口等に逃亡と侵入防止の措置を講
ずる」に合致していると考えてもよいのでしょうか?実際にハエが逃亡
する可能性は、恒温器や飼育室の保管中のバイアルの中から逃げ出すよ
りも、植え継ぎ等の作業中に逃げ出すケースの方が多そうですよね?

ハエの植え継ぎや麻酔をする部屋と廊下との間を、本当の意味での二重
扉(一方のドアを閉めてから他方のドアを開ける)にしているなどの対
策をしている研究室って、ありますか?もしそうしている方が居られた
ら、ぜひ教えて下さい。

ケンブリッジ大学の遺伝学教室は Ashburner はじめ大勢のハエ研究者
がいますが、先日訪問したら最近大改装したばかりで、各ラボの研究者
が20人くらい同時にハエの麻酔・仕分け等の作業が可能な巨大集中式
ハエ作業室が出来ていました。部屋の奥に各種温度の恒温室が4つほど
あり、手前にベンチがズラッと並んで麻酔のガス管などが配管されてい
るのですが、ここも出入り口は二重扉ではなかったと記憶しています。

「植え継ぎ作業中に逃げ出したハエは、室内のトラップ等で捕獲する。
 出入り口そのものは、出入りのとき以外は閉めているのであれば、
 一重扉で構わない」
という認識でいいんでしょうか?

いとうκ

Date: Thu, 7 Nov 2002 20:41:45 +0900
From: Chihiro Hama
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

>ハエの植え継ぎや麻酔をする部屋と廊下との間を、本当の意味での二重
>扉(一方のドアを閉めてから他方のドアを開ける)にしているなどの対
>策をしている研究室って、ありますか?もしそうしている方が居られた
>ら、ぜひ教えて下さい。

神戸理研の浜です。理研では脳研、発生再生センター共に二重扉を持つ前
室の設置が義務づけられています。ただこれも部屋の使用目的を最初から
決めて自分でラボの部屋割りを設計するから可能なことで、後からきちん
とした前室を作るのは不可能ではないにしろ実情にあったことではないか
もしれません。理研での基準は組織としての自己防衛の意味もあり世界一
厳しいと思っています。

ちなみに、私のところでは前室のスペースが惜しいので、拡大解釈をして
もらって前室を広げ、そこに顕微鏡(実体じゃないですよ)を置いていま
す。廊下へ通ずる扉は開かずの扉にして、残りの2つの扉は同時に開けな
いようにしています。前室に逃げたハエを私自身は見た事がない(広げて
物を置いているぶんだけ気付かない?)ので、前室の設置による効果はあ
まりはないというのが私の印象ですが、少しはあるというのが前室設置の
意味(ミソ)だと思います。個人的には、ハエを逃がさないという意識を
持ち対策をとっていれば前室をつくることは必須とは思っていません。




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Date: Thu, 7 Nov 2002 22:32:02 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め
>
>ハエの植え継ぎや麻酔をする部屋と廊下との間を、本当の意味での二重
>扉(一方のドアを閉めてから他方のドアを開ける)にしているなどの対
>策をしている研究室って、ありますか?もしそうしている方が居られた
>ら、ぜひ教えて下さい。
>「植え継ぎ作業中に逃げ出したハエは、室内のトラップ等で捕獲する。
> 出入り口そのものは、出入りのとき以外は閉めているのであれば、
> 一重扉で構わない」
>という認識でいいんでしょうか?
>
>いとうκ

2重扉が標準になると大変な不都合が生じるので絶対にやめましょう。

指針の第一の目的は「安全性」の確保であり、生態系に対する潜在的影響を除けばハ
エの遺伝子実験の危険性は「犬の屁」程度でしょう。平成10年の指針改訂でショウ
ジョウバエの組み換え系統に対する規制は、実質的には「当該動物の習性に応じた逃
亡防止設備を設ける」のみとなり、この規定は大昔に定められた実験動物指針と基本
的に同じで、遺伝子組み換えとは本質的に無関係なのです。
で、普通の実験室で大らかにハエを飼育していた長い歴史の中で、D.m. の変異系統
が自然界で繁殖し生態系に影響したことがあるか否かが判断の参考となると思いま
す。どうなのでしょう?


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Date: Fri, 8 Nov 2002 00:03:50 +0900
From: "Murata, T (RIKEN BRC)"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

At 8:41 PM +0900 02.11.7, Chihiro Hama wrote:
>神戸理研の浜です。理研では脳研、発生再生センター共に二重扉を持つ前
>室の設置が義務づけられています。ただこれも部屋の使用目的を最初から
>決めて自分でラボの部屋割りを設計するから可能なことで、後からきちん
>とした前室を作るのは不可能ではないにしろ実情にあったことではないか
>もしれません。理研での基準は組織としての自己防衛の意味もあり世界一
>厳しいと思っています。
>
>ちなみに、私のところでは前室のスペースが惜しいので、拡大解釈をして
>もらって前室を広げ、そこに顕微鏡(実体じゃないですよ)を置いていま
>す。廊下へ通ずる扉は開かずの扉にして、残りの2つの扉は同時に開けな
>いようにしています。前室に逃げたハエを私自身は見た事がない(広げて
>物を置いているぶんだけ気付かない?)ので、前室の設置による効果はあ
>まりはないというのが私の印象ですが、少しはあるというのが前室設置の
>意味(ミソ)だと思います。個人的には、ハエを逃がさないという意識を
>持ち対策をとっていれば前室をつくることは必須とは思っていません。
>
>浜

そのモデルとなった部屋の一つのもと住人です。

脳研で始めるからと言うことで脳研の安全管理室から見学に来ました。

すでにその部屋は、マウス飼育施設へと改造するために立ち入りで来ませんのでお見
せできませんが、ハエを予定していた部屋では無かったので、前室の代わりにナイロ
ンメッシュのカーテンを天井から床まで吊るしました。ナイロンメッシュのカーテン
は、近所の手芸屋さんで入手し、自前で取り付けました。カーテンレールなしで天井
直付けでした。当初はカーテンなしでしたが、安全管理室の指導により、「表D、宿
主=動物、DNA供与体=動物でP2以上、トランスポゾンはどれにあたるか分からないけ
ど別表2または3の(3)または(4)には該当しないのでP2となる」ということから前室
を作る代わりにカーテンで仕切りを入れました。もう一つの部屋は、最初から前室が
設計されていました。

 ただ、余談ですが、「P2は一枚扉」->「前室は不要」->「不要なものを作る」
->「税金の無駄使い(と言う批判はおれたちにくる)」という議論を吹っ掛ける事務
方もいますので、前室を作るのは簡単では無い。

理化学研究所 筑波研究所
バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室 (DNA Bank)
村田 武英,研究員


************************************
Date: Fri, 8 Nov 2002 12:23:53 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

村上さん:
> 2重扉が標準になると大変な不都合が生じるので絶対にやめましょう。

浜さん:
> ちなみに、私のところでは前室のスペースが惜しいので、拡大解釈をして
> もらって前室を広げ、そこに顕微鏡(実体じゃないですよ)を置いていま
> す。廊下へ通ずる扉は開かずの扉にして、残りの2つの扉は同時に開けな
> いようにしています。

村田さん:
>  ただ、余談ですが、「P2は一枚扉」->「前室は不要」->「不要なものを作る」
> ->「税金の無駄使い(と言う批判はおれたちにくる)」という議論を吹っ掛ける事務
> 方もいますので、前室を作るのは簡単では無い。

徳永さん:
>  筑波大学でもこれまでP1実験室で承認されています。P1実験室の中にさらにハエの
> 恒温室があれば完璧です。なくてもハエの逃亡に具体的な配慮がなにかあれば大丈夫
> なはずです。電撃殺虫器とか、誘因性の水盤トラップとか

というあたりを考えると、以下のような理論武装(?)でほぼ大丈夫、と
いうことになるでしょうか?これじゃまずいよ、と思われる方、ぜひご意
見お願いします。

1:
諸外国や現在の日本の例を見ても、ハエの実験室を逃亡防止のため2重扉
にしている例はほとんどなく、P2実験室が一枚扉であることに鑑みても、
前室を作ることは不要である。電撃殺虫器とか、誘因性の水盤トラップな
ど、逃亡した蠅をその部屋の中で捕獲する具体的な方策を設置すればよい。

2:
ただし、P1実験室の中で直接ハエを飼育するのでなく、さらにハエの恒温
室がある方がよい。また新たに施設を作る場合など、余裕があるのであれ
ば、更なる安全確保のために余剰安全対策として前室を設けるとなお良い。


浜さんのアイデアをさらに拡大して、ハエ部屋から直接廊下に出入りする
ドアはふさぎ、隣室の実験室との間のドアから出入りするようにして、そ
の実験室にもトラップを仕掛けて「前室」として機能させれば、無駄なス
ペースや出費を防いで2重扉に出来ますね。(隣室との壁に穴を空ける必
要はありますが。)これは申請書として説得力のあるアイデアなのでしょ
うか?「避難経路の確保」という点では消防署からは怒られそうな気もし
ますが。

そういえば昔の東大堀田研の飼育室は、廊下へのドアは塞いであって、隣
の「物置部屋」から出入りするようになっていました。あれは単に場所が
なかったのではなく、周到な安全対策であったのか!!!?


なお形質転換をするハエ実験室をP1にするかP2にするかは、「新規組
み換え生物の作出と考えるか「宿主の変更」と考えるかで変わるようです
ね。「新規作出」だとDNAの由来が動物か植物かで扱いが変わるようです
が、そうすると、GFP ならP2だけど WGA ならP1になるのかな?なん
か変な感じ・・・。

いとうκ


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Date: Fri, 8 Nov 2002 13:31:06 +0900
From: "Murata, T (RIKEN BRC)"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

DNA Bankという、指針を遵守しどちらかというと布教にも勤めなければいけない立場
からしますと、これからラボをもつかもしれない若手に、これまでの議論を
「二重扉は不要」
と短絡的に考えては頂きたくありません。そうではなく、二重扉で無くても大丈夫、
それも、逃げても大丈夫という論理ではなく逃げない措置をこれだけとっているの
で、と理解して頂きたい。

たとえばとなりの研究室から「細胞培養の部屋に白い眼のハエが居た」といわれた
ら、組換えでなくても「ハエなんかやめろ」といわれる。そもそも、ハエがぶんぶん
飛んでいるようだと、自分のハエがいつの間にか別物になっていた、ということも起
こるわけです。

堀田先生や広海先生からも過去に警告というか注意を喚起する投稿があったと思い
ま す。是非とも、いかにレベルを下げることができるかではなく、最低完備すべき
レベルに対する議論、と受け止めていただきたい。

話し変わって以下のあたりは、申請する研究者と審査する側が、指針の主旨をどう読
むかによりますが,

>なお形質転換をするハエ実験室をP1にするかP2にするかは、「新規組
>み換え生物の作出と考えるか「宿主の変更」と考えるかで変わるようです
>ね。「新規作出」だとDNAの由来が動物か植物かで扱いが変わるようです
>が、そうすると、GFP ならP2だけど WGA ならP1になるのかな?なん
>か変な感じ・・・。

表Dをそのまま読めばそうなります。

「組換えDNA実験指針(平成14年1月31日、文部科学省告示第5号)」は、下記をご参
照下さい。
文部科学省 - 生命倫理・安全に対する取組
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/

理化学研究所 筑波研究所
バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室 (DNA Bank)
村田 武英,研究員


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Date: Fri, 8 Nov 2002 14:18:27 +0900
From: Yoshiaki FUYAMA
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

伊藤様 皆様

At 12:23 +0900 11/08/02, ITO, Kei wrote:
>なお形質転換をするハエ実験室をP1にするかP2にするかは、「新規組
>み換え生物の作出と考えるか「宿主の変更」と考えるかで変わるようです
>ね。「新規作出」だとDNAの由来が動物か植物かで扱いが変わるようです
>が、そうすると、GFP ならP2だけど WGA ならP1になるのかな?なん
>か変な感じ・・・。

ちょっと、質問です。「宿主の変更」というのは実験指針のどこか
に書いているんでしょうか?

#これでも、安全委員会の委員長だったりしますが、組換えDNA
#実験指針を熟知するのは、委員長ではなく「安全主任者」の仕事
#であると指針の中に書かれていますので。。。(^^ゞ

--
布 山 喜 章 : 東京都立大学大学院理学研究科生物学教室


************************************

Date: Fri, 8 Nov 2002 14:28:02 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

>というあたりを考えると、以下のような理論武装(?)でほぼ大丈夫、と
>いうことになるでしょうか?これじゃまずいよ、と思われる方、ぜひご意
>見お願いします。
>
>1:
>諸外国や現在の日本の例を見ても、ハエの実験室を逃亡防止のため2重扉
>にしている例はほとんどなく、P2実験室が一枚扉であることに鑑みても、
>前室を作ることは不要である。電撃殺虫器とか、誘因性の水盤トラップな
>ど、逃亡した蠅をその部屋の中で捕獲する具体的な方策を設置すればよい。
>
>2:
>ただし、P1実験室の中で直接ハエを飼育するのでなく、さらにハエの恒温
>室がある方がよい。また新たに施設を作る場合など、余裕があるのであれ
>ば、更なる安全確保のために余剰安全対策として前室を設けるとなお良い。

村上です。
いとうさんの案に賛成です。安全委員会などでの参考意見に使うために次のような文
面はどうでしょう。

「組み換えショウジョウバエの飼育は密閉性容器で行う。実験室の扉は出入りの際を
除いて閉じておき、施錠可能なものとする。飼育作業時等に逃亡する個体のための捕
獲装置を実験室内に備えるものとする。実験室の状況に応じて、飼育容器を実験室内
に設置した密閉性の恒温器、または恒温室に入れる、あるいは、出入り口に2重扉、
網戸、前室などを備える、などの安全対策を加えることが望ましい。」


************************************

Date: Fri, 8 Nov 2002 14:54:59 +0900
From: Ryutaro Murakami
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

>ちょっと、質問です。「宿主の変更」というのは実験指針のどこか
>に書いているんでしょうか?
>
>#これでも、安全委員会の委員長だったりしますが、組換えDNA
>#実験指針を熟知するのは、委員長ではなく「安全主任者」の仕事
>#であると指針の中に書かれていますので。。。(^^ゞ

安全委員にして安全主任者の村上です。
動物個体を用いる実験の中での「宿主の変更」の項目はないようです。失礼しました。
いずれにしても、P2 で作製した組み換え DNA を動物個体に用いる場合、その素性に
よって安全委員会がレベル下げできるので、P1 とされる場合が多いと思います。
実験責任者と安全委員と安全主任者が同一人物というのは具合が悪いですね。ハンコ
が1つで済むけど。


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Date: Fri, 8 Nov 2002 15:40:26 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め

At 1:31 PM +0900 02.11.8, Murata, T (RIKEN BRC) wrote:
> からしますと、これからラボをもつかもしれない若手に、これまでの議論を
> 「二重扉は不要」
> と短絡的に考えては頂きたくありません。そうではなく、二重扉で無くても大丈夫、
> それも、逃げても大丈夫という論理ではなく逃げない措置をこれだけとっているの
> で、と理解して頂きたい。

それはそのとおりですね。既存の研究室で二重扉の増設工事が不可能に近い
場合はともかく、新設の場合には、なるべく出入りの扉が二重になるように
ハエ飼育室の配置を設計するのが、「周辺住民」への配慮として重要かも知
れませんね。
(周辺住民には、キャンパス周辺の市民も、建物内の他の研究室の住人も含
みます。^_^;)

また、古くからのラボでよく見かける「ハエ取り紙」に比べ、最近の電撃殺
虫器はなかなか優秀です。ぜひ導入をお薦めします。(デザインによって大
型昆虫向きのものとハエ向きのものがあるのでご注意を。)

いとうκ


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Date: Mon, 11 Nov 2002 12:57:52 +0900
From: "ITO, Kei"
Subject: [Jfly] ショウジョウバエ飼育室と物理的封じ込め(電撃殺虫器)

電撃殺虫器についてお問い合わせが多かったので、うちでの設置状況を
web に載せました。

http://jfly.uni-koeln.de/html/figures/fly_trap/

オーム電機という会社の OBK-6 という商品です。下記のサイトなどで、
2000〜2500円くらいで通販でも買えます。

http://203.139.195.166/weekly/200208-7777-00414/200208-7777-00414.htm

http://www.rakuten.co.jp/brico/429250/438274/444165/

同社の電撃殺虫器には、何種類かありますが、

・OBK-4 は、電撃の電圧が900ボルトしかないので、かかったハエがは
 じき飛ばず、導線にこびりついてしまって焦げ臭くなる。

・最上位機種の OBK-12S は、点灯点滅を自動制御でき、電撃電圧が3000
 ボルトとさらに高いなど良さそうに見えるが、導線の間隔が広すぎて、ハ
 エが全然電撃にかからないので、ダメ。

というわけで、 OBK-6 が一番でした。

以上、当研究室ガジェット研究グループ・大綱君によるスクリーニング結果
でした。(^_^;)

いとうκ