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「最初の数百系統」名言の出所


From: Hirotaka Kanuka
Date: Mon, 5 May 2003 23:36:57 -0700
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言

Jflyの皆様:

こんにちは、嘉糠@Stanfordです。ちょっと質問させて下さい(もしかしたらあ
まりに常識かも知れませんが)。今日うちのラボで「いいスクリーニングって最
初の何百かに必ず当たりがあるっていう名言があるよね」という話題で盛り上が
り、ほぼ全員がその話を知っていたのですが、しかし私を含めて誰もその出典を
知らず。「あれ?Ashuburnerだっけ?Benzerだっけ?」という状態。

私も日本のショウジョウバエ研究者のどなたかが発表でそのセンテンスを引用し
ていたのを覚えています。私のうろ覚えでは「最初の200系統で」だったような気
がするのですが、スクリーニングにおける様々な含蓄が含まれている素晴らしい
言葉だと妙に納得した記憶がありました。もしもどなたか正式なセンテンスと発
した研究者の方をご存じでしたら、是非教えて頂けると幸いです。ちょっと外し
た質問で恐縮です。

嘉糠洋陸
kanuka@stanford.edu


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Date: Tue, 6 May 2003 16:17:33 +0900
From: Tetsuya Tabata
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言

Jonathan Weiner著のBenzerの伝記、TIME, LOVE, MEMORYのp110にKonopka's law
"If you don't find it in the first two hundred, quit."が出てきます。より
originalな出典があるのかもしれません。堀田先生はその現場にいらっしゃった
ので はないでしょうか。

多羽田哲也
Institute of Molecular and Cellular Biosciences
University of Tokyo


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From: yhotta@lab.nig.ac.jp
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言
Date: Tue, 6 May 2003 20:34:14 +0900

about [Jfly] 「最初の数百系統」名言.

遺伝研の堀田です。ご指名があったので 昔を思い出しました。

コノプカ伝説とかコノプカの法則という言い方は Werner の本で初めて知ったので、
コノプカの創作か、小説家の創作でしょう。もしかしたら最近のベンザー研で言わ
れているのかもしれないが。私も一緒に実験したのですが、コノプカは難しいスク
リーニングなのに3つの突然変異を分離し、しかもそれがアレルらしいというので、
私は眉に唾をつけました。リピートがとれるということは他に時計関連遺伝子がほ
とんどない(Po=exp(-3) 皆さん Poisson分布知ってる?)と言うことですから、
そんなことが少数の実験で得られる確率は極めて低いことになります。私はそれほ
どラッキーだったことはそれ以前も以後も一度もありませんから、信じられない、
従って、自分が信じられない論文には名前をのせない!と言うことにしました。

ところで Beginner's Luck というか、スクリーンをはじめて早目に結果がでてこな
かったら考え直した方がよいという意味でしたら、それは眞実です。だいたい、他
人に言う前にパイロット実験をこっそりやって見通しをつけてから始めるのではな
いですか? まさか皆最近はそうしていないのではないでしょうね。

一方、一つ二つとれてもそこでやめないでとことん実験することが重要です。最初
のアレルが解析に最適なアレルであるというほどラッキーであることは期待すべき
ではありません。一つの遺伝子座から複数のアレルをとるか否かで、その後の解析
の切れ味が決定します。それが最初のトライヤルだけで得られたのが per
だったのだから信じろと言う方が無理というものでした。残念!

ところで以前の堀田研で gcm を発見した大学院生は、1000個くらい突然変異をとる
つもりで始めたらしく、3桁の数字をつけていました。gcm は 008 番でした。009
以降は欠番です!!

運命の女神は誰にも公平に一生のうちに3度ほほえみます。それに気がついてものに
できるかどうかは日頃の精進にかかっていると言うのが私の意見です。

堀田 凱樹
国立遺伝学研究所 所長
総合研究大学院大学
 生命科学研究科 遺伝学専攻長


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Date: Wed, 07 May 2003 00:17:32 +0900
From: "粂 和彦"
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言

熊大の粂です。

ピリオドが出てきたので、ハエから離れますが・・・

マウスのクロックという変異株も、30ケージ目に見つけた(最低でも数百は
スクリーニングする予定だった)と聞きました。セレンディピティ・・・ですね!

このクロックを取ったジョー・タカハシのラボでは、マウスの劣勢変異のスクリー
二ングもしているそうですし、バランサー染色体の開発などの噂もあり、最近は、
マウスもショウジョウバエ化?が進んでいるようです。

熊本大学発生医学研究センター
  助教授  粂 和彦


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From: Hirotaka Kanuka
Date: Tue, 6 May 2003 16:37:30 -0700
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言

堀田先生、多羽田先生及びその他の皆様:

嘉糠@Stanfordです。お返事&大変丁寧なコメントをどうも有り難うございまし
た。身に染み入ります。

メールを見た瞬間「あれ?」と思い、目の前の自分の棚にあった「TIME, LOVE,
MEMORY」を恐る恐る手にとってページをめくると確かにP110にありました(苦
笑)。私が前に見たのはまさにこの文章です。私自身は、200系統程度でパイロッ
トスクリーニングを行い、アッセイ系の具合と手応えさらにはトラブルシュー
ティングを実行し、先に進むか判断する分岐点として捉えています。しかしこん
なにいろいろと背景があったとは、思わずそのchapterを読んでしまいました。

としますとちょっと別の興味が湧きます。

"But Max," Benzer said, "we found the gene!" (同じくTIME, LOVE, MEMORYから引用)

これは時計のペースメーカーの存在自体に疑問を持っていたDr. Max Delbruckに
対しての言葉だそうですが、これはperを3アリルも取ったスクリーニングの結果
に対しても当てはまります。そうしますと、この場合は「本当は陰で相当数のス
クリーニングをやっていた」のか、それとも「運命の女神が幸福をもたらしたの
か」どちらだったのでしょう?うちのラボでもまた盛り上がりまして(笑)、意
見は圧倒的に後者でした。でも日本人気質なのか私は前者だと思いたい部分もあ
りますが…。

嘉糠洋陸
kanuka@stanford.edu


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Date: Tue, 06 May 2003 20:54:09 -0400
From: "Matakatsu, Miho"
Subject: [Jfly] 「最初の数百系統」名言

X 染色体13Cの領域でlocal hop をやったとき、160番目でアリルの候補を
拾いました。しかし、そのアリルは Pをoriginal siteに残したまま、33キロ
のdeletionを作っていたのが わかったので、スクリーニングを続けました。
local hopのドナーとなる、P element insertion lineは代えました。新たに3系
統のPドナーから、(なぜか無意識に)200系統ずつline化し、始めの200系統
もあわせてトータル800染色体スクリーニングしましたが、結局160番目以
降、アリルはとれませんでした。Time, Love, Memoryを読んだのは、去年のクリ
スマス休暇でした。Konopkaの"his law"を見つけ、初めて200というマジック
ナンバーを知りました。と同時に、1回のスクリーニングイベントに対して200
なのだろうか?新たに、今、同じP ドナーからlocal hopをセットしたらアリルが
とれるのかな?と思いました。が、やっていません。どんなもんでしょうか?

ところで、Drosophila c-virusに関して、、、、。

その後、Davidson Labのハエは、むちゃくちゃc-virusにやられていることが分り
ました。添付していただいたプロトコールは、computer virus alertが出ていま
したが、意を決して開け、プロトコールはプリントアウトし、活用させていただ
いています。ありがとうございました。

Miho Tanaka-Matakatsu@NCI, NIH