Jfly ディスカッション


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Non-RIによるノーザン・ブロット


Date: Thu, 15 May 2003 22:02:59 +0900
From: Shimoda Masami
Subject: [Jfly] Non-RIによるNorthern hybridization

Jflyの皆様

農業生物資源研究所の霜田政美です。
Non-RI標識による Northern hybridizationの検出感度について質問があります。

ある遺伝子をAlkPhos direct labelling kit (Amersham)とCDP-Starを用いて検出
しようとしたところ、シグナルが得られませんでした。ある方にお聞きしたとこ
ろ、この遺伝子は発現量が少ないため、Non-RIでの検出が難しいだろうという
指摘をいただきました。私としては、できればRIを使わずに実験を進めたいので、
化学発光による検出をもう少し検討してみたいと考えています。
私が使ったAlkPhos direct labelling kit (Amersham)は化学架橋による酵素標識法
ですが、プローブ比活性のより高くなるラベル方法もあります。
下記にいくつか列記しましたが、このようなキットについて検出感度の情報・経験を
お聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。

・DIG-ハイプライム(ロシュ):KlenowによるランダムプライムDIG標識法。
・DIG-RNA labeling kit(SP6/T7)(ロシュ):
 RNAポリメラーゼを使用したin vitro転写によるRNAのDIG標識法。
・Gene Image Random-Prime Labelling(Amersham):
 ランダムプライム標識法で、DIGの代わりにフルオレセインを使っている。
・IIIuminator Chemiluminescent Detection System(Stratagene):
 ランダムプライム標識法で、DIGの代わりにフルオレセインを使っている。

追記:5年前にJflyでDIG法についてディスカッションがありましたが、その後、
Non-RIを使われる方も増えて、いろいろな情報があるのではないかと思います。
よろしくお願いいたします。

農業生物資源研究所
昆虫生産工学研究グループ
遺伝子工学研究チーム
霜田政美


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Date: Thu, 15 May 2003 23:44:24 +0900
From: "粂 和彦"
Subject: [Jfly] Non-RIによるNorthern hybridization

熊本大学の粂です。

AlkPhos は、簡単で良いですが、感度はやはり落ちるようです。現在、私たちは、
ノーザン・サザン(哺乳類ゲノム1コピー)ともに、DIG を使っています。

DIG のラベリングでは、コンストラクトを作る手間さえ惜しまなければ、RNAプローブ
がやはり最高です。RNAプローブは、比活性も高くなりますし、量もかなり取れるし
(うちは、ロッシュのキットのプロトコールの半分量にけちって作っています)ま
た、ハイブリの温度が高くできるので(ノーザンでは、50%フォルムアミド相当で
も、68度です)、バックグラウンドも低くできます。

次善が、PCRで、まあまあ(ただし、ロッシュの純正のキットで)・・・ランダムプラ
イムは、かなり感度が落ちて、PCRプローブで検出できたものが、検出できなかったこ
ともあります。

発色は、抗DIG-APで、CDP-Star が現時点では最高感度と思います。RIと何ら遜色ない
という感じです。DIGは、5年前と変わっていませんが、CDP-Star はその時にはなか
ったかもしれませんね。また、私たちはダウンワード・トランスファーをしています。
一度、non-RI にしたら、RIに戻る気が全くなくなりました。

細かい点も必要でしたら、お気軽に電話下さい。


熊本大学発生医学研究センター
  助教授  粂 和彦


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Date: Sat, 17 May 2003 16:18:06 +0900
From: Shimoda Masami
Subject: [Jfly] Non-RIによるNorthernhybridization

Jflyの皆様

農業生物資源研究所の霜田です。
Non-RIによるNorthern Hybri.の件では、 粂さんをはじめ皆様から情報をいただき、
誠にありがとうございました。

結論としてin vitro transcriptionによるRNA labeling+CDP starが最も感度が高く、
ランダムプライム法より明らかに比活性が高くなるようです。

ご回答をいただいた中でlabellingの比較実験をされている方がいらっしゃいました
ので、ご本人の承諾を得て内容を転載・略記します。

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以下の方法でプローブの検出限界を調べられます。
1. プラスミドにクローニングして、適当な濃度にします。
2. これの希釈系列をつくります。たぶん10倍希釈を10段階もやれば十分。
3. メンブレンに1ulくらいずつスポットし、手持ちのプローブとハイブリさせて検 出。
4. 最適条件 (他の分子が存在しない条件)で実験した時の、検出限界(DNAが何分子
  スポット中 に存在していれば、そのプローブで検出できるか)がわかる。
5. これをもとに、様々な実験条件を設定する。

これまでlabelling方法を比較した結果、
1. DIG-DNAラベリング(klenow)
2. DIG-RNAラベリング(SP6/T7)
3. PCRラベリング
4. DIG-ハイプライム

検出感度は、2 > 4 ≒ 3 >> 1でした。

ランダムプライム法である1と4を較べると、断然4の比活性が高かったのですが、
常に一定の ラベルを安定に入れられるのは1の方でした。4は簡単に100倍くらい比活
性が違うこともあり、ミスる 確率も高いようです。4のチャンピオンデータだと、2の
in vitro transcriptionと比べて若干劣る程度のものができました。3のPCRでも安 定に、
それなりのラベルはできました。しかし、PCRのバンドが常に1 本とは限らないので、
結局、2を使い続けています。
DIG-ハイプライム標識キットやin vitro transcriptionは、人によって、 あるいは 同一人物
でも習熟度が低いと、ものすごくラベリング効率がふれます。1のランダムプライムは、
低いなりに安定な感じを持っています。どちらをとるかですね。

ちなみに、2のin vitro transcriptionは、いつもT7よりもSp6の方が比活性が低く なります。
おかしなことに、RIを使うと違いは出ませんので、DIG修飾dUTPの取込 みがSp6では悪い
のだろうと推測しています。したがって、比活性の高 いプローブを作るには、DNA断 片の
クローニング方向も重要かもしれません。

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また、そのほかの方からも以下のアドバイスをいただきました。
・Total RNAではなく精製したmRNAを泳動し、実質的なmRNA量を増やす
 (理論上、検出感度を数十倍向上できる)。
・プローブのサイズはできるだけ長いほうが感度はいい(1kb以上が望ましい。
 500bp程度の場合ベクター部分も一緒にラベルして使う)。
・どの方法で調製したプローブ用DNAも、DNA濃度を厳密に測り、かつ、ラベル
 前にゲル泳動でチェックしたほうが無難である。

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以上です。

農業生物資源研究所
昆虫生産工学研究グループ
遺伝子工学研究チーム
霜田政美


Date: Mon, 19 May 2003 10:10:58 +0900
From: "粂 和彦"
Subject: [Jfly] Re: [Jfly] Non-RIによるNorthernhybridization

熊本大学の粂です。

問い合わせもありましたので、私たちのプロトコールを、もう少し詳しく紹介してお
きます。

1.泳動から転写までは、細胞工学別冊の「脱アイソトープ実戦プロトコール」
p.70-に順天の石井−堤 裕子さんが書いているものを使っています。といっても、変
性液、ゲルともに、ホルマリンが薄い(0.41M)という点を除けば、ごく普通の
やり方です。また、blotting は市販のセットなど持っていないので、その辺にあるト
レイを並べて、ダウンワードでやっています。10XSSCで3時間からオーバーナ
イトです。

2.メンブレンは、S&Sのpositively charged nylon で、固定は80度20分、
(本当は中性が良いかもしれませんが、別の目的で買ったのがあったので使っている
だけです・・・)

3.プローブは、RNAで、定量していません。熱変後、TBEゲルに流して、
EtBr で見て、予想の長さに、予想の量で、綺麗にバンディングしていれば、OKと考
えています。収量は、標準といわれる総量20μg程度できていると「仮定」して計
算して、ハイブリに使っています。なお、テンプレイトの方は、制限酵素処理後に、
PK処理も15分ほど加えて、フェノクロ3回以上で、かなり綺麗にしてから、定量
して使っています。(こちらは丁寧にやっています)。長さは、600bpから2k
bのものを使っています。

4.以後は、ハイブリ、洗い、検出など、EasyHyb を使ってロッシュのプロトコール
通りです。このメンブレインはバックグラウンドが高いので、検出は、大体5分くら
いで、それ以上焼いても黒くなっちゃいます。中性のメンブレインの場合の経験のあ
る方、教えてください。


霜田さんのまとめて下さった内容、定量的に比較されていて、勉強になりました。あ
りがというございます。

ただ、実は、今、使っているフラグメントが、何らかの理由で、T7方向からはプ
ローブができず、しかたなく、向きを変えて、センスもアンチセンスも、SP6で作
っています。ですから、T7で駄目なときは、逆も試しみる価値はあると思います。


熊本大学発生医学研究センター  粂 和彦