Anesthetizer Bottle
(ショウジョウバエ用麻酔びん)




1996年7月
布山喜章(都立大・理学部・生物)
  

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            新型麻酔びんの紹介
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Jflyの皆様:
 
 都立大で大昔から使用している麻酔びんの原型は、モーガンの研究室で開発
された由緒正しいものですが、案外使い勝手がいいので、一度使用すると病み
つきになります。しかし、ガラス製のため壊れ(壊し)やすいこと、腕のいい
ガラス職人が少なくなり、作ってくれるところがなかなか見つからないこと、
あったとしても、法外な値段になってしまうこと、といった欠点もありました。

 このタイプの麻酔びんの入手法に関しては、以前にも、何人かの方から問い
合わせがありましたし、また、都立大の在庫もそろそろ底をついてきたことか
ら、今後どうするかをまじめに考えなければならない事態になりました。種々
検討の結果、コストが安く、かつ壊れにくいものを新たに開発することにし、
試作をしてきましたが、どうやら実用になりそうなものができましたので、皆
様にも、ご紹介することにいたします。以下、少し長いので、興味とヒマの無
い方は、ここまでで止めといて下さい。

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 新型麻酔びんのお求めは....と言いたいところですが、残念ながら市販
品ではありませんので、各自で製作していただく必要があります。作り方は以
下に説明しますが、いたって簡単で、よほど不器用でないかぎり、1時間もあ
ればできるはずです。なお、一個あたりのコストは、500円から、せいぜい
奮発しても1000円止まりです(ただし、手間賃は含めず)。

<<新型麻酔びんの作成法>>

<必要な材料>
1.マヨネーズ立て (貝印 FG-0464)
 これを使うところが一番のみそです。本来の用途は、マヨネーズやケチャップ
 の容器を逆さまに立てて置くためのものです。大きなスーパーマーケットの台
 所用品売場などを探してみて下さい。もし、どうしても見つからなければ、下
 記の製造元に問い合わせてみて下さい。値段は、1個300円程度のはずです。

   〒101
   東京都千代田区岩本町3ー9ー5
   貝印株式会社
   TEL (03)3862-6455      

2.プラスチックまたはガラス製の透明なチューブ (外径30mm)
 アクリルやスチロール製パイプはエーテルに弱いので、使えません。ポリカー
 ボネート製が理想的ですが、ポリプロピレンでも大丈夫です。長さは、好き好
 きでいいですが、大体60〜80mmといったところです。外径が30mmと
 いう条件は重要なポイントです。マヨネーズ立てに差し込んでみて緩すぎない
 かどうか確かめて下さい。
 ポリカーボネートやポリプロピレンの定尺パイプには、外径30mmという規
 格はたぶん無いと思いますので、遠心管やファルコンチューブなどの容器の底
 の部分を切り取ったものを利用すると便利です。ポリカーボネート製の遠心管
 は、超遠心で何回か回すと底に傷がついて使えなくなりますので、こういうの
 をごみ捨て場から拾ってくるというのも手です。
3.プラスチックロート
 材質はポリエチレンでもポリプロピレンでもかまいません。径の小さいものは、
 脚の部分の径も小さく、ハエが詰まる可能性が大きいので、径が9cm位で、
 脚の部分の径の大きいものを選びます。
4.テーピング用テープ
 運動選手などが格好付け(?)に巻くやつです。幅25mm位にのものが適当
 でしょう。包帯や脱脂綿でもかまわないですが、テーピング用テープは接着剤
 が付いているので、作る際の作業が楽です。

<作り方>
1.プラスチックロートは、そのままだと大きすぎるので、ロート部分を適当な
 径になるように切り取ります。目安としては、飼育びんの径より2cm位大き
 くすると扱いやすいと思います。直径30mmの飼育びんを使っている場合は、
 上端の直径が50mm位といった具合です。脚の部分も、30mm位(テープ
 の幅より5mmほど長く)を残して切り取ります。
2.ロートの脚の部分の上端にテーピング用テープを固く巻き付けます。プラス
 チックチューブの内径に一致するまでが目安です。チューブに入れてみて、き
 つすぎるかなという位がちょうどいいと思います。
3.テープを巻いたロートを、ロートの縁がチューブに縁にぶつかるまで押し込
 みます。少しきつすぎる場合でも、テープ幅の半分くらいまで押し込んだとと
 ころで、反対側からエーテルを少量流し込んでやると、接着剤が溶けて、ぬる
 っと入ります。テーパーのあるチューブを使う場合には、径が30mmの側を
 空けておくようにして下さい。
 ロートの縁とチューブとの間に隙間ができて、気になるようでしたら、適当な
 充填接着剤(セメダインコンクリメント、バスコークなど)で塞ぐといいでし
 ょう。
4.ロートと反対側にマヨネーズ立てをはめて完成。テープを巻いた部分にエー
 テルまたはトリエチルアミンを染み込ませて使います。

<その他参考事項等>
1.難点の一つは、マヨネーズ立ての台の部分がスチロール樹脂製であるため、
 誤ってエーテルをこぼすと溶けてしまうことです。うまい対策は思いつきませ
 んが、水性ラッカーを塗っておけば、ある程度までは大丈夫のようです。
2.マヨネーズ立ての受けの部分ははゴム製のため、エーテルによる劣化が心配
 されますが、テストした範囲では、それほど急激な劣化はないようです。まあ、
 安いものですから、消耗品と考えていただいた方がいいでしょう。
3.肝心なマヨネーズ立てですが、どう考えてもさほど売れそうな商品とは思え
 ませんので、メーカーが製造を止めてしまう恐れがあります。なるべく大勢の
 方に気に入っていただいて、多数注文していただければ、メーカーも張り切っ
 て製造を続けてくれるのではと期待しています。ことと次第によっては、商品
 名も「マヨネーズ立て」から「ショウジョウバエ麻酔びん用」に変更すること
 もありうるかも知れません。
4.製作にあたって、特別な工具は必要としませんが、プラスチック製のロート
 やチューブを切断するには、金切り鋸を使うと簡単です。また、切断後のバリ
 取りには、電動グラインダーがあると楽です。できるだけ丁寧に仕上げないと、
 とかく粗末に扱われがちです。

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布 山 喜 章 : 東京都立大学理学部生物学教室
Yoshiaki FUYAMA : Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University
     e-mail : fuyama-yoshiaki@c.metro-u.ac.jp



A data depository for Drosophila researchers. Emphasis is on research materials in Japanese, although there is much in English.