討論会

「ポストゲノム時代にむけて」

 ショウジョウバエのゲノムは、アメリカ(バークレー)とヨーロッパそれぞれのゲノムプロジェクト(BDGP, EDGP)及び民間企業Celera Genomicsの努力によって、今年中にも全塩基配列が決定されそうな速さで解析が進んでいる。現在欧米は、DNAの全配列が解明されたことを前提に、次のステップとして何をやるかを計画・実施する段階に入っている。ゲノムプロジェクトは、単に全配列を決めるという作業だけを指すのではなく、ゲノム全体を視野に入れた総合的かつ大規模な研究全般をも指すが、ショウジョウバエにおけるゲノム全塩基配列決定後のこのような研究が今後どのように展開するかという方向性は、この1、2年で決まるだろう。

 日本はショウジョウバエを使った研究の活発さという点から言うと、アメリカやイギリスには負けるけれど他の国はすでに超えていると言ってもいいレベルに達している。だが欧米のゲノムプロジェクトが立ち上がった当時、日本では何か貢献できるだろうかという議論は活発には行われないままに、なし崩しにこれまで過ぎてきてしまった。全塩基配列が解明された次の段階(いわゆるポストゲノム)の時代がちょうど始まろうとしている今、日本がこれに対してどのように接してゆくか、いちど皆で考えてみるのも悪くない。このような考えで、本日の討論会を企画させていただいた。

考慮すべきバックグラウンド:

以上のような点を念頭に置いて、以下の順で議論を進めてゆきたい。

本日の討論会では、何らかの結論めいたものを出すことは目的としない。言いっぱなし、聞きっぱなしになることは構わないと考えている。この機会になるべく多くの方に自分の思うところを述べていただき、それが今後それぞれの研究者が研究計画を立てたり共同プロジェクトを立案したり、あるいは自分の将来の進路を考えたりする際に、何らかの参考になれば幸いである。


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