日本ショウジョウバエ研究会 第4回研究集会プログラム・要旨 プログラム シンポジウム演題 講演演題 ポスター一覧 シンポジウム要旨 討論会 講演要旨 ポスター発表要旨 プログラム 8月2日(月)12:00 受付開始 ポスター掲示開始 13:00〜13:05 開会 13:05〜16:30 講演 <座長:井上 喜博(愛知がんセ研)> L-1 13:05 倉田 祥一朗(東北大・薬) L-2 13:35 多羽田 哲也(東大・分生研) L-3 14:05 広海 健(遺伝研・発生遺伝) (14:35〜15:00 休憩) <座長:中村 真(基生研・形態形成)> L-4 15:00 三浦 正幸(阪大・医) L-5 15:30 山口 政光(愛知がんセ研・生物) L-6 16:00 布山 喜章(都立大・院理) 16:30〜18:30 ポスター 8月3日(火) 9:00〜12:00 ポスター 10:00〜11:00 奇数番号の説明 11:00〜12:00 偶数番号の説明 13:20〜16:00 シンポジウム Symposium "Symmetry Breakers" Organizers: Tadashi Uemura (Kyoto University) & Fumio Matsuzaki (Tohoku University) S-1 13:20 Tadao Usui (Kyoto University) S-2 13:55 Shigeo Hayashi (National Institute of Genetics) (14:30〜14:45 break) S-3 14:45 Fumio Matsuzaki (Tohoku University) S-4 15:20 William Chia (National University of Singapore) 16:00〜16:30 総会 18:00〜20:00 懇親会 (会場:名古屋大学ユニバーサルクラブ、 会場での受付開始は17:00頃から) 8月4日(水) 9:00〜11:00 ポスター 11:00〜12:00 テクニカルセミナー ・RNAi ・GFPを用いた生きた胚のリアルタイム観察 ・その他 (ポスター撤去は、12:45までに!) 13:00〜15:00 討論会「ポストゲノム時代にむけて」 コーディネーター:伊藤 啓(基生研) 15:00 閉会 シンポジウム演題 8月3日(火)13:20〜16:00 Symposium "Symmetry Breakers" Organizers: Tadashi Uemura (Kyoto University) & Fumio Matsuzaki (Tohoku University) S-1 Flamingo: Multiple Roles in Planar Cell Polarity Formation and Axon/Dendrite Patterning. Tadao Usui*1, Yasuyuki Shima1, Yuko Shimada1, Shinji Hirano2, Yuko Yamaguchi1, Robert W. Burgess3, Thomas L. Schwarz4, Masatoshi Takeichi1, Tadashi Uemura1. 1:Graduate School of Biostudies, Kyoto univ., 2:(Present address) Aichi Human Service Center, 3:Stanford univ. School of Medicine. S-2 Cell specification and polarization in the tracheal development. Shigeo Hayashi*, Tomoatsu Ikeya, Miho Tanaka-Matakastu, Takahiro Chihara. National Institute of Genetics and the Graduate School for Advanced Studies. S-3 Asymmetry in neural stem cells. Fumio Matsuzaki. Institute of Development, Aging and Cancer. Tohoku University. S-4 ASYMMETRIC CELL DIVISIONS AND THE GENERATION OF NEURONAL DIVERSITY. William Chia. Developmental Neurobiology Laboratory, Institute of Molecular and Cell Biology, National University of Singapore. 講演演題 8月2日(月)13:05〜16:30 <座長:井上 喜博(愛知がんセ研・生物)> L-1 Notch シグナリングと器官アイデンティティーの決定 倉田 祥一朗 東北大・院薬 L-2 Dppモルフォゲンとパターン形成 多羽田哲也 東大・分生研 L-3 新規Ets蛋白EDLによるhomeogenetic induction の制御 山田琢磨1、岡部正隆1、広海健*1,2 1: 国立遺伝学研究所、2: 総合研究大学院大学・遺伝学専攻 <座長:中村 真(基生研・形態形成)> L-4 ショウジョウバエを用いた細胞死実行因子の機能解析 三浦正幸 大阪大・院医・神経機能解剖 L-5 ショウジョウバエDNA複製関連遺伝子の転写制御ネットワーク 山口政光 愛知がんセ研・生物 L-6 オウトウショウジョウバエ亜群の雄が作る排卵刺激ペプチド 布山喜章 都立大・院理・生物科学 ポスター一覧 P-01 Dfrizzled-3, a new Drosophila Wnt receptor, acting as an attenuator of Wingless signaling. 佐藤 淳*1、小嶋 徹也1、程 久美子2、宮田 雄平2、西郷 薫1 1:東大・理・生化、2:日医大・薬理 P-02 細胞膜プロテオグリカン Dally の翅の発生における機能 藤瀬桃子*、泉 進、中藤博志 都立大・院理・生物 P-03 減数分裂突然変異体mei-yh92の細胞遺伝学的解析 平井和之*1、山本雅敏2 1:京都工繊大・院工芸科学・生物機能、2:京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝 資源センター P-04 D. melanogaster/D. simulans 雑種における不妊遺伝子のマッピング 澤村京一*、山本雅敏 京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター P-05 dally遺伝子の転写及び転写後調節機構 津田 学*、泉 進、中藤博志 都立大・院理・生物 P-06 キイロショウジョウバエの卵成熟 初見真知子*1、澤正実2、渡辺泰弘3 1:島根大・生科・生物、2:愛教大・生物、3:島根大・理・生物 P-07 Notch シグナリングと器官アイデンティティーの決定 倉田 祥一朗*1,2、郷正博3、Spyros Artavanis-Tsakonas3, Walter J. Gehring2 1: 東北大・院薬、2: Biozentrum, University of Basel, Switzerland、 3: HowardHughes Medical Institute, Yale University, USA P-08 ショウジョウバエ変態中の中枢神経系における細胞死 辻村秀信*1、古賀裕美子1、木村賢一2 1:農工大・農・発生生物、2:北海道教育大 P-09 melanogaster species subgroupにおけるミトコンドリアDNAのA+T-rich領 域の進化 辻野史*1、小瀬村暁子1、猪平佳代2、松浦悦子2 1: お茶大・人間文化・ライフサイエンス、2: お茶大・理・生物 P-10 細胞接着因子とStill life - Rac経路のシナプスにおける局在と機能 曽根雅紀*1, 2、鈴木えみ子2, 3、星野幹雄4、侯東梅5、黒見坦5、 深田正紀6, 7、黒田真也6、貝淵弘三6、鍋島陽一4、浜千尋1, 2 1 : 国立精神神経センター・遺伝子工学、2 : CREST、3 : 東大・医科研、 4 : 京大・医、5 : 群馬大・医、6 : 奈良先端大、7 : 広島大・医 P-11 ショウジョウバエ脳におけるキノコ体初期形成過程の分子遺伝学的解析 来栖光彦*、長尾智子、古久保-徳永 克男 (筑波大学 生物科学) P-12 グリア・ニューロンを作りだす非対称性の分子機構 秋山(小田)康子*1、月田承一郎1,2、小田広樹2 1:京大・医・分子細胞情報、2:科技団・月田細胞軸プロジェクト P-13 ショウジョウバエCaspaseファミリーの活性化機構 嘉糠洋陸*、澤本和延、岡野栄之、三浦正幸 阪大・医・神経機能解剖&CREST P-14 ショウジョウバエcentral complexの蛹期における発生 田中公子*1,2、伊藤 啓1,3 1:基生研、2:CREST・JST、3:PRESTO・JST P-15 ヒトp53をショウジョウバエ複眼原基で異所的に発現させるとS期への進入を 阻害し、アポトーシスを誘導する 山口政光*1、広瀬富美子1、井上喜博1、白木岐奈1、林裕子1、西義美2、 松影昭夫1 1:愛知がんセ研・生物、2:愛知がんセ研・共通 P-16 神経−筋結合の標的認識過程における軸索成長円錐と筋細胞の動的相互作用 鈴木えみ子*1, Demian Rose2, Sarah Ritzenthaler2, 千葉晶2 1:東大・医科研・微細形態, CREST.JST, 2:Dept. Cell & Struct. Biol., Univ.Illinois P-17 光受容細胞の分化におけるMSIおよびSINAの機能 廣田ゆき*1、岡部正隆2、来栖光彦3、澤本和延1、岡野栄之1 1:阪大・医・神経機能解剖学、CREST、2:遺伝研・発生遺伝研究部門、 3:筑波大・バイオシステム P-18 ショウジョウバエを用いた無脊椎動物Otx遺伝子の機能解析 安達在嗣*1、長尾智子1、西駕秀俊2、阿形清和3、梅園良彦3、Hans Bode4、 古久保ー徳永克男1 1筑波大・生物、2都立大・生物、3姫工大・生命、4Dept. Dev. Cell Biol.,Univ. Ca lifornia P-19 末梢神経系におけるNotchシグナルを介したgcm遺伝子の発現調節 梅園良彦*1、細谷俊彦2、3、堀田凱樹1、3 1:科技団・CREST、2:科技団・さきがけ研究21、3:国立遺伝研・発生遺伝 P-20 アクチン細胞骨格系を制御する新規MAPキナーゼフォスファターゼ 丹羽隆介*1、Bruce Hay2、竹市雅俊1、上村匡1 1:京大院・生命科学、2:カリフォルニア工科大 P-21 Notchシグナリングによるプロニューラル蛋白アキートの機能抑制 *中尾啓子、Fisher, A., Caudy, M. コーネル大学医学部 P-22 母性効果致死遺伝子tibiはArp2/3 complex 21kd subunitをコードしている 松林宏*1、山本雅敏2 1京都工繊大学・院、2京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター P-23 One-hybrid法によってクローン化されたショウジョウバエPCNA遺伝子転写 制御因子Grainyhead(GRH) 林 裕子1*、山岸 正裕1、西本 義男1、田口 修2、松影 昭夫1、 山口 政光1 1: 愛知がんセ・研・生物 2: 愛知がんセ・研・二病 P-24 キイロショウジョウバエ処女雌の性的受容性を制御するchaste 遺伝子の解析 従二 直人*1、山元 大輔1,2 1:科技団・山元行動進化プロジェクト、2:早大 ・人間科学部 P-25 Identification and characterization of Drosophila homolog of Rho-kinase. Tomoaki Mizuno1*, Mutsuki Amano2, Kozo Kaibuchi2 and Yasuyoshi Nishida1. 1 Grad. Sch. of Sci., Nagoya Univ., 2 Nara Inst. of Sci. and Technol. P-26 カブトムシの雄特異的角形成の分子マーカーの検索 新美輝幸*、大島宏之、三輪雅代、山下興亜 名大院・生命農 P-27 Calreticulin遺伝子突然変異体における可塑的行動の異常 冨田純也*1、国吉久人2、従二直人2、蒲生寿美子1、山元大輔2,3 1:大府大・総合科学研究科、2:科学技術振興事業団・山元行動進化プロジ ェクト、3:早大・人間科学部 P-28 ショウジョウバエ個体を用いたヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)の過剰発現 表現型の解析 八木克将*1,2、富田進1、中村真3、桐野豊1、鈴木利治1 1:東大・薬・神経生物物理、2:生研機構、3:基生研 P-29 キイロショウジョウバエの交尾時間が不規則になる変異体 fickle の解析 馬場浩太郎*1、竹下綾2,3、従二直人2、山元大輔2,4 1:東大・理・物理、2:科学技術振興事業団・山元プロジェクト、 3:現:三菱化学生命研、4:早稲田大学・人間科学部 P-30 DERシグナル因子ebiはNotchシグナルと相互作用を示す 津田 玲生*、S. Lawrence Zipursky HHMI, カリフォルニア大学ロサンゼルス校 P-31 WGAトランスジーンを用いたショウジョウバエ神経筋接合部におけるシナプ ス形成機構の解析 森本(谷藤)高子*1、徳本貴久1、田渕克彦2、岡野栄之2、吉原良浩3、 能瀬聡直1 1:東京大・院理・物理、2:大阪大・医・神経機能解剖、3:理研・脳研・シナプ ス分子機構 P-32 ショウジョウバエ成虫原基における異所性感覚器官形成と位置情報の関係 丹羽尚*、岡部正隆、広海健 国立遺伝研・発生遺伝 P-33 異所発現トラップ法を用いた神経結合特異性に関わる新規遺伝子の探索 梅宮猛1、2、高須悦子1、田中宏昌1、竹市雅俊2、相垣敏郎3、能瀬聡直*1 1:東大・院理・物理、2:京大・院理・生物物理、3:都立大・生物 P-34 グリア細胞は複数の分化経路で分化する 滝沢 一永*、堀田 凱樹 遺伝研、発生遺伝 科学技術振興事業団 P-35 交尾における生殖器の連結および解除に異常を示すキイロショウジョウバエの 変異体、lingerer の解析 国吉久人*1、馬場浩太郎2、近藤俊三3、山元大輔1,4 1:科技振、山元プロジェクト、2:東大理学部、3:三菱化学生命研、 4:早大人間科学部 P-36 複眼光受容細胞のニューロン分化におけるネガティブレギュレーターの役割 岩波 将輝*1.2、広海 健1 1.国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門 2.慈恵医大 微生物 第1 P-37 ショウジョウバエ翅・脚原基形成におけるEGFRシグナルの役割 久保田 一政*1,2、後藤 聡2,3、江藤 一洋1、林 茂生2,3 1:東医歯大・歯・発生、2国立遺伝研、3総研大 P-38 オナジショウジョウバエのpremating isolationの遺伝学的研究 上野山 登久 神戸学院女子短大 P-39 FTZ-F1とFTZの相互作用機構 鈴木 大河1、梅園 和彦1、川崎 陽久2、上田 均*2 1:京大・ウイルス研・情報高分子化学、2: 遺伝研・形質遺伝 P-40 小笠原諸島のオナジショウジョウバエはヤエヤマアオキ果実で繁殖可能か? 梁 百霊*、布山喜章 都立大・院理・生物科学 P-41 アドヘレンスジャンクションのネットワーク形成:カドヘリンとカテニンの協 調的な作用 小田広樹*1、月田承一郎1, 2 1: ERATO・月田細胞軸プロジェクト、2: 京都大・医 P-42 染色体分配を制御する新しい遺伝子(orbitとmeteor)の同定とその機能の解 析 井上喜博*1、山口政光1、西本義男1、D. M. Glover2、松影昭夫1 1:愛知がんセ研・生物、2:Dept. of Genetics, Cambridge Univ. England P-43 神経系に特異的に発現するC2HCタイプZnフィンガー転写因子の構造と機能 大迫俊二*、高松芳樹 東京都神経研・細胞生物 P-44 ハエの小容器内での歩行活動は2つの相からなる。 小松 明 東京女子医大・医・第一生理 P-45 hedgehog及びdppのモルフォゲン情報を統合する新規パターン形成遺伝子の クローニング、及び機能解析 船越陽子*、南真樹、多羽田哲也 東大・分生研 P-46 ショウジョウバエ気管系における Wg シグナリングの二つの機能 千原崇裕*、林茂生 遺伝研・無脊椎 総研大・生命科学 P-47 キノコ体を中心としたCaM キナーゼII - GAL 4の発現部位の解析 高松芳樹*1、中越英樹2、西田育巧3、山内卓4、大迫俊二1 1: 都神経研・細胞生物、2: 東工大・フロンティア(現岡山大・理・生物)、 3: 名大・理・生物、4: 徳島大・薬・生化 P-48 Notch 情報伝達系構成因子の新規候補遺伝子である aya の解析 鈴木 聡*1 伊藤 美紀子 2 岸 憲幸 1 松野 康子 3 Spyros Artavanis - Tsakonas 3 岡野 栄之1 ,2 松野 健治 2→4 1 : 大阪大学大学院医学系研究科・神経機能解剖 2 : 科学技術振興事業団/ CREST/JST 3 : Cell Biol. , HHMI , Sch. of Med. Yale , USA 4 : 東京理科大学基礎工学部生物工学科 P-49 Notchシグナルが果たす気管での役割 池谷智淳*1 林茂生1,2 1遺伝学研究所、2総合大学院大学 P-50 キイロショウジョウバエ雌の交尾のコストに及ぼす卵の有無の影響 上山盛夫*、布山喜章 都立大・院理・生物科学 P-51 ショウジョウバエSTATはD-raf プロトオンコジーンの転写制御因子である 権恩貞*1, 2, 3, 朴賢淑2, 金英信2, 西田育巧3, 松影昭夫1, 劉美愛2 , 山口政光1 1愛知がんセンター研・生物、2釜山大・理・分子生物、3名大・ 院理・生命理学 P-52 DRab2は新生ロドプシンの輸送と網膜の色素顆粒形成の両方に必要である。 佐藤明子*・河村悟・尾崎浩一 阪大・院理・生物 P-53 Gal4エンハンサートラップ系統の作出と翅成虫原基での発現スクリーン 山本美智子*1,山下敦士1,橋本直子1,高橋美和1,2,上田龍1 1:三菱生命研・神経発生遺伝,2:お茶大・人間文化 P-54 ショウジョウバエ消化管における左右非対称性 林 知美*、村上柳太郎 山口大・理・自然情報 P-55 初期胚での高い発現と染色体恒常性;ショウジョウバエRECQホモログ 川崎勝己*1,2, 鄭相民1, NGUYEN, Quang D. 1, 柴田武彦1,2, 1:理研 遺伝生化学、2: CREST, JST P-56 ナイドジェン:ショウジョウバエ発生における細胞外マトリクスの解析 熊谷知乃1、Liselotte I. Fessler1, Stefan Baumgartner2, John H. Fessler1 1 UCLA, Mol. Biol. Inst. & MCD-Biol. Dept., USA, 2 Lund Univ., Dept. Cell & Mol. Biol., Sweden P-57 シナプス小胞はrab5非依存的に再形成される 志水英之*、佐藤明子、河村悟、尾崎浩一 阪大・院理・生物 P-58 ショウジョウバエ変態過程におけるプログラム細胞死:細胞死抑制因子p35の 強制発現による細胞死の抑制 児玉明聡*1、谷村禎一2、木村賢一1 1:北教大・岩見沢・生物、2:九大・理・生物 P-59 アナナスショウジョウバエ類の性的隔離における求愛歌の役割 山田博万*、都丸雅敏、小熊譲 筑波大・生物科学 P-60 ショウジョウバエRab蛋白質の一種、DRabRP1、の細胞内局在と特性 *藤川和世・河村悟・尾崎浩一 大阪大・院理・生物 P-61 キイロショウジョウバエとセイシェルジョウバエとの間の性的隔離と雌による 配偶者選択の種内変異について 都丸雅敏*,小熊 讓 筑波大・生物科学 P-62 Dsrc42は上皮細胞嚢形成においてDJNKを調節する 館野実*、安達卓、西田育巧 名大・院理・生命 P-63 キイロショウジョウバエ自然集団における殺虫剤抵抗性の遺伝的変異と季節変 動 三代隆洋*1、赤井住郎2、小熊讓3 1:筑波大・院・生物、2:山梨学院短大、3:筑波大・生物 P-64 ネトリン受容体フラッツルドはネトリンの局在パターンを変化させ、細胞非自 律的に軸索ガイダンスを行う。 平本 正輝*、堀田 凱樹 遺伝研・発生遺伝 P-65 Drosophila mab-21の機能解析 白木岐奈*1,2、高橋直樹1、林茂生2 1:奈良先端大・バイオ・動物代謝、2:遺伝研・無脊椎 P-66 強制発現系を用いたショウジョウバエ寿命変異体の探索 成 耆鉉*1、相垣敏郎1,2 1:都立大・院・理、2:科技団さきがけ) P-67 オーストラリア東海岸におけるキイロショウジョウバエのゲノム内のP因子の 変遷 小倉啓司*1、Ronny C. Woodruff 2、伊藤雅信 3、Ian A. Boussy 4 1: 工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター 2: Dept. of Biol. Sci., Bowling Green State Univ. 3: 工繊大・繊維・応用生物 4: Dept. of Bio., Loyola Univ. of Chicago P-68 red遺伝子の転写産物の同定 大迫隆史1、相垣敏郎1,2、布山喜章1 1:都立大・理・生物、2:科技団・さきがけ P-69 核マトリックス構成分子Plexusの翅脈パターン形成での役割 亦勝和*1,2、田所竜介1、蒲生寿美子2、林茂生1 1:国立遺伝研、2:大阪府立大学・総科、 P-70 減数分裂突然変異体mei(3)1223[m144]による染色体特異的対合機構の解析 山本雅敏*1、 平井和之2 1:京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター、 2:京都工繊大・院工芸 科学・生物機能 P-71 肢原基で発現するgal4エンハンサートラップ系統のスクリーニング 後藤聡*12、谷口美佐子1、林茂生12 1: 国立遺伝研・系統セ・無脊椎、2: 総研大 P-72 The GFP viewer: A low-cost DIY portable device for the observation of Green Balancers and transgenics S65T GFP expression. ペール JB*1、相垣敏郎1,2 1: 東京都立大学・理学・生物、2: JST P-73 HedgehogによるDppシグナリングの負の制御 谷本拓*、多羽田哲也 東大・分生研 P-74 神経回路の形成を制御するdrio遺伝子の解析 粟崎健1、酒井良子、斉藤麻衣、曽根雅紀、浜千尋* 国立精神神経センター神経研究所遺伝子工学研究部、1:現、国立基礎生物学研 究所 P-75 幼虫の視神経細胞の分化に働く新しいhedgehogシグナル経路 鈴木崇之、西郷薫 東大・理・生化 P-76 Dppシグナル伝達に関与する新規因子の遺伝学的スクリーニング 中村 真*、西田 弥生、友安 慶典、上野 直人 基礎生物学研究所・形態形成研究部門 P-77 ショウジョウバエの巨大筋肉蛋白質Kettinの構造および遺伝的解析 *羽毛田 聡子、西郷 薫 東大・理・生化 P-78 間接飛翔筋由来cDNAライブラリーの作成 最上 要* 東大・院理・物理 P-79 wing disc形成に異常を示す新規変異体 unbalanced flight の解析 友安 慶典*1,2、上野 直人1,2、中村 真1 1:基生研・形態形成、2:総研大 P-80 FTZ-F1 変異体による fushi tarazu 遺伝子転写調節の解析 川崎陽久*1,2、上田均1、広瀬進1 1:遺伝研・形質、2:岩手大・連合農学 P-81 キイロショウジョウバエDNA polymeraseδ及びε欠損突然変異体の単離の試 み *吉田英樹1、2、井上喜博1、山口政光1、広瀬富美子1、大重真彦2、 坂口謙吾2、松影昭夫1 1:愛知県がんセ研・生物、2:東理大・理工・応用生物 P-82 細胞の神経誘導能獲得に関与するショウジョウバエの遺伝子 edl *山田 琢磨1、岡部 正隆1、三田和英2、広海 健1 1国立遺伝研・発生遺伝 2放医研・ゲノム P-83 ショウジョウバエ新規rasファミリー遺伝子Rap2-likeの分子生物学的解析 宮田直政*1、大迫隆史1、相垣敏郎1,2 1:都立大・院理・生物科学、2:科技団・さきがけ P-84 シナプスの可塑性、学習に寄与するショウジョウバエlinotte遺伝子 齊藤 実*1、Tim Tully2 1東京都神経研・病態神経生理、2コールドスプリングハーバー研究所 P-85 cAMPによるシナプス可塑性の遺伝解析 吉原基二郎*、城所良明 群馬大学医学部行動医学研究施設 P-86 翅縁形成に関与する遺伝子 hiiragi の機能解析 長曽秀幸*1、村田武英1、岡野栄之2、横山和尚1 1:理研・筑波セ、2:阪大・医・神経機能解剖学、科技団(CREST) P-87 DREF結合因子として分離したショウジョウバエMLFホモログの機能解析 *大野勝人1,2、高橋康彦3、広瀬富美子1、井上喜博1、田口修4、西田育巧2 松影昭夫1、山口政光1 愛知がんセ・研・生物1、二病4、名大・院理・生命2、ハーバード大3 P-88 ショウジョウバエのヘモサイチン遺伝子 *後藤彰1、熊谷剛1、森仁志1、森肇2、北川泰雄1,3 (名大院・生命農・生化学制御1京都工繊大・繊維・応用生物2、名大・生物分 子応答研究セ3) P-89 全身麻酔薬への感受性に関係する遺伝子群の解析 蒲生寿美子1*, 田中良晴1, 亦勝和1、石井秀紀1, 冨田純也1, 佐子山豈彦2, (1: 大阪府大・総合, 2: 阪大・医・遺伝) P-90 ショウジョウバエの新規プロテアーゼインヒビターファミリーの遺伝子解析 横山裕昭*1、新美友章2、Konrad Beck2、北川泰雄1、2 1名大院生命農学・生化学制御、2名大・生物分子応答研究セ P-91 Argosシグナル伝達経路に関与する新規な遺伝子の同定と機能解析 田口明子*1、澤本和延1, 2、宮尾幸代1, 2、岡野栄之1, 2 (1. 阪大・医・神経機能解剖学、2.CREST) P-92 Transcriptional Regulation of Drosophila TATA-Box Binding Protein (TBP) Gene by DRE/DREF system and Homeodomain Protein Zen. Tae-Yeong Choi1*, Kwang-Hee Baek2, Jae-Seong Yoon2, Kyu-Hyung Han3, Akio Matsukage4 and Mi-Ae Yoo1 . 1Dept. of Mol. Biol., Pusan National Univ., Pusan, Korea; 2Dept. and Inst. of Genet. Engineer., Kyung Hee Univ., Suwon, Korea; 3Dept. of Genet. Engineer., Hallym Univ., Chunchon, Korea; 4Lab. of Cell Biol., Aichi Cancer Center Res. Inst., Nagoya, Japan . P-93 カイコ休眠ホルモン-フェロモン生合成活性化神経ペプチド遺伝子の特異神経 分泌細胞発現制御領域の解析 石田裕幸*、新美輝幸、山下興亜 名大院・生命農 P-94 ニジュウヤホシテントウの翅形成・斑紋パターン形成に関与する候補遺伝子の 検索 三輪雅代*、山下興亜、新美輝幸 名大・農 P-95 ミツバチ脳のキノコ体において領野特異的に発現する遺伝子の解析 竹内秀明*、上川内あづさ、大原摩耶、澤田美由紀、名取俊二、関水和久、 久保健雄 東大・院薬・発生細胞化学 P-96 ミツバチのキノコ体におけるカルシウム情報伝達系に関わる蛋白群の選択的な 遺伝子発現 上川内あづさ*、竹内秀明、大原摩耶、澤田美由紀、名取俊二、関水和久、 久保健雄 東大・院薬・発生細胞化学 シンポジウム要旨 S-1 Flamingo: Multiple Roles in Planar Cell Polarity Formation and Axon/Dendrite Patterning 碓井理夫*1、島康之1、島田裕子1、平野伸二1,2、山口木綿子1、Robert W. Burgess3、Thomas L. Schwarz3、竹市雅俊1、上村匡1 1:京大・生命科学、2:現愛知身障者コロニー、3:スタンフォード大・医 Flamingo: Multiple Roles in Planar Cell Polarity Formation and Axon/Dendrite Patterning Tadao Usui*1, Yasuyuki Shima1, Yuko Shimada1, Shinji Hirano2, Yuko Yamaguchi1, Robert W. Burgess3, Thomas L. Schwarz4, Masatoshi Takeichi1, Tadashi Uemura1 1:Graduate School of Biostudies, Kyoto univ., 2:(Present address) Aichi Human Service Center, 3:Stanford univ. School of Medicine Flamingo (Fmi) is a seven-pass transmembrane molecule of the cadherin superfamily. We show that this receptor plays roles in epithelial pattern formation and neurite outgrwoth. In the wing epidermis, Fmi is localized at cell-cell boundaries and regulates planar polarity under the control of Frizzled (Fz). In the nervous system, Fmi controls axon pathfinding and dendrite arborization, and at least the role of Fmi in axogenesis appears to be Fz-independent. In this talk, we report pleiotropic phenotypes of fmi mutants and discuss our model of the molecular function of Fmi in PCP. S-2 Cell specification and polarization in the tracheal development 林 茂生*、池谷 智淳、田中ー亦勝 実穂、千原 崇裕 遺伝研・総研大 Cell specification and polarization in the tracheal development Shigeo Hayashi*, Tomoatsu Ikeya, Miho Tanaka-Matakastu, Takahiro Chihara. National Institute of Genetics and the Graduate School for Advanced Studies Development of the Drosophila tracheal system involves cell polarization events at multiple levels. Two topics will be discussed. First, trachal primordia invaginate from the ectoderm and undergo primary branching that converts the sac-like epithelium into tubular branches that migrate toward specific locations. This processes is triggered by the activation of Breathless RTK in response to the FGF-like ligand Branchless and probably involves a planar cell rearrangement of tracheal cells. We show that one of the immediate response to the FGF signaling is a stimulation of the Notch signaling which selects a single tip cell by the mechanism of lateral inhibition. Notch also prevents activation of MAP kinase in non-tip cells, in part through lateral inhibition of Branchless expression. The dual function of Notch appears to be essential for the formation of a tube capped with a single tip cell expressing high level of activated MAPK. A role of localized MAPK activation in tubulogenesis will be discussed. The second example of cell polarization is observed when fusion cells of two branches meet. Upon contact, fusion cells dramatically change their apical-basal polarity and distribution of secreted molecules. Reorganization of microtubule corelate well with this event. S-3 Asymmetry in neural stem cells 松崎文雄 東北大・加齢研 Asymmetry in neural stem cells Fumio Matsuzaki Institute of Development, Aging and Cancer. Tohoku University The asymmetric cell division is a basic process to create cell diversity in development. We have investigated its roles in neural development, where a large number of neurons with distinct fates arise from a smaller number of neural stem cells. During Drosophila neurogenesis, neural stem cells (NB) asymmetrically divide into another NB and a ganglion mother cell (GMC), that is cleaved into a pair of neurons. A transcription factor Prospero (Pros) as well as Numb is an asymmetrically distributed cell-fate determinant in this NB division. Miranda has been identified as a factor that binds Pros to direct it to the GMC from the parental NB. In the absence of Miranda, GMCs do not correctly express genes that are necessary for progeny neurons to acquire their identities, indicating that Miranda creates intrinsic differences between NBs and GMCs. What molecular machinery underlies the asymmetric localization of those factors? Our analyses suggest that epithelial cell polarity shares at least a part of the machinery with the cell polarity in the NB of epithelial origin. We are addressing this question by genetic screens for molecular components that are essential for the localization of asymmetrically distributed proteins such as Miranda. S-4 ASYMMETRIC CELL DIVISIONS AND THE GENERATION OF NEURONAL DIVERSITY. William Chia. Developmental Neurobiology Laboratory, Institute of Molecular and Cell Biology, National University of Singapore We are studying the process by which cellular diversity is generated during the development of the CNS. The basic repeat unit of the embryonic CNS, a hemineuromere, is comprised of ~300 neurons and ~30 glias. The majority of these cells are derived from ~30 stem cell lineages. These stem cells, the neuroblasts (NB), form an invariant array in each of the hemisegments and each NB divides asymmetrically and repeatedly to give rise to, on average, 5-6 smaller ganglion mother cells (GMC); each GMC (or glia progenitor) divides to produce two neurons (or glia). The generation of cellular diversity rely on NB and GMC divisions which generate daughters cells with distinct cellular identities. At least aspects of these asymmetric cell divisions are mediated by the asymmetric localisation of protein determinants (i.e. Prospero and Numb) during mitosis and the subsequent preferential segregation of these proteins to only one (GMC) of the two daughter cells. We have previously shown that inscuteable (insc) is a key player for the asymmetric division of neural progenitor cells. insc is necessary for effecting and for coordinating both the asymmetric localisation of protein (and RNA) determinants and the correct mitotic spindle orientation required to ensure that the localised determinants are segregated to only one of the progeny cells. In addition we have also shown that the size asymmetry observed in some sibling neurons also appear to require insc function. Here we will present a summary of what is known, as well as some more recent data pertaining to the role of insc in asymmetric cell divisions in the Drosophila embryonic CNS. 討論会「ポストゲノム時代にむけて」 コーディネーター 伊藤啓(基礎生物学研究所) ショウジョウバエのゲノムは、アメリカ(バークレー)とヨーロッパそれぞれのゲノム プロジェクト(BDGP, EDGP)及び民間企業Celera Genomicsの努力によって、今年中にも 全塩基配列が決定されそうな速さで解析が進んでいる。現在欧米は、DNAの全配列が解明 されたことを前提に、次のステップとして何をやるかを計画・実施する段階に入っている。 ゲノムプロジェクトは、単に全配列を決めるという作業だけを指すのではなく、ゲノム全 体を視野に入れた総合的かつ大規模な研究全般をも指すが、ショウジョウバエにおけるゲ ノム全塩基配列決定後のこのような研究が今後どのように展開するかという方向性は、こ の1、2年で決まるだろう。 日本はショウジョウバエを使った研究の活発さという点から言うと、アメリカやイギリ スには負けるけれど他の国はすでに超えていると言ってもいいレベルに達している。だが 欧米のゲノムプロジェクトが立ち上がった当時、日本では何か貢献できるだろうかという 議論は活発には行われないままに、なし崩しにこれまで過ぎてきてしまった。全塩基配列 が解明された次の段階(いわゆるポストゲノム)の時代がちょうど始まろうとしている今、 日本がこれに対してどのように接してゆくか、いちど皆で考えてみるのも悪くない。この ような考えで、本日の討論会を企画させていただいた。 考慮すべきバックグラウンド: ・ゲノムプロジェクトは、必ずしも遺伝子クローニングの仕事をしている人だけに関係が あるのではない。たとえば今回の世話役である私自身、クローニングはやらないというこ とを旗印にしている解剖学者である。分子生物学はもちろんのこと、解剖・生理・行動・ 集団・進化・分類などの分野でも、研究費を獲得し、有力な雑誌に論文を発表し、いいポ ストに就職するためには、ゲノムとの関連を意識することが非常に重要なファクターにな ってきていると思われる。 ・ゲノムプロジェクトは、通常の研究とは本質的に違う性質を持っている。通常の研究では、 解明した配列や作成した系統は、それを論文にするまでは私蔵していて構わない。しかし ゲノムプロジェクトでは、全ての産物をすぐに公開し、広く一般の利用に提供してしまう。 個々のデータを作業者自身が論文にすることは少ない。研究というよりはサービスセンタ ーの性格が強い。 ・従ってゲノムプロジェクトは、個々の研究室が片手間にできる仕事ではない。非常に労 働集約的な作業が伴うので、何らかの予算を獲得して、学生や研究者でなくテクニシャン・ アルバイトレベルのスタッフを雇用する算段が必要になる。 ・「ハコもの行政」に慣れた我々は、新しいプロジェクトというと、つい新しい組織の設 立や建物の建設を前提にしがちであるが、既存の組織や進行中の研究プロジェクトから、 使えるものを最大限利用・活用することが効率的であろう。 ・DNAの全配列を決めるだけならば、ほとんどの作業はファージと大腸菌とコンピュータ ーで行われる。しかし今後は、大量の突然変異系統や異所発現系統などハエそのものを 作成・配布する作業が要求される。従ってストックセンター的なものとの連携が、重要な 要素になる。 ・得られた成果を利用する側からいえば、なるべく多くのデータやツールが集中して揃え られている方が便利である。欧米で大型のプロジェクトが進行している以上、日本で欧米 の単なるミニ版を立ち上げても、ほとんどの人はより完備した欧米のプロジェクトの方を 利用してしまうだろう。自己満足に終わらせない方法を考える必要がある。中途半端なも のを作るよりは、いっそこれまで通り全面的に欧米に依存すればよいという議論もじゅう ぶん成り立つ。 ・日本でゲノムプロジェクトをやる場合には、日本の税金を使うことになる。長期的には 世界人類の福利に貢献するものだとしても、まず日本のショウジョウバエ研究・生物学研 究の利益になるようなものでなくては、予算は獲得しにくい。欧米同様、ショウジョウバ エ研究者のなかでゲノムプロジェクトに直接従事するのは、ごく一部の人であろうが、そ の人達が日本の他の研究者にとって利用価値のあるもの、利用しやすいものを作成・提供 できるよう考える必要がある。 ・現実問題として、「ハエ」だけではお金は取りにくい。他のより「主流」の生物を使っ たプロジェクトとどう関連させてゆくかも重要な要素である。 以上のような点を念頭に置いて、以下の順で議論を進めてゆきたい。 1:BDGP, EDGPでは何をやっているか。今後はどのように展開してゆくか。 2:我々がゲノムプロジェクトを考えるとき、考慮すべき視点、問題点にはどのようなも のがあるか。 3:日本のストックセンターの現状はどうなっているか。今後はどのように伸展してゆくか。 4:日本では現在、ゲノムプロジェクトに関連するような研究はどのようなものが進行・ 計画されているか。 5:総合討論 本日の討論会では、何らかの結論めいたものを出すことは目的としない。言いっぱなし、 聞きっぱなしになることは構わないと考えている。この機会になるべく多くの方に自分の 思うところを述べていただき、それが今後それぞれの研究者が研究計画を立てたり共同プ ロジェクトを立案したり、あるいは自分の将来の進路を考えたりする際に、何らかの参考 になれば幸いである。 講演要旨 L-1 Notch シグナリングと器官アイデンティティーの決定 倉田 祥一朗 東北大・院薬 Notch signalling and the determination of appendage identity. Shoichiro Kurata Tohoku University, Japan どのようにして器官のアイデンティティーが決定されるのかを明らかにするためには、 ある特定の器官形成に必要な遺伝子発現カスケードのスイッチを入れる遺伝子(マスター コントロール遺伝子)の発現を制御する機構を理解することが重要である. 本研究では、ショウジョウバエ複眼の形成を支配する eyeless (ey) 遺伝子の発現制御 機構について、Notch シグナリングに着目して解析した. 活性化型 Notch レセプターを発現し、Notch シグナリングを活性化すると、異所的に ey 遺伝子の発現が誘導され、異所的な複眼が形成された.一方、複眼の原基でNotch シ グナリングを遮断すると、ey 遺伝子の発現がなくなり、複眼は形成されなかった.この 結果は、Notch シグナリングが ey 遺伝子の発現を制御していることを示している.さら に、Notch シグナリングは、ey 遺伝子の発現を制御しているばかりでなく状況に応じて、 翅の形成を支配するvestigial、触覚と肢の決定に関わるDistal less 遺伝子の発現をも 制御していた.したがって、複眼、翅、触角、肢の形成時には、状況に応じて Notch シ グナリングがそれぞれの器官形成を支配する遺伝子の発現を制御していることが考えられ る.実際、状況を変えて Notch シグナリングを活性化すると、複眼を触角、翅、肢に改 変することができる.これらの知見を紹介すると共に,Pax 6 遺伝子を例に、同様の器官 決定の機構が,脊椎動物の形態形成時にも存在する可能性を議論したい. L-2 Dppモルフォゲンとパターン形成 多羽田哲也 東大・分生研 Dpp morphogen and pattern formation Tetsuya Tabata, University of Tokyo, IMCB Dppシグナルの勾配を一次情報としてパターンが形成される事象は多岐に渡っている 。そ のシグナルはMadと呼ばれる細胞内因子のリン酸化を通して、ターゲットの発現 を調節す る。Madのリン酸化特異的抗体を使うことにより、Dppシグナルの分布を視覚 化すること が可能となった。そこに見られる勾配は急峻なものであり、Dppの分布の みにより説明さ れるものではない。例えば、Dppにより発現誘導されるDadはMadのリ ン酸化を抑制するこ とによってネガティブフィードバックループを形成している。Da dによりMadのリン酸化 の勾配が修飾され、ターゲットの発現領域が調節されることに より、最終的なパターン が決定される。Dppのレセプターの1つであるTkvの発現もDp p自身により制御されている ことが知られている。BrkはMadの下流、あるいはDppとは 独立にTkvを含むDppのターゲッ トの発現を抑制している。しかしbrkの発現はDppによ り負に制御されていることから、 この複雑なカスケードはDppにより一義的に制御さ れているといえる。ところがDppシグ ナルの勾配には不連続な部分があり、それがHh により直接制御されていることを見出し た。DppシグナルはDpp以外のモルフォゲンの 調節をも受けることにより形作られていた のである。これらのモルフォゲン・シグナ ルを具現化する遺伝子の例についても紹介し たい。 L-3 新規Ets蛋白EDLによるhomeogenetic induction の制御 山田琢磨1、岡部正隆1、広海健*1,2 1: 国立遺伝学研究所、2: 総合研究大学院大学・遺伝学専攻 Regulation of homeogenetic induction by a novel Ets-protein EDL Takuma Yamada 1, Masataka Okabe 1, Yasushi Hiromi* 1,2 1: National Institute of Genetics, 2: Department of Genetics, The Graduate University for Advanced Studies, Mishima, Japan 発生過程では、ある細胞が別の細胞を自分とよく似た運命へと誘導するという現象がみ られる。たとえば、脊椎動物の神経板や中胚葉にこのような活性があり、homeogenetic inductionと呼ばれている。ショウジョウバエにおいても、複眼の光受容細胞のニューロ ン分化や胚伸展受容器感覚母細胞の分化において、同種の細胞の誘導が行われる。誘導 する細胞は、SpitzというEGF様誘導因子を産生しつつ、自らも光受容ニューロンあるいは 感覚母細胞に分化する。このような誘導系では、誘導された細胞が新たな誘導源となって 誘導が際限なく続く、という危険をはらんでいる。我々は、ras/MAPKシグナル経路の標的 転写因子Pointedは、神経分化を促進するのに加え、Spitz生成に必要な膜蛋白Rhomboidの 発現を抑制することを見いだした。この「誘導に対する反応として誘導能が抑制される」 という機構により、誘導を受けた細胞はもはや誘導源とはならないのである。 一方、誘導する細胞においても、自ら産生したSpitzによってras経路が活性化される。 この細胞がPointedによる誘導能の抑制を回避するためには、活性化されたrasシグナルを 経路の途中で遮断することが必要である。誘導能を持つ細胞は、新規Ets蛋白EDLを発現し、 EDLがPointedの作用を拮抗することにより、 誘導能を維持している。 L-4 ショウジョウバエを用いた細胞死実行因子の機能解析 三浦正幸 大阪大 院医・神経機能解剖 Studies of cell death executioners in Drosophila Masayuki Miura, Div. Neuroanatomy, Osaka Univ. Medical School 細胞死実行の基本的な遺伝子カスケードは線虫を用いて明らかにされてきた。しかし、線 虫の神経細胞死はシナプス形成を起こす以前に実行されてしまうため、脊椎動物での神経 細胞死を研究するためのモデルには適していない側面もある。また、基本的なカスパーゼ 活性化機構に関しても線虫カスパーゼCED-3が全ての線虫の細胞死実行に必要であるのと は異なり、哺乳類では14種以上のカスパーゼファミリーがいくつかの異なる活性化機構を 用いて細胞死を実行している。ショウジョウバエは、哺乳類での観察される神経細胞死の 特徴をよく備え、複数のカスパーゼが細胞死の実行に関与すると考えられるため、神経細 胞死の遺伝的な研究に適していると考えられる。さらに神経変性のモデルとなる変異体も 利用可能であるため、哺乳類では難しい神経変性の遺伝学的な研究も可能と考えられる。 カスパーゼの活性化と細胞死に中心的な役割を果たす分子の機能をショウジョウバエを用 いて解析した結果を中心に紹介したい。 L-5 ショウジョウバエDNA複製関連遺伝子の転写制御ネットワーク 山口政光 愛知がんセ研・生物 Transcriptional regulatory network for the Drosophila DNA replication- related genes. Masamitsu Yamaguchi Laboratory of Cell Biology, Aichi Cancer Center Research Institute ショウジョウバエDNA複製関連遺伝子を統合的に発現制御するエレメントとしては、DRE、 E2F結合サイト、CFDD結合サイト等がある。これらのエレメントには、DREF、E2F・DP複合 体、CFDD等の転写因子がそれぞれ結合する。またPCNA遺伝子ではその他にURE が存在し、 そこにはUREFが結合する。DREFをショウジョウバエ複眼原基で過剰発現 すると、複眼形 態に顕著な異常が見られる。この異常は異所的なDNA合成とアポトーシスの誘導によって もたらされる。E2F遺伝子変異系統と、DREF過剰発現系統とを交配し、E2F遺伝子コピー数 を半減させると、複眼形態異常が顕著に抑圧されることから、DREF遺伝子はE2F遺伝子の 上位で機能していることが示唆された。またin vitro での解析から、DREFはE2F遺伝子プ ロモーターに存在するDRE様配列に強く結合し、直接E2F遺伝子プロモーターを活性化する と考えられる。DREとUREを標的に用いたone-hybridスクリーニングで、新たに転写因子 CutとGrainyhead (GRH/NTF-1)のcDNAがそれ ぞれ得られた。両因子は細胞分化の決定や分 化状態の維持に機能しているとされてきたが、複製遺伝子の転写制御にも関わっている可 能性は、細胞の増殖と分化の振り分けの機構を考える上で興味深い。一方、two-hybridス クリーニングでDREFと相互作用する因子のcDNA6種類をクローン化した。この中にはヒト MLF(骨髄異形成/骨髄性白血病因子)のショウジョウバエホモログ(DmMLF)のcDNAが含ま れており、現在その突然変異系統の単離を試みている。 L-6 オウトウショウジョウバエ亜群の雄が作る排卵刺激ペプチド 布山喜章 都立大・院理・生物科学 Ovulation stimulating peptides produced by males of the suzukii species- subgroup of Drosophila. Fuyama, Y. (Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.) ショウジョウバエの雌は交尾の完了とともに産卵を開始し、同時に再交尾を拒否するよ うになる。雌のこのような生理的・行動的変化は雄の内部生殖器に由来する物質によるこ とが知られており、雄による雌の操作の手段として進化したと考えられている。このよう な作用を持つ物質は、雄間ならびに雌雄間に働く性選択の対象になりうることから、近年、 その進化が注目されている。 我々はオウトウショウジョウバエ亜群に属する3種を材料に、雄由来の排卵刺激ペプチ ドの分離と構造決定を進めてきた。その結果、これら3種はいずれも2種類のペプチドを 作っていることが判明した。そのうちの一つは、副精巣由来で、キイロショウジョウバエ の性ペプチドと高い類似性がみられる。もう一つは、射精管で作られるペプチドで、C末 端の配列は性ペプチドと高い類似性を示すが、N末端は全く異なり、また、種間でも著し い変異がみられる。 射精管由来物質には、構造的な変異だけでなく、機能的にも種間の多様性がみられる。 オウトウショウジョウバエ(D. suzukii)の射精管物質は、単独ではその効果を検出できな いほど微量にしか存在しないが、もう1種類の、それ自体には活性のないペプチドと相互 作用することにより、強い生理活性を示す。また、D. biarmipesの場合、射精管物質に対 する雌の応答には種内の遺伝的変異がみられる。 近縁種間にみられる排卵刺激物質のこのような多様性は、性選択による強い選択圧によ る急速な進化を示唆する。また、雌の応答にみられる種内の遺伝的変異は、性選択の作用 機構を知る上で手がかりを提供する。 ポスター発表要旨 P-01 Dfrizzled-3, a new Drosophila Wnt receptor, acting as an attnuator of Wingless signaling 佐藤 淳*1、小嶋 徹也1、程 久美子2、宮田 雄平2、西郷 薫1 1:東大・理・生化、2:日医大・薬理 Dfrizzled-3, a new Drosophila Wnt receptor, acting as an attenuator of Wingless signaling. Atsushi Sato1, Tetsuya Kojima1, Kumiko Ui-Tei2, Yuhei Miyata2 and Kaoru Saigo1 1:Dept. Biophys. & Biochem., Gra. Sch. Sci., Univ of Tokyo, 2:Dept. Pharmacol., Nippon Medical School In Drosophila, Wingless (Wg) signaling pathway is essential for the development and the differentiation. A Wg receptor is recently identified as Dfrizzled-2 (Dfz2), which is a Drosophila frizzled family member. It is thought that the down-regulation of Dfz2 by Wg signaling and Wg stabilization by Dfz2 protein have been proposed to shape the Wg morphogen gradient.Here, we describe the identification of the third member of the Drosophila frizzled family, Dfrizzled-3 (Dfz3). In contrast to Dfz2, Dfz3 is transcriptionally up-regulated by Wg signaling, so Dfz3 and Dfz2 show virtually complementary expression. Although Dfz3 protein is capable of binding to Wg in vitro, Wg-dependent Armadillo stabilization occur much less effectively in Drosophila cells transfected with Dfz3 than in those with Dfz2. Dfz3 null mutants are viable and fertile with few morphological defects containing the planer polarity. Genetic and immunochemical analysis, however, indicate that the absence of Dfz3 activity suppresses the phenotypes of some hypomorphic wg mutants. Based on these results, we conclude that Dfz3 is encoded a new Wnt receptor in Drosophila, acting as an attenuator of Wg signaling. P-02 細胞膜プロテオグリカン Dally の翅の発生における機能 藤瀬桃子*、泉 進、中藤博志 都立大・院理・生物 The function of Dally, a Drosophila integral-membrane proteoglycan, during wing development Momoko Fujise*, Susumu Izumi and Hiroshi Nakato (Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University) 分泌性シグナル分子の細胞外での挙動や細胞膜表面における受容の分子機構については 不明な点が多い。Dallyは、細胞膜ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、複眼や触角の 発生においてはDppの、胚表皮ではWgの補受容体として機能する。このことは、糖鎖構造 の変換により、Dallyが異なる組織では異なるリガンド特異性をもつことを示唆している。 一方、dally変異体の表現型から、この分子が翅発生過程では複数の細胞増殖因子シグナ ル系で機能していることが予測される。Dallyの翅発生における機能を解析することはそ のリガンド特異性の制御機構を明らかにするうえで重要である。 dallyエンハンサートラップの翅原基における発現は背腹境界、前後境界、脈翅、背板 を形成する領域でみられる。背腹境界の発現はいくつかの翅縁形成遺伝子と同様、Notch シグナル系により制御されていることが判明した。dally変異体では翅縁の感覚毛が減少 し、背板の特定の感覚毛が欠失する。いくつかの感覚毛の表現型はwg変異により増強され たことから、これらの感覚毛の発生においてDallyがWgシグナルの伝達に関与することが 示唆された。dally変異体翅原基では感覚母細胞が消失していることから、Dallyは感覚器 形成の初期の段階で機能すると考えられる。 P-03 減数分裂突然変異体mei-yh92の細胞遺伝学的解析 平井和之*1、山本雅敏2 1:京都工繊大・院工芸科学・生物機能、2:京都工繊大・ ショウジョウバエ遺伝資源センター Cytogenetic characterization of a novel meiotic mutant mei-yh92 in the male of Drosophila melanogaster Hirai, K., and Yamamoto, M-T. (Kyoto Institute of Technology) 近年、染色体の分離に必要な遺伝子の多くは、体細胞分裂と減数分裂に共通して働くこと が明らかにされている。しかし相同染色体の分配は、減数分裂特異的である。相同染色体 の対合と分離の遺伝的制御機構を研究するため、減数分裂において不分離を生じる突然変 異を合計7系統単離し、今回そのうちmei-yh92の解析結果を報告する。この突然変異体の 雄は減数第1分裂でXY、第4染色体ともに約20%の不分離を生じる。これまで不分離の原因 は対合の欠如と考えられてきたが、mei-yh92では野生型と同様に正常な二価染色体が観察 された。第2分裂中期の染色体構成から推定した不分離率は遺伝学的結果と一致した。第1 分裂後期の18%の細胞においてクロマチンブリッジが観察され、減数分裂各ステージ(MI、 AI、TI-PMII、MII、A-TII)の細胞数を計測した結果、減数第1分裂中期の細胞数が著しく 多いことが確認された。以上の点から不分離の原因は、第1分裂中期から後期への移行時 におけるクロマチンの変化が異常となり、ブリッジ形成を引き起こし相同染色体の分離が 妨げられたためであると考えられる。mei-yh92は、相同染色体の正確な分離に対合だけで は不十分で、対合を解除する新たな機構が存在することを示唆しており、減数分裂におけ る染色体の分離機構を解明するために重要な遺伝子であると考えられる。 P-04 D. melanogaster/D. simulans 雑種における不妊遺伝子のマッピング 澤村京一*、山本雅敏 京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター Mapping genes involved in hybrid sterility between D.melanogaster and D. simulans Kyoichi Sawamura, Masa-Toshi Yamamoto (Kyoto Institute of Technology, Drosophila Genetic Resource Center) 生殖的隔離の原因となる遺伝子の解析は種分化の機構を解明する上で重要である。D. melanogaster と D. simulans の間では雑種第2代以降が得られないため、遺伝学的解析 はこれまで困難であったが、雑種雌の妊性を回復する組み合わせが発見され(Davis ら、 1996年)、これが可能になった。これまでに、D. simulans の第2染色体左腕の一部を D. melanogaster に導入することに成功している(K. Sawamura, A. W. Davis, C.-I Wu、投稿 中)。この導入領域はホモ接合で雌雄ともに不妊となり、生殖的隔離遺伝子を研究する上 で有用である。本研究では、この D. simulans の遺伝子を持った染色体とマーカーを持 った D. melanogaster の染色体の間で組み換えを起こさせて、雑種不妊に関与する遺伝 子のマッピングを試みた。組み換え染色体のどの領域が D. simulans 由来であるかは、 分子マーカーによって決定した。その結果、ゲノムの 0.5% 以下の大きさの領域でも導 入により雄不妊を生じること、したがって、染色体上の雑種雄不妊遺伝子の密度が非常に 高い(雑種雌不妊遺伝子の数はこれに比べてかなり少ない)ことが分かった。 D. melanogaster で全DNAシークエンス(とそれによって予想される転写産物)が明らかにさ れている領域(Adh 周辺の 1.8Mb、M. Ashburner、私信)の導入系統が確立したので、こ の領域の雑種雄不妊遺伝子を現在、詳しく解析中である。 P-05 dally遺伝子の転写及び転写後調節機構 津田 学*、泉 進、中藤博志 都立大・院理・生物 Transcriptional and posttranscriptional regulation of dally gene Manabu Tsuda*, Susumu Izumi, Hiroshi Nakato (Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University) Dallyは細胞膜結合型ヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種であり、複眼や触角の発生 過程ではDpp 、胚表皮の発生においてはWgの補受容体として機能している。Dallyのこれ らの機能はその糖鎖(ヘパラン硫酸鎖)が主要な役割を演じていることが示されている。 一方、コアタンパク質をコードするdally遺伝子の発現はヘパラン硫酸鎖を正確な時期に 正確な場所でリガンドに提示するという意味で大変重要である。今回、dally遺伝子の全 構造を決定し、この遺伝子がTATA-lessプロモーターを持ち、約24 kbのゲノム領域に9つ のエクソンに分断され存在することが明らかになった。 dally 遺伝子の転写制御領域を 解析するため、様々な長さの dally 遺伝子5'上流領域にlac Z遺伝子を連結し、培養細 胞に導入した。細胞抽出液のβ-Gal活性を測定することにより転写調節に関与するシス因 子の同定を行った。また、dally mRNA 5'非翻訳領域に存在するAUGコドンが 、 mRNAの 翻訳効率を負に調節していることが判明した。さらに、dally mRNA3'非翻訳領域の構造 がmRNAの安定性に影響を及ぼすことが示唆されている。以上のように、dally遺伝子の発 現は転写・翻訳・mRNA分解を含む複数の段階で調節されていることが示された。 P-06 キイロショウジョウバエの卵成熟 初見真知子*1、澤正実2、渡辺泰弘3 1:島根大・生科・生物、2:愛教大・生物、3:島根大・理・生物 Oocyte maturation in Drosophila melanogaster. Machiko Hatsumi1, Masami Sawa2 and Yasuhiro Watanabe 1:Dept.Biol. Sci., Fac. L.E.S., Shimane Univ., 2:Dept. Biol., Aich Univ.Edc., 3:Dept. Biol., Fac. Sci. Shimane Univ. ショウジョウバエの卵は、ステージ14で脱水状態になり、吸水することによって付活す ると言われているが、我々は卵巣中に吸水状態の卵を観察した。この卵は、栄養状態を良 くして維持された未交尾雌では羽化後4日目以降に、交尾雌では羽化後2日目以降に観察 された。そして、吸水状態の卵が観察された令の未交尾雌は、少数ではあるが未受精卵を 産卵した。そこで、吸水状態の卵は、排卵を待つ成熟した卵であると考えられる。 吸水状態の卵と、脱水状態のステージ14卵の染色体を観察したところ、ステージ14の染 色体は第一減数分裂前中期であるのに対し、脱水状態の卵では、第一減数分裂中期であっ た。これらの卵を低張液で付活したところ、ステージ14の卵では半数の卵が付活し、吸水 状態の卵はほぼすべてが付活した。付活した卵の染色体を観察したところ、ステージ14卵 では、第一減数分裂後期以降の像は観察されなかったが、吸水状態の卵の中には、第二減 数分裂を終了した像も観察された。そこで、吸水状態にまで成熟した卵が、減数分裂を完 了できることが明らかになった。 濾胞細胞が半数しかない雌不妊突然変異体fs(3)FK6では、脱水状態のステージ14卵が卵 巣内に多数観察されるが、吸水状態の卵が観察されないことから、ステージ14卵が脱水状 態から吸水状態に成熟する過程には、濾胞細胞が関与していると考えられる。 P-07 Notch シグナリングと器官アイデンティティーの決定 倉田 祥一朗*1,2、郷正博3、Spyros Artavanis-Tsakonas3, Walter J. Gehring2 1: 東北大・院薬、2: Biozentrum, University of Basel, Switzerland, 3: Howard Hughes Medical Institute, Yale University, USA Notch signalling and the determination of appendage identity. Shoichiro Kurata*1,2, Masahiro J. Go3, Spyros Artavanis-Tsakonas3 and Walter J. Gehring2 1: Tohoku University, Japan, 2: Biozentrum, University of Basel, Switzerland, 3: Howard Hughes Medical Institute, Yale University, USA どのようにして器官のアイデンティティーが決定されるのかを明らかにするためには、 ある特定の器官形成に必要な遺伝子発現カスケードのスイッチを入れる遺伝子(マスター コントロール遺伝子)の発現を制御する機構を理解することが重要である. 本研究では、複眼の形成を支配する eyeless (ey) 遺伝子の発現制御機構について、 Notch シグナリングに着目して解析した. 活性化型 Notch レセプターを発現し、Notch シグナリングを活性化すると、異所的に ey 遺伝子の発現が誘導され、異所的な複眼が形成された.一方、複眼の原基でNotch シ グナリングを遮断すると、ey 遺伝子の発現がなくなり、複眼は形成されなかった.この 結果は、Notch シグナリングが ey 遺伝子の発現を制御していることを示している.さら に、Notch シグナリングは、ey 遺伝子の発現を制御しているばかりでなく状況に応じて、 翅の形成を支配するvestigial、触覚と肢の決定に関わるDistal less 遺伝子の発現をも 制御していた.したがって、複眼、翅、触角、肢の形成時には、状況に応じて Notch シ グナリングがそれぞれの器官形成を支配する遺伝子の発現を制御していることが考えられ る. P-08 ショウジョウバエ変態中の中枢神経系における細胞死 辻村秀信*1、古賀裕美子1、木村賢一2 1:農工大・農・発生生物、2:北海道教育大 Programed cell death in the Drosophila CNS during metamorphosis H.Tsujimura1, Y.Ueyama1, K.Kimura2 (1:Tokyo Univ. Agri. Tech., 2:Hokkaido Univ. Educ.) 完全変態昆虫の変態においては行動が幼虫型から成虫型に転換する。この行動転換は筋 肉系と感覚器管の変化の他に、中枢神経系の再構築により実現される。中枢神経系の再構 築においては、幼虫特異的ニューロンの選択的細胞死、成虫特異的ニューロンの細胞分化、 両用ニューロンの幼虫型から成虫型への特異性の転換が起こる。本研究では、この時の幼 虫特異的ニューロンの選択的細胞死の調節機構の解明を目的として、まず、ショウジョウ バエの変態中の中枢神経系で起こる細胞死をTUNEL法を用いて経時的に染色し、その動態 を明らかにした。 変態中のショウジョウバエのCNSで起こる細胞死は、発生段階、体節・部位によって異 なるパターンを示した。脳と視葉では、3令幼虫期および蛹前半期に多数のシグナルが観 察された。食道下神経節と胸部神経節では3令幼虫期から蛹前半期までに比較的少数のシ グナルが見られた。腹部神経節では囲蛹殻形成後6時間目を鋭いピークとして囲蛹殻形成 後から蛹中期まで多数の細胞死が観察された。囲蛹殻形成後42-48時間には脳、食道下神 経節の特定位置と胸部と腹部の神経節の背側の正中線上とそれに沿う位置に、特徴的な多 数の比較的大きな細胞死シグナルが観察された。蛹後期には細胞死はほとんど観察されな かった。以上の結果はホルモン濃度の変化やその他の多様な因子により細胞死が調節され ていることを示唆している。 P-09 melanogaster species subgroupにおけるミトコンドリアDNAのA+T-rich領域の 進化 辻野史*1、小瀬村暁子1、猪平佳代2、松浦悦子2 1: お茶大・人間文化・ライフサイエンス、2: お茶大・理・生物 Evolution of the A+T-rich region in the melanogaster species subgroup Fumi Tsujino*1, Akiko Kosemura1, Kayo Inohira2, and Etsuko T. Matsuura2 1:Department of Molecular Biology and Biochemistry, Graduate School of Humanities and Sciences, Ochanomizu University,2:Department of Biology, Ochanomizu University melanogaster species subgroupに属する8種のミトコンドリアDNA(mtDNA)は、制限酵素 地図により11タイプに分類されているが、それらの系統関係はまだ十分に明らかにされて いない。mtDNAの複製開始点を含むA+T-rich領域は、タイプI、タイプIIと呼ばれる2種類 のエレメントから構成されている。melanogaster complexに属する4種(D. melanogaster, D. simulans, D. mauritiana, D. sechellia)では、この2種類のエレメントがリピート 構造をとることにより、yakuba complexに属する4種よりも長いA+T-rich領域をもつこと が分かっている。私達は、これらのmtDNAタイプの系統関係について、A+T-rich領域の塩 基配列に基づいて考察することを試みている。これまでに、D. simulans、D. mauritiana、 D. sechelliaの6タイプのmtDNAについて、A+T-rich領域の中央で2種類のリピートの端を 含む領域(435bp〜約770bp)をクローニングし、塩基配列の決定を行った。D.melanogaster、 D. yakubaの配列とあわせて比較したところ、D. simulans(siI, siIII)、D. mauritiana (maI)、D. sechelliaには、新たに極めてよく保存された配列が見つかった。この配列 はmtDNAタイプの系統関係やA+T-rich領域の進化を明らかにする手がかりとなるものと考 えられる。 P-10 細胞接着因子とStill life - Rac経路のシナプスにおける局在と機能 曽根雅紀*1, 2、鈴木えみ子2, 3、星野幹雄4、侯東梅5、黒見坦5、深田正紀6, 7、黒田真也6、貝淵弘三6、鍋島陽一4、浜千尋1, 2 1 : 国立精神神経センター・遺伝子工学、2 : CREST、3 : 東大・医科研、 4 : 京大・医、5 : 群馬大・医、6 : 奈良先端大、7 : 広島大・医 Localization and possible function of cell adhesion molecules and the Still life - Rac-pathway in the synapses. Masaki Sone *1, 2, Emiko Suzuki 2, 3, Mikio Hoshino 4,Hou Dong Mei 5, Hiroshi Kuromi 5, Masaki Fukata 6, 7,Shinya Kuroda 6,Kozo Kaibuchi 6, Yo-ichi Nabeshima 4,Chihiro Hama 1, 2 1 : Natl. Inst. Neurosci., NCNP, 2 : CREST, 3 : Inst. Med. Sci., Univ Tokyo, 4 : Kyoto Univ. Grad. Sch. Med., 5 : Gunma Univ. Sch. Med., 6 : Nara Inst. Sci. Tech., 7 : Hiroshima Univ. Sch. Med 我々は行動異常変異の原因遺伝子としてstill life (sif)遺伝子を単離して解析してきた。 その遺伝子産物であるSIF蛋白質は、主に神経系で発現しシナプスに特異的に局在する。 今回我々は、幼虫神経筋接合部においてSIFの局在を詳細に観察し、SIFがアクティブゾー ンを取り囲むリング状の周縁部において、細胞接着因子であるファシクリンII(FasII)や インテグリンと共局在し、分子的に特殊化した領域(peri-active zone)を形成しているこ とを見出した。fasII、インテグリンは共にシナプス形成に必要とされることが遺伝学的 に示されている。そこで、sif遺伝子の強い機能欠損変異をEMSを用いて分離して解析した ところ、fasIIを10%発現している変異と同様に神経筋接合部のbouton数がやや減少してい た。この表現型はsifとfasIIの二重変異で抑圧された。sif変異において神経筋シナプス の電気生理学的特性に有意な異常は認められなかった。さらに、in vitroのアッセイによ り、SIFはRho類似低分子量G蛋白質の一員であるRacに対するグアニンヌクレオチド交換因 子であることがわかった。以上のことから、細胞接着因子とSIF-Rac経路がアクティブゾ ーン周縁部の分子的に特殊化した領域においてシナプス形成を制御していることが示唆さ れた。 P-11 ショウジョウバエ脳におけるキノコ体初期形成過程の分子遺伝学的解析 来栖光彦*、長尾智子、古久保-徳永 克男 (筑波大学 生物科学) Molecular genetics of early development of Drosophila mushroom bodies, centers for olfactory learning Mitsuhiko KURUSU, Tomoko NAGAO, and Katsuo FURUKUBO-TOKUNAGA (Institute of Biological Sciences, University of Tsukuba) キノコ体は、無脊椎動物の脳に広く存在する発達した神経束構造であり、嗅覚学習を始 めとする多様な高次神経活動の制御センターである。これまでに、キノコ体特異的エンハ ンサートラップ系統の解析により、キノコ体前駆細胞が、胚期脳の最前端に位置する4個 の神経芽細胞の分裂により形成されることが明らかにされている。これらの前駆細胞の位 置を、平行して進めてきた胚期脳における各種発生制御遺伝子の発現地図と照らし合わせ ることにより、eyeless遺伝子とtailless遺伝子がキノコ体前駆細胞で発現していること を見い出した。さらに、eyelessと共に複眼形成を支配するいくつかの遺伝子について検 討したところ、キノコ体ではsine oculis, eyes absent は発現していないが、twin of eyeless,dachshundが共発現していることを確認した。さらに、eyeless変異体では幼虫期 キノコ体に構造異常が生じることを見いだした。eyeless/Pax6 遺伝子はマウス脳で、視 覚情報系のみならず、嗅球を含む嗅覚情報系の形成にも重要な機能をもつ。また、 taillless/Tlx変異マウスは、海馬・扁桃体に強度の異常を示す。これらの遺伝子による ショウジョウバエのキノコ体の発生支配は、嗅覚情報を中心とした学習・記憶系の分子基 盤が予想外に保存的であることを示唆している。 P-12 グリア・ニューロンを作りだす非対称性の分子機構 秋山(小田)康子*1、月田承一郎1,2、小田広樹2 1:京大・医・分子細胞情報、2:科技団・月田細胞軸プロジェクト Molecular mechanisms of cellular asymmetry producing glial and neuronal cells. Yasuko Akiyama-Oda1, Shoichiro Tsukita1, 2, Hiroki Oda2 1: Department of Cell Biology, Faculty of Medicine, Kyoto University. 2: Tsukita Cell Axis Project, ERATO 細胞分裂によって異なる運命を持つ娘細胞が作られるときに働く分子機構を明らかにす るために、私たちは神経芽細胞のひとつであるNB6-4に注目している。胸部体節のNB6-4 (NB6-4T)は最初の分裂により、グリアを作る細胞とニューロンを作る細胞に分かれる。一 方、腹部体節のNB6-4 (NB6-4A)は一度だけ分裂してふたつのグリア細胞になる。グリアの 運命決定因子であるglial cells missing (gcm)のmRNAは分裂前から発現しているが、分 裂後にはmRNAおよびそのタンパク質はNB6-4Tの系譜では片方の娘細胞だけで、NB6-4Aでは 両方で検出される。このようなgcmの発現制御が娘細胞の運命の違いを作りだしていると 考えられる。これがどのような現象と結びついて起こるのか、またどのような因子が関与 しているのかを明らかにするために、細胞分裂や細胞の非対称性に関する突然変異体を解 析した。 細胞分裂が異常となるstringやpebbleの観察から、NB6-4TにおけるGCMの発現制御は細 胞分裂の進行とリンクしていることが分かった。また神経芽細胞から神経母細胞が生まれ る非対称分裂に関わるmiranda, prospero, inscuteableはNB6-4Tの最初の分裂にも関与す ることが分かってきた。これら3つの因子とgcmの発現制御が具体的にどのように関連し ているのか、現在解析中である。 P-13 ショウジョウバエCaspaseファミリーの活性化機構 嘉糠洋陸*、澤本和延、岡野栄之、三浦正幸 阪大・医・神経機能解剖&CREST Molecular Mechanisms of Caspase Activation in Drosophila Hirotaka Kanuka*, Kazunobu Sawamoto, Hideyuki Okano, Masayuki Miura (Dept. Neuroanatomy, Osaka Univ. Medical School & CREST) Caspaseファミリーはプログラム細胞死(アポトーシス)の実行に必要なプロテアーゼ群 であり、様々な細胞死の刺激に応じて前駆体から活性化型にプロセシングされることが知 られている。ショウジョウバエにおいてもDCP-1, DrICE, DCP-2/Dredd, Droncの4種類の Caspaseが同定されており、またショウジョウバエ細胞死実行因子であるReaper, Hid, Grimの下流でCaspaseが活性化されることが明らかとなっている。CED-4/Apaf-1ファミリー は、このCaspaseの最初の活性化に関わる重要な分子として知られ、線虫から哺乳類まで その機構は保存されている。我々は既に線虫CED-4がショウジョウバエにおいてCaspase活 性化因子として働くことを明らかにしており、現在はCED-4/Apaf-1ファミリーのショウジ ョウバエホモログを含んだCaspaseの活性化に関与する遺伝子群の同定を試みている。 P-14 ショウジョウバエcentral complexの蛹期における発生 田中公子*1,2、伊藤 啓1,3 1:基生研、2:CREST・JST、3:PRESTO・JST Development of the central complex in the pupae of Drosophila melanogaster Kimiko TANAKA*1,2,Kei ITO1,3 (1:NIBB,2:CREST・JST,3:PRESTO・JST) ショウジョウバエcentral complexは、主にprotocerebral bridge、fan-shaped body、 ellipsoid body、noduliからなる脳内構造で、歩行や飛行などの行動に関与することが報 告されている。しかし、これらの構造が発生過程でどの様に形成されていくかは、ほとん ど明らかにされていない。成虫のcentral complexは正中部に位置しているが、幼虫の脳 には正中部はほとんど存在しないため、幼虫期のcentral complexが、脳のどの部位に、 どの様な形で存在するかは不明である。このことから、entral complexの発生を幼虫末期 から蛹期の間に注目して解析を試みた。UAS-GFPをレポーターとして用い、これまでにNP コンソーシアムとマインツ大学で作成したGAL4エンハンサートラップ系統、計744系統に ついて、成虫脳内での発現パターンを調べるスクリーニングを行ない、centralcomplexの 細胞を明瞭にラベルする系統を35系統見いだした。現在、この35系統の中から、幼虫期及 び蛹期にもcentral complexと思われる領域に発現が見られる系統を選び出し、蛹化0時間 後、24時間後、48時間後、成虫の脳について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析を進め ている。顕微鏡で撮影した画像を三次元再構築することで、神経線維の投射が発生段階に 従って変化する過程を追うことが出来る。 P-15 ヒトp53をショウジョウバエ複眼原基で異所的に発現させるとS期への進入を 阻害し、アポトーシスを誘導する 山口政光*1、広瀬富美子1、井上喜博1、白木岐奈1、林裕子1、西義美2、 松影昭夫1 1:愛知がんセ研・生物、2:愛知がんセ研・共通 Ectopic expression of human p53 inhibits entry into S-phase and induces apoptosis in the Drosophila eye imaginal disc Masamitsu Yamaguchi1*, Fumiko Hirose1, Yoshihiro H. Inoue1, Michina Shiraki1, Yuko Hayashi1, Yoshimi Nishi2 and Akio Matsukage1 1Laboratory of Cell Biology and 2Biophysics Unit, Aichi Cancer Center Research Institute Transgenic flies in which ectopic expression of human p53 was targeted to the Drosophila eye imaginal disc were established. On sectioning of adult flyeyes which displayed a severe rough eye phenotype, most ommatidia were foundto be fused and irregular shapes of rabdomeres were observed. In addition, many pigment cells were lost. In the developing eye imaginal disc, photoreceptor cell differentiation was initiated normally despite the ectopic expression of p53. However, expression of p53 inhibited cell cycle progression in eye imaginal disc cells and the S-phase zone (the second mitotic wave) behindthe morphogenetic furrow was almost completely abolished. Furthermore, expression of p53 induced extensive apoptosis of eye imaginal disc cells, and co-expression of baculovirus P35 in the eye imaginal disc suppressed the p53-induced rough eye phenotype. These results are consistent with the known functions of human p53 and indicate the existence of signaling systems with elements corresponding to human p53 in Drosophila eye imaginal disc cells. Genetic crosses of transgenic flies expressing p53 to a collection of Drosophila deficiency stocks allowed us to identify several genomic regions, deletions of which caused enhancement or suppression of the p53-induced rough eye phenotype. The transgenic flies established in this study should be useful to identify novel targets of p53 and its positive or negative regulators in Drosophila. P-16 神経−筋結合の標的認識過程における軸索成長円錐と筋細胞の動的相互作用 鈴木えみ子*1, Demian Rose2, Sarah Ritzenthaler2, 千葉晶2 1:東大・医科研・微細形態, CREST.JST, 2:Dept. Cell & Struct. Biol., Univ.Illinois Cytodynamic interactions of neuronal growth cones and muscles during synaptic target recognition Emiko Suzuki*1, Demian Rose2, Sarah Ritzenthaler2, Akira Chiba2 1:Dept. Fine Morphol., I.M.S., Univ.Tokyo, CREST JST, 2:Dept. Cell & Struct. Biol., Univ. Illinois ニューロンのシナプス標的選択過程における成長円錐の動態は非常に良く調べられてお り、その分子レベルでの制御機構が明らかになって来た。これに対し、ポストシナプス側 の標的細胞の挙動については解析が遅れている。そこで、我々はショウジョウバエ後期胚 の腹部体壁筋系を用いて、運動ニューロンの標的筋細胞の動態を解析した。GFPラベルし た筋細胞の生体観察や、走査電子顕微鏡観察から、筋細胞は標的選択の行われる時期に、 多数の糸状仮足(〜40ミクロン)を伸ばすことを見い出した。これらの糸状仮足は毎分約 10ミクロンの速度で伸張と退縮をくり返しており、標的領域に到着した神経軸索としば しば接着していた。また、筋細胞に成長円錐が到達すると、神経突起を取り囲むように筋 細胞から葉状仮足がのびることもわかった。我々はこれらの筋細胞仮足をmyopodiaと名付 けた。次に、myopodiaの神経軸索に対する反応が標的特異的であることを確かめるため、 RP3ニューロンをdye injectionにより標識し、電子顕微鏡観察したところ、RP3ニューロ ンの標的筋細胞6/7はRP3ニューロンとのみ密接に接着し、これをとり囲むような形態 変化を示すことがわかった。また、標的認識分子Fas3及びTollの異所発現系の解析から、 筋細胞6/7のRP3ニュ−ロンに対する反応がこれらの分子によって制御されていること を示唆する結果を得た。 P-17 光受容細胞の分化におけるMSIおよびSINAの機能 廣田ゆき*1、岡部正隆2、来栖光彦3、澤本和延1、岡野栄之1 1:阪大・医・神経機能解剖学、CREST、2:遺伝研・発生遺伝研究部門、 3:筑波大・バイオシステム Roles of MSI and SINA in photoreceptor cells differentiation Yuki Hirota*1, Masataka Okabe2, Mitsuhiko Kurusu3, Kazunobu Sawamoto1, Hideyuki Okano1 (1:Division of Neuroanaotmy, Osaka Univ., 2:Department of Developmental Genetics, National Institute of Genetics, 3:Department of Molecular Neurobiology, Tsukuba Univ.) 神経発生において重要な役割を果たしている遺伝子の多くは、転写後レベルでの発現調節 を受けることが知られているが、その制御機構は不明の点が多い。ショウジョウバエ Musashi (Msi)はRNA結合タンパク質であり、外感覚器発生における細胞運命の決定、複眼 における光受容細胞の分化に機能を果たしていることが示されている。 複眼においては msiとseven in absentia (sina)の二重変異体において両者の表現型が相乗的に増強する ことが見いだされた。sinaはR7の分化に必須な遺伝子であり、光受容細胞において、 phyllopod(phyl)と協同してTTKを蛋白質分解経路に導くことでTTKの発現を負に制御する というモデルが提唱されている。msiとsinaの二重変異体では、(1)R1/R6/R7が分化しな い、(2)その他の光受容細胞は分化するが、その多くがラブドメア形成などの細胞の成熟過 程において異常をきたす、(3)過剰な細胞死が起こる、(4)TTKが異所的に発現する、こと が明らかになった。これらの表現型は、ttkの遺伝子量を半減させることによって有意に 抑圧された。これらのことから、(1)R1,R6,R7においてはMSIとSINAの関与するTTK発現の 負の制御が分化に必要である、(2)光受容細胞の分化後の成熟・生存維持に関してMSIと SINAが機能を果たしている、ことが示唆された。 P-18 ショウジョウバエを用いた無脊椎動物Otx遺伝子の機能解析 安達在嗣*1、長尾智子1、西駕秀俊2、阿形清和3、梅園良彦3、Hans Bode4、 古久保ー徳永克男1 1筑波大・生物、2都立大・生物、3姫工大・生命、4Dept. Dev. Cell Biol., Univ. California Functional Analysis of Invertebrate Otx Genes in Drosophila Yoshitsugu ADACHI *1, Tomoko NAGAO 1, Hidetoshi SAIGA 2, Kiyokazu AGATA 3,Yoshihiko UMESONO 3, Hans BODE 4, andKatsuo FRUKUBO- TOKUNAGA 1 1 Inst. Biol. Sci., Univ. Tsukuba, 2 Dept. Biol., TokyoMetropolitan- Univ.,3 Dept. Life Sci., Himeji Inst. Tech., 4 Dept. Dev. Cell Biol., Univ.California 脊椎・無脊椎動物の脳や頭部形態の進化的起源に関する議論は100年以上の歴史をもつ が、近年になり、脳および頭部の発生を制御する共通の遺伝子群が複数の動物門で発見さ れている。これら遺伝子群の中でもotd/Otx遺伝子は脳および頭部形態形成において中核 的役割を担うホメオボックス遺伝子であり、原始的なヒドラなどの無脊椎動物からヒトを 含む脊椎動物に至るまで後生動物の広大な範囲にわたり保存されている。現段階で、ショ ウジョウバエ-哺乳類間のotd/Otx遺伝子の機能的保存性が実験的に確認されており、脳・ 頭部形成メカニズムの分子的基礎が前口動物と後口動物が分岐する以前に獲得されたこと が示唆されている。そこでこの仮説をさらに検証するために、脊椎動物の祖先に最も近い と考えられる脊索動物ホヤ、扁形動物プラナリア(進化上はじめて中枢神経系を獲得した 動物)、および前口/後口動物の分岐以前の段階にある刺胞動物ヒドラ(進化上最初に神 経組織を獲得した動物)、の各Otx遺伝子をショウジョウバエに導入し、これらOtx遺伝子 の頭部や中枢神経系における発生制御機能を解析している。これらの結果に基づき、脳・ 頭部形成遺伝的プログラムの普遍性と進化的起源について考察する。 P-19 末梢神経系におけるNotchシグナルを介したgcm遺伝子の発現調節 梅園良彦*1、細谷俊彦2、3、堀田凱樹1、3 1:科技団・CREST、2:科技団・さきがけ研究21、3:国立遺伝研・発生遺伝 Notch signaling regulates the expression of the glial promoting factor gcm in Drosophila PNS Yoshihiko Umesono*1, Toshihiko Hosoya2,3, Yoshiki Hotta1,3, (1:CREST・ JST, 2:PRESTO・JST, 3:Developmental Genetics・National Institute of Genetics) ショウジョウバエ末梢神経系の dorsal bipolar dendritic (dbd) の細胞系譜では1個の 前駆細胞が分裂して1個の neuron と1個の glia を生じることが知られている。この系 譜における細胞運命の決定は、転写因子であるglial cells missing (gcm)遺伝子に依存 しており、gcm が発現した細胞は glia となり、発現しなかった細胞はneuron に分化す る。今回、我々は dbd lineage における gcm 遺伝子の発現調節にnumb および Notch が 深く関与していることを明らかにしたので、ここに報告する。numb 変異体においては, neuron が形成されず、その代りに2個の glia が生じる。そこで、numb 変異体における gcm 遺伝子の発現を調べたところ、本来 gcm が発現しない neuron 側でも異所的な発現 が観察された。次に、elav-GAL4 系統を用いて neuron 側で Notch-activated form を強 制発現させたところ、numb 変異体同様、neuron 側で gcm 遺伝子の発現が観察され、そ の結果 glia 様の細胞に運命転換した。この結果は、gcm 遺伝子は Notch シグナルを介 して発現し、neuron 側では numb がNotchシグナルを抑制することによって gcm 遺伝子 の発現を抑えているという可能性を示唆している。 P-20 アクチン細胞骨格系を制御する新規MAPキナーゼフォスファターゼ 丹羽隆介*1、Bruce Hay2、竹市雅俊1、上村匡1 1:京大院・生命科学、2:カリフォルニア工科大 A Novel MAP Kinase Phosphatase Controls Reorganization of Actin Cytoskeleton Ryusuke NIWA*1, Bruce HAY2, Masatoshi TAKEICHI1 and Tadashi UEMURA1 (1:Grad.School of Biostudies, Kyoto Univ., 2:Caltech) MAPキナーゼフォスファターゼ(MKP) は、シグナル伝達分子MAPキナーゼの 活性化に必要なリン酸基を脱リン酸化し、MAPキナーゼを不活化させる酵素である。現 在までに十数種のMKPが報告されているが、その生体内における機能が明らかになった ものは少ない。今回我々は、ショウジョウバエにおいて新しいクラスのMKPを同定し、 その機能解析を行った。 この分子(以下、新規フォスファターゼ)は1045アミノ酸からなると予想され、既 知のどのMKPよりも大きかった。ヒトホモログの部分構造を決定したところ、活性中心 からアミノ末端側に離れた位置に、種を超えて保存された新しいドメインが見出された。 新規フォスファターゼの突然変異株を分離したところ、シビアなアリルは幼虫期で致死と なった。この表現型は、正常型の新規フォスファターゼの強制発現によりレスキューされ たが、フォスファターゼ活性を失うと予想される点変異型分子の強制発現ではレスキュー されなかった。これらのことから、新規フォスファターゼの酵素活性が個体発生に必須で あることが示唆された。また、部分機能欠損株においては、剛毛が分岐あるいは屈曲した。 剛毛の形成はアクチン細胞骨格系の編成を伴うが、部分機能欠損株では蛹期の剛毛内のア クチン繊維の配向に異常が観察された。以上のことから、新規フォスファターゼはアクチ ン細胞骨格系の制御を担う分子であることが示唆された。 P-21 Notchシグナリングによるプロニューラル蛋白アキートの機能抑制 *中尾啓子、Fisher, A., Caudy, M. コーネル大学医学部 Posttranslational inhibition of achaete protein activity by Notch mediated signaling *Nakao, K, Fisher, A and Caudy, MCornell University Medical College プロニューラルクラスター内で唯1つだけの細胞がニューロブラストとして分化するため には、それ以外の細胞において、プロニューラル遺伝子が転写抑制され、結果として分化 抑制されることが必要十分であると考えられてきた。プロニューラル遺伝子の発現は、 Notchシグナリングの核内ターゲットであるE(spl)-C 転写因子によって抑制されるが、プロ ニューラル遺伝子を強制発現しても、Notchシグナリングによる分化抑制が存在すること から、プロニューラル遺伝子に対して、転写抑制以外の抑制機構の存在が示唆された。我 々は、培養細胞におけるレポーターアッセイによって、プロニューラル蛋白の一つアキー ト蛋白のC末端に強い活性化ドメインが存在すること、それがNotchシグナリングによって 抑制され得ることを示した。さらに、DNA結合領域のN末端側に存在する4アミノ酸も、C 末端の転写活性化機能の抑制に関与することを示した。次に、Notchシグナリングによる 抑制機構が作用しないようにした変異アキート蛋白を異所的に発現させたembryoでは、正 常型のアキート蛋白を発現させた場合と異なり、下流のneuralprecursor遺伝子の異所的 発現、および過剰な神経細胞の形成というNotchシグナリングの脱抑制の表現型がみられ た。以上のことから、ニューロブラストの分化過程には、Notchシグナリングによる翻訳 後調節の機構が関与していることが示唆された。 P-22 母性効果致死遺伝子tibiはArp2/3 complex 21kd subunitをコードしている 松林宏*1、山本雅敏2 1京都工芸繊維大学大学院、2京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源セン ター A patternally-rescuable maternal-effect lethal mutation, tibi, encodes the 21kd subunit of the Arp2/3 complex Hiroshi Matsubayashi and Masa-Toshi Yamamoto, Kyoto Institute of Technology キイロショウジョウバエの第3染色体89A領域に存在する遺伝子を解析している過程で、 母性効果を持った致死遺伝子tibiを見いだした。tibiホモ雌の産んだ卵はtibi野生型遺伝 子を持つ精子と受精したときのみ成虫まで生存する。またtibiホモ個体は羽の形成異常、 剛毛の形成異常が高い頻度で観察される。こうした表現型が生じる機構を分子レベルで明 らかにする目的でtibi遺伝子のクローニングを行った。tibiはP因子の挿入により生じて いることが判明しているので、挿入位置近傍のゲノム断片をプローブとしてcDNAライブラ リーより複数のcDNAを単離した。cDNAとゲノムDNAの塩基配列の比較により遺伝子の構造 を決定した。これらcDNAは単一の転写単位由来でポリA付加位置および5'末端の位置に相 違が有るものの同一のORFを保持している。cDNAは全長約1.1kbで141bpおよび110bpの2つ のイントロンが挿入している。またP因子はこの遺伝子の5'非翻訳領域に挿入していた。 この遺伝子がコードしているタンパク質の予想されるアミノ酸配列はアメーバ、哺乳類等 で最近報告されているActin related protein 2/3 complex (Arp2/3 complex) の21kd subunitと高い相同性(60%のアミノ酸が同一)を示した。Arp2/3 complexはアクチン繊維 の重合に関与することが示唆されている。現在形質転換体を作成し突然変異の回復実験を 行っている P-23 One-hybrid法によってクローン化されたショウジョウバエPCNA遺伝子転写制御 因子Grainyhead(GRH) 林 裕子1*、山岸 正裕1、西本 義男1、田口 修2、松影 昭夫1、 山口 政光1 1: 愛知がんセ・研・生物 2: 愛知がんセ・研・二病 Grainyhead(GRH),a Transcription Factor for the Drosophilla PCNA Gene Cloned by One-hybrid Screening Yuko Hayashi1*, Masahiro Yamagishi1, Yoshio Nishimoto1, AkioMatsukage1,Masamitsu Yamaguchi1 1: Laboratory of Cell Biology and 2: Laboratory of Experimental Pathology,Aichi Cancer Center Research Institute ショウジョウバエPCNA遺伝子プロモーターの-149から-119に存在するURE(upstream regulatory element)は、胚期ではプロモーター活性を促進するのみであるが幼虫期には 必須となる。これまでにUREに結合する因子(UREF)の存在は確認していたがその実体は不 明であった。One-hybrid法を用いてURE結合因子をスクリーニングしたところ、転写因子 Grainyhead(GRH)のcDNAが得られた。GST-GRHの結合配列は、胚の核抽出液を用いて決定さ れていたUREFの結合配列と一致し、また、GST-GRHを抗原として作成した抗GRH抗体がUREF のUREへの結合を阻害することから、GRHがUREFに含まれると考えられる。GRH結合配列の 塩基置換変異は、Kc細胞におけるPCNAプロモーター活性、および、遺伝子導入ハエの胚 期、幼虫期におけるPCNAプロモーター活性の低下をもたらした。基本プロモーターの上流に UREを3回くり返して連結したレポータープラスミドとGRH発現プラスミドとをKc細胞に同 時導入すると、UREを連結しない場合に比較して、レポータープラスミドのプロモーター 活性を8倍以上促進した。したがって、GRHは、URE配列をもつ遺伝子の発現を促進する転 写制御因子であると考えられる。 P-24 キイロショウジョウバエ処女雌の性的受容性を制御するchaste 遺伝子の解析 従二 直人*1、山元 大輔1,2 1:科技団・山元行動進化プロジェクト、2:早大 ・人間科学部 Analyses of chaste, a gene regulating female sexual receptivity of D. melanogaster. N. JUNI*1, D. YAMAMOT1,2 1:Yamamoto Behav. Genes Project, ERATO, JST, 2:Wasada Univ. キイロショウジョウバエの第2染色体54A領域の P 因子挿入によって生じた chaste 変異 体の雌は、強い交尾拒否行動をとり続けるため妊性が著しく低下する。正常な成熟処女雌 では、このように雄の求愛を持続的に拒み続けることはない。私たちは、性的受容性獲得 の遺伝的制御の解明をめざし、この変異体の分子遺伝学的解析を行っている。P 因子挿入 近傍のゲノムクローニングと転写単位の調査の結果、chaste 変異の P 因子挿入は、光受 容体および筋肉の分化に関与する muscleblind(mbl)遺伝子の転写開始点の約0.4 kb上 流に位置していることがわかった。mbl 遺伝子が chaste 変異に関与している可能性を検 証するため相補性試験を行ったところ、exon I 内の P 因子挿入または10 kb前後の大き な欠失によって生じた mbl 変異アレルは chaste 変異を相補しなかった。しかし、chaste 変異体から P 因子の再転移で誘発された小さな欠失によって mbl 変異アレルになった ものは chaste 変異に対し相補性を示した。これは、chaste 変異の原因遺伝子は mbl 遺 伝子とは独立して存在する事を示唆する。以上の結果を踏まえ、欠失地図から予想される 領域を探索したところ、chaste変異の原因と考えられる新規の遺伝子を見つけたのでこれ について報告する。 P-25 Identification and characterization of Drosophila homolog of Rho-kinase Tomoaki Mizuno1*, Mutsuki Amano2, Kozo Kaibuchi2 and Yasuyoshi Nishida1 1 Division of Biological Science, Graduate School of Science, Nagoya University 2 Division of Signal Transduction, Nara Institute of Science and Technology The Rho family of small GTPases and their associated regulators and targetsare essential mediators of diverse morphogenetic events in development.Mammalian Rho- kinase/ROKa, one of the targets of Rho, has been shown tobind to Rho in GTP- bound form and to phosphorylate the myosin light chain(MLC) and the myosin binding subunit (MBS) of myosin phosphatase, resultingin the activation of myosin. Thus, Rho-kinase/ROKa has been suggested toplay essential roles in the formation of stress fibers and focal adhesions.We have identified the Drosophila homolog of Rho-kinase/ROKa, DRho-kinase,which has conserved the basic structural feature of Rho-kinase/ROKaconsisting of the N-terminal kinase, central coiled-coil and C-terminalpleckstrin homology (PH) domains. A two-hybrid analysis demonstrated that DRho-kinase interacts with the GTP-bound form of the Drosophila Rho, Drho1,at the conserved Rho-binding site. DRho-kinase can phosphorylate MLC and MBS, preferable substrates for bovine Rho-kinase, in vitro. DRho-kinase isubiquitously expressed throughout development, in a pattern essentially identical to that of Drho1. These results suggest that DRho-kinase is an effector of Drho1. P-26 カブトムシの雄特異的角形成の分子マーカーの検索 新美輝幸*、大島宏之、三輪雅代、山下興亜 名大院・生命農 Survey of molecular markers for male-specific horn formation of Allomyrina dichotoma Teruyuki NIIMI, Hiroyuki OSHIMA, Masayo MIWA, Okitsugu YAMASHITA (GraduateSchool of Bioagricultural Sciences, Nagoya University) 同種の個体であっても性により顕著な成虫構造の相違が認められるカブトムシに注目し、 雄特異的な角形成の分子機構にアプローチするための分子マーカーの検索を試みた。 シ ョウジョウバエの成虫構造形成に関わる転写因子のなかで、カブトムシの角形成に関与す る可能性のあるもの(遠近軸形成のマーカーにはaristalessとDistal-less、成虫原基の マーカーにはescargot、頭部形成のマーカーにはorthodenticle、前胸形成のマーカーに はSex combs reduced)をカブトムシからRT-PCR法を用いてクローニングした。 カブトムシから得られたPCR産物の塩基配列を決定しアミノ酸配列を推定したところ、 いずれの遺伝子も、ショウジョウバエのアミノ酸配列に対し非常に高い相同性が認められ た。次に、角形成が開始される前蛹期において、これらの遺伝子の発現をRT-PCR法を用い、 角形成部位において雌雄での発現量の差異を調査した。 P-27 Calreticulin遺伝子突然変異体における可塑的行動の異常 冨田純也*1、国吉久人2、従二直人2、蒲生寿美子1、山元大輔2,3 1:大府大・総合科学研究科、2:科学技術振興事業団・山元行動進化プロジ ェクト、3:早大・人間科学部 Impaired behavioral plasticity in the calreticulin mutant Jun-ya Tomida*1, Hisato Kuniyoshi2, Naoto Juni2, Daisuke Yamamoto2.3, 1:Dept. Life Sci. Osaka Pref. Univ. 2:Yamamoto Behav. Genes Project, ERATO,JST 3:Waseda Univ. P因子挿入によって生じたキイロショウジョウバエの突然変異体、ethas311はエーテル 麻酔感受性系統として分離されてきた突然変異体である。既にP因子の挿入点近傍の遺伝 子がethas311の表現型の原因遺伝子の候補としてクローニングされており、calreticulin 遺伝子を含むゲノム配列へのP因子挿入の存在が明らかになっている。Calreticulinは様 々な組織に存在し、細胞内のカルシウム貯蔵、ステロイドホルモンレセプターとの相互作 用、分子シャペロン、αインテグリンとの相互作用などの側面を持つ多機能タンパク質で ある。一方、最近になりαインテグリンの突然変異体が、記憶の突然変異体として分離さ れた。また麻酔感受性の変化に基づいて我々が分離した系統に、記憶障害によって従来か ら知られている変異体が複数含まれていた。そこでcalreticulinの変異体と想定されるet has311について記憶障害の有無を調べた。跳躍反射の慣れと匂いー電気ショック連合課題 を用いて計測したところ、野生型と異なる行動反応を確認できた。現在、正常型遺伝子の 強制発現による変異体表現型の救済実験、及びαインテグリン変異体との遺伝的相互作用 の検討を進めている。 P-28 ショウジョウバエ個体を用いたヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)の過剰発現 表現型の解析 八木克将*1,2、富田進1、中村真3、桐野豊1、鈴木利治1 1:東大・薬・神経生物物理、2:生研機構、3:基生研 Phenotypic analysis of transgenic flies expressing human amyloid precursor protein (APP) Yoshimasa Yagi*1,2, Susumu Tomita1, Makoto Nakamura3, Yutaka Kirino1, Toshiharu Suzuki1 1:Sch. Pharm. Univ. of Tokyo, 2:BRAIN,3:NIBB アミロイド前駆体蛋白質(APP)はアルツハイマー病の原因因子の一つと考えられている ベータ・アミロイドの前駆体蛋白質として単離されたが、生体内での本来の生理機能は不 明な部分が多く残されている。 我々は、APPの生体内での機能を解析するため、ヒトAPPをUAS-Gal4 systemを用いてシ ョウジョウバエの様々な発生段階、組織で発現させたときに生じる異常を観察した。神経 細胞で強制発現されたヒトAPPは、ショウジョウバエ神経細胞でも正常に輸送され、神経 末端まで運ばれており、APPの輸送にかかわる機能ドメインは、ショウジョウバエとヒト で保存されていることが示唆されたが、顕著な神経系の異常は認められなかった。強制発 現の結果引き起こされる形態異常としては、翅でのblisterの形成、成虫のクチクラの分 泌の異常が観察された。翅の表現型では、APPの発現量に応じて、blisterを持つ翅の出現 頻度に変化が見られることを見出した。翅でAPPと相互作用している遺伝子を、blisterの 出現頻度を指標に検出できるか、欠失染色体を用いて調べた結果、複数のblister出現頻 度を上昇させる領域を見出した。APPと相互作用し得る遺伝子をblisterの頻度を用いてス クリーニングできることが示された。 P-29 キイロショウジョウバエの交尾時間が不規則になる変異体 fickle の解析 馬場浩太郎*1、竹下綾2,3、従二直人2、山元大輔2,4 1:東大・理・物理、2:科学技術振興事業団・山元プロジェクト、3:現:三菱化学 生命研、4:早稲田大学・人間科学部 Analysis of the fickle mutant that shows abnormal copulatory behavior. Kotaro Baba*1, Aya Takeshita2,3, Naoto Juni2, Daisuke Yamamoto2,4 (1:Univ. of Tokyo 2:Yamamoto Behav. Genes Project, ERATO, JST 3:present:Mitsubishi-Kasei Institute of Life Scicences, 4:Waseda Univ.) fickle (fic) 系統は雄の交尾持続時間が野生型に比して短くかつ不規則な分布を示す 変異体である。原因遺伝子はBruton's Tyrosine Kinase (Btk=Dsrc29A) 遺伝子であり、P 因子の挿入により特定の転写産物の発現が阻害されている。この突然変異体のオスの交 尾行動の異常や妊性の低下の原因が、純粋に行動(の神経支配)によるものかどうかを調 べる目的で生殖系を調べた結果、精巣内での精子形成過程及び外部生殖器に異常は認めら れなかったが、内部生殖器の一部に異常が認められた。野生型に一つしかない Penis Basal Apodeme が変異体では基部から左右に分かれるように二つ存在し、また Ejaculatory Duct の形態にも異常が見られた。特に前者の Apodeme は Penis を 突き出 すための Penis Protractor Muscle の機能を支えるもので、Apodeme の形態異常により この筋肉が十分に機能出来ない可能性が考えられた。実際 Btk 遺伝子の強制発現によっ て表現型を回復させる実験では、交尾行動の異常と内部生殖器の形態異常についての発現 要求時期が一致したことから交尾行動の異常は生殖器の構造の異常に起因するものである と強く示唆された。現在 Penis Basal Apodeme の発達過程を追うとともに、この表現型 と交尾器原基における遺伝子の発現異常との相関性を検討中である。 P-30 DERシグナル因子ebiはNotchシグナルと相互作用を示す 津田 玲生*、S. Lawrence Zipursky HHMI カリフォルニア大学ロサンゼルス校 ebi, a down stream factor of DER signaling, plays a role in Notch signaling pathway Leo Tsuda*, S. Lawrence Zipursky Department of Biological Chemistry, HHMI / UCLA ショウジョウバエEGFレセプター(DER)は発生に於いて極性決定、形態形成、あるいは細胞 増殖制御などの複数の機能を持つ。遺伝学的解析から発生過程でDERシグナルはNotch, Dpp, Wingless等のシグナルとクロストークしていることが分かってきたが、その分子レベ ルでのメカニズムはあまり明らかになっていない。最近我々はDERの下流で働く因子とし てebiを同定した。ebiはC末にWD40,N末にF-box様の配列をもつ、いわゆるF-box/WD40蛋白 質をコードしていることから蛋白質分解に関与することが予想されている。ebiの関与す るシグナル伝達を理解するため、ebiのDominant-Negative(ebiDN) を使って遺伝学的解析 を行った。その結果、ebiDN の表現型がDelta(Dl)の遺伝子量の減少により、著しく増強 された。さらに、Notchシグナルとの相互作用の解析から、Su(H)の遺伝子量の減少で ebiDNの表現型が著しく抑制されることが明らかになった。Su(H)はDlの発現に対し抑制的 に働くことから、ebiの機能としてSu(H)をネガティブに制御していることが考えられる。 ここで得られた結果とこれまでの解析結果からebiはDERとNotchシグナルの相互作用に関 与する分子であることが予想される。 P-31 WGAトランスジーンを用いたショウジョウバエ神経筋接合部におけるシナプス 形成機構の解析 森本(谷藤)高子*1、徳本貴久1、田渕克彦2、岡野栄之2、吉原良浩3、 能瀬聡直1 1:東京大・院理・物理、2:大阪大・医・神経機能解剖、3:理研・脳研・シナプス 分子機構 A novel approach to study the mechanism of neuromuscular synapse formation in Drosophila using plant lectin transgene Takako Tanifuji-Morimoto*1, Takahisa Tokumoto1, Katsuhiko Tabuchi2, Hideyuki Okano2, Yoshihiro Yoshihara3, and Akinao Nose1 1:Dept. of Physics, School of Science, Univ. of Tokyo,2:Dept. of Neuroanatomy, Biomedical Research Center, Osaka Univ. 3:Laboratory of Neurobiology of the Synapse, RIKEN Brain Science Institute. 小麦胚芽レクチン(WGA)は、シナプス間で、特異的に一方から他方へと移ることが明らか になっている蛋白質である。シナプス間での移動は、神経細胞の活動に依存して起こるこ とが報告されている。したがって、WGAは特定の神経回路を標識するトレーサーとして有 効であり、かつ、WGAの移動を指標として、機能的シナプスが形成されているかどうかを 判定することができると期待できる。我々は、ショウジョウバエ胚および幼虫の神経・筋 肉シナプス形成過程を明らかにするために、この方法が有効ではないかと考え、予備的な 実験を行い検討した。まず、GAL4-UASシステムを用い、すべての筋肉でWGAを発現させ、 運動神経細胞へのWGAの移動を抗WGA抗体により調べた。その結果、hatch直前の胚、1齢 幼虫、3齢幼虫において、WGAのシグナルがventral nerve cord内の神経細胞の細胞体に おいて検出された。このことは、WGAが筋肉から逆行性に運動神経細胞へと移動すること、 WGAの移動はシナプス形成後比較的早い段階ですでに起こっていることを示唆している。 現在、1.このWGAの移動は神経活動に依存するか?、2.特定の筋肉細胞においてWGAを発現 することにより、(2次的に標識されるinterneuronも含め)特定の運動回路を可視化す ることが可能か?、等を検討している。 P-32 ショウジョウバエ成虫原基における異所性感覚器官形成と位置情報の関係 丹羽尚*、岡部正隆、広海健 (国立遺伝研・発生遺伝) Relationships between ectopic formation of sensory organs and positional information in Drosophila imaginal discs Nao NIWA*, Masataka OKABE, Yasushi HIROMI (Dept.of Devel.Genetics, Natl. Inst. of Genetics) ショウジョウバエにおける種々の感覚器官(複眼、単眼、伸展受容器など)は特定の体 節及び付属肢において独自の形態と機能を備えており、いずれも形成初期に働くプロニュ ーラル遺伝子が atonal であるという共通性が明らかにされている。しかし、これらの感 覚器官の形成が行われる分子的基盤、さらに特異化の分子機構については未だ解明されて いない。そこで本研究では、まずeyeless (ey) による異所性複眼形成を対象として、異 所性形成に参加する細胞群のもつ位置情報を明らかにし、他の感覚器官形成の場合との比 較によって感覚器官形成における分子的基盤の普遍性と独自性を導き出し、器官特異化の 分子機構の解明への手がかりを得ようと考えている。 これまでの解析の結果、ey による異所性複眼形成が可能であるのは「産卵後78-85時間 に、各成虫原基のdpp 発現領域で、かつwg の非発現領域にey を発現した場合」であるこ とを見い出した。このような時期、場所特異性が他の感覚器官の形成においても存在する のかを解析するため、現在は単眼、伸展受容器形成に着目し、これらが位置する体節、領 域を規定すると考えられる、orthodenticle 、Antennapedia の全成虫原基における異所 性発現を試みている。今回は、成虫原基内において、これらの遺伝子に応答しうる細胞群 がもつ位置情報について解析・比較した結果を合わせて報告する。 P-33 異所発現トラップ法を用いた神経結合特異性に関わる新規遺伝子の探索 梅宮猛1、2、高須悦子1、田中宏昌1、竹市雅俊2、相垣敏郎3、能瀬聡直*1 1:東大・院理・物理、2:京大・院理・生物物理、3:都立大・生物 Screening genes involved in neural-specificity by the ectopic trap method. Takeshi Umemiya1, 2, Etsuko Takasu 1, Hiroaki Tanaka 2, Masatoshi Takeichi 2, Toshiro Aigaki 3, and Akinao Nose*1 1:Dept. of Physics, School of Science, Univ. of Tokyo,2:Dept. of Biophysics, Faculty of Science, Kyoto Univ. 3: Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan Univ. われわれは神経結合の特異性生成に関わる新規遺伝子を系統的に探索するため異所発現ト ラップ法を用いたスクリーニングを行っている。本大会ではこれまでのスクリーニングの 結果および同定した新規遺伝子の解析の途中経過について報告する。(スクリーニング) GAL4をすべての筋肉、神経で発現する24B-GAL4、Scabrous-GAL4株と、1800系統のUAS挿入 株(GS系統)を掛け合わせ、F1幼虫、胚の中枢、末梢における軸策伸長過程を解析し、異 常を生ずる系統を約30得た。(原因遺伝子のクローニング)得られた系統について、異 所発現されている近傍遺伝子産物をRT-PCR法により回収し、末端配列を決定した。その結 果これまでに軸策誘導に関与することが示されているcapricious、netrinB、slitや神経 細胞の分化・特異化に関連した多くの転写因子(tramtrack, Enhancer of split, bang senseless,pointed)が同定された。このことは、この実験系の有効性を示している。(新規 遺伝子の解析)得られた新規遺伝子約10について、発現パターンや構造の解析を進めて いる。これまでに3系統について中枢神経系内の特定の細胞における発現を確認した。そ のうちの1系統について全長構造を決定し、新規の膜蛋白質をコードすることを見いだし た。 P-34 グリア細胞は複数の分化経路で分化する 滝沢 一永*、堀田 凱樹 遺伝研、発生遺伝 科学技術振興事業団 Glial Differentiation Proceeds in Multiple Pathways Kazunaga Takizawa, Yoshiki Hotta Developmental Genetics, National Institute of Genetics gcm 遺伝子は神経グリアの分化スイッチとして機能し、グリア細胞の分化についての初 めての分子生物学的知見をもたらした。しかし、グリア細胞が、どのような機構で分化し、 グリア細胞として機能するようになるのかということについては、ほとんどわかっていな い。我々は、どのような遺伝子のはたらきによってグリア細胞の分化が進み、逆に神経細 胞としての分化が抑制されるのかということを知るために、グリア細胞で発現することが 知られている遺伝子の突然変異体(pros、repo、pnt、ttk、の各突然変異体)でグリア細 胞の形態を解析した。これらの突然変異体では、グリア細胞の細胞分裂は正常だが、移動 や形態形成には異常があることを明らかにした。次に、これらの遺伝子とgcmとの関係を 調べた。抗体染色やin situハイブリダイゼーション法を用いてgcm におけるグリア細胞 特異的なマーカーの発現を調べ、これらのグリア細胞特異的遺伝子の発現はgcm突然変異 体で消失するかまたは、gcm の強制発現によって誘導されることを示した。神経細胞への 分化に関しては、gcm の強制発現によって神経細胞特異的マーカーのelavの発現は減少す ることがわかったが、この表現型は、gcm がttk を制御することにより、elav の発現が なくなり神経細胞への分化が抑制されることによって起こることを遺伝学的解析から明ら かにした。pnt とttk の各突然変異体では、神経軸索上の22C10抗原の発現が弱くなるこ とが知られている。gcm 突然変異体でも同様の表現型が観察されたため、これら3つの遺 伝子の関係を調べた。その結果、pnt とttk とは遺伝学的に並列で、22C10抗原の誘導で は、これら2つの遺伝子が gcm の下流に位置し、少なくとも2つの異なる経路があるこ とを明らかにした。 P-35 交尾における生殖器の連結および解除に異常を示すキイロショウジョウバエの 変異体、lingerer の解析 国吉久人*1、馬場浩太郎2、近藤俊三3、山元大輔1,4 1:科技振、山元プロジェクト、2:東大理学部、3:三菱化学生命研、 4:早大人間科学部 Analyses of lingerer, a Drosophila gene involved in initiation and termination of copulation Hisato Kuniyoshi*1, Kotaro Baba2, Shunzo Kondo3, Daisuke Yamamoto1,4 (1:Yamamoto Behavior Genes Project,ERATO,JST 2:Univ. of Tokyo 3:Mitsubishi Kasei Institute of Life Sciences 4:Waseda Univ.) キイロショウジョウバエの配偶行動は、雄バエの雌バエに対する追跡行動に始まり、ラブ ソング、リッキング、交尾試行を経て交尾に至り、雌雄の分離によって終結する。P因子 挿入によって得られたlingerer変異体(lig)のホモ接合体の雄は、交尾に至る過程や交 尾中には異常を示さないが、交尾終了後、連結した交尾器を速やかに解除することができ ない。そのため、雌雄がつながったままの状態が数秒から長いものでは10分ほど続く。ま た、さらに重い表現型を示すligのヘミ接合体(lig/Deficiency)では、雄は交尾試行を 繰り返すものの、交尾に成功することは稀である。いずれの場合でも、交尾器には顕著な 形態異常は認められなかったことから、交尾器運動の制御系に異常がある可能性を考え、 神経筋接合部を中心に組織学的解析を進めている。lig遺伝子は分子量150 kDの機能未知 の新規タンパク質をコードしており、哺乳類にも類似遺伝子が存在することを明らかにし た。また、レスキュー実験から、lig遺伝子は3齢幼虫後期に必要であり、この時期には、 中枢神経系、生殖腺、成虫原基で発現している。中枢神経系を中心に抗Lig抗体による染 色を行なったところ、lig遺伝子は一部のニューロン、グリア細胞で発現しており、それ らの細胞内でLigタンパク質は細胞質に局在していた。現在、lig発現細胞の性質について、 さらに詳細に調べている。 P-36 複眼光受容細胞のニューロン分化におけるネガティブレギュレーターの役割 岩波 将輝*1.2、広海 健1 1.国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門 2.慈恵医大 微生物 第1 Dissecting the role of negative regulators of ras/MAPK signaling pathway in Drosophila eye development Masaki Iwanami*1.2 ,Yasushi Hiromi 1. 1.Dept. of Devel. genet., National Institute of Genetics, 2.Dept. of Microbiology Jikei Univ. School of Medcine 発生を司るシグナル伝達経路には、各々に対して数多くの negative regulator が存 在することが近年明らかになってきた。しかし、それらの存在意義および相互作用のメカ ニズムはいまだ明らかとなっていない。ショウジョウバエ複眼の光受容細胞のニューロン 分化にはras/MAPK伝達系路の活性化が必要であり、この経路にも多くのnegative regulator (Argos、Sprouty、Gapなど)が存在する。このうち、argos、sprouty 遺伝子 の転写はras/MAPK伝達系路の活性化に依存しており、negative feedback loop を形成し ている。実際、複眼光受容細胞の分化において、sprouty、argos 単独の機能欠失変異体 では過剰なニューロンが分化するが、両者を同時に欠失した変異体では相乗的に過剰なニ ューロンが増加した。argosは細胞外で、他方、sproutyは膜直下でras/MAPK伝達系路に antagonistic な作用をもつことが知られている。我々は、ras/MAPK伝達系路の各階層に おけるnegative regulator の存在が、神経発生においてどのような意義をもつのかに興 味をもち、現在、sprouty、argos 両遺伝子の役割について遺伝学的及び細胞学的手法を 用いて詳細な解析を行っている P-37 ショウジョウバエ翅・脚原基形成におけるEGFRシグナルの役割 久保田 一政*1,2、後藤 聡2,3、江藤 一洋1、林 茂生2,3 1:東医歯大・歯・発生、2国立遺伝研、3総研大 Role of the Drosophila EGFR signaling in the embryonic limb development Kazumasa Kubota*1,2、Satoshi Goto2,3、Kazuhiro Eto1、Shigeo Hayashi2,3 (1Tokyo.Med.Dent.Univ., 2Natl.Inst.Genetics., 3 Grad.Univ.Adv.Studies) ショウジョウバエの翅・脚原基は、Wingless(Wg)によって転写制御因子であるDistal- less(Dll)を発現する共通の前駆細胞群として誘導される。次にDecapentaplegic(Dpp)が前 駆細胞群の背側一部で発現を開始し、Dppシグナルの強度に応じて翅原基・脚原基の proximal側(proximal leg)、distal側(distal leg)の三種の組織が分化する。三種の組織 が分化する際、翅原基は背側に移動し、脚原基はdistal legを中心にproximal legが周り を囲むように配置するようになる。 我々は、WgとDpp以外に翅・脚原基形成に関与する分子を検索し、EGFR-MAPKpathwayが 前駆細胞群で一時的に活性化されることを見い出した。我々はEGFRとDppに関与する突然 変異体と過剰発現の解析を行い、以下のことを見い出した。 1.EGFRとDppシグナルは前駆細胞群においてD-V軸に沿ってasymmetricに活性化されてい る。 2.EGFRとDppシグナルは脚原基細胞分化に必要である。 3.EGFRとDppシグナルは翅原基細胞分化に関しては拮抗的に働いている。 以上の結果より、EGFRとDppシグナルに対して翅と脚原基では早い時期から異なる反応 性を持っており、さらに他の分子が翅・脚原基分化に関与すると考え、現在検索を行って いる。 P-38 オナジショウジョウバエのpremating isolationの遺伝学的研究 上野山 登久 神戸学院女子短大 Genetic studies of premating isolstion in Drosophila simulans Takahisa UENOYAMA (Kobegakuin women's college) オナジショウジョウバエ(Drosophila simulans)の雌は近縁種であるD.melanogaster, D. yakuba, D. teissieriの雄とは性的に隔離されており、ほとんど交雑することはない. 野生集団から分離されたD. simulansの系統の中にはこれらの種と交雑しやすいものがあ り、これらの系統を遺伝学的に調べることによりpremating isolationの遺伝的メカニズ ムを研究している.D.simulansのS1系統の雌はD.yakubaおよびD.teissieriの雄と交雑し やすくこれらの種間のisolationに関与していると考えられる.これまでの研究から simulans-yakuba間のisolationに関与する遺伝子はsimulansのX染色体と第3染色体にある ことが明らかになった.一方、simulans-teissieri間の遺伝子に関してはこれとは異なっ ており、別の遺伝子が関与していると考えられる.melanogaster groupの種分化遺伝子に ついて考察する. P-39 FTZ-F1とFTZの相互作用機構 鈴木 大河1、梅園 和彦1、川崎 陽久2、上田 均*2 1:京大・ウイルス研・情報高分子化学、2: 遺伝研・形質遺伝 Mechanism of intraction between FTZ-F1 and FTZ Taiga Suzuki, Kazuhiko Umesono, Haruhisa Kawasaki and Hitoshi Ueda (Inst. for Virus Res., Kyoto Univ. and Natl. Inst. Genet.) 核内レセプターであるFTZ-F1は、embryo初期にftzの転写制御因子としてみいだされたが、 その後、ftz-f1変異株はftz phenotypeを示し、FTZとFTZ-F1が直接相互作用して働くこと が示された。一方、核内レセプターのコアクチベーターは、LXXLL配列モチーフを介して、 核内レセプターのC末端に存在するAF-2 coreと相互作用することが知られてる。FTZにも LXXLL配列が存在し、しかも、この配列は進化上よく保存されている。そこで、FTZ-F1が FTZと相互作用する機構は、核内レセプターがコアクチベーターと相互作用する様式に類似 していることが予想された。そこで、まず、two hybrid systemを用いて相互作用にかか わる領域を調べてみた。その結果、FTZ-F1のAF-2 core様領域を欠いたFTZ-F1dAD、あるい は、FTZのLXXLLにアミノ酸置換を導入したmutFTZでは、相互作用の能力が消失した。次に、 ショウジョウバエを用いて機能を検定したところ、FTZ-F1dADでは、FTZ-F1変異株をrescue できないこと、また、mutFTZを初期胚全体に発現させてもanti-ftz phenotypeを示さな いことが明らかとなった。以上のことから、予想通り、FTZ-F1のAF-2 core様領域と、FTZ のLXXLL領域が相互作用に重要であると考えられた。 P-40 小笠原諸島のオナジショウジョウバエはヤエヤマアオキ果実で繁殖可能か? 梁 百霊*、布山喜章 都立大・院理・生物科学 Can D. simulans in the Bonin Islands thrive on the fruit of Morinda citrifolia? Liang, B. & Fuyama, Y. (Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.) ヤエヤマアオキ(Morinda citrifolia)の果実は、セーシェル諸島の固有種、D. sechelliaの唯一の繁殖場所として知られる。この果実は他のショウジョウバエには有毒 であり、ほとんど利用されない。しかし、M. citrifoliaは熱帯から亜熱帯にかけて広く 分布することから、D. sechellia以外の種が耐性を獲得したとしても不思議ではない。 昨年11月、小笠原諸島における調査の際に、母島のM. citrifoliaの落果上でかなり の数のD. simulanmsが採集された。驚いたことに、持ち帰った果実からも、少数ながら成 虫が羽化してきた。そこで、これらのD. simulansがはたしてM. citrifoliaに耐性を獲得 しているかどうかを調べた。 M. citrifolia 落果上で採集された個体と果実から羽化した個体から確立された単雌系 統について、果実中の有毒成分の一つであるカプロン酸に対する成虫の耐性を測定し、他 地域由来のD. simulans系統ならびにD. sechelliaと比較した。 その結果、D. simulansの系統間には有意な差は認められず、D. sechelliaに比べると 明らかに耐性が低いことがわかった。このことから、母島のD. simulansの一部がM. citrifoliaを利用しているとしても、それは成虫の耐性獲得による適応とは考えにくい。 P-41 アドヘレンスジャンクションのネットワーク形成:カドヘリンとカテニンの協 調的な作用 小田広樹*, 1、月田承一郎1, 2 1: ERATO・月田細胞軸プロジェクト、2: 京都大・医 Formation of adherens junction networks: synergistic function of cadherin and catenins 1: Tsukita Cell Axis Project, ERATO, 2: Dept. of Medicine, Kyoto Univ. アドヘレンスジャンクション (AJ) は、上皮の発生において、細胞のアピカル領域を線形 に結びつけるネットワークとして発達する。このAJのネットワーク形成は、後生動物が進 化の初期段階で獲得した、体の形作りのための基本的な戦略であると思われる。DEカドヘ リン、アルマジロ (beta-カテニン)、alpha-カテニンはこの順に結合し、ショウジョウバ エのAJの主要な構成成分となっている。私たちは、AJのネットワーク形成を支配する分子 メカニズムを理解するために、胚の気管発生に注目してDEカドヘリン、アルマジロ、alpha -カテニンのそれぞれが果たす機能を総合的に理解する試みを行っている。今回私たちは、 アルマジロとDEカドヘリンの様々な変異分子を作製し、それぞれの分子の、突然変異体の 表現型をレスキューする能力を調べた。この解析から、気管発生において、アルマジロは 細胞分化と形態形成の両方に働くが、DEカドヘリンは形態形成のみに働くことがわかった。 また、DEカドヘリン、アルマジロ、aplpa-カテニン間の連係が、これらのAJ蛋白質のアピ カル部位での積極的なふるまいを可能にし、上皮の極性と形態形成をダイナミックに制御 していることが示唆された。このようなカドヘリン、カテニンの協調的な作用がAJのネッ トワーク形成において重要な役割を果たしていると考えられる。 P-42 染色体分配を制御する新しい遺伝子(orbitとmeteor)の同定とその機能の解析 井上喜博*1、山口政光1、西本義男1、D. M. Glover2、松影昭夫1 1:愛知がんセ研・生物、2:Dept. of Genetics, Cambridge Univ. England Identification and characterization of two novel mitotic genes, orbit and meteor in Drosophila. Yoshihiro H. Inoue*1, Masamitsu Yamaguchi1, Yoshio Nishimoto1, D. M. Glover2, Akio Matsukage1 1Lab. Cell Biology, Aichi Cancer Centre Res. Institute, 2Dept. of Genetics,Cambridge Univ. England 我々は、高等動物の細胞分裂を制御する新しい因子を同定する目的で初期胚の核分裂サイ クルが異常となるショウジョウバエの雌不妊突然変異体を多数分離してきた。このうち orbit (orb)、meteor (mtr)という二つの新規遺伝子についての結果を報告する。最初に、 orb突然変異体の細胞では、著しい染色体の倍数化が観察されたが、これは複製された中心 体が分離できないため単極紡垂糸微小管が形成されたことによる染色体分配の阻害と細胞 質分裂の欠損との両方の要因によると考えられる。orb遺伝子産物は、170KDaの新規タ ンパクである。その塩基性ドメインにGTP結合モチーフが認められ、in vitroで微小管と 結合すること、M期を通して微小管に局在することを明らかにした。さらに遺伝的相互作 用の結果に基づき、 Orbitはキネシン様モーターが中心体の分離および分裂極の伸張をお こなう際に重要な役割を担うと予想している。一方、染色体の不等分配が観察されるmtr 変異体では、姉妹染色分体が分裂中期以前に分離することを見い出した。その細胞には染 色体の動原体付近の構造異常が認められた。mtr遺伝子はヘテロクロマチン構築に関与す る。mtr遺伝子の候補を単離し部分的なcDNA配列を決定した結果、 SS-B/LAタンパク(シ ェーグレン症候群の患者で認められる自己抗体と反応する抗原)と相同な領域を持つ疎水 性タンパクが予想された。 P-43 神経系に特異的に発現するC2HCタイプZnフィンガー転写因子の構造と機能 大迫俊二*、高松芳樹 東京都神経研・細胞生物 Drosophila C2HC-type zinc finger gene that is expressed in subset cells of the central nervous system Shunji Ohsako and Yoshiki Takamatsu Dept. of Cell Biology, Tokyo Metropolitan Inst. for Neurosci. C2HCタイプZnフィンガー遺伝子、MyT1、NZF-1とNZF-3は、6個の Cys-X5-Cys-X12-His-X4- Cys(C2HC)Znフィンガーを持つ神経系特異的転写因子として哺乳動物で同定された。さ らにXenopusにおいて、X-MyT1は神経発生を制御するbHLH転写因子とNotch/Delta信号伝達 系によって制御され、神経細胞の分化に関与する可能性が示唆されたので、この分野でも っとも研究が進んでいるショウジョウバエにおけるC2HC タイプZnフィンガー遺伝子の機 能を調べるためにクローニングを試みた。degenerative primerを用いた PCRによって得 たDNAをプローブとして、 10-22h胚のcDNA library から6.5 kbpのcDNAクローン1個を得 た。このcDNAは1220個のアミノ酸をコードし、dNZF-1 と名付けた。脊椎動物のものと異 なり、dNZF-1は2個のC2HC Zn fingerのみを有し、 Zn finger以外では相同性を示さなか った。dNZF-1 は、特定の塩基配列に結合し転写を活性化した。dNZF-1のmRNAは胚発生後 期の中枢神経系のサブセットの細胞に発現し、dNZF-1 のdominant negative formの発現 によって胚発生致死になることから、dNZF-1が神経細胞の分化において重要な働きをする ことが示唆された。 P-44 ハエの小容器内での歩行活動は2つの相からなる。 小松 明 東京女子医大・医・第一生理 Locomotor Activity of the Fly in a Small Chamber has Two Phases. Akira Komatsu Dept. Physiol., Sch. Med., Tokyo Women's Med. Univ. Drosophila の歩行活動を記録するための自動計測システム(アクトグラム)を製作し、 歩行活動の基本的な性質を調べた。ハエを内径16 mm、高さ 2 mm の小チャンバーに入れ、 中心線を通るように赤外線を当てて赤外線を横切る回数を1時間カウントした。チャンバ ーに入れてから約10分間は雌雄とも歩行活動が盛んだが、ともに急激に減少していき、 10〜20分で非活動的な定常状態に落ちついた。この約10分間の活動度の高い期間は 探索行動の時期と考えられる。探索行動の時期が過ぎると雌雄ともに定常状態になったが、 この時の活動度には明らかに雌雄差が認められた。即ち、雌の活動度の方が雄に比べて高 かった。学習異常突然変異体の dunce とrutabaga の活動度を調べると、両者ともに初期 の探索行動の時期の活動度が野生型(Canton-S)に比べて低かった。 P-45 hedgehog及びdppのモルフォゲン情報を統合する新規パターン形成遺伝子の クローニング、及び機能解析 船越陽子*、南真樹、多羽田哲也 東大・分生研 Cloning and functional analysis of a novel patterning gene that interprets morphogenic signals of hedgehog and dpp Yoko Funakoshi*, Maki Minami, Tetsuya Tabata IMCB, Univ. of Tokyo 翅のパターンは、hedgehog及びdppという二つのモルフォゲンの働きによる位置情報を基 に形成されることが現在までに報告されている。しかし、それぞれのモルフォゲンがどの ように各組織の分化に関わる下流遺伝子を制御するのかについて、詳細な機構は明らかに なっていない。今回我々は、 hedgehog及びdppのシグナルに制御される新規パターン形成 遺伝子を見出したので、ここに報告する。我々は、エンハンサートラップラインのスクリ ーニングより新規パターン形成遺伝子付近にplacWが挿入された系統を得た。この遺伝子 は7.9 kbのORFを持ち、2310 a.a.からなる核内因子をコードしていた。この遺伝子の変異 をホモに持つ体細胞クローンを誘導すると、翅脈のパターンの乱れや、剛毛の種類や間隔 の変化が見られた。また、Gal4-UASの系を用いて異所的に発現させると、翅脈の欠失や、 翅脈間の幅の変化、また、それに伴う翅の大きさの変化が見出された。そこで、この遺伝 子は翅脈の形成、剛毛の分化、あるいは、翅の大きさの制御に関与する遺伝子の上流にあ ると考えられた。また、engrailed、hedgehog、dppのシグナルにより直接あるいは間接的 に制御されていることが予備実験で判明した。これらのことより、当遺伝子は、モルフォ ゲンにより形成された位置情報を総合的に解釈し、その情報を下流の翅脈や剛毛等の分化 に関与する遺伝子に伝える機能があると考えており、現在詳細な解析を行っている。 P-46 ショウジョウバエ気管系における Wg シグナリングの二つの機能 千原崇裕*、林茂生 遺伝研・無脊椎、総研大・生命科学 Dual function of Wg signaling during the tracheal development in Drosophila Takahiro Chihara, Shigeo Hayashi. Invertebrate Genetics Lab and The Graduate University for Advanced Studies, National Institute of Genetics Wingless (Wg) は各体節の A-P軸方向における細胞分化に必須な因子であり、その他の 様々な発生過程においても重要な役割を果たしている。今回は気管形成における Wgの機 能を解析し、興味深い知見を得ているので、それについて報告する。 まず、気管形成過程におけるWg の発現パターン(Wg stripe)を解析したところ、前後 軸方向に伸びた太い枝 (Dorsal Trunk: DT) は Wg stripeへ向けて枝を伸ばし、一方、そ れ以外の枝、特に背側へ伸びた細い枝(DorsalBranch: DB) は Wg stripe を避けて枝を伸 ばしているようであった。さらに、wg温度感受性変異体、armadillo 変異体、Wg過剰発現 胚などを詳細に解析することにより、我々は、気管形成における Wgシグナリングの機能 は次のように分けられると考えている。 (1) 気管細胞の分化に対する機能 気管前駆細胞(外胚葉由来)の陥入、DTの形成、および気管融合に必要な細胞分化の 誘導 (2) 気管細胞の移動方向を制限する機能 DB, GB(Ganglionic Branch) は Wg stripe を越えることができない。 現在、Wg が 直接、気管細胞に影響しているのか、もしくは何らかの因子(Bnl,Dpp etc)を介して間接 的に影響しているのか、について解析しているので、併せて報告する。 P-47 キノコ体を中心としたCaM キナーゼII - GAL 4の発現部位の解析 高松芳樹*1、中越英樹2、西田育巧3、山内卓4、大迫俊二1 1: 都神経研・細胞生物、2: 東工大・フロンティア(現岡山大・理・生物)、 3: 名大・理・生物、4: 徳島大・薬・生化 Expression pattern of the Drosophila CaM kinase II - GAL 4 transgene in the mushroom body. Yoshiki Takamatsu 1, Hideki Nakagoshi 2, Yasuyoshi Nishida 3, Takashi Yamauchi 4 and Shunji Ohsako 1 1: Tokyo Metropol. Inst. Nerosci. 2: Tokyo Inst. of Tech.(present: Fac. Sci., Okayama Univ.,) 3:School of Sci., Nagoya Univ., 4: Fac. Pharmaceu. Sci., Univ. Tokushima CaM キナーゼII は神経可塑性に基づく脳高次機能に重要な働きをすると考えられている。 ショウジョウバエCaM キナーゼII の転写産物は胚では神経系および中腸に、幼虫期以降 の脳では、キノコ体で特に強い発現を示す。この発現パターンは転写開始点上流4kbpの ゲノム領域を含むCaM キナーゼII - GAL 4 fly で再現できる。キノコ体には学習、記憶 に関わる複数の因子が局在し、物理、化学的なキノコ体の破壊およびキノコ体構造欠陥変 異体での学習能障害との関連から、学習記憶に不可欠な構造と考えられる。免疫組織化学 及びGAL 4 line の解析の結果から、キノコ体のKenyoncell は、遺伝子発現、axonの伸展 において異質な細胞集団であることが明らかにされつつある。複数の因子のキノコ体での 発現パターン情報が蓄積されつつある中、CaM キナーゼ II遺伝子の成虫脳での分布は高 次機能モデルとしてのショウジョウバエ脳を理解する上で重要な情報となると考え解析を 進めた。共焦点顕微鏡での観察では、αとβの各ローブ、peduncle の各々の中心部には シグナルが見られなかった。Kenyon cell ではCaM kinase II - GAL 4発現細胞は、ELAV- GAL 4 発現細胞と比較して明らかに粗であった。これらのことから、CaMキナーゼII は全 てのKenyon cell に発現するのではなく、選択的サブセットで発現すると考えられた。 P-48 Notch 情報伝達系構成因子の新規候補遺伝子である aya の解析 鈴木 聡*1 伊藤 美紀子 2 岸 憲幸 1 松野 康子 3 Spyros Artavanis - Tsakonas 3 岡野 栄之1 ,2 松野 健治 2→4 1 : 大阪大学大学院医学系研究科・神経機能解剖 2 : 科学技術振興事業団/ CREST/JST 3 : Cell Biol. , HHMI , Sch. of Med. Yale , USA 4 : 東京理 科大学基礎工学部生物工学科 aya may encode a Novel component involved in Notch signaling. S. Suzuki*1 M.Ito 2 N. Kishi 1 Y.Matsuno 3 S. Artavanis - Tsakonas 3 H. Okano 1,2 K. Matsuno 2→4 1 : Dept. of Neuroanatomy , Osaka Univ. Graduate Sch. of Med. 2 : CREST / JST 3 : Cell Biol. , HHMI , Sch. of Med. Yale , USA 4 : Dept. of Biology Sci. and Tech. Sci. Univ. of Tokyo Notch レセプターを介した情報伝達系( Notch 情報伝達系 )は、細胞間相互作用によ る細胞運命制御を行っている。膜貫通型レセプターである Notch はそのリガンドである Delta や Serrate の細胞外ドメインへの結合により活性化され、エフェクター分子であ る Suppressor of Hairless [Su(H)]に依存して核内への情報伝達を行う。Notch レセプ ターの活性化には、その細胞内ドメインが切断され、これが細胞核に移動する必要がある と考えられているが、このプロセスに関与する因子群については不明の点が多い。我々は Notch 情報伝達の分子機構を理解するためには、情報伝達の過程で機能する因子群の同 定が不可欠であると考え、遺伝的スクリーンによる同定を試みた。deltex はNotch 情報 伝達系を正に制御することが知られており、その遺伝子産物はNotch レセプターの細胞内 ドメインに結合して機能する。我々は Notch 情報伝達系を構成する新規遺伝子を同定す るために、deltex の翅脈における表現型を優性に増悪させる突然変異体をスクリーンし、 約3000系統の P 因子挿入型劣性致死突然変異体の中から aya と命名した遺伝子を同定し た。aya は Delta や Su(H)とも遺伝的相互作用を示す劣性致死遺伝子である。本発表で は Notch 情報伝達系への関与が示唆される aya 遺伝子の分子遺伝学的解析の結果につい て報告する。 P-49 Notchシグナルが果たす気管での役割 池谷智淳*1 林茂生1,2 1遺伝学研究所、2総合大学院大学 The Notch function in tracheal development Tomoatsu Ikeya and Shigeo Hayashi (NIG,Graduated Univ.of Advan.Studies) 気管形成は外胚葉由来の袋状の細胞集団が、stereotypicalな枝の伸長と融合を起こして ネットワークを形成する。今回、私はfusion cellの運命決定がNotchシグナルによって起 こることを明らかにした。Nが欠損すると、枝の融合やstalk cellのpositioningに変化が 見られた。その原因としてEsgを発現する細胞が枝の先端で増えることに起因することが 分かった。気管におけるリガンドはDeltaで、その発現は枝の先端、しかもEsgが発現する 細胞に限局することがわかった。恐らく枝の先端に発現したDlが隣りの細胞のNを活性化 することでEsgの発現を調節していると考えられる。また、私はDlの発現上昇が枝の伸長 を促進するBnl/Btlに依存することを明らかにした。さらに、Nシグナルが、Bnlの発現も 制御していることを示唆した。従ってNシグナルがBnlの影響を送り手と受け手で厳密に制 御することで管形成における細胞の運命決定に寄与していることがわかった。 P-50 キイロショウジョウバエ雌の交尾のコストに及ぼす卵の有無の影響 上山盛夫*、布山喜章 都立大・院理・生物科学 The effect of eggs on the cost of mating in Drosophila melanogaster females. Ueyama, M.* & Fuyama, Y. (Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.) キイロショウジョウバエの雌の寿命は、交尾によって短くなることが知られている。こ れは、交尾時に雄から雌に移行する副精巣由来の物質によるとされている。このような雄 による雌の操作に対抗して雌は何らかの防衛手段を獲得している可能性が考えられる。こ のような雌側の要因を探索する試みの一つとして、雌の生殖活動が交尾のコストに何らか の影響を及ぼすかどうかを調べた。 雌の生殖活動を排除する手段の一つとして卵形成がみられない突然変異otuを用い、交 尾させた雌および性ペプチドtransgene(SP)を発現している雌について平均寿命を求 め、未交尾雌のそれと比較した。 その結果、交尾した雌は未交尾雌より寿命が短くなるが、寿命の短縮効果はotuホモ接 合雌の方が、ヘテロ接合雌に比べて、より著しいことがわかった。また、SPを発現して いる未交尾雌の場合には、otuホモ接合雌の寿命の短縮はさらに顕著であった。 これらのことから、交尾は雌の寿命を短縮させるが、雌が卵を持つことによって、その 影響が緩和されるものと考えられ、雌の生殖に伴う何らかの変化が、交尾に伴うコストを 軽減する効果を持つことが示唆される。 P-51 ショウジョウバエSTATはD-raf プロトオンコジーンの転写制御因子である 権恩貞1, 2, 3, 朴賢淑2, 金英信2, 西田育巧3, 松影昭夫1, 劉美愛2 and 山口政光1 1愛知がんセンター研究所・生物、2釜山大・理・分子生物、3名古屋大学・ 大学院・生命理学 Drosophila STAT is a transcriptional regulator of the D-raf proto- oncogene Eun-Jeong Kwon1, 2, 3, Hyun-Sook Park2, Young-Shin Kim2, Yasuyoshi Nishida3, Akio Matsukage1, Mi-Ae Yoo2 and Masamitsu Yamaguchi1 1Laboratory of Cell Biology, Aichi Cancer Center Research Institute, 2Department of Molecular Biology, Pusan National University, 3Division of Biological Science, Graduate School of Science, Nagoya University The Drosophila raf (D-raf ) gene promoter contains a recognition consensus sequence for Drosophila-STAT (D-STAT). By band mobility shift assay, we detected a factor binding to the D-STAT-recognition sequence in extracts of cultured Drosophila cells treated with vanadate-peroxide. UV-crosslinking analyses suggested the size of the binding factor to be almost same as that of D-STAT. Furthermore, the binding activity was increased in cells cotransfected with HOP- and D-STAT-expression plasmids. These results strongly suggest that D-STAT binds to the D-STAT-recognition sequence in the D-raf gene promoter. Transient luciferase expression assay using Schneider 2 cells indicated that the D-raf gene promoter is activated by D-STAT through the D-STAT-binding site. Furthermore analyses with transgenic flies carrying Draf-lacZ fusion genes with and without mutations in the D-STAT-binding site pointed to an important role in D-raf gene promoter activity throughout development. We also found that the D-STAT-binding site is required for injury-induced activation of the D-raf gene promoter. Here we propose that D-STAT can participate in regulation of the mitogen-activated protein kinase cascade through D-raf gene activation. P-52 DRab2は新生ロドプシンの輸送と網膜の色素顆粒形成の両方に必要である。 佐藤明子*・河村悟・尾崎浩一 阪大・院理・生物 DRab2 perticipates in the vesicle transport of newly synthesized Rhodopsin and in the formation of pigment granules in the Drosophila retina. A.K.Satoh, S.Kawamura and K.Ozaki. Dept. Biol. Grad. School Sci., Osaka Univ., Toyonaka. 細胞内小胞輸送には、Rab family と呼ばれる一群の低分子量G蛋白質が必要である。 我々は、9種のショウジョウバエRabをクローン化し、GTP結合部位に変異を導入したRabを 発現する transgenic fly を作成し解析している。前回の研究会では、ER->Golgi 輸送に 関わるDRab1変異体について報告した。今回は DRab2 変異体について報告する。 DRab2 は哺乳類Rab2 と90%の相同性を持つ。哺乳類Rab2 は、Rab1 と同様、ER・Golgi の間の小胞輸送に関与すると考えられているが、詳細については不明である。DRab2 変異 体について、新生ロドプシンの輸送をその糖鎖のプロセシングを指標として検討したとこ ろ、DRab1 変異体とは異なり、プロセシングが進んだ37kD 合成中間体が蓄積していた。 DRab2 が ロドプシン輸送の遅い段階に関与することが分かった。 また、野生型のハエの網膜は赤いが、DRab2変異体では黒紫色であった。そこで、2種 類の網膜色素drosopterinとommochromeの量を分光測定したところ、drosopterinのみ著し く減少していることが分かった。網膜の電顕観察では、drosopterinを含む色素顆粒と ommochrome含む色素顆粒の両方が減少していること、また、黒化し巨大化したリソソームが 多数現れることが分かった。DRab2 が drosopterin の入った色素顆粒の形成にも、 ommochrome の入った色素顆粒の形成にも必要であると考えられた。 研究会では、これらの結果を総合し、DRab2 の機能について議論する。また、現在、 DRab2 と哺乳類Rab2 の関係についても検討しているのでこれらについても議論したい。 P-53 Gal4エンハンサートラップ系統の作出と翅成虫原基での発現スクリーン 山本美智子*1,山下敦士1,橋本直子1,高橋美和1,2,上田龍1 1:三菱生命研・神経発生遺伝,2:お茶大・人間文化 Identification of enhancer trap fly lines expressing Gal4 in the wing imaginal disc. Michiko Yamamoto1, Atsushi Yamashita1, Naoko Hashimoto1, Miwa Takahashi 1,2, Ryu Ueda1 (1 Mitsubishi Kasei Inst. of Life Sci., 2 Ochanomizu Univ.) 成虫胸部の感覚毛の形成に関与する遺伝子を探索する目的で,Gal4エンハンサートラッ プ系統を作出し,感覚毛の配列パターンが変化する変異体をスクリーンしている(NPコン ソーシアム)。これまで1179系統を調べたが,当初の目的の変異体は得られていない。一 方,3令幼虫の翅成虫原基におけるGal4発現パターンをlacZレポーターを用いて調べてみ たところ,1353系統中597系統に何らかの発現が検出された。これらのうち,部域特異的 な発現パターンを示すものは561系統あった。wing blade(あるいはそのヒンジ領域)に のみ強い発現が見られる系統は比較的多く248系統,またA-Pコンパートメントの境界線あ るいはどちらかの領域に特異的発現を示す17系統などが見つかっている。感覚器形成に関 してproneural cluster(scaなど),あるいはSOPとその子孫細胞(neuなど)に特異的発 現が観察される系統もあった。これらのうち,#2542系統では翅辺縁部を中心とした領域 で強い発現があり,しかもこの発現は胚/幼虫期を通じて,翅と平均棍原基の相同領域に のみ特異的である(弱い発現が脳と消化管の一部に観察される)。この特徴を生かして, 細胞増殖に関与する遺伝子の過剰発現の影響を検討した例を報告する。またこの系統で発 現がモニターされている遺伝子の解析についても報告したい。 P-54 ショウジョウバエ消化管における左右非対称性 林 知美*、村上柳太郎 山口大・理・自然情報 Formation of Left-Right asymmetry in the gut of Drosophila embryo. Tomomi Hayashi, Ryutaro Murakami (Dept. Physics, Biol. and Informatics, Yamaguchi University 脊椎動物では左右軸形成に関する遺伝子が複数報告され、脊椎動物に共通なシグナルカス ケードの存在が明らかになりつつあるが、無脊椎動物では左右軸に関する分子、遺伝子レ ベルでの研究がほとんど行われておらず、遺伝学的モデル動物であるショウジョウバエに おいても左右非対称な形態形成に関する明確な記載はない。脊椎動物の体は外見上は左右 相称に形成されるが、内部器官は左右非対称な形態を示す。今回我々は、無脊椎動物であ るショウジョウバエにおいても、消化管が左右非対称に形成されることを明らかにした。 消化管は初め胚の正中線上に形成されるが、特定の発生時期に左右どちらかに回転または 偏ることによって左右非対称となる。外胚葉由来の前腸及び後腸、内胚葉由来の中腸は、 それぞれが特有の左右非対称性を示し、その方向に個体差はほとんどなかった。既知の突 然変異胚における左右性を観察することによって、左右軸はモルフォゲン濃度勾配によっ て形成されているのではないことが示唆された。ショウジョウバエでは左右性に関係する 遺伝子は発見されていないが、左右非対称性を形成する基本的なメカニズムに迫れる実験 系であると考えている。 P-55 初期胚での高い発現と染色体恒常性;ショウジョウバエRECQホモログ 川崎勝己*1,2, 鄭相民1, NGUYEN, Quang D. 1, 柴田武彦1,2 1:理研 遺伝生化学、2: CREST, JST Dm RECQE1 DNA helicase, a new eucaryotic RecQ homologue, is expressed in early embryos Kawasaki, K.1, 2, Jeong, S-M.1, Nguyen, Q. D.1, and Shibata, T.1, 2 1:Cell & Mol Biol Lab, RIKEN, 2: CREST, JST ヒト遺伝疾患であるBloom、 WernerおよびRothmund-Thomson症候群の原因遺伝子はそれぞ れRecQホモログ(BLM,WRN,RECQL4)である。これらの臨床的所見や細胞学的解析結果はRecQ ホモログが動物個体にとって多様な形で関与していることを示している。ヒトでは少な くとももう二種(ATPaseQ1/RECQL, RECQL5) 合計五種のRecQホモログが存在しているが、 単細胞生物ではRecQ(ホモログ)は一種のみしか見られない。一般に多細胞生物になると複 数のRecQホモログがみられ、それぞれが発生時期や組織に応じてDNA修復、損傷応答、加 齢など多彩な分子機構に関与していると考えられる。従って多細胞生物の中でRecQホモロ グは基本的な機能に加えて新たな機能を作り出してきたと予想される。RecQホモログの個 体における役割を知ることを目指し、我々はショウジョウバエより新しいRecQホモログ (DmRECQE1)を見い出した。この遺伝子産物をカイコ核多角体病ウイルスにより発現し精 製を行ったところ、DNA結合性、ATP分解活性およびDNAヘリカーゼ活性を示した。また、 発現について解析を行うと卵巣、初期胚で高く、その後急速に減少した。このショウジョ ウバエRecQホモログの一次構造、生化学的性質、および発現様式から機能的にも新しい RecQ サブファミリーの存在の可能性が示された。 P-56 ナイドジェン:ショウジョウバエ発生における細胞外マトリクスの解析 熊谷知乃1、Liselotte I. Fessler1, Stefan Baumgartner2, John H. Fessler1 1 UCLA, Mol. Biol. Inst. & MCD-Biol. Dept., USA, 2 Lund Univ., Dept. Cell & Mol. Biol., Sweden Nidogen: An extracellular protein in Drosophila development. Chino Kumagai*1、Liselotte I. Fessler1, Stefan Baumgartner2, John H. Fessler1 1: UCLA, Mol. Biol. Inst. & MCD-Biol. Dept., USA, 2: Lund Univ., Dept. Cell & Mol. Biol., Sweden 細胞外マトリクス(ECM)は生体内で密に結合、重なり合った層状構造をなし、基底膜を 形成している。基底膜は上皮、筋肉、及び神経系の一部と接しており、それらの組織の保 持や正常な機能のために不可欠な存在である。ECMタンパク質の一つであるナイドジェン (Ndg) は、脊椎動物においては基底膜中の代表的な分子であるラミニンと安定に結合す る分子として単離されている。今回我々は新規にショウジョウバエ・ナイドジェン(DNdg )のcDNA配列を獲得し、DNdgタンパク質を胚抽出物及び胚由来初代培養から単離した。 脊椎動物Ndgと異なり、DNdgはラミニンに対して弱い結合性しか示さなかった。幼虫、成 虫の切片の抗体染色ではDNdgは基底膜中に広く分布していた。胚発生中にはDNdgは第10期 の伸長した胚帯の各体節中胚葉の正中線付近に規則的なパターンで発現し始め、外胚葉と 中胚葉の境界に分泌されている細胞外マトリクスの層の一部をなしていた。胚発生後期に は筋肉基底膜に加え、DNdgは末梢神経系の弦音器官(伸長受容体)で強く発現していた。 胚由来初代培養中で形成された弦音器官の抗体染色では、DNdgは他の細胞外マトリクス と共にscolopale中に特異的な分布で蓄積していることが示された。 P-57 シナプス小胞はrab5非依存的に再形成される 志水英之*、佐藤明子、河村悟、尾崎浩一 阪大・院理・生物 RAB5-INDEPENDENT RECYCLING OF SYNAPTIC VESICLES IN THE DROSOPHILA PHOTORECEPTOR CELL. H. Shimizu, A. K. Satoh, S. Kawamura, and K. Ozaki (Dept. Biol., Grad. School. Sci., Osaka Univ., Toyonaka 560-0043) シナプス小胞は神経伝達物質を放出した後、エンドサイトーシスによって再形成される ことが知られている。しかしその再形成経路は未だ議論が分かれており、通常のエンドサ イトーシス経路によってエンドソームを経て再形成されるモデルと、エンドソームを経ず 細胞膜から直接に再形成されるモデルの2つのモデルがこれまでに提唱されている。これ ら2つのモデルについての検討を行うために、我々は細胞膜からエンドソームへの小胞輸 送を特異的に制御するrab5に注目し、そのdominant negative mutant (Drab5N142I)を発 現するショウジョウバエ変異体を作成した。この変異体を電子顕微鏡観察によって解析し た結果、視細胞軸索ではシナプス小胞は野生型と同密度で観察され、その再形成も正常に 行われることが分かった。このことからrab5はシナプス小胞の再形成に関与しないと考え られた。これに対し、光受容部位では光受容膜の増幅と、その分解に関与するMVBsの減少 が観察され、光受容膜の分解がrab5に依存した通常のエンドサイトーシス経路によって行 われていると考えられた。以上の結果から、シナプス小胞の再形成にエンドソームは関与 しておらず、またショウジョウバエ視細胞にはシナプス小胞の再形成と光受容膜の代謝の、 少なくとも2つの異なる エンドサイトーシス経路が存在していることが分かった。 P-58 ショウジョウバエ変態過程におけるプログラム細胞死:細胞死抑制因子p35の 強制発現による細胞死の抑制 児玉明聡*1、谷村禎一2、木村賢一1 1:北教大・岩見沢・生物、2:九大・理・生物 Programmed cell death during metamorphosis in Drosophila melanogaster : Effect of extopic expression of p35, a inhibitory factor for cell death A.Kodama*1,T.Tanimura2 and K-I.Kimura1 1:Lab.of Biol., Iwamizawa Campus, Hokkaido Univ. of Education, 2:Dept. of Biol. Kyushu Univ. 完全変態性の昆虫であるショウジョウバエは、変態過程を通して幼虫型から成虫型へ体 制が大きく変化する。その際、不要となった組織は細胞死により除去される。この変態時 の細胞死は、古くからプログラム細胞死として知られている。本研究では、Gal4/UAS systemを利用し、細胞死抑制因子p35を様々な組織で強制発現させ、変態過程における細 胞死の機能を再評価した。組織特異的にGal4を発現するエンハンサートラップ系統(51 系統)とUAS-p35の系統を交配し、局所的に活性化されたp35遺伝子の影響を次世代で観察 した。その結果、およそ半分の系統(24系統)で致死性を示し、その致死期はいずれも蛹 期であった。また、成虫まで羽化した個体にも、様々な外部形態異常が観察された。これ らのことは、細胞死の正常な進行が変態にとって重要であることを示している。 観察された外部形態異常のうち、1)腹部背側正中線の融合異常と2)翅の背面と腹面の 接着異常に注目し、細胞死との関係を調査した。その結果、1)腹部背側正中線の融合異 常は、変態前期の幼虫表皮細胞と成虫表皮細胞の置換過程で、幼虫表皮細胞の細胞死が抑 制されたため生ずることが明らかになった。また、2)翅の背面と腹面の接着異常は、羽 化直後に起こる翅成虫表皮細胞の細胞死が抑制されたため生ずることが明らかになった。 P-59 アナナスショウジョウバエ類の性的隔離における求愛歌の役割 山田博万*、都丸雅敏、小熊譲 筑波大・生物科学 The Role of Courtship Songs in Sexual Isolation in the Drosophila ananassae complex Hirokazu Yamada, Masatoshi Tomaru, Yuzuru Oguma(Institute of Biological Sciences, University of Tsukuba) D. ananassaeとD. pallidosaは、同所的に生息しているが、妊性のある雑種を形成する ため、両種の存続には性的隔離が重要である。この性的隔離に重要であることが示唆され ている求愛歌と、その役割について解析した。 雄の両翅を切除した場合と、雌で求愛歌の受容器官と考えられている触角端刺を切除し た場合の交尾率測定および求愛行動の観察を行った。種内交配では両種とも2つの切除処 理の場合とも交尾率は有意に減少した。種間交配では一部を除き、2つの切除処理の場合 とも劇的な交尾率の上昇が見られた。すなわち、種内交配では求愛歌がないと交尾率は減 少し、種間交配では求愛歌がないと交尾率は劇的に上昇した。雄は異種の雌に対しても交 配開始後数分間は、雄の翅、雌の触角端刺の有無に関わらず強い求愛行動を示した。しか し、雄の翅、雌の触角端刺がともにある場合は途中から雄の求愛行動が持続しなくり、逆 に雄の翅、雌の触角端刺がない場合には、強い求愛行動を持続した。したがって求愛行動 中に授受される情報により、雌は雄の求愛行動を抑制していることが示唆される。 さらに複数系統の求愛歌を録音分析したところ、波形は2種で明らかに異なり、同種系 統間ではほぼ同様の波形が得られ、高速フーリエ変換による周波数分析においてもよく似 た特徴が得られた。他のショウジョウバエ近縁種間で重要とされるパルス間間隔に種間差 は見られなかった。 P-60 ショウジョウバエRab蛋白質の一種、DRabRP1、の細胞内局在と特性 *藤川和世・河村悟・尾崎浩一 大阪大・院理・生物 CHARACTERIZATION AND SUBCELLULAR LOCALIZATION OF A DROSOPHILA RAB RELATED PROTEIN, DRABRP1 K. Fujikawa, S. Kawanura and K. Ozaki. Dept. of Biology, Grad. School of Sci., Osaka Univ., Toyonaka. Rab蛋白質は、低分子量G蛋白質の一種で、新しく合成された蛋白質を正しい機能部位へ 運搬する「細胞内選別輸送」に関与することが知られている。我々は、ショウジョウバエ Rab蛋白質の一種、DRabRP1について、全長cDNAをクローニングし塩基配列を決定した。推 定されるアミノ酸配列は、すべての低分子量G蛋白質に共通な保存部位およびRabに特異的 な保存配列を全て含んでいた。しかし、既知のRab蛋白質や他のDRabとの同一性は高くな く、DRabRP1はRab蛋白質の新しい一員であると考えられた。 抗DRabRP1抗体を作成し、イムノブロッティング法によりその組織分布を調べた。その 結果、DRabRP1蛋白質は網膜と雄の生殖腺に特に多量に発現しており、化学感覚器を含む 組織でも、弱い発現が観察された。このような組織分布を示すRab蛋白質はこれまでに報 告されておらず、DRabRP1は感覚器と精巣に特異的な発現を示す新規のRab蛋白質であると 考えられた。さらに、抗DRabRP1抗体を用いて、ハエの複眼でのDRabRP1の局在を検討した。 共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、網膜においてラブドームの基部でDRabRP1はrdgA と共局在を示した。また免疫電顕法により観察したところ、DRabRP1の免疫反応は色素顆 粒の周縁部分に検出された。これらの結果から、DRabRP1は視細胞のSRCおよび色素顆粒に 局在することが示唆された。 P-61 キイロショウジョウバエとセイシェルジョウバエとの間の性的隔離と雌による 配偶者選択の種内変異について 都丸雅敏*,小熊 讓 筑波大・生物科学 Intraspecific variation of sexual isolation and female mate choice between Drosophila melanogaster and D. sechellia. Masatoshi Tomaru & Yuzuru Oguma. Inst. Biol. Sci., Univ. Tsukuba. 配偶者選択は、自らの子孫を残す上で重要である。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の雌は雄の発する求愛歌の種特異的なパルス間間隔(IPI=約35ミリ秒)を 認識し、交尾の受諾や拒絶を判断していると考えられている。ところが、これまでに、D. melanogaster雌は、IPIが大きく離れたセイシェルショウジョウバエ(D. sechellia;IPI =約85ミリ秒)の翅がある正常な雄とよく交尾し、翅がない(求愛歌を発しない)D. sechellia雄とはあまり交尾しないことが分かった。この結果について、種内変異の有無 を明らかにするため、D. sechelliaを5系統、D. melanogasterを2系統それぞれ用い、 無選択法により交配実験を行ったところ、大きな種内変異はなく、D. melanogaster雌は 翅のあるD. sechellia雄をよく受け入れ、D. sechellia雌は翅のないD. melanogaster雄 をよく受け入れることが明らかとなった。また、雌選択法による結果から、D. melanogaster雌は、雄を選ぶ余地があっても、翅のあるD. sechellia雄をよく受け入れる ことが明らかとなった。ところが、雌だけではなく、雄にも選択の余地を与えた条件 (雌雄選択法)で交配実験を行なったところ、これまでの結果と異なり、種間の交尾はあま り見られず、同種同士の交尾がほとんどであった。これは、D. melanogaster雌に対するD. sechellia雄の求愛が減少したためと考えられる。 P-62 Dsrc42は上皮細胞嚢形成においてDJNKを調節する 館野実*、安達卓、西田育巧 名大・院理・生命 Genetical analysis of Dsrc42 Minoru Tateno*,Takashi Adachi & Yasuyoshi Nishida (Div.Bio., Grad. Sci., Nagoya Univ.) ショウジョウバエではJun N-terminal kinaseホモログのDJNKは、胚発生中、上皮細胞 嚢の形成に必要とされる。最近の研究で、JNKシグナル伝達経路は進化的に保存されてい ることが示されてきた。しかし、DJNKシグナル伝達経路の上流のシグナルの引き金はわか っていない。これを明らかにする目的で、私はDJNK kinaseをコードするhemipterous遺伝 子のmild mutantと似た表現型を示すmutantをスクリーニングした。このスクリーニング で得たDsrc42遺伝子のmutantを用いた、主に遺伝学的手法による、Dsrc42の個体レベルで の機能解析の結果を報告する。 Dsrc42遺伝子は原ガン遺伝子c-srcのショウジョウバエホモログであり、non-receptor type tyrosine kinaseをコードする。Dsrc42は、胚発生と変態における上皮細胞嚢の形成 に必要とされる。Dsrc42のmutantは不完全な上皮細胞嚢を生じた。この表現型はDJNKの活 性を上昇させることで回復し、減少させることで悪化した。また、Dsrc42はDJNKの活性を in vivoで調節することが分かった。従って、上皮細胞嚢の形成において、DJNKシグナル の活性化のみがDsrc42の下流で必要とされる、と考えられる。 P-63 キイロショウジョウバエ自然集団における殺虫剤抵抗性の遺伝的変異と季節変 動 三代隆洋*1、赤井住郎2、小熊讓3 1:筑波大・院・生物、2:山梨学院短大、3:筑波大・生物 Genetic variation and seasonal fluctuation in susceptibility to insecticides within a natural population of Drosophila melanogaster Takahiro Miyo*1, Sumio Akai 2, Yuzuru Oguma 3. 1: Doctoral Program in Biological Sciences, University of Tsukuba, 2: Department of Food and Nutrition, Yamanashi Gakuin Junior College, 3: Institute of Biological Sciences, University of Tsukuba 殺虫剤抵抗性の遺伝的変異と季節変動を調査するために、勝沼からキイロショウジョウ バエ自然集団を2年間にわたり、夏と秋に採集した。各季節ごとに採集した集団から、1雌 由来系統をそれぞれ52から499系統作製した後、5つの殺虫剤パーメスリンおよびマラチオ ン、プロチオフォス、フェニトロチオン、DDTそれぞれについて系統ごとに感受性を試験 した。各季節の集団から作製された系統数に大きなばらつきがみられたが、すべての殺虫 剤に対して抵抗性に幅の広い遺伝的変異が観察された。各季節間での比較から、有機リン 剤に対する抵抗性の遺伝的変異はキイロショウジョウバエ集団の消長とともに変動し、特 に秋に感受性が増大することが示された。一方、パーメスリンとDDTに対する抵抗性にお いては、あまり変動が見られなかった。しかも、DDTに対する抵抗性の遺伝的変異は、そ の使用が禁止されてから長期間経ているにもかかわらず、W団中に維持されていた。以上 の結果から、有機リン剤に対する抵抗性において観察されたこの季節変動は、抵抗性遺伝 子型間の適応度の差によるものと考えられた。さらに自然集団において観察されたこれら の現象を、1つの殺虫剤に対する負の遺伝的相関反応という観点から考察した。 P-64 ネトリン受容体フラッツルドはネトリンの局在パターンを変化させ、細胞非自 律的に軸索ガイダンスを行う。 平本 正輝*、堀田 凱樹 遺伝研・発生遺伝 An axon guidance mechanism mediated by Frazzled dependent Netrin translocation. Masaki Hiramoto*, Yoshiki Hotta. National Inst. of Genetics. Developmental genetics. ネトリンは軸索の成長円錐に位置情報を与えるガイダンス分子として機能する。フラッ ツドはネトリンシグナルの受容体として機能する事が示されているが、我々はこれらのリ ガンド・受容体相互作用によりネトリンの局在パターンが大幅に変化する事を発見した。 フラッツルドが形成するネトリンの二次的な局在パターンによる軸索ガイダンスメカニズ ムについて報告する。 ショウジョウバエ胚の腹部神経節において、ネトリン A, B は フラッツルドが局在し ている横行神経に局在する。フラッツルド変異体では、この横行神経における局在が消失 する。またフラッツルドをengrailedパターンで強制発現すると、engrailed 陽性の領域 に相当する横行神経の後半部でネトリン A, B が局在する。これらの事はフラッツルドに はネトリンを局在させる機能がある事を示している。 MP1, dMP2 は縦方向に伸びるパイオニアニューロンであるが、これらの軸索は横行神経 の両端の後縁に沿って軸索を伸長する。この軌跡はネトリンA, Bおよびフラッツルドが局 在する領域の後方の境界に相当する。ネトリン B をMP1, dMP2の軸索の進路上に異所発現 させると、これらの神経の成長円錐は異所的なネトリン Bの局在領域に沿って伸びる。細 胞内ドメインを欠くフラッツルドをフラッツルド変異体背景下で強制発現すると、ネトリ ン A, B が野生型を異なるパターンで局在するが、MP1,dMP2 の成長円錐はネトリン A, B が局在する領域に至ると、この領域に沿って伸長した。また、フラッツルド変異体およ びネトリンA, B 二重変異体で dMP2 の軸索走行を解析したところ、道筋を誤り側方へ軸 索を伸ばしているものが見られた。 これらの結果から、フラッツルドはネトリンの局在パターンを決定しMP1, dMP2 を後方 へガイドしていると考えられる。 P-65 Drosophila mab-21の機能解析 白木岐奈*1,2、高橋直樹1、林茂生2 1:奈良先端大・バイオ・動物代謝、2:遺伝研・無脊椎 Analysis of Drosophila mab-21 homologs Michina Shiraki*1,2, Naoki Takahashi1, Shigeo Hayashi2 (1: Grad. School of Biological Sciences, NAIST 2: inv. genetics, NIG) マウスHoxC4の標的遺伝子としてin vivo免疫精製法により単離された遺伝子の1つは、 線虫のmab-21遺伝子の相同遺伝子であった。mab-21は、線虫の雄の生殖器官ray6の形態形 成ならびに隣接する細胞の発生運命の決定に関与する。さらに、TGF-betaファミリーに属 するdbl-1/cet-1の経路や、線虫Hox遺伝子群の一つegl-5と遺伝学的相互作用があること が報告されている。 現在までに様々な生物種でmab-21相同遺伝子が同定されている。それらのアミノ酸配列 はきわめて高度に保存されており、生物学的に重要な役割を担っていることが推察される が、既知の機能ドメインやモチーフは存在せず、その機能の詳細については今だに不明で ある。 我々はmab-21遺伝子が発生過程で司る機能を解析することを目的として、ショウジョウ バエのmab-21相同遺伝子を2つ単離した。胚発生において、これらの遺伝子はst.11頃から 発現し始め、主として中枢神経系と筋肉に分布していた。また免疫組織染色では中枢神経 系と共に末梢神経系でも強い染色が認められ、胚神経系の形成に関与していることが示唆 された。現在異所的/過剰発現や変異体の作出等を行っている。 P-66 強制発現系を用いたショウジョウバエ寿命変異体の探索 成 耆鉉*1、相垣敏郎1,2 1:都立大・院・理、2:科技団さきがけ Screening for longevity mutants in Drosophila melanogaster Ki-Hyeon SEONG*1, Toshiro AIGAKI1,2 1:Dept. Biol., Tokyo Metro. Univ., 2:PRESTO, JST. 老化の分子メカニズムを理解するための遺伝学的アプローチにおいては寿命突然変異体 の同定が不可欠である。しかしながら、一般に突然変異体は少なからず発生過程に影響を 及ぼすものと考えられる。本研究では、老化が起こる成熟後の過程で寿命の決定に関与す る遺伝子を明らかにすることを目的として、ショウジョウバエの遺伝子強制発現システム を利用した寿命変異体のスクリーニングを行った。まず、GAL4転写因子の標的配列を含む Gene Search(GS)ベクターをゲノムにランダムに挿入した系統を、hs-GAL4系統と交配した。 ベクター挿入部位に隣接する遺伝子を成熟後のF1個体において強制的に発現させるために、 前成虫期は25℃で飼育し、羽化した成虫を30℃で飼育して寿命を測定した。今回、646系 統のGS系統のスクリーニングを行い、コントロールに比べて、統計的に有意に長い平均寿 命を示した25系統を「長寿命系統」とし、強制転写産物の5'側の配列を決定した。データ ーベース検索行ったところ、「長寿命系統」25系統の内、4系統がショウジョウバエの既 知遺伝子と、9系統がショウジョウバエのEST(発現配列タグ)と一致し、2系統が哺乳類 の遺伝子と高い相同性を示した。 P-67 オーストラリア東海岸におけるキイロショウジョウバエのゲノム内のP因子の 変遷 小倉啓司*1、Ronny C. Woodruff 2、伊藤雅信 3、Ian A. Boussy 4 1: 工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター 2: Dept. of Biol. Sci., Bowling Green State Univ. 3: 工繊大・繊維・応用生物 4: Dept. of Bio., Loyola Univ. of Chicago Genomic P element transition in Australian east coast Keiji Ogura1, Ronny C. Woodruff 2, Masanobu Itoh 3, Ian A. Boussy 4 1: Drosophila Genetic Resources Center, Kyoto inst. of Tech. 2: Dept. of Biol. Sci., Bowling Green State Univ. 3: Dept. Apli. Biol. , Kyoto inst. of Tech. 4: Dept. of Bio., Loyola Univ. of Chicago P因子は1950年代にキイロショウジョウバエに侵入し、それ以来世界中のキイロショウ ジョウバエのゲノムにP因子が広まったと考えられている。オーストラリア東海岸では19 83年から1986年のGDテストにおいて低緯度地域ではP系統、中緯度地域ではQ系統、高緯 度地域ではM系統というクラインが報告されている。 1996年から1997年にオーストラリア東海岸の南緯16.4度から43.2度までの56ヶ所300系 統で、キイロショウジョウバエの単一雌系統を採集した。これらの系統を用い、GDテスト、 サザンハイブリダイゼーション解析によるゲノム内のP因子とP因子の抑制因子であるKP因 子の割合を調査した。サザンハイブリダイゼーション解析の結果から南緯26度付近を中心 とした中緯度地域ではKP因子の割合が低いこと、低緯度地域と高緯度地域に向かってKP因 子の割合が高くなる傾向があることを示した。1983年から1986年、1991年から1994年の調 査との対比を中心にオーストラリア東海岸において、P因子とKP因子が時間の経過と共 に自然集団内でどのように振る舞ったのかを考察する。 P-68 red遺伝子の転写産物の同定 大迫隆史1、相垣敏郎1,2、布山喜章1 1:都立大・理・生物、2:科技団・さきがけ Identification of transcripts from the red gene. Ohsako, T., Aigaki, T. & Fuyama, Y. (1Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ., 2PRESTO, JST) 第3染色体88B領域へのP因子の挿入によって誘発された突然変異系統GS3247系統では、幼 虫および成虫のマルピーギ管に赤色色素の蓄積が観察される。88B領域に位置し、同様の 表現型を示すred Malpighian tubules (red)遺伝子の対立遺伝子red1との相補性テストの 結果、GS3247系統の突然変異はred遺伝子座に生じていることが明らかとなった。また、P 因子の切り出しにより、表現の程度が異なる新たなredの対立遺伝子も得られた。P因子挿 入近傍のゲノムDNAの塩基配列を決定し、データベースの検索を行った結果、複数のESTク ローンの配列と一致した。その内の一つの全塩基配列を決定したところ、343アミノ酸残 基から成るタンパクをコードしていること、および、転写開始点の上流289bpの位置にP因 子が挿入していることが明らかになった。推定されたタンパクは、ヒトおよびマウスのEST クローンの配列から推定されるタンパクとの間で高度に保存される領域を持つ。この転 写産物がred遺伝子の産物であるかどうかを確認するために、現在、red突然変異体で、こ の転写産物が影響を受けているかどうか、および、red突然変異体の88B領域のゲノムDNA の塩基配列を調査中である。 P-69 核マトリックス構成分子Plexusの翅脈パターン形成での役割 亦勝和*1,2、田所竜介1、蒲生寿美子2、林茂生1 1:国立遺伝研、2:大阪府立大学・総科 Plexus: a repressor of vein differentiation and component of nuclear matrix Hitoshi Matakatsu1, 2, Ryosuke Tadokoro1, Sumiko Gamo1, 2 and Shigeo Hayashi1 1:National Institute of Genetics、2:Department of Life Sciences, Osaka Prefecture University ショウジョウバエの翅は翅脈と呼ばれる構造によって一定のパターンに区切られており、 パターン形成を理解するうえでのよいモデルを提起する。 我々は翅脈形成に異常を生じる突然変異pxの解析を行った。px突然変異体では本来の翅 脈に加えて過剰な翅脈を生じる。成虫原基で翅脈になる原基細胞で発現するrhoの発現が px突然変異体では異所的に広がっていた。 一方で、rhoの発現とは相補的に発現する転写因子DSRFの発現はinterveinの領域で低下 していた。rhoの発現を正に制御しているkniなどのプレパターン遺伝子の発現は変化しな かった。 次にpx遺伝子のクローニングを行い、cDNAの塩基配列からPXタンパクは新規のタンパク 質であることを明らかにした。PXタンパクはすべての細胞の核内に局在し、染色体の分布 とは相補的に間隙をうめるように局在していた。このような核内の間隙には転写など核内 での機能に重要な役割を果たす核マトリックスが存在する事が指摘されている。生化学的 な解析からPXタンパクが核マトリックスを構成する分子であることが明らかになった。 以上の結果からユビキタスに発現するpxの翅脈形成を抑制する活性がkniなどのプレパ ターン遺伝子によって解除されることによって翅脈への分化が起こるとするモデルを提起 する。 P-70 減数分裂突然変異体mei(3)1223[m144]による染色体特異的対合機構の解析 山本雅敏*1、 平井和之2 1:京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター、 2:京都工繊大・院工芸 科学・生物機能 Studies on the mechanism of homolog recognition at meiosis in the male of mei(3)1223[m144] mutant. Yamamoto, M-T., and Hirai, K. (Kyoto Institute of Technology 減数分裂における相同染色体の認識と対合は、配偶子における染色体数の減数とゲノムの 維持を保証する上において最も重要な分裂過程であり、メンデルの遺伝法則の根幹である。 しかし、その機構に関する詳細は明らかにされていない。その原因としては、相同染色体 の認識と対合を染色体の組換え機構と分離して、対合機構だけを研究する方法が用いられ なかった点にあるのではないかと考えられる。我々は染色体の組換えを欠如したキイロシ ョウジョウバエ雄を用いることで、相同染色体の対合に働く遺伝子の探索を行ってきた。 これまでに発見されてきた減数分裂突然変異は全ての染色体の対合と分離に異常が生じる ものであったが、ここで紹介する雄特異的減数分裂突然変異体mei(3)1223[m144]は、性染 色体の対合は約95%正常でありながら、常染色体(第2,3,4染色体)の対合は完全に欠如し ている。さらに、性染色体の対合はヘテロクロマチン内に存在するpairing sitesが重要 であると考えられているが、mei(3)1223[m144]遺伝子はpairing sitesのうち特定の pairing siteの対合に機能しているという結果を得たので報告する。 P-71 肢原基で発現するgal4エンハンサートラップ系統のスクリーニング 後藤聡*1,2、谷口美佐子1、林茂生1,2 1: 国立遺伝研・系統セ・無脊椎、2: 総研大 Screening for gal4 enhancer trap lines whose expression is in the limb discs Satoshi Goto*1,2, Misako Taniguchi1, Shigeo Hayashi1,2 (1: Natl. Inst. Genetics, 2: Univ. Adv. Studies) ショウジョウバエの翅・脚の原基(肢原基)は、胚発生期に誘導され、幼虫期に増殖・パ ターン形成を行い、蛹期に形態変化し、成虫の外骨格となる。我々は、肢の形成過程を胚 期から成虫にいたるまで一貫して解析することを目指し、NPコンソーシアムによって作製 された約4000系統のgal4エンハンサートラップ系統について、胚期、幼虫期、蛹期、成虫 においての発現パターンを解析している。レポーター遺伝子として、lacZとGFPを用い、 胚は抗beta-Gal抗体染色、初期幼虫と蛹・成虫はGFP観察、3齢後期幼虫はX-gal染色によ って解析している。現在のところ約2700系統のスクリーニングが終了し、胚の肢原基で発 現しているものが6系統、3齢後期幼虫の脚原基で発現しているものが95系統、3齢後期幼 虫の翅原基で発現しているものが84系統、分離された(重複を含む)。これらの発現は、 同心円状、三日月状、前後区画等のいくつかのパターンに分類された。現在、残りの系統 のスクリーニングを進めるとともに、挿入箇所近傍の染色体DNAの配列を決定し、肢形成 過程に関わる遺伝子を網羅的にリストアップする予定である。 P-72 The GFP viewer: A low-cost DIY portable device for the observation of Green Balancers and transgenics S65T GFP expression. ペール JB*1、相垣敏郎1,2 1: 東京都立大学・理学・生物、2: JST The GFP viewer: A low-cost DIY portable device for the observation of Green Balancers and transgenics S65T GFP expression. Jean-Baptiste Peyre. Dept. of Biological SciencesTokyo Metropolitan University. The GFP is more and more widely used as a powerful tool for biologists, and especially drosophilists. One application that is unique to Drosophila is the construction of green balancers. We present here the "GFP viewer", a handy benchtop device designed for the observation of specimen expressing S65T modified GFP and particularly useful for picking GFP expressing bacterial clones or sort green balancer larvae. The GFP viewer also allows for the observation of UAS-GFP expression pattern in combination with a standard binocular microscope. P-73 HedgehogによるDppシグナリングの負の制御 谷本拓*、多羽田哲也 東大・分生研 Hedgehog directly attenuates Dpp signaling in the wing disc Hiromu Tanimoto*, Tetsuya Tabata IMCB,Univ. of Tokyo Hedgehog (Hh)とDecapentaplegic (Dpp)はショウジョウバエ翅の前後軸に沿った短距 離・長距離のモルフォゲンである。Dppは翅全体にわたって濃度勾配を形成し、境界領域 からの位置情報を周囲の細胞に供給している。しかし、細胞がどのようにDppの濃度勾配 を認識しているかは明らかにされていない。 本研究では、リン酸化したMadタンパク質を認識する抗体を用いて翅成虫原基における Dppシグナルの相対強度を組織染色によって視覚化した。Madは活性化されたDpp受容体によ って直接リン酸化されるため、リン酸化Madを検出することは、Dppシグナルの強度を直接 反映するものである。リン酸化MadのシグナルはDppの発現部位付近では急な勾配を描き、 発現部位より離れるに従い緩やかな勾配を形成していることを見出した。しかし予想に反 し、Dppタンパク質の濃度が最も高いと思われる前後コンパートメントの境界領域ではリ ン酸化Madの量が低下していることを見出した。さらに、前後コンパートメント境界にお けるMadのリン酸化を直接制御しているのはHhシグナルであることを明らかにした。これ はHhが直接Dppシグナルを弱めていることを示している。 すなわち、Dppの作用は単純にDppの濃度勾配を反映したものではなく、DppはHhという 別のモルフォゲンとの協調作用によって翅を形作っていることが示唆された P-74 神経回路の形成を制御するdrio遺伝子の解析 粟崎健1、酒井良子、斉藤麻衣、曽根雅紀、浜千尋* 国立精神神経センター神経研究所遺伝子工学研究部、1:現、国立基礎生物学研 究所 DRIO, a putative activator for Rho family GTPases, controls the neural network formation in Drosphila Takeshi Awasaki1, Ryoko Sakai, Mai Saitoh, Masaki Sone, Chihiro Hama National Institute of Neuroscience, 1: National Institute of Basic Biology われわれは今までに、活動性が低下した変異株の解析からsif遺伝子を同定し、その産 物がRhoファミリーGTPaseのRacを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である ことを明らかにしてきた。SIFタンパク質は、シナプスの特定の領域に局在してシナプス 形成の制御に関与することが示されてきている。一方で神経細胞の分化は軸索の伸長から シナプス形成へと形態変化を伴なう一連の過程からなる。そして、その変化を複数のRho ファミリーGTPaseが制御していることが示唆されている。われわれは、これらのGTPaseが 正しく神経細胞の分化を制御するためには、複数存在するGEFが発生に伴ないそれぞれ固 有の時間、空間的パターンで神経細胞内に局在し機能することが必要であると考え、SIF とは別のGEFの同定を試みた。データベースの探索と胚に対するin situ hybridizationに より神経系で発現する候補遺伝子を絞り、その中からdrioを選択した。決定した塩基配列 から予想されるタンパク質は多数のスペクトリンリピート、SH3ドメイン、2組のDH-PHド メインを持ち、ヒトのTrioおよび線虫のunc73遺伝子と高い類似性を示した。drio遺伝子 の機能を調べるためにEMSを用いて変異株を分離しその表現型を解析したところ、胚にお ける運動神経および1齢幼虫の中枢神経系の軸索走行に異常が検出され、幼虫時に致死と なった。また、DRIOタンパク質は成虫脳では軸索および神経叢に分布することが明かとな った。 P-75 幼虫の視神経細胞の分化に働く新しいhedgehogシグナル経路 鈴木崇之、西郷薫 東大・理・生化 A novel hedgehog signaling pathway triggers the differentiation of larval photoreceptor neurons Takashi Suzuki, Kaoru Saigo Dept. Biophys. and Biochem., Grad. Sch. of Sci., Univ. of Tokyo 幼虫期に光を受容する感覚器である幼虫の眼は12個の視神経細胞からなり、これらはス テージ11に頭部体節の表皮から神経細胞として分化する。これまでにpatched (ptc)の変 異体では幼虫の視神経細胞の数が約60個にまで増えることが知られていた。そこでptcの リガンドであるhedgehog (hh)がどのようにその分化に関与しているのかを調べた。その 結果hhの変異体では視細胞が形成されず、hhを広範囲で発現させると視細胞数が増加した。 また視細胞が分化する前駆領域ではproneural遺伝子のatonal(ato) が分化を制御してお り、hhシグナルはatoの発現を制御していることが分かった。 次に複眼の形成に重要な役割を果たしている遺伝子のうちsine oculis (so)と eyesabsent (eya)が幼虫の視細胞でも発現し、それらの変異体では視細胞が分化しないこ とが分かった。そこでこれらの遺伝子とhhシグナルの関係を遺伝学的に解析した結果、so やeyaの非存在下でhhを広範囲に異所的に発現させてもatoは誘導されず、視細胞は形成さ れなかった。このことから、soやeyaはhhの下流または平行に働いていることが示唆された。 また、cubitus interruptus (ci)のnull変異体ではatoが発現し、視細胞が正常に分化 することからこの系のhhシグナルではciは下流の転写因子として働いていないことが分か った。 P-76 Dppシグナル伝達に関与する新規因子の遺伝学的スクリーニング 中村 真*、西田 弥生、友安 慶典、上野 直人 基礎生物学研究所・形態形成研究部門 Genetic screening for novel genes involved in Dpp signaling M. Nakamura*, Y. Nishida, Y. Tomoyasu and N. Ueno National Institute for Basic Biology, Okazaki 我々はDpp/BMPシグナル伝達系に関与する新規遺伝子を単離することを目的に、Dpp/BMP の各種 type-I 受容体(リガンド非依存的活性型)を発現させた個体を用いたサプレッサ ー スクリーニングを行ってきた。活性型Tkv, Sax, ALK2, ALK3を71Bまたは69B GAL4を用 いてwing discに発現させると、wing の拡大、異所的wing veinの形成、もしくは正常な wing vein形成の阻害といった、それぞれの受容体に特異的、もしくは共通した表現形を示 す。これらの表現形は、Dppシグナルの異所的な活性化(機能獲得型)によるものと内在の Dpp シグナルを阻害することによって生ずるものに分けられる。我々は、機能獲得型表現 形の抑制を指標に新規変異体のスクリーニングを行った。Deficiency kitを用いて1次ス クリーニングを行い、さらにP因子挿入変異体を用て2次スクリーニングを行った。スク リーニングの結果、および現在遺伝子レベルで解析をしている2つの新規変異体について 報告する。 P-77 ショウジョウバエの巨大筋肉蛋白質Kettinの構造および遺伝的解析 ○ 羽毛田 聡子、西郷 薫 東大・理・生化 Isolation and genetic analysis of kettin encoding a giant muscle protein in Drosophila ○ Satoko Hakeda , Kaoru Saigo (Dept. of Biophys. & Biochem., Graduate school of Sci., Univ. of Tokyo) ショウジョウバエの細胞における当該蛋白質の局在を知ることのできる遺伝子スクリー ニング法としてイントロントラップ法を開発し、得られたライン#132を解析した。 #132のP因子挿入点近傍30kbのゲノムDNA配列を決定したところ、ごく一部の配列が 報告されていた分子量50万の蛋白質Kettinのコード領域が含まれていた。配列を解析した 結果、Kettinは免疫グロブリンC2様ドメイン(Igドメイン)およびそれに続くKettinに 特異的な連結配列から成る130アミノ酸の繰り返し構造を持つことがわかった。Kettinに はIgドメインが35個存在しており、他の蛋白質のIgドメインより蛋白質内でのドメイン間 での方が相同性が高かった。 また、Kettinの蛋白質およびRNAは胚期で筋肉特異的に発現していた。この発現は幼虫 の筋肉において表皮細胞と筋肉を接着する内突起において強くなっていた。インテグリン 欠失変異株での発現解析から、この局在にインテグリンが関与していることが示唆された。 #132においてP因子はkettin遺伝子の第2イントロンに挿入されていた。この挿入変異 のホモ接合体は、2齢から3齢幼虫初期の段階で行動が鈍くなり、最終的には全く動かな くなり死に至った。この変異株の筋肉ではサルコメア構造に異常が見られた。また、P因 子の再転移により得られた欠失変異株の中には優性飛翔不能を示すものが存在した。 P-78 間接飛翔筋由来cDNAライブラリーの作成 最上 要* 東大・院理・物理 Construction of a cDNA Library from Indirect Flight Muscle mRNAs Kaname Mogami Department of Physics,Graduate School of Science, University of Tokyo ハエ成虫胸部には間接飛翔筋と呼ばれる強大な筋肉があり飛翔時のパワーを供給している。 飛翔不能となる突然変異の中にはこの筋肉の筋原線維に形態異常をおこすものがある。ア クチン、ミオシン、トロポミオシンといった主要筋タンパク質については遺伝子も変異体 も同定されているが、まだよくわかっていないものも多い。筋原線維の構成成分を全てあ きらかにすることを目的として、間接飛翔筋由来の cDNA ライブラリーを作成した。材料 としてまだ筋タンパク質の合成が活発に行われていると思われる羽化直後(4時間以内) の成虫9匹を麻酔し、解剖して間接飛翔筋のみを切り出した。Pharmacia 製の QuickPrep Micro mRNA Purification Kit を用いてmRNA を精製し、Stratagene 製の ZAP-cDNA Gigapack III Gold Cloning Kit を用いて cDNA ライブラリーを作成した。このライブラ リーから得られたいくつかのクローンについて報告する。 P-79 wing disc形成に異常を示す新規変異体 unbalanced flight の解析 友安 慶典*1,2、上野 直人1,2、中村 真1 1:基生研・形態形成、2:総研大 unbalanced flight, a novel gene involved in the wing disc development Yoshinori Tomoyasu*1,2, Naoto Ueno1,2, Makoto Nakamura1 (1:NIBB, 2:The Graduate University for Advanced Studies) ショウジョウバエの成虫構造は、成虫の各構造に合わせた数種類の成虫原基から形成さ れる。すべての成虫原基の発生において、Decapentaplegic (Dpp), Wingless (Wg), Hedgehog (Hh) などの分泌性成長因子が作用する必要があるが、なぜこれらの因子が各成 虫原基において異なった構造を誘導するのかについては不明な点が多い。 unbalanced flight (ubf)は、Dppシグナルの異所的活性化による表現型を抑制する変異 体のスクリーニングにより見出されたP因子挿入変異体である。このP因子挿入変異体は胚 発生期に致死となるが、興味深いことに、いくつかの復帰変異体はwingおよびhaltere discが特異的に欠失するという表現型を示した。まれに不完全なwing, haltere discを持つ 個体も観察されたが、この場合Dppシグナルの標的遺伝子であるoptomotor blind (omb)の 発現に異常が見られた。また、これらの表現型は他の成虫原基では見られなかった。この 結果は、ubf遺伝子が成虫原基形成のうちwing, haltere discにおけるDppシグナル伝達の みに関与することを示唆する。現在ubf遺伝子を同定中であり、この結果も合わせて報告 したい。 P-80 FTZ-F1 変異体による fushi tarazu 遺伝子転写調節の解析 川崎陽久*1,2、上田均1、広瀬進1 1:遺伝研・形質、2:岩手大・連合農学 Analysis of transcriptional regulation of ftz by FTZ-F1 Haruhisa Kawasaki* 1,2, Hitoshi Ueda 1, Susumu Hirose 1. 1: IwateUniversity, 2: National Institute of Genetics FTZ-F1 は、本来 fushi tarazu (ftz) 遺伝子転写制御領域のひとつである zebra element (5' 末端近傍の 740 bp : -670 - +70 bp)内に結合し、 ftz 遺伝子に positive に働く転写制御因子として同定された因子である。しかし、最近FTZ-F1変異株 で ftz 遺伝子の発現がほぼ正常であるという知見が得られた。そこで、 FTZ-F1 の ftz 遺伝子発現への影響について再検討した。 zebra-lacZ 融合遺伝子は、初期胚で7本のス トライプ状に発現されるが、FTZ-F1 変異株の胚では、1、2、3、6番目のストライプ の発現低下が確認された。この発現は、 FTZ-F1 結合部位に変異を導入した zebra-lacZ 融合遺伝子の発現パターンと一致した。また、 FTZ-F1 変異株で FTZ-F1 を強制発現させ たところ、 zebra-lacZ 融合遺伝子の発現が回復した。以上のことから、 FTZ-F1 はftz 遺伝子の発現を zebra element を通じて positive に制御していると考えられた。 P-81 キイロショウジョウバエDNA polymeraseδ及びε欠損突然変異体の単離の試み *吉田英樹1、2、井上喜博1、山口政光1、広瀬富美子1、大重真彦2、 坂口謙吾2、松影昭夫1 1:愛知県がんセ研・生物、2:東理大・理工・応用生物 Isolation of Drosophila melanogaster mutants for DNA polymeraseδ and ε genes *Hideki YOSHIDA1,2, Yoshihiro INOUE1, Masamitsu YAMAGUCHI1, Fumiko HIROSE1, Masahiko OSHIGE2, Kengo SAKAGUCHI2 and Akio MATSUKAGE1 (1Lab. Cell Biol., Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 2Dept. Appl. Biol. Sci., Sci. Univ. of Tokyo) ショウジョウバエの発生過程では、時期や組織によって、細胞周期の構成が異なることが 知られている。この過程で、DNA polymeraseδ(pol δ)とε(polε)がどのような機能を 担っているかを明らかにする事を目的として、これら2つをコードする遺伝子が欠損した 突然変異体の単離を試みている。唾腺の多糸染色体に対するin situ hybridizationによ り、polδ、polεの遺伝子座を、それぞれ第3染色体72A、94F領域にマップした。polε の遺伝子を含む領域をクローン化、制限酵素地図を作成し、それを元に、同遺伝子領域に 欠失を持つ変異体をサザン法により同定した。また、polε遺伝子近傍にP因子の挿入があ ると報告されている系統を用いて、local hopping法によりP因子の転移を誘発し、polε 遺伝子の欠損突然変異体の単離を試みた。その結果、polε遺伝子領域を欠失した染色体 を持つ変異体と再転移したP因子の挿入変異体との交配で、欠失染色体とP因子挿入のある 染色体のヘミ接合体が致死になる系統が、6つ見つかった。そのうち5系統については、サ ザン法によりpolε遺伝子のプロモーター領域周辺にDNAのrearrangementが見られ、更に その5系統全てにおいて、P因子の挿入を持つ染色体のホモ接合体で、複眼、羽、腹部表皮 に異常が見られた。現在、これら5系統について更なる解析を行なっている。 P-82 細胞の神経誘導能獲得に関与するショウジョウバエの遺伝子 edl *山田 琢磨1、岡部 正隆1、三田和英2、広海 健1 1国立遺伝研・発生遺伝 2放医研・ゲノム A novel Drosophila gene, edl, regulates neural inducing ability T. Yamada1, M. Okabe1, K. Mita2 and Y. Hiromi1 1National Institute of Genetics, 2National Institute of Radiological Sciences シュペーマンによる古典的な移植実験以来、誘導は発生生物学の興味の中心の一つであ る。最近誘導現象を担う分子の多くが進化的に保存されていることがわかってきた。しか し、1) 細胞はいかに誘導能を獲得するのか、2) その細胞が自ら産生したリガンドにい かに反応するのかはほとんどわかっていない。我々はショウジョウバエ新規遺伝子edl の 解析結果がこれらの疑問を解く鍵を与えることを見い出したので報告する。 Ras/MAPK情報伝達系のターゲットである転写因子Pointedはこれまですべての光受容細 胞の神経分化に必須であると思われていたが我々は最初に分化するR8細胞には必須でない 事、さらにPointed が神経誘導能獲得に関与するrhomboidの発現を阻害する機能がある事 を見い出した。Edlはrhomboid発現細胞(R8/2/5) に特異的に発現しており、しかもPointed の産物の一つであるPointed-P2との直接相互作用によりその転写活性能力を特異的に阻 害するので、Edlの生物学的機能はPointedを抑制して神経誘導能を促進することにあると 考えられる。一方、R8細胞の神経分化の維持のためには自身の放出したリガンド分子Spitz がEGF receptorを介してRasを活性化することを必要とするがその下流はPointedを介し ない未知の経路によると考えられる。 P-83 ショウジョウバエ新規rasファミリー遺伝子Rap2-likeの分子生物学的解析 宮田直政*1、大迫隆史1、相垣敏郎1,2 1:都立大・院理・生物科学、2:科技団・さきがけ Molecular analysis of Rap2-like, a novel gene belonging to ras family in Drosophila melanogaster Naomasa Miyata*1, Takashi Osako1, Toshiro Aigaki1,21:Department of Biological Scences, TMU, 2:PRESTO, Japan Science and Technology Corporation 私達は、異所発現による表現型を指標とした遺伝子探索のための新しいP因子ベクター( GSベクター)を開発した。GSベクターは両末端に転写活性因子GAL4の標的配列UASとプロモ ーターを外向きに持ち、GAL4存在下でベクターに隣接するDNAの強制転写が起こる。595の GSベクター挿入系統をsev-GAL4系統と交配させ、そのF1がrough eyeの表現型を示した120 のGS系統のうち56系統について強制転写産物の部分配列を決定した。その中で、GS2069系 統で強制転写されたRNAの塩基配列がrasファミリー低分子量Gタンパク質に属するヒトrap2 遺伝子と高い類似性を示し、この新規遺伝子をRap2-like(Rap2l)と名付けた。RACE法 により野生型Rap2l cDNAの全塩基配列を決定し、この遺伝子が存在する60B領域のゲノム 配列との比較から、この遺伝子は4つのエクソンから成ることが判明した。Rap2lとヒト rap2との類似性は塩基配列で65.2%、アミノ酸レベルで68.9%であり、低分子量Gタンパク 質特有のコンセンサス配列やエフェクター領域は完全に保存されていた。P因子の再転位 による機能喪失型突然変異体は半致死を示した。発現レベルは、胚期ではほぼ全般的であ るが、幼虫期は中枢神経系では低く、成虫原基で高いことから、Rap2lの発現は細胞増殖 と密接な関連にあることが示唆された。 P-84 シナプスの可塑性、学習に寄与するショウジョウバエlinotte遺伝子 齊藤 実*1、Tim Tully2 1東京都神経研・病態神経生理、2コールドスプリングハーバー研究所 linotte regulates synaptic plasticity and olfactory associative learning concomitant with rutabaga Minoru Saitoe1, Tim Tully2 1Depertment of Neurobiology, Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience, 2Cold Spring Harbor Laboratory ショウジョウバエは学習・記憶の分子機構を行動レベル、シナプスレベルで解析できる有 用なモデル動物である。我々は匂いによる条件付け学習記憶課題による行動解析と形態 学・電気生理学的手法を用いたシナプスレベルでの解析を相補的に組み合わせることで学 習・記憶関連遺伝子を同定し、その機能をシナプス、行動レベルで明らかにすることを目 標としている。今回報告するショウジョウバエlinotte (lio)変異体は学習・記憶行動の異 常から単離され、記憶の保持は正常であるが学習の獲得が特異的に阻害されている。三齢 幼虫の神経筋シナプスで電気生理学的解析を行ったところ、lio変異体では後テタヌス増 強(PTP)といったシナプスの可塑性に異常があることが分かった。また免疫蛍光染色によ りlio遺伝子産物は多くの学習・記憶関連遺伝子産物とは異なり後シナプス部位に多く発現 していることが認められた。lio変異体ではcAMP誘導体により部分的にPTPが回復すること からlio遺伝子はcAMP情報伝達系を介してシナプスの可塑性に寄与していることが伺える。 そこでcAMP情報伝達系に異常をもつ既知の学習・記憶変異体rutabaga (rut)やrut; lio二 重変異体で電気生理学的、行動学的解析を行なったところ、lio遺伝子がrut遺伝子とは異 なる情報伝達系を介して協同的にシナプスの可塑性、学習を調節している可能性を見出し た。 P-85 cAMPによるシナプス可塑性の遺伝解析 吉原基二郎*、城所良明 群馬大学医学部行動医学研究施設 Genetic dissection of cAMP dependent synaptic plasticity MOTOJIRO YOSHIHARA & YOSHIAKI KIDOKORO Inst. for Behavioral Sciences, Gunma Univ. School of Medicine シナプスの可塑的な変化は記憶の素過程であると考えられている。我々は、ショウジョウ バエ胚神経筋シナプスをモデル系として、cAMPを介したシナプス可塑性に注目して研究し ている。cAMPは、シナプス前終末において伝達物質の放出を調節するsecondmessengerと して良く知られているが、その分子機構に関してはよく解っていない。我々は既に、シナ プス小胞タンパク質である神経型シナプトブレビン(n-syb)突然変異体の微小シナプス 電流を解析し、外液中にCa2+が存在しない場合でも野生型ではcAMPが伝達物質放出を促進 するが、n-syb null突然変異体ではこの効果がみられないことを明らかにした(J. Neurosci., 19: 2432-2441, 1999)。この結果は、野生型においては(1)cAMPは細胞内 Ca2+の増加を介さずに伝達物質の放出を直接促進できること、(2)このcAMPによるシナ プス伝達の調節はn-sybに依存して行われることを意味する。本研究では、n-syb null突 然変異体において、Ca2+存在下ではcAMPが伝達物質放出を促進することを明らかにした。 その結果より、cAMPは、Ca2+の増加を介する効果とCa2+の増加を介さない効果の両方をひ き起こして伝達物質の放出を促進していることがわかった。さらに、両効果の上流に位置 するprotein kinase Aを欠損した突然変異体DC0においては、この両方の効果ともに見ら れなかった。 P-86 翅縁形成に関与する遺伝子 hiiragi の機能解析 長曽秀幸*1、村田武英1、岡野栄之2、横山和尚1 1:理研・筑波セ、2:阪大・医・神経機能解剖学、科技団(CREST) Function of hiiragi druing wing margin formation Hideyuki Nagaso ,Tsukuba Life Science Center,The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN) P 因子の挿入によって誘引されたショウジョウバエ変異体 hiiragi (hrg)は成虫の翅が 欠ける表現型を指標として単離された。これまでの研究によって、 hrg 変異体における 翅原基の翅縁領域でのvestigial (vg), cut, wingless (wg)など発現が変化すること、ま た、hrg変異体とNotch, Serrate 変異体との掛け合わせ実験によって、Notch-Serrateシ グナル伝達系に関与することが示されている。さらに、hrgの原因遺伝子はmRNAにpolyAを 付加するPoly A polymerase (PAP)であることが明らかになった。PAPはmRNAにpolyAを付 加することによりmRNAの安定性を制御すると考えられているが、その詳細は明らかになっ ていない。そこで、hrgの翅縁形成における役割を解析するためにUAS-Gal4 システムによ って、hrg 遺伝子を異所的に過剰発現させ、その効果を検討した。dpp-Gal4でhrgをdpp 発現領域で過剰発現させた場合、成虫の翅におけるL3、L4 の翅脈の間の細胞の欠失や小 楯板の縮小などの表現型が確認された。これらの欠損の原因は細胞増殖の阻害または細胞 死の誘導によるものではないかと考え、現在、hiiragiを過剰発現した成虫原基ならびに hiiragi 変異体での成虫原基における細胞増殖と細胞死の変化を検討中である。 P-87 DREF結合因子として分離したショウジョウバエMLFホモログの機能解析 *大野勝人1,2、高橋康彦3、広瀬富美子1、井上喜博1、田口修4、西田育巧2、 松影昭夫1、山口政光 1愛知がんセ・研・生物1、二病4、名大・院理・生命2、ハーバード大3 Analysis of the Drosophila MLF homolog isolated as a factor interacting with DREF *Katsuhito OHNO1,2, Yasuhiko TAKAHASHI3, Fumiko HIROSE1, Yoshihiro INOUE1, Osamu TAGUCHI4, Yasuyoshi NISHIDA2, Akio MATSUKAGE1, Masamitsu YAMAGUCHI 1Labs. of 1Cell Biol. and 4Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 2Div.Biol. Sci., Nagoya Univ. Grad. Sch. Sci., 3Dept. of Mol. Cell. Biol., Harvard. Univ. ショウジョウバエの転写調節因子DREFは、DNA複製関連遺伝子や増殖関連遺伝子の発現 を共通に制御する。このDREFと相互作用する因子の同定を目的としてTwo-hybridスクリー ニングを行った結果、ヒトの急性白血病において染色体転座の見られた遺伝子がコードす るタンパク質、myelodysplasia/myeloid leukemia factor1(hMLF1)及びhMLF2と高い相同 性を示すクローンを得た。ショウジョウバエMLF(dMLF)のmRNAは母性的に卵に蓄積されて おり、受精後8時間までの胚、蛹期と成虫(特に雄で高発現)で比較的高く発現していた。 このmRNAの増減は、蛹期や雄で高発現していること以外は比較的DREFのそれとよく一致し ていた。さらに、組換え体dMLFとin vitro転写・翻訳系で産生したDREFを用いたプルダウ ンアッセイにより、両者がin vitroにおいて結合しうることを明らかにした。現在、in vivoにおけるDREFとdMLFとの相互作用を明らかにするために、DREFを複眼原基特異的に強 制発現させた時に見られるrough eye phenotypeをdMLFが促進あるいは抑制するかを検討 している。また、dMLF遺伝子が第3染色体の52D領域に存在することを明らかにし、この領 域のP因子挿入変異および欠失変異系統を入手してdMLF変異体の単離を進めている。 P-88 ショウジョウバエのヘモサイチン遺伝子 *後藤彰1、熊谷剛1、森仁志1、森肇2、北川泰雄1,3 (名大院・生命農・生化学制御1京都工繊大・繊維・応用生物2、名大・生物分 子応答研究セ3) Drosophila Hemocytin Gene A. Goto1, T. Kumagai1, H. Mori1, H. Mori2 and Y. Kitagawa1,3 ( Grad. Sch.Bioagri. Sci., Nagoya Univ.1, Dept. Appl. Biol., Kyoto Inst. Tech.2, Nagoya Univ. BioSci. Center3) ヘモサイチンはカイコで発見された280 kDaのレクチンであり体液細胞が特異的に産生 する。この遺伝子の発現はカイコ幼虫の細菌感染および蛹化直前に上昇する。また、その ドメイン構造は哺乳類の止血・血栓因子である von Willebrand factor (vWF)および凝血 第VIII因子に見られるモチーフの繰り返しからなることから、異物侵入に対する防御、及 び血栓形成に機能していると考えられている。 我々はショウジョウバエの体液細胞株であるKc167が大量に合成・分泌する約300kDaの ペプチドがカイコ・ヘモサイチンの相同体であることを明らかにした。このペプチドの部 分アミノ酸配列を決定し、カイコ・ヘモサイチンの対応配列と相同性を持つcDNA断片を得 た。これらのcDNA断片をプローブとして第3令幼虫期のライブラリーからスクリーニング を行い、全長約10kbのmRNAをカバーするcDNAクローンを単離し塩基配列を決定した。ノー ザン解析では、この遺伝子が胚発生後期から発現し、蛹化直前の第3令幼虫期には最大と なることが明らかとなった。。この遺伝子の機能を解明するために、唾液染色体上での遺 伝子座を決定し、欠損株およびPエレメント挿入株の解析を行い、変異体作製を試みてい る。 P-89 全身麻酔薬への感受性に関係する遺伝子群の解析 蒲生寿美子1*, 田中良晴1, 亦勝和1、石井秀紀1, 冨田純也1, 佐子山豈彦2 (1: 大阪府大・総合, 2: 阪大・医・遺伝) Genes control sensitivity to volatile anesthetics S.Gamo, Y.Tanaka, H.Ishii, J.Tomida, Y.Sakoyama 世界に先駆けて華岡清洲が通仙散による全身麻酔下で乳癌の手術を行い(1804年),その 後W.T.G.Mortonが最初にエーテルを臨床使用してから150年になる。1900年初頭Overton & Meyerが麻酔活性と麻酔薬のオリーブ油への溶解度との間に強い相関があることを示して 以降、化学構造的には多様である全身麻酔薬の一元的な作用機構が模索されてきた。近年、 遺伝学と分子生物学的手法により、全身麻酔薬の作用部位となる蛋白質分子の解析が可能 となってきた。我々はモデル動物としDrosophila melanogasterを用い、エーテルのター ゲットとなる蛋白質をコードしている遺伝子をトランスポゾンタギングにより分離してい る。このために、麻酔され始める濃度(半数麻酔濃,EC50)が有意に高い(抵抗性)また は低い(感受性)突然変異をスクリーニングした。以下はエーテル麻酔に関係する遺伝子 である。1.para locus (sodium channel alpha-subunit) この座のallelesは元来高温麻痺を示すが、高温と麻酔薬の作用部位が異なる可能性を 調べている。 2.ethas311/crc1 (Drosophila calreticulin) このalleleの第1エクソンへのP因子挿入によりmRNA(1.4-kb)と蛋白質(60kD)量が 低下している。3.ethas307 (Drosophila chaperonin epsilon-subunit等) P因子挿入部近傍のゲノムに4遺伝子が存在する。その内2遺伝子が構造的にP因子 挿入の影響を受ける。1つはchaperoninで異なる8subunitが2層を形成し、tuburinや actinの折り畳みをシャペロンしている。他方は新しい遺伝子である。 P-90 ショウジョウバエの新規プロテアーゼインヒビターファミリーの遺伝子解析 横山裕昭*1、新美友章2、Konrad Beck2、北川泰雄1、2 1名大院生命農学・生化学制御、2名大・生物分子応答研究セ Gene analysis of new protease inhibitor family in Drosophila Hiroaki Yokoyama Graduate School of Bioagricultural Sciences,Nagoya University 1.目的 プロテアーゼインヒビターは動・植物界に広く存在し、プロテアーゼ活性を調節 することにより、多様な生体機能の制御を担っていると考えられている。しかしながら、 遺伝学的解析が利用できるショウジョウバエでは、プロテアーゼインヒビター遺伝子が単 離されておらず、分子レベルでの解析は進んでいない。我々はショウジョウバエcDNAライ ブラリーから、偶然に単離した新規プロテアーゼインヒビター遺伝子Kaz1とRT-PCRにより 単離したその相同体の解析を行っている。 2.方法と結果 Kaz1には選択的スプライシングによって、6種類のmRNAを作る配列が存在 し、そこから5種類のプロテアーゼインヒビター(A〜E型)が生成され、それらはミトコ ンドリア(A型)、細胞質型(B、D型)に局在するものと、細胞外(C、E型)へ分泌する ものとに分けられた。現在、Kaz1の標的プロテアーゼの同定と変異体作製を試みている。 また、データベースの検索からKaz1のKazal領域と相同性を持つ配列を3種類見つけ、ショ ウジョウバエの成虫のmRNAを用いてRT-PCRにより単離した。これらは、いずれも第二染色 体の33A8にマップされており、Kaz1の相同体であることから、それぞれKaz2、Kaz3、Kaz4 と名付けた。現在、in situハイブリダイゼーションによる発現場所の特定と、その機能 の解析を進めている。 P-91 Argosシグナル伝達経路に関与する新規な遺伝子の同定と機能解析 田口明子*1、澤本和延1, 2、宮尾幸代1, 2、岡野栄之1, 2 (1. 阪大・医・神経機能解剖学、2.CREST) A Genetic Screen to Identify Novel Genes Involved in the Argos Signaling Pathway. A. Taguchi *1, K. Sawamoto 1, 2 , S. Miyao 1, 2 and H. Okano 1, 2 (1.Division of Neuroanatomy (D12),Department of Neuroscience,Biomedical Research Center, Osaka University Graduate School of Medicine 2.CREST, Japan Science and Technology Corporation) ショウジョウバエの複眼形成における細胞の分化と生存は、Ras/MAPKカスケードを介した シグナル伝達に依存している。ArgosはEGFモチーフを有する分泌性の蛋白質で、EGF受容 体の活性化とその下流のRas/MAPKシグナルを負に制御し、複眼を構成する細胞の分化と生 存を制御する。Argosを複眼特異的に過剰発現するトランスジェニックフライGMR-argosで は、Ras/MAPKシグナルの抑制とカスパーゼの活性化を介した過剰な細胞死が誘導される。 そこで、これらの現象に関与する新規な分子を同定し、そのメカニズムを明らかにするこ とを目的として、GMR-argosの表現型に影響を与える変異体のスクリーニングを行った。 Df kit を用いたスクリーニングによって、echinoid を含む複数の変異体を同定した。ま た、EMSを用いた約140,000のスクリーニングでは、エンハンサー10系統(Star 2系統を含 む)、サプレッサー20系統(sprouty 2系統を含む)を分離した。この中で第三染色体 73A-85Dの領域にマップされたサプレッサーSF3-3はGMR-rpr, GMR-hid及びDf(3L)H99 に対 して強い遺伝学的相互作用を示した。今回は得られた変異体についての詳細な解析結果に ついてSF3-3を中心に報告したい。 P-92 Transcriptional Regulation of Drosophila TATA-Box Binding Protein (TBP) Gene by DRE/DREF system and Homeodomain Protein Zen Tae-Yeong Choi1*, Kwang-Hee Baek2, Jae-Seong Yoon2, Kyu-Hyung Han3, Akio Matsukage4 and Mi-Ae Yoo1 1Department of Molecular Biology, Pusan National University, Pusan, Korea; 2Department and Institute of Genetic Engineering, Kyung Hee University, Suwon, Korea; 3Department of Genetic Engineering, Hallym University, Chunchon, Korea; 4Laboratory of Cell Biology, Aichi Cancer Center Research Institute, Nagoya, Japan The TATA box binding protein (TBP) is an essential component of the RNA polymerase transcription apparatus in eukaryotic cells. DNA replication-related element (DRE)/DRE-binding factor (DREF) system regulates expression of cell proliferation-related genes including Drosophila PCNA, DNA polymerase cyclin A, raf and E2F genes. Here, we found three DRE-like sequences in the promoter region of Drosophila TBP gene and examined these sites for the binding of DREF. Gel mobility shift assays using Drosophila Kc cell nuclear extracts and GST-DREF fusion proteins with or without competitor DNA fragments and anti-DREF antibody assay showed that a factor is able to bind all the three sites and the factor is surely DREF. Transient expression assays with constructs mutated in the DRE sites revealed the reduction of promoter activity. This means that the DRE sites are functional and important in the expression of Drosophila TBP gene. In the promoter region, there also exist several putative homeodomain protein binding sites. Thus we tested whether the expression of TBP gene is regulated by homeodomain proteins and found the reduction of promoter activity by Zen. Our results showed that at least two factors, DREF and homeodomain protein Zen are related to regulate the expression of Drosophila TBP gene. This is the first report for the transcriptional regulator(s) of TBP gene. P-93 カイコ休眠ホルモン-フェロモン生合成活性化神経ペプチド遺伝子の特異神経 分泌細胞発現制御領域の解析 石田裕幸*、新美輝幸、山下興亜 名大院・生命農 Analysis of neurosecretory cell specific-regulatory region of Bombyx mori diapause hormone-pheromone biosynthesis activating neuropeptide gene by transgenic fly Yuko ISHIDA, Teruyuki Niimi, Okitsugu YAMASHITA (Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University) 休眠ホルモン(DH)は、カイコの胚休眠を誘導する。このホルモンは、生物活性中心であ るC-末端アミノ酸構造および中枢神経系における神経分泌細胞での発現局在性が昆虫種で 広く保存されているFXPRL-NH2ペプチド族に属している。 DHの遺伝子発現調節機構を明らかにするために、DHをコードするカイコDH-フェロモン 生合成活性化神経ペプチド(PBAN)遺伝子の上流域(7 kb)-lacZ検索遺伝子をショウジョウ バエに形質転換し、レポーター遺伝子の発現局在性を調査した。また、抗FXPRL NH2神経 ペプチド抗体で2重染色し、レポーター遺伝子の発現する細胞の特性化をした。その結果、 幼虫期の腹部神経分節の3対の細胞体でレポーター遺伝子が発現し、これらの細胞が FXPRL-NH2神経ペプチド神経分泌細胞であることが示された。すなわち、カイコとショウ ジョウバエでFXPRL-NH2神経ペプチド遺伝子発現調節機構が保存されていることが明らか にされた。 さらに、この神経分泌細胞特異的遺伝子発現制御領域を狭めるためにカイコDH-PBAN遺 伝子の上流域7 kbの5'側と3'側から1 kbずつデリーションしたコンストラクトを作製し、 形質転換し、レポーター遺伝子の発現を調査した。その結果、カイコDH-PBAN遺伝子の上 流域-5 kbから-4 kbの間に発現制御領域が存在することが明らかにされた。 P-94 ニジュウヤホシテントウの翅形成・斑紋パターン形成に関与する候補遺伝子の検索 三輪雅代*、山下興亜、新美輝幸 名大・農 Survey of the candidate genes responsible for wing morphogenesis and color pattern formation in the lady beetle, Epilachna vigintioctopunctata Masayo MIWA, Okitsugu YAMASHITA, Teruyuki NIIMI (School of Agricultural Sciences, Nagoya University) 多様性に富む昆虫の翅の斑紋パターンの分子機構は未だ詳細に解明されていない。本研 究では鞘翅目昆虫の中で明瞭な斑紋パターンを持つニジュウヤホシテントウに注目した。 まず翅形成および翅の斑紋パターン形成の分子機構を探るため、ショウジョウバエの翅形 成に関わる遺伝子として apterous、aristaless、cubitus interruptus、decapentaplegic、 Distal-less、engrailed、escargot、hedgehog、Ultrabithorax、winglessをニジュウヤ ホシテントウからクローニングすることを試みた。 ニジュウヤホシテントウ前蛹の翅原基より抽出したRNAを用い、RT-PCR法によってそれ ぞれの遺伝子のクローニングを行った。次にこれらの遺伝子の塩基配列を決定し、そのア ミノ酸配列を推定したところ、いずれの遺伝子でもショウジョウバエのアミノ酸配列と高 い相同性が認められた。 さらに、定量的RT-PCR法により幼虫-蛹変態期の翅原基における上記遺伝子の発現を 前翅・後翅それぞれについて解析したところ、各々の遺伝子において特徴的な発現様式を 示すことが明らかになった。 現在、in situ hybridization法を用いて上記遺伝子のニジュウヤホシテントウ翅原基 におけるより詳細な時間的・空間的な発現様式を解析中である。 P-95 ミツバチ脳のキノコ体において領野特異的に発現する遺伝子の解析 竹内秀明*、上川内あづさ、大原摩耶、澤田美由紀、名取俊二、関水和久、 久保健雄 東大・院薬・発生細胞化学 Identification and characterization of genes expressed specifically in a subset of Kenyon cells of the mushroom bodies of the honeybee brain (Apis mellifera L). Hideaki Takeuchi *, Azusa Kamikouchi, Maya Ohara, Miyuki Sawata, Syunji Natori, Kazuhisa Sekimizu and Takeo Kubo. Graduate school of pharmaceuticalsciences, University of Tokyo. ミツバチの脳では、感覚統合や記憶の中枢であるキノコ体が他の昆虫に比べて顕著に発 達している。ミツバチのキノコ体を構成する介在神経細胞(ケニヨン細胞)は、細胞体の 大きさから大型と小型の2種類に分類される。私達はミツバチの高次行動に関わる遺伝子 の候補を同定する目的で、視葉と比較してキノコ体特異的に発現する遺伝子を Differential Display法により検索した。 その結果、ケニヨン細胞の中でも大型に特異 的に発現するM5遺伝子と小型に特異的に発現するKs遺伝子の PCR 断片を単離した。さら に、M5遺伝子の全長の配列を決定する目的でcDNAクローニングを行った結果、転写産物の サイズ(8.6kb)をほぼカバーする10kbpのcDNAの配列を決定した。決定した配列には、典 型的なmRNAに見られるような、1stMetに続く長いORFが含まれないことから、M5RNAは蛋白 に翻訳されず、RNAとして機能する可能性が考えられる。Ks遺伝子についても同様の実験 を行った結果、このcDNA(18kbp)も長いORFを含まず、RNAとして機能することが示唆さ れた。 現在までにあるサブタイプの神経細胞特異的に巨大な RNAが翻訳されずに存在す る例はなく、M5 RNAや Ks RNAは神経系で機能する新規な分子種である可能性が考えられる。 P-96 ミツバチのキノコ体におけるカルシウム情報伝達系に関わる蛋白群の選択的な 遺伝子発現 上川内あづさ*、竹内秀明、大原摩耶、澤田美由紀、名取俊二、関水和久、 久保健雄 東大・院薬・発生細胞化学 Concentrated expression of the genes for proteins involved in calcium signaling in the mushroom bodies of the brain of the honeybee Apis mellifera L. Azusa Kamikouchi *, Hideaki Takeuchi, Maya Ohara, Miyuki Sawata, Syunji Natori, Kazuhisa Sekimizu and Takeo Kubo. Graduate school of pharmaceuticalsciences, University of Tokyo. 社会性昆虫であるミツバチは、コロニーの維持のためにコロニーメンバー間で多様な情 報交換を行う。昆虫の脳のキノコ体は感覚統合や記憶の中枢と考えられているが、ミツバ チではこのキノコ体が著しく発達しており、その機能の大幅な発達が多様な感覚情報の処 理や統合を可能にしたと考えられる。 我々は、ミツバチのキノコ体の機能に関与する遺 伝子を同定する目的で、Differential display法により働き蜂の脳内でキノコ体に選択的 に発現する遺伝子を検索した結果、イノシトール3リン酸(IP3)受容体の遺伝子がキノ コ体で選択的に発現することを見出した。さらに我々は、Ca2+/カルモジュリン依存性プ ロテインキナーゼ IIやプロテインキナーゼ Cの遺伝子についてもミツバチホモログを単 離し、脳内での発現を解析した結果、IP3受容体の遺伝子と同様にキノコ体に選択的に発 現することを見出した。幾つかの動物種において、こうした Ca2+情報伝達系に関与する 蛋白は、記憶の成立やシナプスの可塑性に重要であることが指摘されている。ショウジョ ウバエではこれらの遺伝子はともに脳皮質全体に発現すると報告されており、このことか ら、ミツバチにおいてはキノコ体を構成するニューロンにおいて Ca2+情報伝達系の機能 が全体的に亢進し、キノコ体の神経回路の可塑性が向上している可能性が指摘できる。