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第1日目(8月8日)
16:30―18:00 奇数番号
19:00―20:30 偶数番号
第2日目(8月9日)
13:00ー14:00 A
14:00ー15:00 B

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P-1A ショウジョウバエにおけるアミラーゼ遺伝子重複後の同義置換に対する正の淘汰
Ze Zhang 1、猪股伸幸 2,3、大庭朋洋 *3、Marie-Louise Cariou 4、山崎常行 2,3
1: SW Agr Univ., China、2:九大院、理、3:九大院、医、4:CNRS, France
P-1B ショウジョウバエのアルコール脱水素酵素遺伝子におけるDNA多型の解析
後藤大輝*1、猪股伸幸1,2、山崎常行1,2
1: 九大院、医、2: 九大院、理
P-2A トラフショウジョウバエにおける重複アミラーゼ遺伝子の種内変異
猪股伸幸*、山崎常行
九大院、理
P-2B ショウジョウバエのブルーム変異株とロスモンド-トムソン変異株の解析
草野好司*, 1,2、Dena Johnson-Schlitz 2、Mark E. Berres, 尾川博昭 1、William R. Engels 2
1: 九工大・院・生命体 2: Dept. Genetics, Univ. Wisconsin-Madison
P-3A 内部共生微生物スピロプラズマによる雄殺しに関与するショウジョウバエ宿主遺伝子の探索
安佛尚志*,深津武馬
産総研・生物遺伝子資源
P-3B セイシェルショウジョウバエの特異な食性に関わる遺伝子の同定
松尾隆嗣
都立大・院・理
P-4A キイロショウジョウバエの日本野外集団におけるPおよびhobo因子の分布
菊農桂子*1 田中良晴1 伊藤雅信2 蒲生寿美子1
1:大阪府立大・総合、2:京工繊大・応用生物
P-4B カイコSex-lethal の性特異的発現およびショウジョウバエにおける性特異的効果
新美輝幸*, 大島宏之, 山下興亜, 柳沼利信
名大院・生命農
P-5A キイロショウジョウバエ野外集団のP因子とP-Mシステム
Absへ伊藤雅信*1, 福井智一1, Boussy, I.A.2
1:京工繊大・応用生物、2:Loyola Univ. Chicago, Biology
P-5B ショウジョウバエの遺伝学的解析における RFP の有用性の検討
秋元愛*1,池谷智淳 2,林茂生 1,3,4
1:理研・発生再生センター,2:チューリッヒ大学,3:遺伝研・無脊椎,4:総研大
P-6A ショウジョウバエ染色体領域61D1-2から61F1-2の遺伝学的解析
斎藤麻衣*1,3 粟崎健2,4 浜千尋1,3
1: 理研 発生・再生センター・神経回路発生 2: 基生研・細胞増殖 3: 戦略、科技団 4: さきがけ、科技団
P-6B ショウジョウバエ複眼発生におけるFGFシグナルの機能解析
岩波 将輝*1,2、広海 健1
1: 国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門、2: 東京慈恵会医科大学大学院 微生物第一
P-7A Developmental mechanisms underlying evolutionary diversities in the eggshell shape of Drosophila species.
中村征史、松野健治
東京理科大学大学院・基礎工学研究科・生物工学専攻
P-7B ショウジョウバエ自然免疫系の解析
James Y.T. Ooi、八木克将*、 Y. Tony Ip
P-8A 翅原基におけるdally遺伝子の発現調節機構の解析
藤瀬桃子*、泉 進、中藤博志
都立大・院理・生物
P-8B Notch シグナルと engrailed の組合わせによる後腸のパターン形成
高島茂雄1、吉森華香1、山崎直之1、松野健治2、村上柳太郎*1
1:山口大・自然情報、2:東京理科大・生物工学
P-9A キノコ体形成過程におけるeyeless遺伝子の転写制御領域解析
安達在嗣*1、河内浩1、Bernd Hauck2, Uwe Walldorf 2、古久保-徳永克男1
1:筑波大学・生物、先端 2:Institute of Genetics, University of Hohenheim,Stuttgart, Germany
P-9B 光受容細胞分化に関与する新規遺伝子の同定と解析
廣田ゆき1、岡野栄之2
1:阪大・医、2:慶應大・生理
P-10A gene search system を用いた器官特異性決定に関わる遺伝子の網羅的探索
Absへ勝山朋紀*1,辰巳正信1,大島吉輝1,相垣敏郎2,倉田祥一朗1
1:東北大・院・薬,2:都立大・院・理
P-10B ショウジョウバエ感覚器官の共通起源
丹羽尚*1、広海健2、岡部正隆2
1:遺伝研・無脊椎、2:遺伝研・発生遺伝
P-11A ショウジョウバエ翅パターン形成におけるモルフォゲン勾配を調節するネガティブフィードバック機構
常泉和秀*、多羽田哲也
東大・分生研
P-11B ENZYMATIC ACTIVITY OF POLY(A) POLYMERASE IS REQUIRED TO RESCUE THE MUTANT PHENOTYPE OF HIIRAGI
Takehide Murata*1, Hideyuki Nagaso1, 2, and Kazunari K. Yokoyama1
(1, BioResource Center, RIKEN Tsukuba Inst., Koyadai, Tsukuba, Ibaraki 305-0074, Japan, 2, Department of biology and Molecular biology, One Gustae L. Levery Place -box 1020, New York, NY 10029.)
P-12A Deltex activated the downstream genes of Notch signaling in a Suppressor of Hairless-dependent manner.
堀一也*1、伊藤美紀子2、不破尚志1、岡野栄之3、松野健治1
1:東京理科大・基礎工 2:徳島大・医学 3:慶応大・医学
P-12B ショウジョウバエの腹部末端神経節におけるNBのオス特異的分裂はNBとニューロンの性に依存している
宮崎光輝*、辻村秀信
東京農工大学 発生生物学研究室
P-13A ショウジョウバエ抹消神経系におけるNotch signalingを介したgcm遺伝子の発現制御
梅園良彦*1、広海健2、堀田凱樹
国立遺伝学研究所 1:無脊椎、2:発生遺伝
P-13B Notch修飾における新規UDP-sugar transporterの役割
後藤聡1,2、谷口美佐子*1、佐渡由希子1、村岡正敏3、豊田英尚4、川喜田正夫3、林茂生1,2,5、
遺伝研・無脊椎1、総研大2、臨床研3、千葉大・薬4、理研・発生再生セ5
P-14A MEKKホモログD-MEKK1がDadと協調的にMad signalingを調節する可能性
館野実*1、井上英樹1、常泉和秀2、多羽田哲也2、西田育巧1、入江賢児3、松本邦弘1
1:名大・理、2:東大・分子細胞生物学研、3:阪大・医
P-14B ショウジョウバエMAPKKK, D-MEKK1は、p38 MAPKの活性化を介してストレス応答に関与する
井上英樹*1、館野実1、鎌田このみ2、高江州義一1、安達卓3、辻順1、入江賢児1、西田育巧1、松本邦弘1
1 : 名大院・理・生命理学、CREST・科技団、2 : 北大・遺制研、3 : 神戸大・発達科学
P-15A Armadilloと直接相互作用する新規Drosophila癌抑制遺伝子産物D6の解析
Absへ西田歩*1, 濱田文彦2, 友安慶典3, 秋山徹1
1:東大・分生研・分子情報、2: MRC Lab. Mol. Biol., Cambridge, U.K.、3:Div.Bio., Kansas Univ.
P-15B Short rangeのHedgehogはPXb41の発現を抑制することにより肢の中央の領域の運命決定をして いる
稲木美紀子*1、織原美奈子2、小嶋徹也1、西郷薫1
1:東大・理・生化、2:理研・CDP
P-16A Ebi/TBL1はEGFレセプターとNotchシグナル間クロストークに関与している
津田玲生*、林永美、林茂生
理研、発生・再生センター
P-16B ショウジョウバエ脳におけるキノコ体神経芽細胞の分裂制御:核内レセプターtaillessの機能的重要性
来栖光彦*1、岡部正隆2、古久保-徳永克男1
1:筑波大・生物科学 2:遺伝研・個体発生
P-17A ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂異常突然変異のスクリーニング(X染色体)
布施直之*1、久田香奈子12、長沼絵理子12、張川1、松崎文雄123
1:東北大学・加齢研、2:CREST, JST、3:理研・発生再生センター
P-17B ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂異常突然変異のスクリーニング(第二染色体)
泉裕士*1,2、古屋亜佐子1,2、太田奈緒1,2、松崎文雄1,2,3
1 : 東北大・加齢研・神経機能情報、2 : CREST, JST、3 : 理研・発生再生センター
P-18A ショウジョウバエの発育に関わる新規遺伝子gccの解析
古川義己*1、杉山伸1、森藤曉2、津田玲生3、西田育巧1
1: 名大・院理・生命、2: 奈良先端大、3: 理研発生再生研
P-18B ショウジョウバエの発育を制御するgccに類似した出芽酵母遺伝子の解析
壱岐一也*、杉山伸、西田育巧
名大・院理・生命
P-19A ショウジョウバエの減数分裂組換え遺伝子recはMCM関連タンパクをコードしている
松林宏*、山本雅敏
京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター
P-19B 雌不妊突然変異では交尾コストが大きい
上山盛夫*、布山喜章
都立大・院理・生物科学
P-20A 雄不妊突然変異体ms(3)T281の発生遺伝学的解析
Absへ大迫隆史*・山本雅敏
京都工芸繊維大学・ショウジョウバエ遺伝資源センター
P-20B ショウジョウバエの微小管結合タンパクOrbitによる細胞分裂、減数分裂および細胞分化の制御
井上喜博*1、鈴木隆夫1、E. Mathe2、山口政光3、山本雅敏1
1:京都工繊大・ショウジョウバエセンター、2:ケンブリッジ大・遺伝、3:京都工繊大・応用生物
P-21A 精子競争におけるY染色体の役割
鈴木美穂、布山喜章
都立大・院理・生物科学
P-21B ショウジョバエ変態初期に腹髄の神経細胞で見られるプログラム細胞死の分子機構
辻村秀信*
東京農工大学発生生物学
P-22A ショウジョウバエdMLF遺伝子の関与する新規アポトーシス制御機構の解析
大野勝人*1、加藤規子3、加藤順也3、田中利明3、田口修2、山口政光1
愛知がんセ・研・1発がん、2分子病態、3奈良先端・バイオ
P-22B ショウジョウバエの視葉神経細胞は、網膜からの神経結合が断たれると細胞死する
鮎川理恵*、辻村秀信
東京農工大学・発生生物学研究室
P-23A 異所発現トラップ法による神経細胞死実行遺伝子の同定
嘉糠洋陸*1、倉永英里奈1,2、平等哲男1、井垣達吏1,2、相垣敏郎3、岡野栄之4、三 浦正幸1
1:理研・脳セ・細胞修復、2:阪大・機能形態、3:都立大・理・生物、4:慶應大・医・生理
P-23B ショウジョウバエ異所発現スクリーニングによる新規細胞死制御因子の同定
井垣達吏*1, 2、菅田浩司1, 3、後藤友希1、嘉糠洋陸1、相垣敏郎4、三浦正幸1
1:理研・脳セ・細胞修復、2:阪大・機能形態、3:阪大・染色体、4:都立大・理・生物
P-24A Reaper依存性細胞死を制御する分子の遺伝学的スクリーニング
倉永英里奈*1,2、嘉糠洋陸1、井垣達吏1,2、岡野栄之3、三浦正幸1
理研・脳セ・細胞修復1、阪大・機能形態2、慶応大・医・生理3
P-24B escargot遺伝子産物が成虫原基細胞の増殖と分化に果たす役割
白木岐奈*1 布施直之2 林茂生1
1:遺伝研・無脊椎 2:東北大・加齢研・神経機能情報
P-25A ショウジョウバエMale-Specific Lethal complexの雄X染色体特異的な局在機構
Absへ影山裕二*1、Gabriella MENGUS2、Richard L. KELLEY3、Peter B. BECKER2、Mitzi I. KURODA3
1: 奈良先端大・バイオ、2: Ludwig Maximilian Univ., Germany、3: Baylor Col. Med., USA
P-25B ショウジョウバエの翅成虫原基におけるDREFの機能解析
吉田英樹*1,2、井上喜博3、広瀬富美子1、坂口謙吾2、松影昭夫4、山口政光1
1 : 愛知がんセ研・発がん制御、2 : 東京理科大・理工・応用生物、3 : 京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター、4 : 日本女子大・理学・物質生物
P-26A ショウジョウバエseven-up遺伝子の中枢神経系における機能
金井誠、岡部正隆、広海健
遺伝研、発生遺伝研究部門
P-26B 核内レセプターSeven-upによる転写制御機構の解析
松野元美*1、小瀬博之2、Steve West3、広海健1
1: 国立遺伝研 発生遺伝、2: 徳島大 医学部、3: Princeton Univ. USA
P-27A ショウジョウバエを用いたヒトアンドロゲンレセプターの転写制御機構系の構築
武山健一* 12、山本紋子12、伊藤紗弥1、谷本拓1、多羽田哲也1、加藤茂明12
1:東大・分生研、2:科技団・CREST
P-27B ショウジョウバエ転写制御因子FTZーF1の標的遺伝子EDG84Aの組織特異的発現を決定する因子について
萱嶋泰成*, 広瀬進, 上田均
遺伝研・形質遺伝, 総研大・生命科学
P-28A Extradenticle and Homothorax/Meis1 assist Engrailed to repress target genes required to maintain parasegment boundaries
Masatomo Kobayashi *, Miki Fujioka, Elena N. Tolkunova and James B. Jaynes
DEPENDENT ACTIVATION.
Qing-Xin Liu, Marek Jindra, Hitoshi Ueda, and Susumu Hirose.
P-29A 転写因子DREFとクロマチンリモデリング因子dMi- 2の相互作用
広瀬富美子*、大島信子、吉田英樹、山口政光
愛知県がんセ・研・発がん制御
P-29B Redox Regulation of DNA replication-related element (DRE)-binding factor (DREF) Transcription Factor in vitro
Tae-Yeong Choi1, Fumiko Hirose2, Masamitsu Yamaguchi2 and Mi-Ae Yoo1*
(1: Department of Molecular Biology, Pusan National University, Pusan, Korea 2: Division of Biochemistry, Aichi Cancer Center Research Institute, Nagoya, Japan)
P-30A 母性RNAの局在化と翻訳の時空的制御におけるMe31Bタンパク質複合体の解析
Absへ中村 輝*1,3,羽生賀津子1,3,網蔵令子2,3,小林 悟2,3
1:筑波大・生物科学・遺伝子実験センター,2:岡崎国立共同研究機構・統合バイオ,3:科技団・CREST
P-30B 細胞内寄生細菌Wolbachia感染と新規SAM/SPM motif蛋白、Samuelの遺伝学的、分子生物学的解析
小瀬博之*1,2、鈴木恵美子1、S.West3、松本耕三2、広海健1 1:遺伝研・発生、2:徳島大・医、3:Princeton Univ.
P-31A RPE65関連タンパク質はカロテノイドおよびレチノイドの代謝に関与するタンパク質ファミリーを形成する。
相良 洋 * 、鈴木 えみ子
東大 医科研・分子構造解析
P-31B ショウジョウバエ転写因子FTZ-F1の転写調節機構の解析
阿川泰夫*1, 影山裕二1,3 , 増田祥子1, 広瀬進1,2, 上田均1,2
(1 総研大・生命科学, 2 遺伝研・形質遺伝, 3現、奈良先端
P-32A 節足動物の進化と細胞間結合の進化
小田広樹*1、秋山-小田康子1、月田承一郎1,2
1: 科技術振興事業団・月田細胞軸プロジェクト, 2: 京都大・医
P-32B アクチン細胞骨格系の動態を制御する新規フォスファターゼSlingshot の機能解析
丹羽隆介*1、永田−大橋恭子3、Bruce HAY4、竹市雅俊2、水野健作3、上村匡1
京都大学・1ウイルス研究所、2生命科学研究科、3東北大学・理学研究科、4Caltech, USA
P-33A 背部閉鎖におけるミオシンホスファターゼによる非筋ミオシンIIの制御
水野智亮*1、筒井響子1、天野睦紀2、貝淵弘三2、西田育巧1
1:名大、理、2:名大、医
P-33B ショウジョウバエ気管細胞移動のガイダンス機構
千原崇裕*1、林茂生1, 2, 3
1: 遺伝研・無脊椎、2:総研大・生命科学、3: 理研・発生再生センター
P-34A ショウジョウバエ胚における気管形成の経時的観察
加藤輝*1.2,林茂生1,2
1:国立遺伝学研究所・系統生物研究センター/総合研究大学院大学 2:理化学研究所/発生・再生科学総合研究センター
P-34B In vivo において樹状突起のパターンを調節する遺伝子の探索
山本美暁*2、杉村薫1、丹羽隆介1、碓井理夫1、後藤聡3、谷口美佐子3、林茂生3、上村匡1
京都大学・1ウイルス研究所、2生命科学研究科、3遺伝研
P-35A 神経軸索伸長に関連したショウジョウバエ新規formin homology protein の解析
Absへ田中宏昌*1、高須悦子1、梅宮猛1、相垣敏郎2、能瀬聡直1
1:東大・物理、2:都立大・生物
P-35B ショウジョウバエ軸索誘導に関わる新規セマフォリン分子の強制発現システムを用いた同定と機能解析
高須悦子1、梅宮猛1、鳥居宏在*1、相垣敏郎2、能瀬聡直1
1:東大院・理・物理、2:都立大・院理・生物
P-36A 分泌型ガイダンス分子によるパターニングの基本メカニズムの解析
平本正輝
遺伝研・発生遺伝 さきがけ21
P-36B シナプス後細胞内CaMKII活性化によるシナプス形成過程の調節(I):発生初期過程における役割
風間北斗*、森本高子、能瀬聡直
東京大・理・物理
P-37A シナプス後細胞内CaMKII活性化によるシナプス形成過程の調節(II):標的細胞による逆行性シナプス伝達調節機構
森本高子*、風間北斗、能瀬聡直
東京大・理・物理
P-37B RAB5はシナプス小胞サイズの維持に機能している
志水英之*、河村悟、尾崎浩一
大阪大・院理・生物
P-38A ショウジョウバエ FGFレセプターHeartless はグリア細胞間の相互作用と正常なNeuroglianタンパク質の分布に必要である
滝沢一永*、堀田凱樹、広海健
国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門
P-38B ショウジョウバエ成虫脳神経回路網の形成における細胞系譜の役割
粟崎健*、伊藤啓
基生研・細胞増殖/科技団・さきがけ21
P-39A シナプス形成に関わる後シナプス細胞内情報伝達機構の解析
亀田(新座)麻記子*、能瀬聡直
東大・理・物理
P-39B ショウジョウバエを用いた低次視覚野と高次領域を結ぶ投射神経経路の網羅的解析
大綱英生*1, 2、西田育巧2、伊藤啓1, 3
1:基生研 2:名大院・理 3:科技団さきがけ
P-40A ショウジョウバエを用いた嗅覚系投射介在神経の投射様式の解析
Absへ田中暢明*1,2、粟崎健2,3、伊藤啓2,3
1:総研大、2:基生研、3:科技団・さきがけ
P-40B 神経回路形成を制御する遺伝子のショウジョウバエ成虫脳を用いた異所発現スクリーニング
織原美奈子*1,2、斎藤麻衣1,2、問田有香1、相垣敏郎3、浜千尋1,2
1:理研・発生再生研、2:JST・CREST、3:都立大・院理
P-41A ショウジョウバエ成虫の脳におけるGABA産生酵素及び受容体を発現しているニューロンの分布
岡田龍一*1、粟崎健1,2,3、伊藤啓1,2,3
1:基生研、2:科技団・戦略、3:科技団・さきがけ
P-41B 時計遺伝子に支配されるショウジョウバエ雌の交尾活動リズム
坂井貴臣*1、西ノ首いづみ2、城所良明1、石田直理雄2
1群馬大学・医学部・行動生理、2産技研・分子細胞工学
P-42A ショウジョウバエの概日時計のゲノムワイドな解析
上田泰己*1,3、松本顕2、河村美穂3、飯野正光1、谷村禎一2、橋本誠一3
1:東大・医、2:九大・理、3:山之内製薬(株)
P-42B ショウジョウバエfruitless (fru) 遺伝子の機能発現に影響する遺伝子群のスクリーニング(I): Bloomington Deficiency Kit の利用
従二直人*、嶋誠悟、薄井―青木一恵、山元大輔
早大・人間科学
P-43A ショウジョウバエ fruitless (fru) 遺伝子の機能発現に影響する遺伝子群のスクリーニング (II): 異所発現系の利用。
嶋誠悟*1、近藤俊三2、薄井ー青木一恵1、相垣敏郎3、従二直人1、山元大輔1
1:早大・人間科学、2:三菱化学生命研、3:東京都立大・院理・生物
P-43B キイロショウジョウバエ近縁種におけるFru蛋白質発現の保存性と多様性に関する解析
薄井(青木)一恵*、山元大輔
早稲田大学・人間科学
P-44A 性行動異常突然変異体fickle によって同定されたショウジョウバエBtk (Bruton's tyrosine kinase) ホモログの機能解析
濱田典子*1、中本千晶1、馬場浩太郎2、従二直人1、山元大輔1、
1:早大・人間科学 2:東大・理、現・(独)生物研
P-44B ショウジョウバエ雌の性行動におけるnebula遺伝子の新規機能
江島亜樹*、松尾隆嗣、布山喜章、相垣敏郎
都立大・院理・生物
P-45A ショウジョウバエの味覚受容機構の分子的解析
Absへ石元広志*、井下強、廣井誠、松本顕、谷村禎一
九大大学院・理学研究院・生物科学
P-45B ショウジョウバエ味受容細胞の分化の部位特異性
上野耕平1、磯野邦夫2、城所良明1
1群馬大学・医学部・行動生理、2東北大学大学院・情報科学
P-46A Drosophila fasciclinII is required for the formation of odor memories
Yuzhong Cheng, Keita Endo*, Kwok Wu, Ronald L. Davis
Dept. of Molecular and Cellular Biology, Baylor College of Medicine
P-46B ショウジョウバエNMDA受容体のクローニング
宮下知之*1, 村田喜理2, 齊藤実1
1:東京都神経研,2:東京医科歯科大学
P-47A シナプス小胞の自発開口放出機構と受容体集積過程との相関の解析
齊藤実*1,2、Thomas L. Schwarz3、Joy A. Umbach4、Cameron B. Gundersen4、城所良明2
1: 東京都神経研・分子神経生理部門、2: 群馬大学医学部・行動生理部門、3:Dept of Molecular and Cellular Physiology, Stanford University Medical Center、4: Dept. Molecular and Medical Pharmacology, UCLA, School of Medicine
P-47B カルレティキュリン遺伝子発現とショウジョウバエの麻酔感受性
蒲生寿美子1*、冨田純也2、田中良晴1、大高友美1、鮫島貴則1、山元大輔3
1:大阪府立大学・総合、2:京大・医、3:早稲田大・人間
P-48A ショウジョウバエキノコ体前駆細胞で発現する遺伝子のスクリーニングと発現解析
河内浩*1、安達在嗣1、加藤正行1、林誠1、塩野克宏1、Walldorf, Uwe2、古久保―徳永克男1
1:筑波大学・生物科学系 2:ホーエンハイム大学・遺伝学研究所(ドイツ)
P-48B ショウジョウバエをモデルとしたボケの行動遺伝学的解析
田村拓也*1,2 、齊藤実1
1:東京都神経研・分子神経生理、2:群馬大院・医・行動生理
P-49A ショウジョウバエの極細胞の維持に関わる新規母性効果突然変異体の解析
羽生賀津子*1,3、中村輝1,3、小林悟2,3
1:筑波大・遺伝子実験センター、2:統合バイオサイエンスセンター、3:科技団・ CREST
P-49B ショウジョウバエ神経筋結合系における1回膜貫通タンパク質Capriciousによる標的認識過程の解析
高坂洋史*、能瀬聡直
東大院・理・物理
P-50A ショウジョウバエ増殖細胞核抗原(DPCNA)やDNA複製関連エレメント結合因子(DREF)の Armadillo, Pangolin/dTcfによる転写制御
Absへ 権恩貞1,2*,林裕子1、広瀬冨美子1、西田育巧2 、劉美愛3、山口政光1
1愛知県がん研・発がん制御 2名大・院理・生命 3釜山大・分子生物

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P-1A
ショウジョウバエにおけるアミラーゼ遺伝子重複後の同義置換に対する正の淘汰
Ze Zhang 1、猪股伸幸 2,3、大庭朋洋 *3、Marie-Louise Cariou 4、山崎常行 2,3
1: SW Agr Univ, China、2:九大院、理、3:九大院、医、4:CNRS, France
Positive Darwinian selection for synonymous substitutions after Amylase gene duplication in Drosophila.
Ze Zhang 1, Nobuyuki Inomata 2,3, Tomohiro Ohba *3, Marie-Louise Cariou 4 and Tsuneyuki Yamazaki 2,3
(1: SW Agr Univ, China, 2: Grad Sch Science, Kyushu Univ, 3: Grad Sch Med Science, Kyushu Univ, 4: CNRS, France)

 montium種亜群に属するショウジョウバエにおいてflanking領域を含む完全長のアミラーゼ遺伝子の塩基配列に基づき、最尤法によって遺伝子重複に伴ってどの様な淘汰圧が働いたかを調べると共に重複遺伝子の発現パターンも調べた。その結果、遺伝子重複後に同義置換に対して一方の遺伝子タイプでは正の淘汰が働き、他方では中立もしくはほぼ中立的に進化したことが示唆されると共にそれらの進化様式は発現パターンの変化と関係があることも示唆された。

P-1B
トラフショウジョウバエのアルコール脱水素酵素遺伝子におけるDNA多型の解析
後藤大輝*1、猪股伸幸1,2、山崎常行1,2
1: 九大院、医、2: 九大院、理
DNA variation of the Adh gene in Drosophila kikkawai.
Hiroki Goto 1, Nobuyuki Inomata 1,2 and Tsuneyuki Yamazaki 1,2
(1: Grad Sch Med Science, Kyushu Univ, 2:Grad Sch Science, Kyushu Univ)

 ショウジョウバエ(Drosophila)のアルコール脱水素酵素遺伝子(Adh)は、集団遺伝学的解析が最も行われている遺伝子の一つである。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)においては正の選択が働いていることが示唆されており、適応進化を考える上で非常に興味深い遺伝子の一つである。今回、我々はトラフショウジョウバエ(Drosophila kikkawai)およびその近縁種におけるアルコール脱水素酵素遺伝子の塩基配列を決定し、集団遺伝学的解析を行ったので、その結果について報告する。

P-2A
トラフショウジョウバエにおける重複アミラーゼ遺伝子の種内変異
猪股伸幸*、山崎常行
九大院、理
DNA variation of the duplicated Amylase genes in Drosophila kikkawai.
Nobuyuki Inomata* and Tsuneyuki Yamazaki
(Grad Sch Science, Kyushu Univ)

 ショウジョウバエのアミラーゼはスターチをグルコースとマルトースに分解する消化酵素で、グルコースやマルトース培地よりもスターチ培地で飼育した方が高い活性を示す。つまり、餌を介して環境と直接に相互作用するので、自然選択の標的候補遺伝子の一つとしてキイロショウジョウバエを中心に研究されてきた。本研究では、キイロショウジョウバエとは異なる種亜群に属するが、よく似たアミラーゼ遺伝子構造をもつトラフショウジョウバエについて種内変異の解析を行ったので、その結果を報告する。

P-2B
ショウジョウバエのブルーム変異株とロスモンド-トムソン変異株の解析
草野好司*、1,2、Dena Johnson-Schlitz 2、Mark E. Berres, 尾川博昭 1、William R. Engels 2
1: 九工大・院・生命体 2: Dept. Genetics, Univ. Wisconsin-Madison
Analyses for Drosophila mutants corresponding to Bloom patients and Rothmund-Thomson patients
Kohji Kusano*1,2, Dena Johnson-Schlitz 2, Mark E. Berres 2, Hiroaki Ogawa 1, William R. Engels 2
(1: Dept Biological Functions and Engineering, 2: Dept. Genetics, Univ.
Wisconsin-Madison)

 ブルーム症候群とロスモンド-トムソン症候群は高い発癌性, 発生異常, 不稔性などをもたらすヒト遺伝病である. それぞれの原因遺伝子であるBLMとRecQ4の相同遺伝子は脊椎動物のみならず無脊椎動物にも存在する(Genetics 151: 1027-1039, 1999).我々は最近, ショウジョウバエのBLMホモローグであるDmblm遺伝子がmus309に相当することを示した(Science 291: 2600-2602, 2001). dmblm/mus309変異株から次の知見を得た. (1)DNA損傷剤に対する強い感受性を示した.(2)雌, 雄両方において不稔性を示した. この不稔性は, 主に生殖細胞内で起こった染色体不分離や染色体切断によって生じていた.(3) この雌不稔性は, mei-W68 (spo11ホモローグ)の完全欠損変異の導入によって部分的に抑圧された.(4) (1)と(2)の表現型はDmblmトランス遺伝子のみならず, Ku70トランス遺伝子によっても相補された. これはdmblmとku70との間の遺伝的相互作用を示す. (3)(4)の結果より、Dmblmがmitosisとmeiosisの両方において, 二重鎖切断修復に関わっていることを示唆する. さらに我々は, ショウジョウバエのRecQ4ホモローグであるDmrecQ4(AF233659)の完全欠損変異株を同定した.dmrecQ4のP因子挿入変異は第2幼虫期における致死を引き起こした.

P-3A
内部共生微生物スピロプラズマによる雄殺しに関与するショウジョウバエ宿主遺伝子の探索
安佛尚志*,深津武馬
産総研・生物遺伝子資源
Screening for Drosophila host gene(s) related to male killing caused by Spiroplasma symbiont.
Hisashi Anbutsu*, Takema Fukatsu
(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)

ショウジョウバエ野外個体群においては,子孫がほぼ100%雌になる系統が,低頻度ながら存在する。子孫が雌だけになる理由は,胚発生初期に雄だけが特異的に死んでしまうためであり,それゆえ,この性比異常現象は「雄殺し(male killing)」と呼ばれている。この雄殺しは,ショウジョウバエが内部共生細菌スピロプラズマに感染することによって起こる。しかし,スピロプラズマがどのようにして雄だけを選択的に殺すことができるのか,その分子機構や原因遺伝子に関してはこれまでまったくわかっていない。  現在,我々は,ショウジョウバエで確立されている分子遺伝学的方法を用いて,雄殺しや内部共生の維持に関与する宿主遺伝子の同定に取り組んでいる。もし,スピロプラズマが何らかの宿主遺伝子の発現を阻害し,その結果として雄殺しが起こっているとするならば, その宿主遺伝子を強制的に発現させてやることができれば,雄殺しを救済できるはずである。そこで,EP挿入突然変異系統とGal4遺伝子保持系統を用いて,強制発現型のスクリーニングを行った。方法としては,まず,EP因子挿入突然変異系統を多数確立し,次に,それらの系統の雄とスピロプラズマに感染したGal4遺伝子保持系統の雌とをかけ合わせ,F1およびF2の性比をチェックした。雄が出現するような系統が得られたら,詳しい解析を行い,原因遺伝子やその発現様式などを明らかにする。研究会では,本研究においてこれまでに得られた内部共生関連宿主遺伝子に関する知見について報告したい。

P-3B
セイシェルショウジョウバエの特異な食性に関わる遺伝子の同定
松尾隆嗣
都立大・院・理
Identification of the gene causing monophagy in D. sechellia.
(Takashi MATSUO, Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.)

 セイシェル諸島の一部に生息するDrosophila sechelliaは広食性のD. simulansとごく近縁にもかかわらず、Morinda citrifoliaの熟果のみを繁殖場所とする。一方D. simulans, D. melanogaster, D. mauritianaのいずれもM. citrifoliaの果実には寄り付かない。M. citrifoliaに含まれるにおい物質であるカプロン酸などの低級脂肪酸に対する成虫の選好性に種間で違いがあり、D. melanogasterの欠失変異体とD. sechelliaとの種間雑種を用いた実験によりその原因遺伝子座はD. melanogasterの染色体で57A1-3付近に存在することが分かった。D. melanogasterのゲノム配列情報を利用して、この遺伝子の同定を試みている。まず、遺伝子コード領域の外側では2種間のゲノム配列に変異が多いことに基づき、D. melanogasterでは増幅するがD. sechelliaでは増幅しないPCRプライマー対を作り、欠失染色体の断点をゲノム配列上にマップした。この範囲に推定されている数十の遺伝子をクローニングし、配列の比較等により原因遺伝子の特定を行う予定である。

P-4A
キイロショウジョウバエの日本野外集団におけるPおよびhobo因子の分布
菊農桂子*1 田中良晴1 伊藤雅信2 蒲生寿美子1
1:大阪府立大・総合、2:京工繊大・応用生物
Distribution of P and hobo elements in natural population of D.melanogaster in Japan
Kikuno,K.*1, Tanaka,Y.1, Itoh,M.2, Gamo,S.1
(1:Department of Earth and Life Sciences,Osaka Prefecture Univ., 2:Department of Applied Biology,Kyoto Institute of Technology)

 P因子は約50年程前にキイロショウジョウバエのゲノム内に挿入し急速に広まったと考えられており、hobo因子についての研究は数少ないがほぼ同時期に広まった と考えられている。日本野外集団におけるP因子の分布は多数調査されているのに対 し、hobo因子の分布についての調査はなされていない。そこで当研究室で維持し ている11系統をサザンブロット分析したところ、Hikone−R(1952年捕 獲)にはhobo因子挿入がなく、Hikone−H(1957年捕獲)にはhob o因子が存在することが分かった。Hikone−HはP因子を保有する日本で最初 の系統であることから、P因子とともにhobo因子も1950年代中頃に日本に侵 入したと考えられる。最近の日本野外集団におけるこれらの因子の分布について調査するために、西日本の先島諸島(与那国島1998、波照間島1998、西表島1998、石垣島1997年)におけるP因 子について調査した。その結果、P因子組成に関しては、すべての調査地域で完全型 P因子と主にKP因子を含む不完全型P因子を持っていた。この地域のP−Mシステ ムにおける表現型の地理的分布は1980年代の調査結果と大きな変化は見られなか った。また、P因子組成とハイブリット・ディスジェネシスによる表現型の間にも明 確な関連が見つかっていない。同集団におけるhobo因子の分布についての解析を 行っているので、P因子およびhobo因子の相互関連性も含めて報告する。

P-4B
カイコSex-lethal の性特異的発現およびショウジョウバエにおける性特異的効果
新美輝幸*・大島宏之・山下興亜・柳沼利信
名大院・生命農
Bombyx Sex-lethal: Sex-specific expression in Bombyx and sex-specific effects in Drosophila
Teruyuki NIIMI, Hiroyuki OSHIMA, Okitsugu YAMASHITA and Toshinobu YAGINUMA
(Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University)

 カイコの性はW染色体上の雌性遺伝子(Fem)によって決定されるが、Fem遺伝子は未同定であり、性決定の分子機構も不明である。この機構を解明するため、ショウジョウバエにおいて体細胞性決定のマスタースイッチ遺伝子として機能するSex-lethal(Sxl) のカイコ相同体に着目し、その構造を決定した。その結果、カイコのSxl(BmSxl) にはN末端の長さが異なる2種のアイソフォーム(BmSxl-L、BmSxl-S)が存在し、生殖腺において性特異的な発現パターンを示すことが明らかとなった。 さらに、BmSxlの2種のアイソフォームをショウジョウバエにおいて異所的に発現させた結果、BmSxl-Lは性転換能を、またBmSxl-Sは性特異的な致死効果を有することが明らかとなった。これに対し、イエバエやチチュウカイミバエのSxlは性特異的な発現を示さず、ショウジョウバエで発現させた場合、性特異的な致死効果を有さないことが報告されている。以上のことから、昆虫の多様な性決定機構におけるSxlの役割を進化との関わりから考察したい。

P-5A
キイロショウジョウバエ野外集団のP因子とP-Mシステム
伊藤雅信*1・福井智一1・Boussy, I.A.2
1:京工繊大・応用生物、2:Loyola Univ. Chicago, Biology
Genomic P elements and P-M system in natural population of D. melanogaster: Full-size P and KP elements predominance
Itoh, M.*1, Fukui, T.1 and Boussy, I.A.2
(1: Dept. Applied Biology, Kyoto Inst. Technology, 2: Dept. Biology, Loyola Univ. Chicago)

 転移因子 P elementは、水平伝播によってキイロショウジョウバエ D. melanogaster ゲノムに侵入し、約50年ほど前から急速に広まったと考えられている。キイロショウジョウバエ集団におけるP因子の動態を知るため、アジア、アフリカ、オーストラリアの野外集団(いずれも1990年代の採集)より約450の単一雌系統を確立し、P-Mシステム表現型(転位誘導能と転位抑制能の強さ、すなわちP、Q、M系統の別)とゲノム中のP因子組成(種類・コピー数)を調査した。
 その結果、1)いずれの集団でも、ほとんどのP因子は2種類(完全型P因子と不完全型因子の1種であるKP因子)に限られ、その他の不完全型因子は極く少数しか存在しなかった。2)P因子組成と表現型の間に明らかな関連は見出せなかった。オーストラリアの採集地間比較では、完全型PとKP因子のコピー数の比(KP/P ratio)が表現型と弱い相関を示したが、個々の単一雌系統の表現型を決定する要因は特定できなかった。3)日本とオーストラリア集団の表現型の地理的分布には、最近15年間で大きな変化が見られなかった。これらの結果から、キイロショウジョウバエに対するP因子の侵入はすでにほぼ完了し、P因子組成が地球的規模で均一化しつつあると推測される。また、このP因子組成の均一化にもかかわらず、表現型の特徴を各集団で独立かつ安定に保つ何らかのメカニズムの存在が示唆された。

P-5B
ショウジョウバエの遺伝学的解析における RFP の有用性の検討
秋元愛*1,池谷智淳 2,林茂生 1.3.4
1:理研・発生再生センター,2:チューリッヒ大学,3:遺伝研・無脊椎,4:総研大 RFP as a tool in genetic analysis of Drosophila
Ai Akimoto 1, Tomoatsu Ikeya 2, Shigeo Hayashi 1.3.4
(1:RIKEN CDB, 2: Univ. of Zurich, 3:NIG, 4: Grad. Sch. Adv. Studies)

 GFP(green fluorescent protein) はタンパク質の局在や遺伝子発現のマーカーとしてその応用範囲を広げつつある.しかし,遺伝子機能の解析にはタンパク質間の相互作用の解明が重要であり,複数のタンパク質,または細胞の動態を蛍光で観察するためにも,GFP 以外の蛍光タンパク質の必要性が高まっている.そこで,今回我々はRFP (red fluorescent protein) を二つの異なるアプローチで発現させ,蛍光顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡による観察を行ったので,結果を報告する.今回 RFP として DsRed (Clontech) を使用した.まず Gal4-UAS 法によって RFP をショウジョウバエの気管に発現させたところ,3 齢幼虫期において強い RFP の発現が認められた.しかし,胚期においては RFP の蛍光を観察することはできず,3 齢後期幼虫の気管を光学顕微鏡下で観察すると細胞質内において RFP の凝集が見られた.次に Gal4-UAS 法で発現させた GFP と,RFP とで異なる細胞を標識するためには,RFP を Gal4 によらない方法で発現させることが必要であると考えた.そこで,RFP を様々な組織で発現させるため,核局在型 RFP をレポーターとするエンハンサートラップ系統を作成した.現在,得られた系統の胚・幼虫・成虫期における RFP の観察を行っているので,あわせて報告する.

P-6A
ショウジョウバエ染色体領域61D1-2から61F1-2の遺伝学的解析
斎藤麻衣*1,3 粟崎健2,4 浜千尋1,3
1: 理研 発生・再生センター・神経回路発生 2: 基生研・細胞増殖 3: 戦略、科技団 4: さきがけ、科技団
Genetic Analyses of Essential Genes in Cytological Region 61D1-2 to 61F1-2 of Drosophila melanogaster
Mai Saito*1,3, Takeshi Awasaki 2,4, Chihiro Hama 1,3
(1: Laboratory for Neural Network Development,RIKEN Center for Developmental Biology, 2: National Institute for Basic Biology, 3: CREST, JST, 4: PREST, JST)

 我々は、ショウジョウバエ第3染色体左腕61D1-2から61F1-2領域に対して、trio遺伝子の突然変異の分離を目的とするEMSを用いた劣性致死変異スクリーニングを行った。その結果、この領域にはtrioとGult1を含む8個の致死性を示す相補性グループの存在が明かとなった。まず、trioについては24個の変異を分離し、その表現型を調べたところ全ての変異株が幼虫時に致死となり、また胚のCNSで軸索形成の異常が観察された。ウエスタンブロッティング解析を行ったところ、trioは少なくとも3種のタンパク質を産生し、そのうち200kd以上の産物が胚および幼虫の発生に重要な役割をしており、小さい産物は重要でないことが示唆された。
 我々はさらに他の相補性グループに属する遺伝子変異の表現型についての予備的な解析を行った。抗FasII抗体で胚を染色することにより運動神経および中枢神経の軸索走行を調べたが明瞭な異常は観察されなかった。一方、他の胚組織の形態を調べたところ、殆どの変異株で正常であったが、G4.1変異株では顕著な異常が観察された。すなわち、頭部縮退(head involution)、背部閉鎖(dorsal closure)、中腸のくびれ形成そして腹部神経節の凝縮(condensation)が不完全で胚の時期に致死となった。これらの相補性グループに対するデータをゲノムプロジェクトで公開されている遺伝子情報と対応づけることにより、ショウジョウバエ全遺伝子の機能解明に貢献することが期待できる。

P-6B
ショウジョウバエ複眼発生におけるFGFシグナルの機能解析
岩波 将輝*1,2、広海 健1
1: 国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門、2: 東京慈恵会医科大学大学院 微生物第一
Functional analysis of FGF signaling in Drosophila eye development.
Masaki Iwanami*1,2 , Yasushi Hiromi1.
(1, National Institute of Genetics, 2, The Jikei Univ. school of Medicine.)

 受容体型チロシンキナーゼ(RTK)はショウジョウバエにおける発生過程において中心的な役割を果たしていることが明らかとなっている。我々はRTKシグナルの1つであるFGF(fibroblast growth factor)シグナルに着目し、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析を行っている。FGFは脊椎動物においては少なくとも18種以上からなる大きなファミリーを形成しており、発生の場において多様な働きをしている。最近、ゲノムプロジェクトの終了したショウジョウバエにおけるFGFは、branchless(bnl )遺伝子1つと考えられ、遺伝学的解析に非常に適している。複眼におけるbnl 遺伝子機能欠失変異体を用いた解析結果から、bnl 遺伝子は複眼における神経細胞(光受容細胞)の正常な発生において必要であり、特に、神経細胞の生存維持において細胞自律的に必要とされることを示唆する結果が得られた。興味深いことに、この複眼の神経細胞におけるbnl 遺伝子の機能は、ショウジョウバエFGF受容体として知られるHEARTLESS、BREATHLESS受容体の機能とは異なる新たな側面をもつことが考えられた。また、bnl 遺伝子は成虫原基の発生過程を通してその発現がみられ、複眼成虫原基を用いた機能解析から、bnl 遺伝子は成虫原基の発生初期においても機能を担っていることが示唆された。

P-7A
Developmental mechanisms underlying evolutionary diversities in the eggshell shape of Drosophila species.
中村征史、松野健治
東京理科大学大学院・基礎工学研究科・生物工学専攻
Developmental mechanisms underlying evolutionary diversities in the eggshell shape of Drosophila species.
Yukio Nakamura、Kenji Matsuno
(Dept. Biol. Sci./Tec., Science University of Tokyo)

Evolution diversifies morphology in organisms. However, the developmental mechanisms underlying this morphological diversification have yet to be understood. To find a clue to this question, we have investigated a difference in the eggshell morphology among Drosophila species. The mature eggs of Drosophila have the dorsal appendages at the dorsoanterior region. The number of the dorsal appendages varies among Drosophila species. For example, Drosophila melanogaster (D. melanogaster) and Drosophila virilis (D. virilis) has two and four dorsal appendages, respectively. The formation of the dorsal appendages depends on the Drosophila EGF Receptor (DER) signaling pathway, that leads to activation of mitogen-activated protein kinase (MAPK) during oogenesis. In D. melanogaster, it has been shown that rhomboid and argos regulate the DER signaling in positive and negative manners, respectively. Their region-specific expression plays an essential role in the morphogenesis of the dorsal appendages. Therefore, we decided to compare the expression of these two genes between D. melanogaster and D. virilis. First, we cloned rhomboid and argos cDNA from D. virilis. The expression of these genes were different spatially between these two species. We also found that the MAPK was activated in a divergent fashion. These results suggest that evolutionary diversity in the number of the dorsal appendages arises from species-specific activation of DER signaling during the oogenesis.

P-7B
ショウジョウバエ自然免疫系の解析
James Y.T. Ooi、八木克将*、 Y. Tony Ip
Program in Molecular Medicine, University of Massachusetts Medical School Analysis of innate immune response in Drosophila
James Y.T. Ooi, Yoshimasa Yagi*, Y. Tony Ip,
(Program in Molecular Medicine, University of Massachusetts Medical School)

 近年の研究成果から、自然免疫系(innate immune system)は、多細胞生物間で進化的に共通の起源を持ち、昆虫からほ乳類まで、その機構は共通する部分の多い事が知られるようになってきた。特にToll様受容体を介したシグナル伝達系が、微生物の体内侵入のシグナルを伝達し、抗菌ペプチドの産生などの生体防御反応を引き起こすことがよく知られている。ゲノムプロジェクトの成果から、DrosophilaのToll様受容体としては、既知のToll, 18 wheelerの他にさらに7個(計9個)のToll様受容体が存在することが明らかになった。Tollは真菌、18 wheelerは細菌の侵入のシグナルを伝達することが知られており、新たに見つかったToll様受容体も、免疫系の情報伝達を行うことが期待された。そこで、培養細胞に強制発現させることにより、これらToll様受容体の機能を解析した。その結果、いくつかのToll様受容体は免疫シグナルを伝える受容体として機能しうることを確認した。また、細菌侵入時の抗菌ペプチドの転写誘導活性を指標に、自然免疫系に異常の見られる突然変異体のスクリーニングを行い、現在までに細菌侵入時の抗菌ペプチドの転写に異常の見られる系統を複数得ている。このスクリーニングの経過についても報告する予定である。

P-8A
翅原基におけるdally遺伝子の発現調節機構の解析
藤瀬桃子*、泉 進、中藤博志
都立大・院理・生物
Regulation of dally gene expression in the developing wing
Momoko Fujise*, Susumu Izumi, Hiroshi Nakato
(Dept. of Biology, Tokyo Metropolitan University)

 Dallyは細胞膜結合型ヘパラン硫酸プロテオグリカンのコアタンパク質をコードしており、Dpp及びWgの補受容体として機能している。ショウジョウバエの翅原基は、前部・後部、および背側・腹側の異なる区画の細胞集団で構成され、それぞれの区画の境界は翅のパターン形成を司るWg, Dppといった分泌性因子を合成する特別な部位である。翅原基においてdally遺伝子は低レベルで広く発現するが、これらの区画境界では特に強い発現がみられる。そこで、これらの区画境界においてWg, Hh, Dppといった分泌性因子シグナルがdally遺伝子の発現を調節している可能性を検討した。翅成虫原基の前後境界にHhシグナルを伝達できない細胞クローンを作製すると,そのクローン内ではdally遺伝子の発現が消失した。このことは,dally遺伝子の発現がHhシグナル系により誘導されていることを示している。一方,dally遺伝子の背腹境界における発現はNotch (N)及びWgシグナルにより制御されていることが判明した。また、同様の解析によりdallyの発現はDppシグナルによっても制御されていることが解った。翅原基においてdallyはDpp、Wgシグナル伝達系の構成成分であり、同時に、その発現はこれらのシグナルの制御下にある。これらの情報伝達系では正や負のフィードバック機構を取り入れることによりシグナル量を厳密に調節していることが知られているが、ヘパラン硫酸プロテオグリカンも、このようなフィードバック回路の一員であることが示唆された。

P-8B
Notch シグナルと engrailed の組合わせによる後腸のパターン形成
高島茂雄1、吉森華香1、山崎直之1、松野健治2、村上柳太郎*1
1:山口大・自然情報、2:東京理科大・生物工学
Cooperation of a Notch signal and engrailed in patterning of the
Drosophila large intestine
Takashima S.1, Yoshimori H.1, Yamazaki N.1, Matsuno K.2, Murakami R.*1
(1: Yamaguchi Univ. Dept.Phys. Biol. Informatics, 2: Tokyo Univ. Sci.,
Dept. Biol. Sci. Tech.)

 ショウジョウバエ後腸の主要部分である large intestine は、背側区画と腹側区画、その間に生じる1細胞幅の境界区画から構成されている。背側区画では>engrailed (en) が発現し、腹側区画では Delta が発現する。我々は、enとNotch シグナルの巧妙な連携によって large intesine 3区画の空間パターンと細胞分化が決定されることを示す。en は背側区画での Delta 発現を抑制し、その結果 large intestine を背腹に分割する Delta 陽性/陰性のプレパターンが生じる。腹側区画の Delta 陽性細胞は隣接する背側細胞の Notch 経路を活性化し、境界区画の形成をひき起こす。Notch 経路の阻害によって境界細胞分化は阻害され、活性型 Suppressor of Hairless や Notch 細胞質ドメインの 強制発現によって large intestine 全体が境界細胞に分化する。ところが通常は「活性型」とされる細胞外ドメインの大部分を欠いた膜貫通型 Notch の強制発現では、背側区画全体(=en 陽性)が境界細胞に分化するが腹側区画は正常だった。膜貫通型 Notch を en と同時に共発現させると、large intestine 全体が境界細胞へと分化した。これらは en が Presenilin によって媒介されるNotch の 最終切断過程に関わっていることを示唆している。つまり、en はDelta 陽性/陰性のプレパターンを確立した後、Notch の切断過程を(何らかの因子を介して)制御し、さらに Notch シグナルの非存在下で背側区画の分化を決定する。このような en と Notch の組み合わせによって背側区画、境界区画、腹側区画の空間パターンと細胞分化が決まる。

P-9A
キノコ体形成過程におけるeyeless遺伝子の転写制御領域解析
安達在嗣*1、河内浩1、Bernd Hauck2, Uwe Walldorf2、古久保-徳永克男1
1:筑波大学・生物、先端 2:Institute of Genetics, University of Hohenheim,Stuttgart, Germany
Regulatory elements controlling the eyeless gene in the development of the mushroom bodies in Drosophila
Adachi, Y.1, Kawauchi, H.1, Hauck, B.2, Walldorf, U.2, and Furukubo-Tokunaga, K.1
(1:Institute of Biological Sciences and TARA Center, University of Tsukuba,Tsukuba, Japan. 2:Institute of Genetics, University of Hohenheim, Stuttgart, Germany).

 近年、脳前方領域形成の遺伝的機構が徐々に解明されつつある。体幹部がホメオティック遺伝子群の発生制御を受けるのに対し、脳の前方部はOtx遺伝子による領域化を受けること、そしてこれらの遺伝子の機能は複数の動物門で進化的に保存されていることが分かっている。我々は脳内のさらに詳細な神経構造形成の遺伝的メカニズムの解析を試みている。
 キノコ体はショウジョウバエ脳の最前部に位置する神経構造で、嗅覚関連付け学習や認知などの高次中枢として機能している。キノコ体の発生ではeyeless(ey), twin of eyeless(toy), dachshund(dac)などの進化的に保存された遺伝子群が重要な役割を担っている。これらの遺伝子は複眼形成において機能することが知られているが、キノコ体の発生では複眼形成とは異なる遺伝子制御網が存在することが示唆されている。我々は、キノコ体形成過程におけるey遺伝子の発現調節機構を解明し、キノコ体形成を支配する遺伝子ネットワークを明らかにすることを目的に、ey遺伝子の転写制御領域を断片化し、脳形成過程におけるそれらのレポーター発現制御能を解析した。その結果、複眼でのey遺伝子発現は主にey遺伝子の第2イントロン後半部が促進するのに対し、キノコ体での発現を促進する部分はey遺伝子上流5kb の領域と第2イントロン前半部に複数存在することが分かった。今後、キノコ体発生時に発現する遺伝子の中でeyの上流に位置するものを探索し、その転写制御配列結合部位を特定する。

P-9B
光受容細胞分化に関与する新規遺伝子の同定と解析
廣田ゆき1、岡野栄之2
1:阪大・医、2:慶應大・生理
Identification of a novel gene involved in photoreceptor differentiation
Yuki Hirota1, Hideyuki Okano2
(1:Division of Neuroanatomy, Osaka Univ. 2:Dept. of Physiology, Keio Univ.)

 光受容細胞の分化過程では、proneural遺伝子を発現するR8に続いてR2/R5, R3/R4,R1/R6, R7と順に神経細胞が分化するが、各細胞の特異性獲得に関しては不明な点が多い。一方、R2/R5は神経細胞の普遍的マーカーであるELAVをR8に先だって発現することが知られており、R2/R5は全光受容細胞に先立って神経分化し、他の光受容細胞の分化になんらかの機能を果たしている可能性が考えられる。今回、光受容細胞の分化の初期段階においてR2/R5に選択的に発現する遺伝子を見いだしたので、この機能を解析することでR2/R5の分化制御機構を明らかにする目的で実験を行った。この遺伝子がコードする推定アミノ酸配列は、膜貫通部位を持つ他は既知の蛋白質と相同性を持たず、神経発生に関与する新規の遺伝子である可能性が示唆された。またこの遺伝子の発現は複眼のみならず胚発生においても中枢および末梢神経系の多数の神経細胞において認められた。

P-10A
gene search system を用いた器官特異性決定に関わる遺伝子の網羅的探索
勝山 朋紀*1,辰巳 正信1,大島 吉輝1,相垣 敏郎2,倉田 祥一朗1
1:東北大・院・薬,2:都立大・院・理
Identification of Drosophila genes involved in the determination of organ identity using a gene search system
Tomonori Katsuyama*1, Masanobu Tatsumi1, Yoshiteru Oshima1, Toshiro Aigaki2, Shoichiro Kurata1
( 1: Tohoku Univ., 2: Tokyo Metropolitan Univ. )

 これまでに我々は,複眼原基において Notch シグナリングの活性化と共に,そこで発現している遺伝子の状況を変えると,翅や肢,触角といった主要な成虫器官を 本 来の複眼の位置において異所的に誘導できること明らかにしている.本研究で は,この系において Notch シグナリングと共に働き,成虫器官のアイデンティテ ィー決定 に関わる遺伝子を網羅的に探索する系を確立した.本実験系は,UAS がゲ ノム上にラ ンダムに挿入された系統 ( GS line ) を用いた機能獲得型のスクリーニングであり,さらに表現型 (複眼の代わりに誘導される器官) をもとに判断するため,器官特異性決定に重要な役割を果たしている遺伝子を直接同定することが可能である.
 これまでに,約350 系統の解析を終了し,複眼から触角,あるいは翅へと改変される系統をそれぞれ 2 系統ずつ得ている.複眼から翅が誘導された2系統については,共に同一の遺伝子の上流にUAS が挿入されていることが明らかとなり,更なる機能解析を行っている.また現在,効率よく器官特異性決定に関わる遺伝子を同定するためにプレスクリーニングを導入し,月に1000系統の解析を進めている.

P-10B
ショウジョウバエ感覚器官の共通起源
丹羽尚*1、広海健2、岡部正隆2
1:遺伝研・無脊椎、2:遺伝研・発生遺伝
Common origin of Drosophila sensory organs
Nao NIWA* 1, Yasushi HIROMI 2, Masataka OKABE 2
1: Invertebrate Genetics Lab., 2: Dept. of Devel. Genetics, Natl. Inst. of Genetics

 ショウジョウバエの感覚器官は、それぞれが高度に特異化しており、かつ特定の体節に形成されている。このことは、各感覚器官の起源が互いに異なることを想像させる。しかし昆虫類の各体節は、本来、連続した同質の体節から進化したと考えれられているため、体節特異的な感覚器官も各体節に共通の祖先型から派生してきた可能性がある。我々は、感覚器官の起源と特異化機構を明らかにするために、各感覚器官の形成誘導に必要な分子基盤の比較解析を行った。まず、eyelessの強制発現実験系を用い、複眼形成に必要な条件を検索た結果、複眼が形成されるためにはeyelessの発現が「産卵後約80時間」という時間的条件と「dppの発現領域」という位置的条件を満たした細胞で起こることが必要であることを見い出した。さらに、これらの限定された条件は、本来の複眼や耳、伸展受容器などの感覚器官の形成される空間的・時間的環境条件とも一致していること、またこれらの条件によって、神経分化をもたらすatonalの発現が共通して誘導されていることを明らかにした。以上のことから、感覚器官形成には、共通の時間的・空間的分子基盤があり、この分子基盤は各体節ごとに「神経分化可能領域」を規定すると考えられた。より原始的な生物では、この領域に「原-感覚器官」(祖先型)が生じていたと考えられる。進化の過程で、eyelessのような体節に個性を与える情報が加わることで、「原-感覚器官」が修飾され、高度に分化した感覚器官が生じるようになったのだろう。

P-11A
ショウジョウバエ翅パターン形成におけるモルフォゲン勾配を調節するネガティブフィードバック機構
常泉和秀*、多羽田哲也
東大・分生研
The role of negative feedback loop that modulates the morphogen gradient in Drosophila wing pattern formation
Kazuhide Tsuneizumi, Tetsuya Tabata
(Institute of Molecular and Cellular Biosciences, University of Tokyo)

 ショウジョウバエの翅形成過程においてTGFbeta super familyに属するDPP(decapentaplegic)はモルフォゲンとして前後軸にそったパターンを決定している。我々はDPPにより誘導される標的遺伝子としてdad(daughters against dpp)を同定し、その作用がDPPシグナルの細胞内情報伝達因子であるMothers against dpp(Mad)に抑制的に働くことを示し、DPPモルフォゲンによる形成機構にnegative feedback loop が内包されていることを明らかにした。dad変異株での翅成虫原基および成虫翅でのDPPシグナルの指標を観察した結果から、dadはDPPモルフォゲンの活性勾配を調節すると考えられる。また、dad変異株の翅成虫原基ではwing pouchにおいて過剰の細胞死が観察された。細胞死関連遺伝子のひとつとして知られるreaperの発現が同領域において亢進することが観察され、細胞死に関与していると考えられる。また、dad変異株における細胞死はdppおよびMadの過剰発現により亢進することから、DPPシグナル依存的であることが示唆された。しかし、細胞死抑制効果を持つp35やdiapの過剰発現だけではこの細胞死を抑制することが出来なかった。この細胞死に関与すると考えられる新規遺伝子の探索を行い、dadと強い相互作用を示す致死変異系統を樹立した。この原因遺伝子を同定したので、幾つかの新知見をもとに考察を試みる。

P-11B
ENZYMATIC ACTIVITY OF POLY(A) POLYMERASE IS REQUIRED TO RESCUE THE MUTANT PHENOTYPE OF HIIRAGI
Takehide Murata*1, Hideyuki Nagaso1, 2, and Kazunari K. Yokoyama1
(1, BioResource Center, RIKEN Tsukuba Inst., Koyadai, Tsukuba, Ibaraki 305-0074, Japan, 2, Department of biology and Molecular biology, One Gustae L. Levery Place -box 1020, New York, NY 10029.)

A mutation in the hrg gene resulted in a decrease in the level of the hrg transcript and was associated with a notched wing phenotype. The levels of expression of wingless and cut, which are required for the proper development of wing, at the presumptive wing margins were reduced in the late third-instar larvae of hrg mutants. We have reported that the hrg gene encodes a poly(A) polymerase (PAP) (Murata et al., 2001, Dev.Biol., 233: 137-147). A mutation that reduced the enzymatic activity of Hrg failed to reverse the phenotype of hrg mutants, suggesting that the enzymatic activity of Hrg was required to rescue the wing phenotype.
These results suggest that the product of hrg is required for the normal expression of a series of genes in this region. Our results provide the first evidence that a PAP in Drosophila plays a key role in the early development of the wing margin, acting to regulate the specific expression of a series of genes via, perhaps, control of the processing of the 3' ends of transcripts.

P-12A
Deltex activated the downstream genes of Notch signaling in a Suppressor of Hairless-dependent manner.
堀一也*1、伊藤美紀子2、不破尚志1、岡野栄之3、松野健治1
1:東京理科大・基礎工 2:徳島大・医学 3:慶応大・医学
Kazuya Hori*1, Mikiko Ito2, Takashi Fuwa1, Hideyuki Okano3 and Kenji Matsuno1
(1 Department of Biological Science and Technology, Science University of Tokyo, 2641 Yamazaki, Noda, Chiba 278-8510, Japan 2 Department of Nutrition, School of Medicine, University of Tokushima, 3-18-15 Kuramoto, Tokushima 770-85033 Department of Physiology, Keio University, School of medicine, 35 Shinanomachi, Shinjuku-ku, Tokyo 160-8582, Japan)

The Notch signaling pathway is an evolutionarily conserved mechanism that regulates many cell fate decisions. Interaction between the Notch receptor and its ligands, Delta and Serrate, are thought to initiate a cascade of downstream events. Genetic and molecular studies in Drosophila have led to the identification of several components of the Notch pathway, which include a cytoplasmic protein Deltex. While Deltex is known to acts as a positive regulator of Notch signaling through the interaction with the intracellular domain of Notch, the precious mechanism is still elusive. In this study, we overexpressed Deltex in Drosophila wing discs and examined the expression of target genes of Notch signaling. We found that an overexpression of Deltex induced Delta, Serrate and vestigial expression cell-autonomously. The induction of vestigial by Deltex depended on Suppressor of Hairless, an effector protein of Notch signaling. It has been known that an activated form of Notch cell-autonomously induced Wingless. However, Deltex failed to induced Wingless expression in a cell-autonomous manner, while non-cell-autonomous induction of Wingless was observed. We found that this non-cell-autonomous induction of Wingless by Deltex overexpression required the function of Serrate, suggesting that Serrate was induced in the cells expressing Deltex and activated Notch signaling in adjacent cells. In summary, our results suggest that Deltex function is involved in an only subset of downstream events of Notch signaling.

P-12B
ショウジョウバエの腹部末端神経節におけるNBのオス特異的分裂はNBとニューロンの性に依存している
宮崎光輝*、辻村秀信
東京農工大学 発生生物学研究室
Male-specific Division of NB in the Ventral Nerveous System is Depend on the Sex of NBs themselves and Neurons in Drosophila
Mitsuteru Miyazaki*, Hidenobu Tsujimura
(Department of Developmental Biology, Tokyo University of Agriculture and Technology)

 ショウジョウバエの成虫のニューロンは幼虫期から存在し再編成されるニューロンと後胚期のニューロブラスト(NB)の分裂によってつくられ変態によって分化するニューロンとからなる。ショウジョウバエのCNSの腹部末端神経節の性的二型性NBは囲蛹殻形成時においてオス特異的な分裂の継続を示す。そこで、本研究ではBrdU染色法を用いて細胞の分裂を観察し、このオス特異的なNBの分裂の継続はNBとニューロンの性に依存していることを明らかにした。囲蛹殻形成時にオスの野生型のCNS腹部末端ではオス特異的なNBの分裂の継続が観察できた。NB自身でtraを異所発現させたオスではオス特異的なNBの分裂が止まった。これは、このNB分裂の継続に細胞自律的な制御経路があることを示す。ニューロンでtraを異所発現させたオスでもオス特異的なNBの分裂が止まった。これによりこのNB分裂には細胞自律的でない、神経細胞からの制御経路もあることがわかった。またこのオス特異的NBの分裂が停止したオスでは交接器の形態に異常が生じた。これはオスの交接器の形成に中枢あるいは抹消の神経系の性が関与していることを示しているのかもしれない。

P-13A
ショウジョウバエ抹消神経系におけるNotch signalingを介したgcm遺伝子の発現制御
梅園良彦*1、広海健2、堀田凱樹
国立遺伝学研究所 1:無脊椎、2:発生遺伝
Context-dependent utilization of Notch activity in Drosophila glial determination
Yoshihiko Umesono*1, Yasushi Hiromi 2, Yoshiki Hotta
(Natl. Inst. of Genetics, 1: Lab. Invertebrate Genetics, 2: Dept. Devel. Genetics)

During Drosophila neurogenesis, glial differentiation depends on the expression of glial cells missing (gcm). To understand how glial fate is achieved thus requires knowledge of the temporal and spatial control mechanisms directing gcm expression. In the adult bristle lineage, gcm expression is negatively regulated by Notch signaling (Van De Bor and Giangrande, 2001). Here we demonstrate that in the dorsal bipolar dendritic (dbd) sensory lineage in the embryonic peripheral nervous system (PNS), Notch activity acts in an opposite manner, to promote gcm transcription. The dbd lineage is generated through an asymmetric cell division of the dbd precursor, producing a neuron and a glia, where the glial daughter activates gcm expression postmitotically. Within the dbd lineage, Numb-dependent repression of Notch function causes Notch activation specifically in the presumptive glia, leading to gcm expression and the glial fate. Thus, the effect of Notch on gcm expression is context-dependent. We also show that another PNS lineage can initiate gliogenesis in response to artificial Notch activation. We will discuss the molecular nature of the developmental context in which Notch signaling causes activation of gcm transcription.

P-13B
Notch修飾における新規UDP-sugar transporterの役割
後藤聡1,2、谷口美佐子*1、佐渡由希子1、村岡正敏3、豊田英尚4、川喜田正夫3、林茂生1,2,5、
遺伝研・無脊椎1、総研大2、臨床研3、千葉大・薬4、理研・発生再生セ5
Role of a novel UDP-sugar transporter (UST74C) in post-translational modification of Notch
S.Goto1,2, M.Taniguchi*1, Y.Sado1, M.Muraoka3, H.Toyoda4, M.Kawakita3, S.Hayashi1,2,5,
(1 Natl. Inst. Genetics, 2 Grad. Univ. Adv. Studies, 3 Tokyo Met. Inst. Med. Sci., 4 Chiba Univ., 5 RIKEN CDB)

Glycosylation modifies protein activities in various biological processes. In Drosophila, proteoglycan is required for Wg, Dpp, Hh and FGF signaling and ligand-receptor interaction of Notch is modified by Fringe-dependent glycosylation. We report here functions of a novel UDP-sugar transporter (UST74C) localized on the Golgi membrane to mediate incorporation of nucleotide-sugars, substrates for glycosylation, from the cytoplasm into the Golgi lumen. Genetic analyses demonstrated that UST74C is required for both Wg and Notch signaling in embryos, and the requirement becomes restricted to Notch signaling in larvae. Larval phenotypes indicate that both Fringe-dependent and independent Notch pathways are affected. Biochemical analyses demonstrated that both glycosylation and proteolytic maturation of Notch are defective in mutant larvae. The results suggest that changes in nucleotide-sugar levels can differentially affect Wg, and two distinct aspects of Notch signaling.

P-14A
MEKKホモログD-MEKK1がDadと協調的にMad signalingを調節する可能性)
館野実*1、井上英樹1、常泉和秀2、多羽田哲也2、西田育巧1、入江賢児3、松本邦弘1
1:名大・理、2:東大・分子細胞生物学研、3:阪大・医)
Possible, cooperative regulation of Mad signaling by a MEKK homolog D-MEKK1 with Dad Minoru Tateno*1, Hideki Inoue1, Kazuhide Tsuneizumi2, Tetsuya Tabata2, Yasuyoshi Nishida1 and Kunihiro Matsumoto1.
(1: School of Science, Nagoya Univ. , 2: Institute of Molecular and Cellular Biosciences, Univ. Tokyo)

 MAP Kinase(MAPK)cascadeは進化的に高度に保存されたシグナル伝達経路である。近年、MAPKはいくつかのsubfamilyに分類できることが明らかとなった。その一つ、p38 MAPKは細胞のapoptosisやストレス応答に関わると考えられているが、個体レベルでの活性化機構や機能の解析は十分とは言えない。我々はp38 MAPKの活性化機構を、キイロショウジョウバエを用いて個体レベルで明らかにすることを目的として、研究を行ってきた。これまでにp38ホモログDp38の上流のMAPK Kinase KinaseでMEK Kinase (MEKK)に類似したD-MEKK1を同定した(井上らの発表を参照)。transgenic flyを用いた解析からD-MEKK1はDpp signalに対して負に働く可能性が示唆された。これはDp38bがDpp signalの正の調節因子である、とのこれまでの説明とは一致しない。そこで未知の調節機構を予想して、D-MEKK1と相互作用する因子をyeast two-hybrid systemを用いてscreenし、抑制型SmadのDadを得た。D-MEKK1突然変異体は単独では形態異常は見られないが、Dadとのdouble mutantを作成すると、それぞれよりも強い表現型が翅脈に見られた。この時、Mad signalの標的遺伝子と考えられるrhomboidの発現も増加していた。従って、D-MEKK1はDadと共にMad signalingを負に調節する可能性が示唆された。D-MEKK1によるMad signalingの負の調節機構について議論したい。)

P-14B
ショウジョウバエMAPKKK, D-MEKK1は、p38 MAPKの活性化を介してストレス応答に関与する
井上英樹*1、館野実1、鎌田このみ2、高江州義一1、安達卓3、辻順1、入江賢児1、西田育巧1、松本邦弘1
1 : 名大院・理・生命理学、CREST・科技団、2 : 北大・遺制研、3 : 神戸大・発達科学
A Drosophila MAPKKK, D-MEKK1, mediates stress response through activation of p38 MAPK
Hideki Inoue*1, Minoru Tateno1, Konomi Kamada2, Giichi Takaesu1, Takashi Adachi3, Jun Tsuji1, Kenji Irie1, Yasuyoshi Nishida1, Kunihiro Matsumoto1
(1 : Dept. of Molecular Biology, Nagoya Univ., CREST JST, 2 : Inst. for Genet. Med., Hokkaido Univ., 3 : Fac. of Human Dev., Kobe Univ.)

 哺乳類培養細胞において、p38 MAPKシグナル伝達経路は熱、浸透圧といった様々な環境ストレスにより活性化することが知られている。しかし、これら環境ストレスに対するp38 MAPKシグナル伝達経路の役割についてはほとんど知られていなかった。そこで、この伝達経路の生理的な機能を明らかにするため、個体レベルでの解析に有利なショウジョウバエをモデル動物として解析を行った。
 ショウジョウバエp38の上流で機能すると考えられるMAPKK、Licを用いたyeast two hybrid スクリーニングにより、哺乳類MAPKKK、MEKK4と相同性の高いショウジョウバエ新規MAPKKK、D-MEKK1を単離した。動物細胞での発現実験から、D-MEKK1はp38 MAPKを活性化することが明らかとなった。D-MEKK1がストレス応答において生理的に機能するかを調べるため、個体に高浸透圧ストレスを与えた結果、内在性D-MEKK1のキナーゼ活性が上昇した。また、D-MEKK1の機能喪失型変異体は、通常の飼育下では生存可能だが、高温、高浸透圧ストレスに対し高い感受性を示すことが明らかとなった。また、高温、高浸透圧といったストレス刺激をショウジョウバエ個体に与えたとき、野生型でD-p38の活性化が起きるのに対し、D-MEKK1変異体ではその活性化が大きく低下していた。これらの結果より、D-MEKK1を介したp38 MAPKシグナル伝達経路が、環境ストレスへの抵抗に重要な役割を果たしていることが示唆された。

P-15A
Armadilloと直接相互作用する新規Drosophila癌抑制遺伝子産物D6の解析
西田歩*1,濱田文彦2,友安慶典3,秋山徹1
1:東大・分生研・分子情報、2: MRC Lab. Mol. Biol., Cambridge, U.K.、3:Div.Bio., Kansas Univ.
Analisys of a novel tumor suppressor gene product D6 that directly interacts with Armadillo.
Ayumu Nishida1*,Fumihiko Hamada2,Yoshinori Tomoyasu3, Tetsu Akiyama1
(1:IMCB,Tokyo Univ. 2: MRC Lab. Mol. Biol., Cambridge, U.K. 3:Div.Bio.,Kansas Univ.)

 セグメントポラリティ遺伝子であるArmadilloは、細胞間接着に関わるカドヘリンの裏打ち蛋白質であり、またWinglessシグナル伝達系構成因子でもある。Armadilloはアルマジロリピートと呼ばれる12回の繰り返し構造をもち多くの蛋白質と相互作用することが最近の知見で得られている。
 そこでArmadilloの新たな機能を見出すべく、yeast two-hybrid screening法を用いてArmadilloと直接相互作用する蛋白質の探索を行ったところ、ショウジョウバエcDNAライブラリーより既知蛋白質と相同性のない新規遺伝子d6が見出され、in vitroにおける結合実験からD6蛋白質とArmadilloが実際に直接相互作用することが確認された。そこでさらにd6の生理的な機能を明らかにするためにd6の遺伝子変異動物の作製を試みた。  P因子の再転位によって作製されたd6変異体の表現型を観察したところ、ホモ接合体では、成虫原基の形成不全が認められ蛹形成の段階までに黒点様の癌が発生し殆どの個体が死亡した。このことからd6は細胞の増殖、或いは分化に必須であり、ショウジョウバエの癌抑制遺伝子であることが考えられる。現在、この変異体の解析を詳細に行っている。

P-15B
Short rangeのHedgehogはPXb41の発現を抑制することにより肢の中央の領域の運命決定をしている
稲木美紀子*1、織原美奈子2、小嶋徹也1、西郷薫1
1:東大・理・生化、2:理研・CDP
Short range hedgehog signaling determines the central structures of Drosophila leg, by repressing PXb41.
Mikiko Inaki*1, Minako Orihara2, Tetsuya Kojima1, and Kaoru Saigo1 ,
(1:Dept.Biophys. and Biochem. Fac. Sci. Tokyo Univ. and 2:CDP. RIKEN)

 ショウジョウバエの翅ではHedgehog (Hh)はDecapentaplegicとは独立に翅の中央の領域を決めている。このようなHhの機能はAPボーダーのごく近傍でのみみられる。我々はhhの温度感受性変異体を用い、short rangeのHhシグナルが欠失したような弱いhhの変異体の条件で、肢でもAPボーダーの近傍の構造物が欠失することをみいだした。また、short rangeのHhの下流で働くといわれているfusedの変異体でも同様の表現型がみられた。肢原基のAPボーダーの近傍の領域では2つのエンハンサートラップラインPXb41, L71が、それぞれ抑制的、誘導的にFusedを介してHhにより制御されていることがわかった。PXb41は新規の膜タンパク質をコードする遺伝子をトラップしていた。L71はengrailed(en)/invected(inv)領域にP因子が挿入していたことからen/invの前部区画のエンハンサーをトラップしていると考えられた。L71の発現は肢原基においてもenが前部区画で発現することを示唆しており、実際、蛹期の肢原基ではenが前部区画にも発現していた。また、PXb41をAPボーダーの近傍の領域で強制発現させるとhhと類似した表現型を示した。以上の結果からshort rangeのHhはPXb41を抑制することにより肢のAPボーダーの近傍の領域を決めていることが示唆された。

P-16A
Ebi/TBL1はEGFレセプターとNotchシグナル間クロストークに関与している
津田玲生*、林永美、林茂生
理研、発生・再生センター
Ebi/TBL1, a component of a co-repressor complex, mediates the cross talk between Egfr and Notch signaling.
L. Tsuda, Y.M. Lim, S. Hayashi
(RIKEN, CDB)

The Drosophila ebi has been genetically identified as a down-stream factor of Egfr signaling. A recent study, however, revealed that ebi also interact with Delta (Dl), a ligand of Notch. Genetic analysis showed that ebi regulates the Dl expression in photoreceptor cells (R cells) by suppressing Su(H), a down-stream factor of Notch signaling. The ebi activities contribute for the communications between R-cells and cone cells during the eye development.The fact that a phenotype of ebi, Su(H) double mutants were the same as that of Su(H) loss-of-function mutants suggested Su(H) is genetically down-stream of ebi. Biochemical analysis showed that Ebi and Su(H) associate with SMRTER transcription co-repressor. These results suggested that both Egfr and Notch signaling regulate the co-repressor activities. Our results are consistent with the recent report that the mammalian homologues of Ebi (TBL1) and Su(H) (CBF1) can bind to SMRT co-repressor, a mammalian SMRTER homologue. Therefore, it is strongly suggested that the regulation of co-repressor complex by Notch and EGFR signaling is important for an organ development and this interaction is evolutionary conserved in animal development.

P-16B
ショウジョウバエ脳におけるキノコ体神経芽細胞の分裂制御:核内レセプターtaillessの機能的重要性
来栖 光彦*1、岡部 正隆2、古久保-徳永 克男1
1:筑波大・生物科学 2:遺伝研・個体発生
Proliferation control of the mushroom body neuroblasts: functional requirement of a nuclear receptor gene, tailless, in the Drosophila brain
M. Kurusu*1, M. Okabe2 and K. Furukubo-Tokunaga1
(1: Inst. Biol. Sci, University of Tsukuba, Japan 2:Dept. Devel. Genet., National Institute of Genetics, Japan)

 キノコ体は、無脊椎動物の脳に広く存在する発達した神経束構造であり、嗅覚学習や認知を始めとする脳高次機能の中枢である。キノコ体を形成する神経芽細胞は、他の脳神経芽細胞と異なり、胚期から成虫にいたるすべての発生段階を通して分裂を継続することがしられている。我々は、これまでに、キノコ体形成を制御する遺伝子としてey, toy, dacの機能を明らかにしてきた。今回、これらの転写制御因子に加え、核内レセプター型転写因子tailless (tll)が、キノコ体神経芽細胞及び神経節母細胞で発現していることを明らかにし、さらにMARCMモザイク解析法を用い、キノコ体形成過程における機能を解析した。その結果、tll モザイクでは神経芽細胞の分裂が阻害され、キノコ体細胞数が劇的に減少することが明らかになった。さらに、tll は、toy、ey、dac とは独立に制御されていることが示唆された。以上の結果をもとに、ショウジョウバエ脳におけるキノコ体神経芽細胞の継続的な分裂能を支える機構について議論するとともに、嗅覚情報を中心とした学習・記憶系の普遍的発生機構について議論する。

P-17A
ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂異常突然変異のスクリーニング(X染色体)
布施直之*1、久田香奈子12、長沼絵理子12、張川1、松崎文雄123
1:東北大学・加齢研、2:CREST, JST、3:理研・発生再生センター
Genetic screen for mutations affecting the asymmetric division of Drosophila neuroblasts - Zygotic loci on the X chromosome -
Naoyuki Fuse*1, Kanako Hisata12, Eriko Naganuma12, Chuan Zhang1, Fumio Matsuzaki123 (1: IDAC, Tohoku Univ., 2: CREST, JST、3: Riken, CDB)

多様な細胞種をつくりだすメカニズムの1つに、細胞の非対称分裂がある。ショウジョウバエの神経幹細胞は、非対称分裂を研究するよいモデルである。胚発生の時期に神経幹細胞は表皮面に対して垂直方向に分裂し、大きさの異なる2つの娘細胞を生む。小さい娘細胞は神経前駆細胞の性質を獲得し、大きい娘細胞は元の幹細胞の性質を維持する。今までに、前駆細胞側への運命決定因子の分配、それに必要なアダプター因子の役割、幹細胞の分裂方向の規定のメカニズムが明らかとなってきた。しかし、娘細胞の大きさの非対称性など、未解明な問題も多い。本研究は、大規模なスクリーニングから、神経幹細胞の非対称分裂に異常が起こる突然変異を同定し、その表現型をクラス分けすることによって、非対称分裂の素過程を明らかにすることを目的とした。ethylmethane sulphonate を変異原として用いて、点突然変異を誘導し、劣性致死変異系統を作製した。神経幹細胞の細胞周期に協調して、細胞内局在をダイナミックに変化させるMirandaを指標にスクリーニングを行った。2100系統中6系統で、神経幹細胞の非対称分裂に異常が観察された。それらの表現型を報告したい。

P-17B
ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂異常突然変異のスクリーニング(第二染色体)
泉裕士*1,2、古屋亜佐子1,2、太田奈緒1,2、松崎文雄1,2,3
1 : 東北大・加齢研・神経機能情報、2 : CREST, JST、3 : 理研・発生再生センター
Genetic Screen for mutations affecting the asymmetric cell division of Drosophila neuroblasts -Zygotic loci on the second chromosome-
Yasushi Izumi*1,2, Asako Furuya1,2, Nao Ohta1,2 and Fumio Matsuzaki1,2,3
(1:IDAC, Tohoku Univ., 2:CREST, JST, 3:RIKEN, CDB)

”非対称分裂”は細胞の多様性を作り出す基本的なプロセスであり、ショウジョウバエの神経幹細胞はそのモデルシステムとして先端的な知見を提供している。ProsperoやNumbは神経幹細胞の分裂時に非対称に局在し、神経母細胞にのみ分配される事で神経細胞の運命決定を担っている事が知られている。Prosperoの非対称局在に必要なMirandaは神経幹細胞だけに発現し、basal側の細胞表層に局在する事から、神経幹細胞の非対称性を良く反映する。癌抑制遺伝子産物Giant larvae (Lgl)が非対称分裂に関わる因子である事は、その局在を指標とした染色体欠失変異体のスクリーニングにより判明した(大城ら、Nature 2000)。次の段階として、我々は化学変異剤 (EMS)によるスクリーニングに着手した。染色体欠失変異体では、染色体の一部領域が大きく欠失している為、複数の遺伝子の機能が同時に失われている。その為、胚の形態異常、発生停止などの影響が、さらなる変異の同定の妨げとなっている事が考えられた。点突然変異導入によるスクリーニングではその様な 影響が最小限に抑えられる事が期待された。第二染色体への点変異導入によるスクリーニングで inscuteable, lglなど既知の変異と共にいくつかの新しい変異が同定でき、このスクリーニング法が有効である事が示唆された。現在までの経過を報告する。

P-18A
ショウジョウバエの発育に関わる新規遺伝子gccの解析
古川義己*1、杉山伸1、森藤曉2、津田玲生3、西田育巧1
1: 名大・院理・生命、2: 奈良先端大、3: 理研発生再生研
gcc, a novel gene involved in the growth of Drosophila
Yoshimi FURUKAWA*1, Shin SUGIYAMA1, Satoru MORITO2, Leo TSUDA3 and Yasuyoshi NISHIDA1.
(1: Division of Biological Science, Nagoya University Graduate School of Science, 2: Nara Institute of Scinece and Technology, 3: RIKEN Center for Developmental Biology.)

 個体や器官のサイズは細胞の数と大きさとによって決められる。そして、これには細胞増殖において細胞の成長と細胞周期(分裂)とが互いに密接に連関し合って制御さ れることが重要と考えられる。P因子挿入突然変異の検索から、発育速度の低下、細 く短い剛毛、および母性効果による分割期細胞周期の停止を示す突然変異体を分離 し、その原因遺伝子gcc (growth and cell cycle affected) を同定した。これは機 能未知の進化的によく保存された新規のタンパク質をコードする。これのnull変異体 では、孵化後、殆ど発育することなく、約1週間生存する。これら突然変異のクロー ン解析から、その細胞増殖に対する正の機能が示唆された。cDNAを翅原基で強制発現 すると、細胞のサイズがコントロールに比べて大きくなることが認められた。また、 gcc cDNAの強制発現はアポトーシスを誘発する。複眼原基でgccとバキュロウィルス のp35を共発現すると、アポトーシスが抑制され、個眼数の有意の増加が認められ た。このようなことから、gccは、細胞の成長と分裂とに関与することが示唆され る。また、HAタグしたgcc cDNAを個体で発現させ、細胞質内の膜系に分布することが 示唆された。複眼での強制発現による表現型を利用して、細胞周期進行に関わる突然 変異との遺伝的相互作用を解析した。そして、gccがE2F-DPの上流で機能することが 示唆された。細胞の成長に関わるインシュリン・シグナル伝達系やTOR (Target of rapamycin) との遺伝的相互作用などについても報告する。

P-18B
ショウジョウバエの発育を制御するgccに類似した出芽酵母遺伝子の解析
壱岐一也*、杉山伸、西田育巧
名大・院理・生命
A budding yeast gene similar to gcc which regulates growth in Drosophila
Kazuya IKI, Shin SUGIYAMA, Yasuyoshi NISHIDA.
(Division of Biological Science, Nagoya University Graduate School of Science.)

 ショウジョウバエのP因子挿入突然変異の検索から、発育に関わる新規遺伝子gcc(growth and cell cycle affected) を同定した。これは機能未知の新規のタンパク質をコードし、そのC末側約150アミノ酸残基の領域に類似した配列がゲノムデータベースから多数見い出された。これらは、3サブファミリーに分類可能で、全ゲノム配列の決定された出芽酵母、線虫、ショウジョウバエでは全サブファミリーが揃っている。4遺伝子の存在する出芽酵母をモデルとして、それらの機能解析を進めつつある。今回は、ショウジョウバエgccと同じサブファミリーに属する遺伝子(Sc-A) について主に報告する。Sc-Aは生存に必須で、その破壊株は細胞周期のG1期で停止する。これのts変異株を作成し、その表現型解析とともに、multi-copy suppressorsの検索を進めつつある。また、Mycタグした遺伝子の発現から、ショウジョウバエgccと同様に、その細胞質内の膜系への分布を認めた。膜移送や増殖に関する各種阻害剤に対する感受性などについても報告する。

P-19A
ショウジョウバエの減数分裂組換え遺伝子recはMCM関連タンパクをコードしている
松林宏*、山本雅敏
京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター
REC, a new member of MCM-related proteins is required for meiotic recombination in Drosophila melanogaster
Hiroshi Matsubayashi*, Masa-Toshi Yamamoto
(Drosophila Genetic Resource Center, Kyoto Institute of Technology)

キイロショウジョウバエのrec突然変異体は、雌での減数分裂組換え頻度が野生型の10%以下に低下する。様々な欠失系統を用いたマッピングを行いrec遺伝子を22kb以内に位置づけた。この領域内のDNAをプローブとして卵巣由来cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、2つの遺伝子を同定した。1つはアミノ酸配列よりα-mannosidaseII (Man II)と考えられた。このcDNAを用いて作製した形質転換体はrecの表現を回復できなかった。2つめの遺伝子はcDNAの全長4146bpで、885アミノ酸よりなるタンパクをコードしている。このcDNAを用いて作製した形質転換体はrecの表現を完全に回復したことからrec遺伝子と確認された。また3つのrec対立遺伝子の変異部位も確認した。データベースの検索からRECはMCMと全体にわたり高い相同性をもつことが判明した。MCMは酵母から哺乳類まで保存された6種類(MCM2-MCM7)の互いに似通った一連のタンパク質で、体細胞分裂時のDNA複製に必須の役割を果たしている。ショウジョウバエでも既に6種のMCMが同定されているが、RECはこれら6つのMCMとは多少隔たっている。酵母ではMCM関連タンパクは6種しかないが、ゲノム配列の決定されたヒト、シロイヌナズナでは通常の6つのMCM以外に7番目のMCM関連遺伝子が見つかっている。RECは通常のMCMより、これら7番目のMCM関連タンパクとより似ていることから、rec遺伝子はショウジョウバエより高等な生物種で保存されていることが示唆される。rec遺伝子の体細胞での機能について現在解析中である。

P-19B
雌不妊突然変異では交尾コストが大きい
上山盛夫*、布山喜章
都立大・院理・生物科学
Increased cost of mating in female sterile mutants.
Ueyama, M.* & Fuyama, Y. 
(Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.)

 キイロショウジョウバエの雌の寿命は交尾によって短くなることが知られているが、これは、交尾時に雄から雌に移行する精液中の物質によるとされている。雄による雌のこのような操作に対して、雌側は何らかの防衛手段を持つ可能性が考えられる。雌の対抗手段を探索する試みの一つとして、雌の生殖活動の有無が交尾のコストに影響を及ぼすかどうかを調べた。雌の生殖活動を排除するために、生殖器官が欠落するosk、卵形成がみられないotuおよびovo[D]、卵形成は正常だが交尾しても排卵/産卵しないfs(3)FK6を用いて、既交尾雌と未交尾雌の寿命を比較した。
 その結果、ヘテロ接合雌では、交尾の有無による寿命の差は突然変異によってさまざまであったが、ホモ接合雌の場合には、すべての雌不妊突然変異で、交尾により寿命が短縮することがわかった。既交尾のホモ接合体雌にみられる寿命の短縮は、ヘテロ接合雌の寿命を考慮に入れると、いずれも有意であった。
これらの結果から、雌が卵形成や排卵、産卵などの生殖活動を行うことにより、寿命に及ぼす交尾の影響が緩和されることが示唆される。雌の生殖に伴う何らかの生理的変化が交尾のコストの低下に関わるものと考えている。

P-20A
雄不妊突然変異体ms(3)T281の発生遺伝学的解析
大迫隆史*・山本雅敏
京都工芸繊維大学・ショウジョウバエ遺伝資源センター
Developmental genetic analyses of male sterile mutation ms(3)T281
OHSAKO, Takashi* and YAMAMOTO, Masa-Toshi
(Drosophila Genet. Res. Ctr., Kyoto Inst. Tech.)

 雄不妊突然変異体ms(3)T281の精子は、運動能を有し、交尾によって雌に移動した後、貯精される。しかしながら、交尾した雌が産卵した卵の孵化率は0.1%以下である。精子尾部を認識する抗体を用いて抗体染色行った結果、精子の卵への侵入は高頻度に起こっていることが確認されたが、核分裂を開始している卵の割合0.1%以下であった。このことから、ms(3)T281は、受精後、胚発生を開始するために必要な遺伝子であることが明らかとなった。正常発生においては、雄性前核が雌性前核と融合するのに先立ち、精子頭部を包む膜がれ、雄性前核の脱凝縮が起こる。DAPIを用いて受精した精子の頭部を観察した結果、ms(3)T281変異体では、こ脱凝縮が見られず、精子頭部が凝縮したままであった。この表現型はms(3)snky変異体のものと非常によく似いる。ms(3)snkyはms(3)T281と相補するため、ms(3)T281は新規の遺伝子である。また、遺伝子座は、遺伝学的に3-28.1、細胞学的に66D10;66E1-2に位置し、DNAにして約300kbの範囲内にある。この範囲内には約30個の遺伝子が含まれると推定されている。ms(3)T281遺伝子産物の同定とより詳細な遺伝子座の決定を目指し、精子タンパクの二次元電気泳動と新しい欠失染色体の作製を行っている。

P-20B
ショウジョウバエの微小管結合タンパクOrbitによる細胞分裂、減数分裂および細胞分化の制御
井上喜博*1、鈴木隆夫1、E. Mathe2、山口政光3、山本雅敏1
1:京都工繊大・ショウジョウバエセンター、2:ケンブリッジ大・遺伝、3:京都工繊大・応用生物
A role of the microtubule-associated protein, Orbit in somatic cell division, meiotic division and oocyte differentiation.
Inoue,Y.H*1., T.Suzuki1., E. Mathe2., M.Yamaguchi3., M.Yamamoto1
(1Kyoto Inst. Tech. DGRC., 2Dept. Genet. Cambridge Univ., 3Kyoto Inst. Tech. Applied Biol.)

 微小管は細胞分裂期における染色体分配や細胞質分裂あるいは間期における細胞内物質輸送などに必須な細胞骨格である。我々がショウジョウバエから同定した微小管結合タンパクOrbitは、分子量165kDの塩基性タンパクで、GTPの加水分解に依存して微小管に結合する。Orbitは進化の過程で保存されたタンパクである。orbit 遺伝子が欠失した変異体では、著しく倍数化した細胞が出現し、幼虫期で致死となる。これまでの解析から染色体の倍数化の原因の一つは、異常な構造のM期微小管による染色体分配の阻害であると考えられた。Orbitは、分裂極の分離を制御するキネシン様モーター、KLP61Fと強く相互作用する。一方、変異体雄の減数分裂では、分裂後期に観察されるcentral spindleの形成が阻害され、その結果収縮環が作られないことを見い出した。変異体細胞で観察された染色体の倍数化は、染色体の分配と細胞質分裂の両方の欠損によると推測している。さらにhypomorph型のorbit変異体は、雌雄とも不妊になる。卵および精子形成過程においてOrbitタンパクの細胞内局在を調べるとともにhypomorph型変異体の表現型を調べた。その結果、Orbitタンパクは、生殖細胞の形成過程における細胞分裂と減数分裂の進行に必須であり、微小管およびfusomeの構築に深く関与すること、卵室内の間期微小管ネットワークの形成を制御して卵母細胞の分化にもかかわることが示された。

P-21A
精子競争におけるY染色体の役割
鈴木 美穂、布山 喜章
都立大・院理・生物科学
The role of the Y chromosome in sperm competition
Suzuki,M &Fuyama,Y
(Dept. Biol., Tokyo Metropolitan Univ.)

 ショウジョウバエのY染色体の大部分は遺伝的に不活性とみなされ、これまであまり注目されてこなかった。しかし、雄に固有であるY染色体は、雄にとって有利な方向への選択圧を常に受けることから、雄間ならびに雌雄間の性選択に関係する遺伝子が蓄積していることが予想される。本研究では、Y染色体が例外的に雄雌間を往来するC(1)DX系統の持つY染色体に注目し、精子置換、交尾率、精子数など、精子競争の要因となる特性に関して、通常のY染色体との間で差が見られるかどうかを調べた。
 その結果、C(1)DX系統由来のY染色体の中に、精子置換能力の低いものがあることがわかった。野外集団中由来のY染色体についても、精子置換能力の変異がみられるかどうかを調べている。

P-21B
ショウジョバエ変態初期に腹髄の神経細胞で見られるプログラム細胞死の分子機構
辻村秀信*
東京農工大学発生生物学
Programmed Cell Death of Neurons in the Abodominal Ganglia on the Early Stage of Metamorphosis
Tsujimura, Hidenobu
(Developmental Biology, Tokyo University of Agriculture and Technology)

完全変態昆虫は変態により行動を転換する。この行動転換は、主として変態時の神経系の再構築によっている。この研究では、この神経系の再構築の重要な要素の一つで ある神経細胞のプログラム細胞死の分子機構をショウジョウバエを用いて明らかにすることを目的としている。ショウジョウバエでは囲蛹殻形成後(APF)、腹部神経節に特異的に大量の細胞死が観察される。この細胞死はAPF1.5時間から始まり、急速に増 加し、APF6時間にピークとなる。この細胞死はp35で阻害されるのでカスパーゼを介した細胞死である。このときに死ぬ細胞種をさまざまな組織特異的GAL4ラインを用い て調べた。p35を分化した神経細胞で発現させるとほとんどの細胞死が抑制されたので、この細胞死は大部分が神経細胞によるものである。運動神経でp35を発現させるとかなりの細胞死が抑制されたので、運動神経の細胞死が相当数ある。グリア細胞で発現させても、また、ニューロブラストで発現させてもその数は減らなかったので、 これらの細胞種はあまり死んでいない。つぎに、細胞死誘導遺伝子の働きを様々な欠失や逆位を用いて調べたところ、hidの全く欠失した遺伝子型の個体の細胞死は約半数となったことから、hiが細胞死誘導に重要な役割をしているが、これだけではない。reaper, grimを1つだけ欠く個体では細胞死が一定量減少したことから、これら二つの遺伝子も関与している。

P-22A
ショウジョウバエdMLF遺伝子の関与する新規アポトーシス制御機構の解析
大野勝人*1、加藤規子3、加藤順也3、田中利明3、田口修2、山口政光1
愛知がんセ・研・1発がん、2分子病態、3奈良先端・バイオ
The dMLF gene is involved in a novel apoptosis-regulated pathway
Katsuhito Ohno*1, Noriko Kato3, Jun-ya Kato3, Toshiaki Tanaka3, Osamu Taguchi2, Masamitsu Yamaguchi1
(Div. of 1Biochem. and 2Mol. Pathol., Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 3Bio., Nara Inst. Sci. Tech.)

 我々は、ヒトのt(3;5)転座をもつ骨髄異形成症候群および急性骨髄性白血病の原因融合遺伝子(NPM-hMF1)として同定されたhMLF1遺伝子のショウジョウバエホモログdMLF遺伝子を単離した。そして、NPM-hMLF1の培養細胞への強制発現がアポトーシスを誘導することから、dMLFのアポトーシスへの関与について検討した。ショウジョウバエのアポトーシス誘導因子としては、reaper、hid、grimが同定されており、これらを複眼原基特異的に高発現させると異所的なアポトーシスを誘導し、複眼形態形成異常(rough eye 表現型)を示す。ここで、dMLFを共発現させるとreaper、hid、grimの誘導するrough eye 表現型を抑圧することを見いだした。一方、線虫のカスパーゼ活性化因子Ced-4やショウジョウバエカスパーゼの一つdroncの共発現によるrough eye表現型は、dMLFの共発現により抑圧されなかった。このことは、dMLFがアポトーシス誘導機構において抑制的に働く因子であり、アポトーシス誘導機構の初期段階で機能することを示唆する。さらにdMLFの関与するアポトーシス誘導機構についての知見を得るために、hMLF1の相互作用因子として単離されたhMIP3のショウジョウバエホモログ、dMIP3遺伝子を単離し、GSTプルダウンアッセイおよび免疫沈降法により、dMLFとdMIP3が相互作用することを確認した。現在、このdMIP3遺伝子の遺伝子導入ハエを作成しており、このdMIP3遺伝子のdMLF遺伝子の関与する新しいアポトーシス制御機構への関与について解析中である。

P-22B
ショウジョウバエの視葉神経細胞は、網膜からの神経結合が断たれると細胞死する
鮎川理恵*、辻村秀信
東京農工大学・発生生物学研究室
Number of Cell Death in the Developing Optic Lobe Increases when Innerva
tion of Retinal Axons is Deprived in Drosophila
Rie Ayukawa*, Hidenobu Tsujimura Department of Development Biology, Tokyo University of Agriculture and Technology

 発生中の神経系では、正常な神経結合の形成が神経細胞の生存にはたらいている。発生中に、シナプス前の神経がダメージを受けるとシナプス後の神経が死ぬ場合があることが知られている。このような、シナプス前神経がシナプス後神経の生存を調節していることについての研究は、脊椎動物において広くなされているが、その分子メカニズムはまだ明らかにされていない。ショウジョウバエのCNSでは、変態中、神経回路の大きな改変が行われる。この改変には、部位特異的な細胞死が重要な役割を果たしており、CNSの中で視覚情報を処理する領域である視葉においても細胞死が観察される。このときの細胞死数が、「眼なし」突然変異体では野生型よりも増加するために、ショウジョウバエにおいても、シナプス前神経がダメージを受けるとシナプス後神経が死ぬと考えられてきた。しかし、その証明はまだなされていない。
 そこで本研究では、網膜からの神経結合が断たれると視葉神経細胞の細胞死が増加することを証明した。 「眼なし」突然変異体のso[D]の視葉では、野生型よりも細胞死数が増加した。視葉はso[D]であるが、網膜が回復した突然変異体のey-GAL4/so[D];UAS-soの視葉では、細胞死数はso[D]よりも減少した。また、so[D]とは別の「眼なし」突然変異体のGMR-hid10の視葉では、細胞死数が増加した。これらの結果は、ショウジョウバエの視葉で起こる細胞死の数は、網膜からの神経結合が断たれると増加することを示している。

P-23A
異所発現トラップ法による神経細胞死実行遺伝子の同定
嘉糠洋陸*1、倉永英里奈1,2、平等哲男1、井垣達吏1,2、相垣敏郎3、岡野栄之4、三 浦正幸1
1理研・脳セ・細胞修復、2阪大・機能形態、3都立大・理・生物、4慶應大・医・生理
Identification of novel neural cell death genes by misexpression screen
Hirotaka Kanuka1, Erina Kuranaga1,2, Tetsuo Hiratou1, Tatsushi Igaki1,2, Toshiro Aigaki3, Hideyuki Okano4, Masayuki Miura1
(1Cell Recov. Mech., BSI, RIKEN, 2Dept. Cell Biol. Neurosci., Osaka Univ., 3Dept.Biol. Sci., Tokyo Met. Univ., 4Dept. Physiol., Keio Univ.)

 確立されたモデル生物系であるショウジョウバエでは、分子レベルでの様々な細胞内シグナル伝達経路と、個体の表現型とを密接に関連させて研究を行うことが可能である。哺乳類での細胞死実行メカニズムを解明する上でショウジョウバエは有用なモデル系であると考えられる。我々は新規の神経細胞死コンポーネントを探索すべく、ショウジョウバエにおいて異所発現トラップ法を用いたスクリーニングを行った。複眼のR7光受容体細胞特異的なGAL4系統であるrh3-GAL4とGS系統を交配し、F1世代の成虫を10日間生育させた後、複眼切片を作成した。この実験系において、GS系統により細胞死実行遺伝子が強制発現されれば、R7細胞は消失すると予想される。rh3-GAL4系統では、GAL4タンパク質が分裂終了後のR7細胞にのみ発現するため、細胞の分化・分裂に影響を与えることなく、細胞自律的に機能する細胞死実行遺伝子を同定出来る。スクリーニングの結果、R7細胞に効率的に細胞死を誘導するGS系統を3系統得た。この中の1系統(endd2)はER膜上に存在するタンパク質をコードしており、新規の細胞死誘導経路に関与していることが明らかとなった。今回はこのendd2系統の 細胞死実行機構を、神経変性疾患モデルとの関連を含めて報告する。

P-23B
ショウジョウバエ異所発現スクリーニングによる新規細胞死制御因子の同定
井垣達吏*1, 2、菅田浩司1, 3、後藤友希1、嘉糠洋陸1、相垣敏郎4、三浦正幸1
1理研・脳セ・細胞修復、2阪大・機能形態、3阪大・染色体、4都立大・理・生物
Identification of novel cell death regulators by a Drosophila misexpression screen
Tatsushi Igaki1, 2, Hiroshi Kanda1, 3, Yuki Goto1, Hirotaka Kanuka1, Toshiro Aigaki4, Masayuki Miura1
(1Cell Recov. Mech., BSI, RIKEN, 2Dept. Cell Biol. Neurosci., Osaka Univ., 3Div. Mol. Genet., Osaka Univ., 4Dept. Biol. Sci., Tokyo Met. Univ.)

 ショウジョウバエには哺乳類でみられるような細胞死制御因子群が機能的によく保存されており、その個体レベルでの解析に非常に適したモデル系であるといえる。我々は細胞死の調節機構を生体レベルで明らかにしていく目的で、ショウジョウバエ異所発現スクリーニングによる新規細胞死制御因子の同定を試みた。UAS 配列を双方向にもつ異所発現ベクター (GS ベクター) をゲノム中にランダムに挿入した系統 (GS 系統) と、ショウジョウバエ複眼特異的な GAL4系統 (GMR-GAL4 系統) とを交配し、F1 の複眼の表現型を解析した。1000 系統の GS 系統をスクリーニングした結果、複眼サイズが顕著に縮小する 2 系統(Regg1 及び Regg2) を得た。Regg1 における複眼の縮小は大過剰の細胞死を伴うものであったが、その表現型は Caspase 阻害蛋白質 P35 や DIAP1 の共発現により部分的にしか抑制されなかった。ゲノム解析及び RT-PCR 解析により、GSベクター挿入部位近傍に存在し GAL4 依存的に強く転写活性化される新規遺伝子 regg1 を同定した。regg1 mRNA の発現は全ての発生ステージにおいて検出され、その発現パターンは、胚及び 3 齢幼虫期においては神経系に限局していることが分かった。現在、Regg1 系統の遺伝学的解析を行うとともに、regg1トランスジェニックフライ及び regg1 機能欠失型アリルを作製しており、併せて報告したい。

P-24A
Reaper依存性細胞死を制御する分子の遺伝学的スクリーニング
倉永英里奈*1,2、嘉糠洋陸1、井垣達吏1,2、岡野栄之3、三浦正幸1
理研・脳セ・細胞修復1、阪大・機能形態2、慶応大・医・生理3
Identification of cell death related genes that regulate the function of
Reaper
Erina Kuranaga1,2, Hirotaka Kanuka1, Tatsushi Igaki1,2, Hideyuki Okano3, Masayuki Miura1
(1Cell Recov. Mech., BSI, RIKEN, 2Dept. Cell Biol. Neurosci., Osaka Univ., 3Dept. Physiol., Keio Univ.)

 ショウジョウバエ細胞死実行因子として知られるReaperは、下流でミトコンドリアのチトクロムCの放出を促し、Caspase活性化因子であるDapaf-1を活性化するというシグナル伝達機構を持つことが明らかとなっている。しかしその他の中間のシグナル分子を含めると、詳細な制御機構について未だ不明な点が多い。  我々は、Reaperの作用機序に含まれる細胞死制御因子を同定する目的で、Reaperの細胞死誘導活性に基づく表現型を指標に染色体欠失系統のスクリーニングを行い、その結果Reaperの強制発現による表現型を抑制する染色体欠失系統を数系統を得た。この中の1系統において、その欠失領域に存在する原因遺伝子の候補を解析した結果、JNKリン酸化活性を持つ新規キナーゼを同定した。さらに遺伝学的な解析から、Reaperによる細胞死誘導の新たな調節経路として、今回同定した新規キナーゼを含むJNK経路が存在する可能性が示された。今回はこの新規キナーゼの機能解析に加え、他の欠失領域に存在する遺伝子についても報告する。

P-24B
escargot遺伝子産物が成虫原基細胞の増殖と分化に果たす役割
白木岐奈*1 布施直之2 林茂生1
1:遺伝研・無脊椎 2:東北大・加齢研・神経機能情報
A role of escargot protein for differenciation and proliferation of imaginal disc cells
Michina Shiraki*1 Naoyuki Fuse2 Shigeo Hayashi1
(1: Invertebrate Genetics, NIG 2: Developmental Neurobiology, Tohoku Univ.)

ショウジョウバエの発生過程において、幼虫組織を構成する細胞はmitosisを経ずにDNA複製とgap phaseを繰り返して多倍体化するendoreplicationによって増殖する。一方、将来成虫組織に分化するimaginal discやhistoblastの細胞は通常の細胞周期に従い、2倍体を維持している。これまでの研究で、Zn2+ finger motifを持つ転写因子escargot遺伝子産物はhistoblastの細胞がendoreplicationに入るのを阻止し、2倍体を維持する機能に関わっていることが明らかになっている。今回は、escargot遺伝子産物がimaginal discの細胞の増殖と分化に果たす役割を検討した。いくつかのesg alleleのトランスヘテロ接合体を作成すると、3齢幼虫後期のimaginal discの一定領域でDNAが多倍体化して核・細胞ともに肥大化し、cuticle様の物質がdisc内腔に蓄積される。3齢幼虫期に分泌されるクチクラの構成タンパク質の一種LCP-1遺伝子の発現をin situ hybridizationで調べたところ、esg変異体ではperipodial membrane上の多倍体化した細胞でlcp-1 mRNAの発現がみとめられ、esgト ランスへテロ接合体の成虫原基細胞がendoreplicationに突入するのみならず、幼虫 細胞へtransformしていることが示唆された。この現象がesgの機能が失われたことによってdirectに引き起こされたのか調べるため、imaginal disc でesgクローンを作成した。minute backgroundでは、esg-/-細胞 群の一部にdisc上皮から逸脱した細胞塊やDNAが多倍体化した大きな細胞が観察され、cuticleの分泌も確認された。このことから、esgは imaginal discの細胞の倍数性の維持と、成虫原基細胞と幼虫細胞のidentitiyの決定にも直接関与している可能性が窺われる。現在は、discの細胞周期の進行とesgの関わりや、分化転換した細胞の特性について解析を行っている。

P-25A
ショウジョウバエMale-Specific Lethal complexの雄X染色体特異的な局在機構
影山裕二*1、Gabriella MENGUS2、Richard L. KELLEY3、Peter B. BECKER2、Mitzi I. KURODA3
1: 奈良先端大・バイオ、2: Ludwig Maximilian Univ., Germany、3: Baylor Col. Med., USA
A Targeting mechanism of the Male-Specific Lethal complex on the X chromosome in Drosophila males.
Yuji KAGEYAMA*1, Gabriella MENGUS2, Richard L. KELLEY3, Peter B. BECKER2, Mitzi I. KURODA3
(1: Grad. Sch. Biol. Sci., NAIST, 2: Ludwig Maximilian Univ., Germany, 3: Baylor Col. Med., USA)

 ショウジョウバエMale-Specific Lethal (MSL) complexは、RNAヘリカーゼ(MLE)、ヒストンアセチル化酵素(MOF)、ヒストンリン酸化酵素(JIL-1)を含む6種のタンパク質および2種のnon-coding RNA(roX1、roX2)により構成される、リボ核酸タンパク質複合体である。MSL complexは雄染色体のほぼ全域に特異的に結合しており、ヒストンの修飾を介して雄X染色体の転写量を増大することにより雌雄間の性染色体遺伝子量の補正をおこなっている。
このようなX染色体のほぼ全域といった巨大なゲノム領域を認識する機構とは果たして何であろうか?近年の研究から、MSL complexはまずX染色体上の比較的少数の部位(chromatin entry sites)に結合した後、近傍のクロマチン領域へと二次的に移動していくことが明らかになりつつある。しかしながらMSL complexがどのような機構で一次標的であるchromatin entry siteを認識するのか、またchromatin entry siteからどのような機構で近傍のクロマチンに移動していくのかなど、その分子メカニズムは未だ不明である。
 我々はこれらの疑問に答えるため、chromatin entry siteの一つであるroX1遺伝子座の標的部位を同定し、いくつかの解析をおこなった。その結果、約200 bpのroX1遺伝子断片がMSL complexの標的DNA配列として機能すること、MSL complexのroX1遺伝子座への結合にはMLEヘリカーゼが必要であること、MSL complexの結合部位には雄特異的なDNase I感受性部位があることを見出したので報告する。

P-25B
ショウジョウバエの翅成虫原基におけるDREFの機能解析
吉田英樹*1,2、井上喜博3、広瀬富美子1、坂口謙吾2、松影昭夫4、山口政光1
1 : 愛知がんセ研・発がん制御、2 : 東京理科大・理工・応用生物、3 : 京都工繊大・ショウジョウバエ遺伝資源センター、4 : 日本女子大・理学・物質生物
The analysis of DREF in the Drosophila wing imaginal disc
Hideki Yoshida *1, 2, Yoshihiro H. Inoue 3, Fumiko Hirose 1, Kengo Sakaguchi 2, Akio Matsukage 4, Masamitsu Yamaguchi 1
(1 Div. Biochem., Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 2 Dept. of Appl. Bio. Sci., Sci. Univ. of Tokyo, 3 Drosophila Genet. Res. Ctr., Kyoto Inst. of Technol., 4 Chem. and Biol. Sci., Fac. of Sci., Japan Women's Univ.)

 今回我々は、発生過程における各組織でのDREF (DNA replication-related element binding factor)の生理機能を明らかにする目的でGAL4/UASシステムを用いてDREFを過剰発現させ、特に翅形成への効果を調べた。GAL4 driver 24系統のうち4系統(dll-GAL4, en-GAL4, dpp-GAL4, ap-GAL4)を用いてDREFを過剰発現させたとき、翅の一部の欠損、萎縮及び翅脈の過形成などの形態異常が観察された。これらの翅成虫原基ではDREFを過剰発現させた領域で異所的なアポトーシスが観察された。更に、アポトーシス誘導因子の遺伝子量の減少、アポトーシス阻害因子の共発現によってDREF過剰発現の誘導する翅の形態異常が抑圧された。また、翅脈の形成に関与することが知られているMAPK経路を構成する因子であるMAPKがDREFの過剰発現領域で異所的に活性化され、D-rafの遺伝子量の減少によって翅の形態異常が抑圧された。以上の結果から、我々は、DREFの過剰発現がMAPKシグナル経路の活性化を介してアポトーシス及び翅脈の過形成を誘導し、最終的に翅の萎縮と翅脈の過形成を引き起こすと考えている。また、DREFの結合配列と重なる配列を標的としているBEAF32の遺伝子量の減少、過剰発現によりDREF過剰発現の誘導する形態異常を抑圧、増悪することも明らかとなった。

P-26A
ショウジョウバエseven-up遺伝子の中枢神経系における機能
金井誠、岡部正隆、広海健
遺伝研、発生遺伝研究部門
Function of seven-up in Drosophila CNS development
Makoto KANAI,Masataka OKABE and Yasushi HIROMI 
(Dept. Dev. Genet., Natl. Inst. Genetics)

胚中枢神経系において各神経芽細胞(NB)が多様な個性を持つ神経細胞を生み出すためには、NBは分裂ごとにその個性を変えなくてはならない。そのような「時間的情報」はNB細胞系譜生成過程の中の限られた期間にのみ発現している遺伝子によって担われている可能性が高い。核内レセプター型転写因子をコードするseven-up(svp)は、多くのNBで発現するが、その発現時期はいづれの細胞系譜でも系譜の一部に限られている。svpは個眼の光受容細胞分化において2種のニューロン間の遺伝的スイッチとして働いていることから、胚中枢神経系の細胞系譜においても、その発現がNBの個性を規定していることが予想される。そこで我々はsvpが発現しているNB3-1に注目し、研究を行っている。
 svp機能欠失変異体は胚致死性であり、胚中枢神経系にはいくつもの異常がある。なかでもISNbと呼ばれる運動神経軸索束において、筋肉への異常な投射が観察された。ISNbはいくつかの神経細胞により構成されているが、その主要な神経細胞群にNB3-1から生まれるRPニューロンがある。そこでRPニューロンで発現しているlim3のレポーター系統の発現をsvp機能欠失変異体で調べたところ、lim3レポーター遺伝子陽性細胞の数が増加していた。この結果はsvpが神経細胞の個性獲得機構に関与していることを示唆している。しかし、細胞系譜の時系列が同定されたNBは少なく、我々が注目しているNB3-1でも各神経細胞がどのような順序で生み出されるのかは不明である。そこで我々はNB3-1の細胞系譜の解明を試みている。

P-26B
核内レセプターSeven-upによる転写制御機構の解析
松野元美*1、小瀬博之2、Steve West3、広海健1
1: 国立遺伝研 発生遺伝、2: 徳島大 医学部、3: Princeton Univ. USA
Functional mechanism of a Drosophila nuclear receptor, Seven-up
Motomi Matsuno*1, Hiroyuki Kose2, Steve West3, Yasushi Hiromi1
(1: Dept. of Devel. Genetics, Natl. Inst. of Genetics, 2: The Univ. of Tokushima School of Medicine, 3: Princeton Univ., USA)

核内レセプタースーパーファミリーは発生を含む様々な生命現象を制御する。 COUP-TFファミリーは中でも最も進化的起源が古い核内レセプターのひとつである。起源が古いにも関わらず、そのアミノ酸配列は種間で極めて良く保存されており、COUP-TFが進化的に保存されている分子と相互作用することを示している。COUP-TFファミリーは一般的に転写抑制因子として機能することが知られており、多くの動物で神経発生に関わることが示唆されている。しかし神経の形態形成においてCOUP-TFファミリーの転写抑制活性がどのように使われているのかという点についてはほとんど分っていない。そこで、我々はDrosophila COUP-TFであるSeven-up (Svp)を用いてこの問題に取り組んでいる。Svpは発生において一部の視神経細胞に発現し、細胞運命を決めるスイッチ遺伝子として機能する。そこで我々は、(1)Svpはどのようにしてターゲット遺伝子の転写を抑制しているのか?(2)視神経細胞の発生においてどのような遺伝子がSvpのターゲットとして働いているのか?の2点について解析を行なった。
 まず、Yeast Two Hybrid Systemにより、Svpのリガンド結合ドメインがTFIIHのp52サブユニットと相互作用することを見いだした。 更に、p52サブユニットが成虫原基の成長及び増殖に必要であることを示した。TFIIHは転写因子としての機能だけではなく、細胞周期の制御及びDNA修復にも関与することから、SvpがTFIIHを介してそのような現象を制御している可能性がある。また、Svpのターゲット遺伝子を探索する目的でOrdered Differential Display(O.D.D)を用いたスクリーニングを行ない、Svp機能欠損系統で発現が上昇する遺伝子の候補を約50個単離した。

P-27A
ショウジョウバエを用いたヒトアンドロゲンレセプターの転写制御機構系の構築
武山健一* 12、山本紋子12、伊藤紗弥1、谷本拓1、多羽田哲也1、加藤茂明12
1:東大・分生研、2:科技団・CREST
Construction of the transcriptional regulation by human androgen receptor using Drosophila
Ken-ichi Takeyama, Ayako Yamamoto, Saya Ito, Hiromu Tanimoto, Tetsuya Tabata and Shigeaki Kato

ステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーに属するアンドロゲンレセプター (AR)はリガンド依存性転写制御因子であり、標的遺伝子群の転写を制御する。AR転写 メカニズムはリガンド依存的に相互作用する転写共役因子群が、転写促進および抑制 を仲介すると理解されている。従ってAR転写制御機構全貌を把握するには、新たな転 写共役因子や標的遺伝子の更なる探索が必須と考えられる。一方、ショウジョウバエ においても種々の核内レセプターが機能し、哺乳動物様の転写共役因子群が仲介する 転写制御系が存在する。そこで本研究は、ARの転写制御メカニズムおよび遺伝子発現 カスケードの分子メカニズムを個体レベルでの解析系として、ショウジョウバエにお けるARの転写制御機構系の構築を試みた。本研究ではARおよびAR応答配列をもつ GFPレポーター遺伝子のトランスジェニック個体を作出し、ショウジョウバエ内でリガンド依存的なARの転写活性能を検討した。その結果、リガンド依存的にARの転写促進が認められ、またこれら個体の表現型は変異を引き起こさないことが判明した。従ってショウジョウバエにおいてリガンド依存的なAR転写系が機能すると考えられた。 これらのことより、ショウジョウバエにおいて哺乳動物AR標的遺伝子の機能解析や変異体によるAR転写共役因子群のgenetic screeningに応用でき、転写制御カスケードの構築が可能と考えられる。今後、極めて有用な個体レベルの核内レセプター転写系 の一つであると考える。

P-27B
ショウジョウバエ転写制御因子FTZーF1の標的遺伝子EDG84Aの組織特異的発現を決定する因子について
萱嶋 泰成*, 広瀬 進, 上田 均
遺伝研・形質遺伝, 総研大・生命科学
Regulation mechanism of space specific expression of FTZ-F1 target gene EDG84A in Drosophila melanogaster
Yasunari KAYASHIMA*, Susumu HIROSE, Hitoshi UEDA
( Natl. Inst. Genet., Grad. Univ. Adv. Studies)

 変態昆虫における変態期は、成虫の形態へと劇的な変化を遂げる重要なステップであり、この時期に行なわれる転写制御機構の分子メカニズムを調べることは、発生過程、特に変態の意義について考えるうえで重要な課題のひとつである。

 ショウジョウバエFTZ−F1は、脱皮や変態期の特定の時期に、エクダイソンで誘導されて一過的に発現し、これらの過程に重要な役割を果たす転写制御因子である。このFTZ−F1の標的遺伝子として、蛹のクチクラタンパク質をコードする遺伝子EDG84Aが明らかにされている。FTZ−F1は前蛹後期に体全体で発現するのに対し、この標的遺伝子は前蛹後期の成虫原基でのみ発現することから、組織特異的発現を決めるには別の因子が作用すると考えられる。そこで、組織特異的発現を決める因子の作用領域を決める目的で、様々な領域のEDG84A上流配列とLacZの融合遺伝子をもつトランスジェニックフライを作製し、LacZの発現パターンを調べた。その結果、組織特異的な発現活性化には、転写開始部位上流−150bp付近の30bpの領域があれば十分であることが判明した。この領域をさらに詳しく解析したところ、複数の因子によって成虫原基特異的な発現が制御されていること、また一部の成虫原基についてはこの領域を介さない別の経路があることが示唆された。また、生化学的方法によって、この領域特異的に結合する因子が存在することを明らかにしており、これらの結果からEDG84Aの成虫原基特異的な発現制御機構について考察する。

P-28A
Extradenticle and Homothorax/Meis1 assist Engrailed to repress target genes
required to maintain parasegment boundaries
Masatomo Kobayashi *, Miki Fujioka, Elena N. Tolkunova and James B. Jaynes
(Kimmel Cancer Institute, Thomas Jefferson University, U.S.A.)

Parasegmental boundaries are maintained by interactions among transcription factors and signaling molecules, such as Engrailed (En),Sloppy-paired (Slp), Wingless (Wg), and Hedgehog (Hh). On the posterior side of each parasegmental boundary, En represses slp, wg, and components of the hh pathway, while on the anterior side, slp represses en and hh. Extradenticle (Exd) interacts with En in vitro and in yeast 2-hybrid assays, while Homothorax (Hth) is necessary for nuclear localization of Exd in Drosophila.
Loss of exd function results in loss of en expression, which may or may not be due to loss of en function. Therefore, to investigate the functional relationships among these proteins in vivo, we ectopically expressed En and assayed repression of slp and wg. slp is repressed rapidly and strongly by ubiquitous En expression. We tested whether this
repression is affected in exd or hth mutants. Since exd has a maternal contribution, we created exd germline clones. In both hth and exd mutants, repression of slp was strongly reduced, without affecting the level of expression of ectopic En. To confirm this result without using heat shock, we used a paired-Gal4 transgene to drive UAS-En, resulting in ectopic En expression within alternate slp and wg stripes. This caused complete repression of every other stripe of slp and wg in most embryos. Each of these aspects of the phenotype was suppressed in embryos derived from exd mutant germline clones. These results show that Exd contributes to repression of slp and wg by En. Since slp is almost certainly a direct En target gene, we suggest that Exd assists En to directly repress transcription in vivo.

P-28B
DROSOPHILA COACTIVATOR MBF1 MEDIATES TRACHEA DEFECTIVE-DEPENDENT ACTIVATION.
Qing-Xin Liu, Marek Jindra, Hitoshi Ueda, and Susumu Hirose.
(Department of Developmental Genetics, National Institute of Genetics, 1111 Yata, Mishima, Shizuoka-ken 411-8540, Japan. 81-559-81-6773.)

Coactivators function to mediate, via protein-protein interactions, effects of specific transcription factors on gene activity. MBF1 (multiprotein bridging factor 1) is a novel coactivator that recruits TATA box binding protein (TBP) to promoters where DNA-binding regulators are bound. It is first identified as a cofactor required for transcriptional activation in vitro by a Drosophila nuclear receptor FTZ-F1. The MBF1 sequence is highly conserved across species from yeast to human. In yeast, MBF1 mediates GCN4-dependent transactivation by interconnecting GCN4 and TBP. To search for a new partner of Drosophila MBF1, we made transgenic fly line capable of expressing Flag-tagged MBF1 and isolated MBF1-associated proteins from embryonic nuclear extracts using an anti-Flag antibody. One of them was identified to be a bZIP protein Trachea defective (TDF). GST pull-down assay showed that GST-TDF can bind directly to MBF1. Immunoprecipitation showed that TDF, MBF1 and TBP form a complex in vivo. TDF binds to DNA in a sequence-specific manner and activates transcription. Genetic interaction between mbf1 and tdf suggests that MBF1 serves as a coactivator for TDF to form tracheal and CNS networks.

P-29A
転写因子DREFとクロマチンリモデリング因子dMi- 2の相互作用
広瀬富美子*、 大島信子、吉田英樹、山口政光 
愛知県がんセ・研・発がん制御
Interaction between transcriptional regulatory factor, DREF and dMi-2, a member of SWI/SNF family ATP-dependent helicase.
Fumiko Hirose*, Nobuko Ohshima, Hideki,Yoshida, and Masamitsu Yamaguchi
(Div. of Biochem., Aichi Cancer Center Res. Inst.)

 ショウジョウバエのDNA複製/増殖関連遺伝子を制御する転写因子DREFは、染色体の境界配列 (boundary element)にも結合するという最近の知見から、クロマチンの境界の決定(あるいは解除)やその維持等のクロマチン機能の発現制御に関与している可能性も提唱されている。クロマチン構造を介した遺伝子発現制御におけるDREFの役割を明らかにするために、DREF全長をbaitに用いたyeast two hybrid screenを行い、これと相互作用する因子を検索した結果、クロマチンリモデリングを遂行するNuRD複合体のサブユニットとして知られるMi-2 (ATP依存性ヘリカーゼ)のcDNAを得た。免疫沈降実験により、DREFとMi-2が相互作用することを証明し、GST pull down 法を用いて、両者の結合領域を決定した。さらに、ショウジョウバエの遺伝学的方法により、Mi-2はDREF機能を抑制的に制御していることを結論した。また、その分子機構として、Mi-2がDREFのDNA結合活性を阻害することによることを明らかにした。ショウジョウバエ唾腺染色体におけるDREFと Mi-2の局在を免疫染色法で調べると両者は相互排除的に染色体に結合していることを観察している。DREFとMi-2の特異的相互作用による新規なクロマチン構造の制御機構について議論したい。

P-29B
Redox Regulation of DNA replication-related element (DRE)-binding factor (DREF) Transcription Factor in vitro
Tae-Yeong Choi1, Fumiko Hirose2, Masamitsu Yamaguchi2 and Mi-Ae Yoo1*
(1: Department of Molecular Biology, Pusan National University, Pusan, Korea 2: Division of Biochemistry, Aichi Cancer Center Research Institute, Nagoya, Japan)

Transcription factor DREF functions as an important regulator for the cell proliferation-related genes as well as for the DNA replication-related genes in Drosophila. DREF consists of 709 amino acids and the N-terminal 125 amino acids are known to be essential for both DNA binding and dimerization. This region contains three cysteine residues, Cys59, Cys62, and Cys91. Cys62 has an environment prone to the redox control due to the flanking basic amino acids (-Lys-Cys62-His-Lys-). In the present study, we investigated whether DREF transcription factor is under the redox regulation. The DNA binding activity of DREF in Kc cell nuclear extract was reduced by diamide and the reduced DNA binding activity was recovered by DTT. Gel shift analysis using recombinant DREF proteins showed that the DNA binding domain is enough for the redox regulation, suggesting the roles of three cysteines in the domain. To access the roles of three cysteine residues in the redox regulation, we performed site-directed mutagenesis. Substitution of Cys59 and/or Cys62 to serine or alanine resulted in a complete loss of DNA binding activity. However, substitution of Cys91 to serine or alanine not only showed no notable effect on the DNA binding activity, but also remained highly sensitive to a thiol-oxidizing reagent, diamide. This result was also supported by the transient transfection assay, in that the Cys59 and/or Cys62 to serine-substituted mutant DREF proteins failed in the activation of reporter constructs containing two copies of DRE sites. These results have revealed that the DREF transcription factor is partly regulated by redox mechanism and the Cys59 or Cys62 may be responsible for the redox regulation.

P-30A
母性RNAの局在化と翻訳の時空的制御におけるMe31Bタンパク質複合体の解析
中村 輝*1,3,羽生賀津子1,3,網蔵令子2,3,小林 悟2,3
1:筑波大・生物科学・遺伝子実験センター,2:岡崎国立共同研究機構・統合バイオ,3:科技団・CREST
Me31B complex: an RNP particle that is involved in the spatio-temporal regulation of localization and translation of maternal RNAs during Drosophila oogenesis
Akira NAKAMURA*,1,3, Kazuko HANYU1,3, Reiko AMIKURA2,3, and Satoru KOBAYASHI2,3
(1: Inst. Biol. Sci and Gene Res. Ctr., Univ. Tsukuba, and 2: Ctr. Integ. Biosci., Okazaki Natl. Res. Inst., 3: CREST, JST)

 多くの動物において,卵内の特定の細胞質領域に局在化している母性RNAが,初期胚発生に重要な働きをしていることが知られている.これら局在化する母性RNAは,翻訳が不活性化された状態で輸送・局在化し,局在化した領域でのみ時期特異的に 翻 訳され機能する.このように,母性RNAが,輸送・局在化と翻訳とが共役した制御を 受けていることはよく知られているが,その分子機構については依然不明な点が多い.
 私たちは,ショウジョウバエ卵形成過程において,進化的に保存されているDEAD-box型タンパク質であるMe31Bが,卵母細胞へと輸送される各種母性RNAと複合体 を形成し,それらの翻訳不活性化に関わっていることを明らかにしている.さらに, Me31B複合体中には,母性RNAの輸送に関わることが知られているExuperantiaタンパ ク質が存在していることを明らかにしている.すなわち,Me31B複合体は,母性RNAの輸送・局在化と翻訳制御とをリンクさせるRNP複合体であると予想される.私たち は,母性RNAの時空的制御の分子機構を解明するための第一段階として,Me31B複合体 の新規構成タンパク質の単離・同定を行っている.抗Me31B抗体によって特異的に共沈されるタンパク質のアミノ酸シークエンシング解析,および,Me31Bをbaitとしたtwo-hybrid法によるスクリーニングにより,Me31B複合体構成タンパク質の候補を複数同定した.現在,これら候補タンパク質の解析を進めており,その結果について報告する.

P-30B
細胞内寄生細菌Wolbachia感染と新規SAM/SPM motif蛋白、Samuelの遺伝学的、分子生物学的解析
小瀬博之*1,2、鈴木恵美子1、S.West3、松本耕三2、広海健1
1:遺伝研・発生、2:徳島大・医、3:Princeton Univ.
Genetic and molecular analyses of Wolbachia endosymbiont infection and novel SAM/SPM motif protein, Samuel
H.Kose*1,2, E.Suzuki1, S.West3, K.Matsumoto2, Y.Hiromi1,
(1:Natl Inst of Genetics, Dept. of Dev. Genetics, 2: Univ. of Tokushima, School of Medicine, 3: Princeton Univ.)

Wolbachiaは世界規模で広く昆虫界に感染が知られている細胞内寄生細菌である。Wolbachiaの感染は昆虫の生殖系に影響を及ぼし、単為発生、雄致死、また、細胞質不和合性と呼ばれる雄特異的不妊などを引き起こすことが古くから知られている。しかし、これらの分子メカニズムは明らかにされていない。今回、我々はWolbachia感染とSAM/SPM motifを有する新規遺伝子、samuel変異体との間に遺伝学的関係が存在することを示唆する結果が得られたのでここに報告する。samuel変異体はWolbachia非感染では致死であるが、Wolbachia感染によって部分的にviabilityが回復する。Samuel蛋白は初期胚中枢神経系で発現が見られる。感染個体では、初期胚、imaginal disk, ovaryでWolbachia菌体がSamuel抗体によって染色されたことから、Samuel蛋白が菌体にassociateすることが示唆された。また、Samuel抗体による菌体染色は、非感染個体ではSamuelの発現が見られない組織でも観察されるため、この細胞内共生細菌がホスト細胞の遺伝子発現を誘導している可能性があり、この共生細菌による“強制発現”の結果、致死性が回復するとの仮説が考えられる。また、Samuel遺伝子を強制発現させると複眼光受容細胞が著しく阻害されることを見いだしたが、強制発現系に於いてもWolbachia感染が表現型に影響を及ぼすか検証中であるので、併せて報告する。

P-31A
RPE65関連タンパク質はカロテノイドおよびレチノイドの代謝に関与するタンパク質ファミリーを形成する。
相良 洋 * 、鈴木 えみ子
東大 医科研・分子構造解析
RPE65-related proteins constitute a carotenoid and retinoid metabolising protein family throughout the animal and plant kingdom
Hiroshi Sagara*, Emiko Suzuki
(IMSUT, Dept. of Fine Morphology)

RPE65 was first described in the chick retina by Sagara and Hirosawa (1990) as a 63kDa protein abundantly and specifically expressed in the retinal pigment epithelial(RPE) cells. We and others have identified the RPE65 genes in several vertebrate species. Analysis of the predicted amino acid sequences have shown that RPE65s are highly conserved from fish to primates (more than 80% identical). The RPE65-deficient mice show abnormal accumulation of all-trans retinyl ester in the RPE (Redmond,1998). This suggests the involvement of RPE65 in retinoid cycle in the eye. However, the precise function of RPE65 is elusive.
In the present study, we isolated a Drosophila gene (drpe65) highly homologous to the vertebrate RPE65s. The drpe65 transcripts were mainly expressed in the eyes. The protein sequence alignment revealed several regions conserved among Drosophila and vertebrate RPE65s, chick beta-carotene dioxygenase, and plant 9-cis epoxycarotenoid dioxygenases. And also, RPE65 homologues are predicted from the genome sequences of C. elegans and cyanobacteria. These indicate that RPE65-related proteins constitute a carotenoid- and retinoid-metabolizing protein family throughout the animal and plant kingdom.
Recent study reported the beta-carotene dioxygenase enzymatic activity of the same protein as DRPE65. In addition, the mutation of this enzyme was reported to be the cause of the vision deficient mutant, ninaB. These father support the notion that the structural similarity among the RPE65-related proteins indicates the functional similarity among these proteins.

P-31B
ショウジョウバエ転写因子FTZ-F1の転写調節機構の解析
阿川泰夫*1, 影山裕二1,3 , 増田祥子1, 広瀬進1,2, 上田均1,2
(1 総研大・生命科学, 2 遺伝研・形質遺伝, 3現、奈良先端)
Mechanism of transcriptional regulation of the FTZ-F1 gene in Drosophila melanogastor.
Yasuo Agawa *1, Yuuzi Kageyama1,3, Syoko Masuoda 1, Susumu Hirose 1,2, Hitoshi Ueda 1,2
(1:Dept. Genet., Grad. Univ. Adv. Std., 2.Dept. Dev. Genet., Natl. Inst. Genet. 3.Current. NAIST)

 FTZ-F1はエクジステロイドのパルスで誘導されるユニークな核内レセプター型の転写因子で、脱皮、変態過程において時期特異的発現が重要であることが明らかにされている。FTZ-F1遺伝子の発現機構を明らかにするため、様々な領域のFTZ-F1遺伝子の5’末端DNA断片と、レポーター遺伝子(大腸菌lacZ遺伝子)との融合遺伝子を導入したキイロショウジョウバエの系統を作成し、抗b-ガラクトシダーゼ抗体を用いたウェスタンブロット法により融合遺伝子の発現量を定量的に解析した。その結果、従来まで考えられていた、FTZ-F1遺伝子の転写制御に関与すると考えられる2つのpositive element ( -2.0kb領域, DHR3 binding siteである+150〜+450bp領域)に加え、新たに3つめのpositive element (-300bp領域のsite I-4)を同定した。生化学的手法によりsite I-4に結合する因子Factor I-4が同定されているが、Factor I-4の発現パターンはFTZ-F1の発現に先行しており、その転写制御過程での役割に興味が持たれる。現在、FTZ-F1転写におけるFactor I-4の役割を解明するため、Site I-4 oligo nucleotideをリガンドとして固定したアフィニティーresinを作成しFactor I-4の精製を試みている。

P-32A
節足動物の進化と細胞間結合の進化
小田広樹*1、秋山-小田康子1、月田承一郎1,2
1: 科技術振興事業団・月田細胞軸プロジェクト, 2: 京都大・医
Evolution of cell-cell connection in arthropods
Hiroki Oda*1, Akiyama-Oda1, and Shoichiro Tsukita1, 2
(1: Tsukita cell axis project, JST, 2: Kyoto Univ.)

 クラシカルカドヘリン (ここでは単にカドヘリンと呼ぶ) は後生動物の細胞間結合構造を担う中心的な分子である。ショウジョウバエのゲノムには3つのカドヘリン遺伝子が存在しているが、このうちの2つのカドヘリン遺伝子の産物はDEカドヘリンとDNカドヘリンと呼ばれ、構造や発現、機能が詳しく解析されている。DEカドヘリンは初期胚のすべての細胞とその後の上皮細胞に発現し、DNカドヘリンは中胚葉細胞と神経細胞で発現する。発現にそれぞれ組織特異性があることに加え、分子構造の違いもDEカドヘリンとDNカドヘリンの間には歴然として存在する。DEカドヘリンの細胞外領域の構造は、DNカドヘリンに比べてかなりコンパクトにできている。さらに、これらのショウジョウバエのカドヘリンはどちらも脊索動物のカドヘリンとは構造的に大きく異なっている。私達は、細胞間結合の機能に何かしらの影響を与えると思われるカドヘリンの構造が動物進化の過程でどのように変化してきたのかを理解するために、カドヘリン遺伝子を昆虫綱、甲殻綱、クモ形綱に属する、系統的に遠く離れたいくつかの動物からクローニングし、それらの構造を比較した。その結果、カドヘリン遺伝子の重複や構造変化は節足動物門内で起こったことが示唆された。そして同時に、これらのかなり直接的な推測が可能な、過去に起こった分子レベルの出来ごとが節足動物門における綱レベルの進化を理解するための貴重な手掛かりを提供してくれる可能性が示された。

P-32B
アクチン細胞骨格系の動態を制御する新規フォスファターゼSlingshot の機能解析
丹羽隆介*1、永田−大橋恭子3、Bruce HAY4、竹市雅俊2、水野健作3、上村匡1
京都大学・1ウイルス研究所、2生命科学研究科、3東北大学・理学研究科、4Caltech, USA
Slingshot, a Putative Dual Specific Phosphatase, Controls Reorganizations of Actin Cytoskeleton
Ryusuke NIWA*1, Kyoto NAGATA-OHASHI3, Burce HAY4, Masatoshi TAKEISHI2, Kensaku MIZUNO3, and Tadashi UEMURA1
(1Inst. for Virus Research and 2Grad. School of Biostudies, Kyoto Univ., 3Grad. School of Science, Tohoku Univ., 4Caltech, USA)

 ショウジョウバエの剛毛や翅毛は、1細胞から生じた巨大な細胞突起であり、その形成過程にはアクチン細胞骨格系の再編成が必須である。我々は、剛毛/翅毛の形態に異常が見られる新規突然変異株slingshot (ssh) およびその原因遺伝子を見い出し、SSH タンパクのアクチン細胞骨格系制御に果たす役割を追究している。 SSH タンパクは1045 アミノ酸からなり、リン酸化チロシンおよびリン酸化セリン/スレオニンの両方を脱リン酸化できるdual specific phosphatase の酵素活性部位に高い相同性を示す。ヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、ホヤには SSH ホモログが存在するが、線虫と出芽酵母には存在しないらしい。突然変異株の剛毛/翅毛の表現型は、野生型のSSH タンパクを供給することで正常な剛毛/翅毛の形態へと復帰させることができたが、酵素活性を失う点変異を導入したSSH タンパクでは復帰させることはできなかった。また、ショウジョウバエの発生過程においてSSH の機能を完全に失った細胞の挙動を観察したところ、細胞内のFアクチンの量が顕著に増加していることが明らかとなった。以上の結果は、SSH の酵素活性が、アクチンの過剰な重合を抑制する役割を持つことを示唆する。現在、SSH の機能をさらに探るために、アクチン重合を促進することが知られているLIM キナーゼとSSH との関係について追究している。

P-33A
背部閉鎖におけるミオシンホスファターゼによる非筋ミオシンIIの制御
水野智亮*1、筒井響子1、天野睦紀2、貝淵弘三2、西田育巧1
1:名大、理、2:名大、医
Myosin phosphatase inactivates non-muscle myosin II during dorsal closure
Tomoaki Mizuno*1, Kyoko Tsutsui 1, Mutsuki Amano 2, Kozo Kaibuchi 2, and Yasuyoshi Nishida 1
(1: Div. Sci, Nagoya univ., 2: Div. Med, Nagoya univ.)

細胞骨格因子や細胞接着因子の再構成によって生じる細胞形態の変化や細胞運動は、個体発生において必須の生命現象であるが、それらの因子がどのように制御されているかについては、ほとんど明らかになっていない。この問題を解明する上で、ショウジョウバエの背部閉鎖は良いモデル系である。背部閉鎖とは、胚発生中期に、胚の両側面に位置する側方上皮組織が、細胞分裂を伴わずに腹側から背側に向かって伸長し、最終的には背部正中線で融合する発生現象である。背部閉鎖の原動力は、非筋ミオシンIIによる収縮作用であるが、非筋ミオシンIIがどのように制御されているかは明らかになっていない。一方、哺乳類培養細胞を用いた解析からは、低分子量G蛋白質RhoのエフェクターであるRho-kinaseとミオシンホスファターゼが、非筋ミオシンII制御軽鎖のリン酸化度を調節することによって、非筋ミオシンIIの活性を制御していることが明らかになっている。我々は、これまでに、ショウジョウバエRho-kinaseホモログDRho-kinaseとショウジョウバエミオシンホスファターゼのサブユニットの一つ、DMBSを同定し、ショウジョウバエの発生においてもRho-kinaseとミオシンホスファターゼが非筋ミオシンIIを制御していることと、適切な個体発生には非筋ミオシンIIの厳密な活性制御が必要であることを明らかにしてきた。今回は、特に、ミオシンホスファターゼの背部閉鎖における機能について報告したい。

P-33B
ショウジョウバエ気管細胞移動のガイダンス機構
千原崇裕*1、林茂生1, 2, 3
1: 遺伝研・無脊椎、2:総研大・生命科学、3: 理研・発生再生センター
Guidance mechanism for tracheal cell migration in Drosophila
Takahiro Chihara 1 and Shigeo Hayashi 1, 2, 3
(1: Invertebrate Genetics lab. National Institute of Genetics, 2: The Graduate University for Advanced Studies, 3: RIKEN Center for Developmental Biology)

The Drosophila tracheal system is an appropriate model system for the study of the guidance mechanism of cell migration. The tubular epithelium of the tracheal system forms a network with a stereotyped pattern in order to supply cells with oxygen. To elaborate tracheal network in a reproducible manner, the direction of tracheal cell migration must be tightly regulated. However, little of known about how migration of tracheal cells is guided. To unveil the guidance mechanism of tracheal cell migration, we analyzed how is migration of dorsal branches (DB; dorsally migrating tracheal branch) guided. Because actin cytoskeleton plays important roles on various cell migration events, we observed the behavior of actin cytoskeleton during tracheal cell migration by using GFP-moesin, GFP fused with F-actin binding domain of moesin. This observation demonstrated that tip cells of DB contact ectodermal cells with lamellipodia and filopodia similar to those found in neuronal growth cone. As small GTPases (Rho family) are major regulatory factors for the formation of lamellipodia and filopodia, we next analyzed the role of small GTPases on tracheal development by using dominant-negative forms of small GTPases. We found that a small GTPase, Drac1 has essential roles on both the guidance of DB migration and cytoplasmic extension of tracheal cell (terminal branch). As it has been reported that axon guidance is regulated by Drac1 activity, these results imply that there is a common guidance mechanism in tracheal cell migration and axonal outgrowth.

P-34A
ショウジョウバエ胚における気管形成の経時的観察
加藤輝*1.2,林茂生1.2
1:国立遺伝学研究所・系統生物研究センター/総合研究大学院大学、2:理化学研究所/発生・再生科学総合研究センター
Dynamic cellular movements in the tracheal system of Drosophila
Kagayaki Kato 1.2, Shigeo Hayashi 1.2
(1: RIKEN/CDB, 2: NIG/Grad. Sci. Adv. Studies)

 ショウジョウバエ気管は胚発生時において上皮性の気管前駆細胞群が互いの配置と形態を変化させることにより形成される.また,気管は胚発生の過程を通じて一定の法則により分枝し,それらの先端が融合することによって最終的に複雑な気管のネットワークを構築する.これら気管ネットワークの形成に伴う細胞運動の分子基盤を理解する為に,現在我々は Gal4/UAS 系によりショウジョウバエ気管特異的に発現するgfp をマーカーとする,生きた胚における気管細胞の運動を経時的に観察する系を構築している.この系により,これまで行われていた固定した胚の観察に基づく観察では得られなかった新たな知見が得られるものと思われる.moesin の繊維状アクチン結合ドメインと gfp との融合遺伝子を導入した胚の観察をこの系によって行った結果,背側正中線上で融合する気管である dorsal branch の先端の細胞において,これまで考えられてきたよりも多数の filopodia がその運動に伴い活発に伸縮を繰り返していることが明らかとなった.これらの filopodia は融合する相手となる気管の先端や,他の気管由来の filopodia と盛んに接触していた.また,微小管を特異的に標識する tau-gfp や,細胞接着分子の一員である alpha-Catenin と gfp との融合遺伝子についても同様の観察を行い,それらの分子の気管細胞内における動態についても観察を行っているので,その結果について報告する.

P-34B
In vivo において樹状突起のパターンを調節する遺伝子の探索
山本美暁*2、杉村薫1、丹羽隆介1、碓井理夫1、後藤聡3、谷口美佐子3、林茂生3、上村匡1
京都大学・1ウイルス研究所、2生命科学研究科、3遺伝研
A genetic hunt for regulators of dendritic outgrowth and branching in vivo
M. Yamamoto*2, K. Sugimura1, R. Niwa1, T. Usui1, S. Goto3, M. Taniguchi3, S. Hayashi3 and T. Uemura1
(Kyoto University, 1The Institute of Virus Research, 2Department of Cell and Developmental Biology, 3National Institute of Genetics)

神経細胞は、2種類の突起(軸索と樹状突起)を伸長させる。軸索ガイダンスに関しては膨大な知見が蓄積されてきたのに対し、in vivoで樹状突起の伸長や分岐を調節する分子機構については、ほとんど解明されていない。我々は、ショウジョウバエの感覚神経細胞の中で、際立って複雑な樹状突起を展開するmultiple dendrite neuron(md neuron) をGFPで標識し、生きたままのホールマウント胚のまま樹状突起を観察している?そしてmd neuronで発現している遺伝子の中から、樹状突起のパターン形成を調節する遺伝子を探索している。具体的には、md neuron で主に発現する遺伝子を同定する目的で、エンハンサートラップスクリーニングを行い、4500のトラップ系統から約20の候補遺伝子を得た。現在は、候補遺伝子のそれぞれについて機能破壊のために、トランスジェニック二重鎖RNA干渉法の導入を試みている。

P-35A
神経軸索伸長に関連したショウジョウバエ新規formin homology protein の解析
田中宏昌*1、高須悦子1、梅宮猛1、相垣敏郎2、能瀬聡直1
1:東大・物理、2:都立大・生物
Analysis of a novel formin homology protein implicated in axon patterning in Drosophila
Hiromasa Tanaka
(Univ of Tokyo)

 神経細胞は高度に分化した形態を とり、特定の道筋に沿って軸索を伸ばし、シナプスを形成する。こうした過程の大筋は遺伝子による働きで記述されると期待されている。軸索伸長の過程に関わる新規遺伝子を探索するため、当研究室においてショウジョウバエ異所発現トラップ法を用いた大規模スクリーニングが行われた。G6は、このスクリーニングにおいて得られた系統のひとつで、神経全体での強制発現が軸索のパターンに異常を生ずるものとして単離された。強制発現されている転写産物の一部をRT-PCRで回収し、そのシークエンスをもとに、ショウジョウバエのゲノムプロジェクトの情報を活用し、対応するタンパク質コード領域を予想した。さらにPCR産物、既存のESTおよび新たに単離したラムダファージクローンを用い、完全長cDNAをローニングした。その結果、G6遺伝子はいくつかの細胞内蛋白質において見つかっているformin homology (FH)ドメインをもつ残基数1644の新規タンパク質をコードすることが判明した。このドメインをもつ多くの蛋白質は細胞骨格制御に関わることが知られている。さらにG6転写産物の正常発生過程における発現様式を調べるため、RNA in situを行った結果、神経系内において一部の細胞において発現していることが分かった。以上の結果から、G6遺伝子は、特定の神経細胞において細胞骨格系を調節することにより、軸索伸長パターンを制御する機能をもつと予想される。

P-35B
ショウジョウバエ軸索誘導に関わる新規セマフォリン分子の強制発現システムを用いた同定と機能解析
高須悦子1、梅宮猛1、鳥居宏在*1、相垣敏郎2、能瀬聡直1
1:東大院・理・物理、2:都立大・院理・生物
Characterization of a novel axon guidance molecule in Drosophila.
Etsuko Takasu1,Takeshi Umemiya1,Hiroaki Torii1,Toshiro Aigaki2 and Akinao Nose1
(1:Dept.of Physics,Univ.of Tokyo,2:Dept.of Biology,Tokyo Met.Univ)

我々はショウジョウバエの神経-筋結合系をモデル系として軸索誘導の分子機構を探っている。この系における新規の軸索誘導分子を同定するため、異所発現の表現型を指標にしたスクリーニングを行った。その結果得られたUAS挿入株の1つである、GS3011系統と24BGAL4株とを交配し、UAS挿入点の近傍遺伝子を筋肉全体で強制発現させると、特定の運動神経のシナプス形成に異常が見られた。具体的には特定の運動神経においてシナプスを形成しない、あるいはシナプスを形成する場合でも、通常に比べて終末が小さい、形成部位が異常である、という表現型を示した。強制発現されている転写産物を単離し、遺伝子によりコードされるタンパク質を予想した結果、セマフォリンドメインおよびthromspondin type I repeatをもつ膜貫通型タンパク質であることが判明した。胚において3011mRNAの発現パターンを調べたところ、表皮の体節境界部、および一部の筋肉において特異的に発現していた。セマフォリンドメインをもつ分子の多くは軸索誘導においてrepulsiveな因子としてはたらくことが知られており、GS3011系統の原因遺伝子も同様な作用により運動神経の投射パターンの制御に関わっていると考えられる。尚、現在胚における表現型の解析を行っている最中で、興味深い表現型が得られており、その結果も含めて報告する予定である。

P-36A
分泌型ガイダンス分子によるパターニングの基本メカニズムの解析
平本 正輝
遺伝研・発生遺伝 さきがけ21
Basic mechanism for patterning controlled by secreted ligands.
Masaki Hiramoto
National Inst. of Genetics, PREST

生物が「かたち」を作るには細胞の運動や分化を制御する信号が必要であり、これらを総称して「位置情報」と呼んでいる。分泌型リガンドが軸索伸長などの細胞運動を制御するメカニズムとして、一世紀前に提唱された化学走性仮説が受け入れられている。しかしこの概念が実証された例はなく,まだ想像の域を出ていない。細胞が位置情報を受け取るには、受容体がリガンドと結合する必要がある。従って、位置情報となる分泌型リガンドの分布は受容体との結合により修飾を受ける。モルフォーゲンが細胞運命を制御する際には、受容体によるリガンドの捕捉が非対称な分布に維持に寄与する場合がある。しかし分泌型ガイダンス分子が軸索を誘導する場合は受容体を発現する細胞が移動するため、受容体によるリガンドの捕捉はリガンドの濃度勾配を撹乱する事になる。これまでに同定された分泌型ガイダンス分子はいずれも受容体と安定に結合し、化学走性モデル基づくパターニングを行うには最適なものではない。分泌型ガイダンス分子によるパターニング機構を解く鍵は、この一見矛盾する要素にあると考えられる。我々はショウジョウバエの腹部神経節を用いた解析からNetrin受容体Frazzledにはリガンドを捕捉し、分布を変え、他の細胞に提示するという第二の機能(提示機能)がある事を見出した。これは「リガンドと受容体の安定な結合」から生じた疑問の答えの一つであった。現在この概念を基に複雑で整然とした軸索パターンを作るメカニズムを解析しており、最近の進展について発表する。

P-36B
シナプス後細胞内CaMKII活性化によるシナプス形成過程の調節(I):発生初期過程における役割
風間 北斗*、森本 高子、能瀬 聡直
東京大・理・物理
Activation of CaMKII in the postsynaptic cell modulates synapse formation in Drosophila neuromuscular junction (I)
Hokto Kazama, Takako Morimoto, Akinao Nose
(Department of Physics, School of Science, University of Tokyo)

Bidirectional communication between a neuron and its postsynaptic cell is essential for the development and modulation of synapses. Through a study of first-instar larval neuromuscular junctions (NMJs), several lines of evidence have begun to accumulate that calcium/calmodulin dependent protein kinase II (CaMKII) in the postsynaptic cell participates in the regulation of presynaptic function during synaptic development. Here, we focused on the role of CaMKII in synapse formation at embryonic stages. First, its localization was examined in embryonic NMJs, while it is known to be enriched in postsynaptic densities (PSDs) of mature larval synapses. We found that CaMKII is already present in most PSDs at 16.5 hr AEL, not long after the innervation. This implies that CaMKII, especially in postsynaptic cells, may have some role from the onset of synaptogenesis. To testify it, synaptic responses in embryonic NMJs are currently investigated under various CaMKII activities, which are modified by expressing either a constitutively active form (CaMKII-T287D), or an autophosphorylation inhibitory peptide (Ala) in the specific muscle cell using UAS-GAL4 system. Whether autophosphorylation and/or neural activity is needed for CaMKII accumulation at synapses was also examined.

P-37A
シナプス後細胞内CaMKII活性化によるシナプス形成過程の調節(II):標的細胞による逆行性シナプス伝達調節機構
森本 高子*、風間 北斗、能瀬聡直
東京大・理・物理
Activation of CaMKII in the postsynaptic cell modulates synapse formation in Drosophila neuromuscular junction (II)
Takako Morimoto, Hokto Kazama, Akinao Nose
(Department of Physics, School of Science, University of Tokyo)

シナプス形成時には、様々な因子により、適切なシナプス伝達が確立され、シナプス を構築している分子の集合が調節されている。近年、標的細胞由来の因子が前シナプスの放出機構を調節する可能性が示唆されている。我々は、標的細胞による逆行性の 前シナプス放出機構調節の分子機構を調べる目的で、標的細胞内のシグナル伝達系を 修飾してシナプス伝達に対する影響を調べた。ショウジョウバエ1齢幼虫の神経・筋 シナプスにおいて、UAS-GAL4システムを使い、特定の筋肉細胞でのみ分子を発現させる実験系を利用した。この系を用いると、同じ神経細胞がシナプスを形成している、 隣り合う筋肉細胞のうち片方の筋肉細胞のみで分子を発現させることができ、両者の筋肉細胞の応答を比較することで、より特異的な分子の発現による影響を調べることが出来る。まず後シナプス細胞に豊富に存在するカルモヂュリン・キナーゼII(CaMKI I)の活性化型を特定の筋肉細胞に発現させ、後シナプス電流に対する影響を調べた。 刺激に応答したシナプス電(ESC)は、孵化後3時間までの幼虫ではCaMKIIを発現した筋肉において増大していた。しかし、孵化後6時間以上の幼虫では逆にCaMKIIを発現した筋肉においてESCが減少していた。このことは、標的細胞のCaMKIIを活性化することにより、シナプス前細胞におけるシナプス伝達が調節されていることを示しており、シナプスの発生段階によって、その調節機構が異なる可能性が示唆された

P-37B
RAB5はシナプス小胞サイズの維持に機能している
志水英之*、河村悟、尾崎浩一
大阪大・院理・生物
A NOVEL ROLE OF RAB5 ON SYNAPTIC VESICLES IN DROSOPHILA PHOTORECEPTOR CELLS.
H. Shimizu, S. Kawamura and K. Ozaki.
(Dept. Biol., Grad. Sch. Sci., Osaka Univ., Toyonaka.)

低分子量Gタンパク質であるRabファミリーは、細胞内小胞輸送において重要な役割を果たしていることが知られている。RAB5は最もよく研究されているRabタンパク質の1つであり、エンドサイトーシスの初期過程を制御していることが示され、エンドサイトーシスの経路や分子機構の解明に大きく寄与してきた。哺乳類の神経細胞では、多量のRAB5がシナプス小胞上に局在することが報告されている。我々はシナプス小胞上のRAB5の役割を調べ、シナプス小胞の再形成経路とその機構を解明することを目的として、ショウジョウバエ視細胞をモデルとしたin situ系による研究を行った。まず、GFPを付加したRAB5をショウジョウバエの視細胞に発現させ、RAB5はエンドソームとシナプス小胞上に局在していることを確かめた。次に、シナプス小胞上のRAB5の役割を明らかにするために、dominant negative mutantによる機能阻害を試みた結果、シナプス小胞の再形成は阻害されなかったのに対し、シナプス小胞サイズの増大が観察された。さらにRAB5の具体的な機能を調べるために、そのサイズ増大の活動依存性やconstitutively active mutantによる影響を検討した結果、RAB5がシナプス小胞同士の融合を防止している可能性が得られた。

P-38A
ショウジョウバエ FGFレセプターHeartless はグリア細胞間の相互作用と正常なNeuroglianタンパク質の分布に必要である
滝沢 一永*、堀田 凱樹、広海 健
国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門
Drosophila FGF receptor Heartless is required for glia-glia interaction and Neuroglian redistribution.
Kaz Takizawa*, Yoshiki Hotta, and Yasushi Hiromi,
(Dept. of Developmental Genetics, National Institute of Genetics)

Glial cells perform many important roles in nervous system function such as ensheathing the axons and insulating them from the environment. Although the role of glial cells missing (gcm) in glial specification has been well studied in Drosophila, little is known about how genes acting downstream of gcm participate in glial differentiation/function. Here we report the role of Heartless, a FGF receptor-like molecule whose ligand is unknown, in glial morphogenesis. In the central nervous system Heartless is expressed specifically in longitudinal glial cells, under the control of gcm. Longitudinal glia migrate medially and associate with longitudinal axon tracts, finally enwrapping them. Analysis of cell shape by membrane associated GFP revealed that medial row of LG extend their processes dorso-medially to adhere to contralateral homologue upon ensheathment. Concomitant with this, there is a dramatic relocation of a transmembrane protein Neuroglian from the glial surface to the cytoplasm. In heartless mutants longitudinal glia migrate normally but fails to enwrap axons, and the relocation of Neuroglian never takes place. Furthermore, mutant of dof, a gene functioning downstream of FGF receptor, showed similar phenotype to heartless. These data demonstrate a novel role of FGF signaling in axonal ensheathment and the change of membrane structure at the glial interphase.

P-38B
ショウジョウバエ成虫脳神経回路網の形成における細胞系譜の役割
粟崎健*、伊藤啓
基生研・細胞増殖/科技団・さきがけ21
Lineage-related modular composition in the developing and adult Drosophila brain
Takeshi Awasaki*, Kei Ito
(Division of cell proliferation, National Institute for Basic Biology/ PRESTO, JST)

 神経系の中で中心的役割を果たす脳では、哺乳動物においては数億個以上、昆虫に おいても数万個以上にも及ぶ多数の神経細胞が、互いにシナプス連絡することによ り複雑な神経回路網を形成している。我々は、片半球あたり約2万個の神経細胞から 構成されるショウジョウバエの成虫脳中心部の大部分が、平均85個の神経幹細胞か ら作り出されていることに注目し、細胞系譜と脳神経回路の関係について調べた。
 その結果、多くの場合一つの神経幹細胞から生じた子孫細胞(クローン細胞)は細 胞系譜に依存した特定の神経回路ユニット(クローナル・ユニット)を形成してい ること、即ち脳神経回路網の大部分はクローナル・ユニットの集合体として構成さ れていることを明らかにした。さらに、各クローナル・ユニットの形成過程について調べたところ、クローン細胞同士の特異的な細胞接着、クローン細胞同士による単一神経線維束の形成、グリア細胞による隣接するクローン細胞群間の隔離、が関与している可能性を示した。数万個の脳神経細胞が独立に神経回路を形成するのではなく、細胞系譜に依存したユニット単位で神経回路を形成する意義について議論したい。

P-39A
シナプス形成に関わる後シナプス細胞内情報伝達機構の解析
亀田(新座)麻記子*、能瀬聡直
東大・理・物理
Studies on the intracellular signaling mechanisms of Capricious-mediated selective synapse formation
Makiko Kameda, Akinao Nose
(Department of Physics, School of Science, University of Tokyo)

近年、シナプス形成における後シナプス細胞の積極的な役割が認められつつある。われわれはショウジョウバエ神経筋シナプスをモデル系として用い、実際の生体内での後シナプス細胞内のシグナル伝達機構を明らかにする目的で、以下の実験を行った。カプリシャスは、ロイシン・リッチ・リピートを持つ膜タンパク質で、通常特定の筋肉において発現し、神経・筋標的特異性を決定する。カプリシャスを、本来発現しない筋肉において強制発現させると、特定の運動神経による異所的シナプス形成が誘導される。もしあるシグナル分子がこの過程においてカプリシャスの下流で働くなら、その分子の機能を低下させたり活性化することが、カプリシャスによる異所的シナプスの誘導に影響をあたえるはずである。そこで、カプリシャスと同時に、筋肉細胞、つまり後シナプス細胞において既知のシグナル系に関わる分子、カルモジュリンキナーゼ、Aキナーゼ(cAMP系)、低分子量G蛋白質Dcdc42、Drac1、D rhoA(細胞骨格制御系)等の構成的活性化型および阻害型を発現させ、その異所的シナプス形成に及ぼす影響を調べた。その結果、低分子量Gタンパク質cdc42、Aキナーゼの活性化型によってカプリシャスにより誘導される異所的シナプス形成率が増加し、逆にこれらの阻害型によって形成率が減少することが明らかになった。以上より、シナプス形成時に、シナプス後細胞においてこれらの分子を介したシグナル伝達系がカプリシャスの下流で働いていることが示唆された。

P-39B
ショウジョウバエを用いた低次視覚野と高次領域を結ぶ投射神経経路の網羅的解析
大綱英生*1, 2、西田育巧2、伊藤啓1, 3
1:基生研 2:名大院・理 3:科技団さきがけ
Comprehensive identification of projection neurones connecting lower and higher visual centers.
Otsuna Hideo*1, 2, Nishida Yasuyoshi2, Ito Kei3
(1:National institute for basic biology, 2:Graduate school of science Nagoya university, 3:PRESTO JST
)
視覚情報の処理過程において、哺乳類は後頭葉で、昆虫は視葉で特徴抽出処理を行う。光受容側からこれらの視覚野に入力する神経線維群と、視覚野内部の局所回路は詳しく同定されてきたのに対し、そこから投射介在神経がどの高次領域に、どのように情報を選択して受け渡しているのかについては、不明な点が多い。キイロショウジョウバエはGAL4エンハンサートラップ法により、神経細胞の効率の良い同定が単一細胞のレベルで可能である。我々はGFPを一部の神経細胞で発現させ、視葉と高次領域を結ぶ経路の解析を行ってきた。これまでにその経路を形成する投射介在神経を、既知の17種類のうちの13種類を含む、30種類同定した。結果、視葉内で3つに別れた領域である視髄、視小葉、視小葉板からは、主に4つの高次領域に投射しており、うち3つの高次領域は、複数の視葉内領域と結ばれていた。更に、視葉内の広い受容野と狭い受容野をカバーする神経細胞との間で、主に投射する高次領域に差がみられた。また、哺乳類や昆虫の一次視覚野には層構造があり、各層には異なる種類の情報が入力している。現在、同定した各投射介在神経について、視葉内のどの層とどの高次領域が結ばれているのかを解析している。高次領域を視覚情報の種類から機能分類することが可能かどうかを議論したい。

P-40A
ショウジョウバエを用いた嗅覚系投射介在神経の投射様式の解析
田中暢明*1,2、粟崎健2,3、伊藤啓2,3
1:総研大、2:基生研、3:科技団・さきがけ
Projection patterns of olfactory relay interneurons of Drosophila melanogaster
Nobuaki Tanaka*1,2, Takeshi Awasaki2,3, Kei Ito2,3
(1: Grad. Univ. Advanced Studies, 2: National Institute for Basic Biology, 3:PRESTO)

嗅細胞は発現している嗅覚受容体遺伝子の種類に応じて、哺乳類であれば嗅葉、昆虫であれば触角葉内の特定の糸球体に投射すると考えられている。嗅細胞から各糸球体に伝えられた匂い刺激情報は、そこで情報処理を受けた後、投射介在神経によってより高次の領域に伝えられる。これまでに高次領域の脳内における位置は調べられてきたが、各糸球体の情報を伝える投射介在神経が高次領域内でそれぞれどの様に投射しているのかは明らかにされていない。そこで我々は、ショウジョウバエで遺伝学的手法を用いることで、特定の糸球体に投射する投射介在神経を再現性よく染め出し、高次領域への投射様式を調べた。まず、3800系統のGAL4エンハンサートラップ系統をスクリーニングし、少数の投射介在神経で比較的特異的にGAL4を発現する系統を32系統得た。これらの系統でGFP遺伝子を発現させ、ラベルされた神経を共焦点顕微鏡で三次元再構成した。その結果、これまでに解析したすべての投射介在神経が、高次領域であるキノコ体および側角内の決められた領域にそれぞれ選択的に投射することが明らかになった。さらに、その投射様式は、触角葉内での糸球体間の位置関係を単純に反映したものではないことが示唆された。

P-40B
神経回路形成を制御する遺伝子のショウジョウバエ成虫脳を用いた異所発現スクリーニング
織原 美奈子*12、斎藤 麻衣12、問田 有香1、相垣 敏郎3、浜 千尋12
1:理研・発生再生研、2:JST・CREST、3:都立大・院理
A screen for novel factors involved in neural network formation in the adult brain of D. melanogaster
Minako Orihara12、Mai Saito12、Yuka Toida1、Toshiro Aigaki3、Chihiro Hama12
(1:RIKEN, CDB、2:JST, CREST、3:Tokyo Metropolitan University)

神経回路は、神経細胞の細胞体から伸長した繊維が特定の標的とシナプス結合することにより形成される。われわれは、この回路形成を制御する新たな因子を同定するた めに、ショウジョウ バエの異所発現ライブラリーGS系統を利用した遺伝子のスク リーニングを行ってきた。まずGAL4エンハンサートラップラインの中から、嗅覚記憶 ・統合学習の中枢であるキノコ体の中で比較的少数の神経細胞に発現のある系統 G1-GAL4を得た。次にG1-GAL4系統でG1タンパク質が発現する神経細胞を膜結合性 GFPで可視化し、同時にその細胞で染色体上の任意の遺伝子をUAS支配下に発現させて 神経繊維の形状の変化を解析するスクリーニングシステムを構築した。その結果得ら れた神経繊維の走行パターンや形態に異常を示した系統の解析について今回報告す る。異所発現スクリーニングを行った766系統の中から、神経繊維が過伸長を示す 5系統と神経繊維上にvaricosityが生じる3系統を選択した。それぞれの系統の UAS配列の挿入部位を決定することにより挿入点近傍の遺伝子を原因遺伝子候補とし て特定した。さらに発現パターンから正常発生において神経系で機能していると考え られる候補遺伝子を最終的に選択した。今後はさらに欠失変異体を作成してその表現 型を解析することにより絞られた候補遺伝子の神経回路形成に果たす役割を解明して いきたい。

P-41A
ショウジョウバエ成虫の脳におけるGABA産生酵素及び受容体を発現しているニューロンの分布
岡田龍一*1、粟崎 健1,2,3、伊藤 啓1,2,3
1:基生研、2:科技団・戦略、3:科技団・さきがけ
Distributions of neurons that generate and receive GABA transmitter in the adult Drosophila brain. Ryuichi Okada*1、Takeshi Awasaki1,2,3、Kei Ito1,2,3、
(1: National Inst. Basic Biology, 2: JST・CREST, 3: JST・PRESTO)

脳の神経回路は興奮性シナプスと抑制性シナプスによって構成されている。とくに側抑制による輪郭検出や動きの検出の計算、また細胞電位の振動現象など様々な脳機能では抑制性シナプスが重要な役割を果たす。そこで我々は代表的な抑制性伝達物質であるGABAに注目し、抑制性シナプスの出力側細胞をラベルするためにGABAの産生酵素をコードする遺伝子、また入力側細胞をラベルするためにGABAのイオン型及び代謝型の受容体をコードする遺伝子に対して、成虫脳でin situハイブリダイゼーションを行なった。その結果、産生酵素を発現する細胞は触角葉の周辺部や、視葉と中心脳の境界付近などに比較的限局して分布するのに対し、各受容体は脳の広範囲の細胞で発現し、分布に若干の差がみられた。更に、in situ染色でラベルされた神経細胞の投射する領域や構成する回路に関する詳しい情報を得るために、GAL4エンハンサートラップ系統を用いて一部の神経細胞で特異的にGFPを発現させ、蛍光in situハイブリダイゼーションとの二重染色を行なって発現細胞の同定を進めている。嗅覚の1次感覚野で、側抑制や神経細胞の同期発火がGABA受容体のブロッカーで阻害されることから、GABAニューロンが重要な働きをしていることが示唆されているが、これらの神経細胞の接続様式は未解明である。そこで我々は葉にまず注目し、局所介在神経の様々なサブセットが特徴的にラベルされるGAL4系統を使って、GABA性シナプスの出力細胞と入力細胞の分布と投射様式を解析している。

P-41B
時計遺伝子に支配されるショウジョウバエ雌の交尾活動リズム
坂井貴臣*1、西ノ首いづみ2、城所良明1、石田直理雄2
1群馬大学・医学部・行動生理、2産技研・分子細胞工学
Circadian rhythms of female mating activity governed by clock genes in Drosophila
Takaomi Sakai*1, Izumi Nishinokubi2, Yoshiaki Kidokoro1 and Norio Ishida2
(1: Institute for Behavioral Sciences, Gunma University School of Medicine 2: Clock Cell Biology, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Institute of Molecular and Cell Biology (IMCB))

昆虫の交尾活動は、カやミバエの仲間で概日リズムを示すことが知られいるものの、その詳細な分子機構は明らかとなっていない。そこで、ショウジョウバエの交尾活動リズムが時計遺伝子群に支配されているかどうかについて調べた。明暗サイクル(明期 9:00-21:00)下、および恒暗条件下でキイロショウジョウバエ野性型系統の交尾率を時刻を追って測定したところ、共に21:00に交尾率が低下するリズムが見られた。また、活動性や脱蛹のリズム異常を示すper01およびtim01突然変異体では野性型のようなリズムが消失したので、ショウジョウバエの交尾活動リズムは時計遺伝子群の支配を受けていることが明らかとなった。また、歩行活動性の時計中枢であると考えられているLateralNeuronが欠失するdisco突然変異体を用いて同様の実験を行ったところ、野性型のようなリズムが消失した。従って、ショウジョウバエの交尾活動リズムはLateral Neuronの支配を受 けていることが示唆された。次に、D. melanogasterの同胞種であるD. simulansを用いて交尾活動リズムを測定したところD. simulansの交尾活動リズムパターンが明暗サイクル下および恒暗条件下共に D. melanogasterと明らかに異なることから、光刺激により誘引される機構と内因性の時計機構の両方がこれらの種間で異なることが示唆された。また、これら2種間では種特異的な交尾活動リズムが時間的隔離として働いている可能性についても考察する。

P-42A
ショウジョウバエの概日時計のゲノムワイドな解析
上田泰己*1,3、松本顕2、河村美穂3、飯野正光1、谷村禎一2、橋本誠一3
1:東大・医、2:九大・理、3:山之内製薬(株)
Genome-wide transcriptional orchestration of circadian rhythms in Drosophila
Hiroki R. Ueda*1,3, Akira Matsumoto2, Miho Kawamura3, Masamitsu Iino1, Teiichi Tanimura2 and Seiichi Hashimoto3
(1:Department of Pharmacology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, hiro[at]m.u-tokyo.ac.jp 2:Department of Biology, Faculty of Science, Kyushyu University, tanimura[at]rc.kyushu-u.ac.jp 3:Molecular Medicine Research Laboratories, Institute for Drug Discovery Research, Yamanouchi Pharmaceutical Co., Ltd)

Circadian rhythms govern wide range of biological processes, including behavior, physiology and metabolism. In Drosophila a number of clock genes have been identified and it is now thought that interlocked per-tim and Clk feedback loops are a central molecular machinery of circadian rhythms. However, we still do not know how expression of the whole genome is organized by the circadian mechanism and have not identified all the genes involved. To address this issue, we examined temporal patterns of gene expression in Drosophila using GeneChip representing whole Drosophila genome (more than 13500 sequences). We show that many genes involved in diverse functions are under circadian control and reveal the entire complexity of circadian gene expression. We also analyzed chromosomal coordination in circadian rhythms and the result will be discussed on the poster.

P-42B
ショウジョウバエfruitless (fru) 遺伝子の機能発現に影響する遺伝子群のスクリーニング(I): Bloomington Deficiency Kit の利用
従二直人*、嶋誠悟、薄井―青木一恵、山元大輔
早大・人間科学 Genetic screening for genes that interact with the fruitless (fru) gene in Drosophila (I): Use of the Bloomington Deficiency Kit
Naoto JUNI, Seigo SHIMA, Kazue USUI-AOKI, Daisuke YAMAMOTO
(Sch. Human Sci., Waseda Univ.)

fruitless(fru)遺伝子は、ある一群の中枢神経系ニューロンの雄特異的な分化に関与していると考えられている。satoriに代表されるように、この遺伝子の変異は、雄の性指向性の変化(同性愛行動)や、腹部に形成される雄特異的な筋肉、Muscle of Lawrence (MOL)の欠失を引き起こす。fru遺伝子は、性決定遺伝子カスケードの支配下にあり、直接的にはtransformer (tra)遺伝子の働きによって、雄でのみ機能的なタンパク質が発現するように調節されている。一方、fruタンパク質はBTB/Znフィンガー型の転写因子であることから、パートナーとなるタンパク質や、転写調節のターゲットとなる遺伝子、さらにはその下流の遺伝子群の存在が予想される。しかし、この遺伝子から実際に雄特異的な神経分化や神経機能の発現に至るまでの遺伝子カスケードは全くわかっていない。そこで、この遺伝子の下流にある遺伝子群の網羅的スクリーニングを計画した。本研究では、Gal4/UAS系を用いてfru遺伝子を複眼原基に異所的に発現すると複眼の形態異常を生じることを利用し、この表現型を変更するLoss-of-function変異の遺伝学的スクリーニングを目的とした。その第一段階として、Bloomington Deficiency Kitを使って、表現型の抑制や増強をしめす染色体欠失領域の探索を行っているので、これについて報告する。

P-43A
ショウジョウバエ fruitless (fru) 遺伝子の機能発現に影響する遺伝子群のスクリーニング (II): 異所発現系の利用。
嶋誠悟*1、近藤俊三2、薄井ー青木一恵1、相垣敏郎3、従二直人1、山元大輔1
1:早大・人間科学、2:三菱化学生命研、3:東京都立大・院理・生物
Genetic screening for genes that interact with the fruitless (fru) gene in Drosophila (II): By means of dominant ectopic expression system.
Seigo SHIMA*1, Shunzo KONDO2, Kazue USUI-AOKI1, Toshiro AIGAKI3, Naoto JUNI1, Daisuke YAMAMOTO1 1:Sch. Human Sci., WASEDA Univ., (2:Mitubishi Kasei Inst. Life Sci., 3:Dept. Biol. Sci., Tokyo Metro. Univ.)

キイロショウジョウバエのfruitless (fru) 遺伝子にコードされるタンパク質はBTBドメインとZnフィンガーを持ち、中枢神経系のある一群のニューロンの雄特異的な分化に関与していると考えられている。fruに続く遺伝子カスケードは明らかにされていないため、私達はfru 遺伝子と相互作用する遺伝子のスクリーニングを開始した。Gal4/UAS systemを用い、複眼原基でfru遺伝子を異所発現させると複眼形態に異常を生じる。ゲノム中にランダムにUASプロモーター配列が挿入したGene Search systemを用い、fruと同時に過剰発現させた時に、この複眼形態異常が抑制または促進されるような遺伝子を探すという戦略をとった。現在までに742のGS系統をスクリーニングした結果、致死となるもの90系統、抑制が見られるもの26系統、促進が見られるもの36系統を得た。抑制が見られるもののうち、5系統はほぼ正常な複眼形態を回復するほどの非常に強い抑制能を示した。この5系統の抑制能が、fru本来の役割の一つであるMuscle of Lawrence (MOL) 形成に対しても効果があるか、fruの過剰発現によって雌に生じるMOLを指標にして検査した。その結果MOL形成に関しては何ら影響が見られなかったが、興味深いことに同時に生じる翅の伸展障害に関しては雄特異的に抑制能を示すものがあった。この事からfruの転写後に、その機能を調節する性特異的な因子の存在が予想される。

P-43B
キイロショウジョウバエ近縁種におけるFru蛋白質発現の保存性と多様性に関する解析
薄井(青木)一恵*、山元大輔
早稲田大学・人間科学
The conservation and variation of the Fru protein expression among Drosophila species
Kazue Usui-Aoki*, Daisuke Yamamoto
(Waseda Univ. School of human science)

 fruitless(fru)遺伝子はキイロショウジョウバエ雄の配偶行動や雄特異的筋肉であるローレンス筋形成を支配する転写制御因子をコードする(Ito et al,1996; Ryner et al,1996;Usui-Aoki et al, 2000)。配偶行動やローレンス筋形成はいずれも当該神経の雌雄に依存することが知られており(Hotta and Benzer, 1972; Lawrence and Johnston, 1986)、 fru遺伝子は成虫の神経発生において性特異的分化を誘導するものと考えられる。キイロショウジョウバエ近縁種におけるローレンス筋は進化過程で失われたものも多く(Gailey et al, 1997),また雄の配偶行動も多様化しており、fru遺伝子機能が種間で保存されているか否かは性分化機構の進化を知る上で重要な意味をもつ。
今回我々がキイロショウジョウバエ近縁種の中枢神経系におけるFru蛋白質の発現を調べた結果、その雄特異的発現は広く保存されていることが解った。さらに、いくつかの種においてはキイロショウジョウバエとは異なる発現パターンを示したのでその結果について報告する。

P-44A
性行動異常突然変異体fickle によって同定されたショウジョウバエBtk (Bruton's tyrosine kinase) ホモログの機能解析
濱田 典子*1、 中本 千晶1、 馬場 浩太郎2、従二 直人1、山元 大輔1、
1:早大・人間科学 2:東大・理、現・(独)生物研
Functional Analysis of the Drosophila Btk homologue
Noriko Hamada1, Chiaki Nakamoto1, Kotaro Baba2, Naoto Juni1, Daisuke Yamamoto1
(1: Sch. Human Sci., Waseda Univ., 2: Sch.Sci., Univ. Tokyo (pres). Natl.Inst. Agr. Sci.)

ショウジョウバエのfickle変異体の雄は、ペニス支持体apodemeの形成異常により交尾時間が野生型に比して短くかつ不規則な分布を示す。また、成虫の寿命が著しく短縮する表現型も有する。この変異体は、ヒトX染色体連鎖無γグロブリン血症の原因遺伝子であるBtkのショウジョウバエホモログBtk29A (Dsrc29A)へのP因子挿入により生じていた。Btk29Aは細胞質性チロシンキナーゼであり、SH2、SH3、PHドメインを介した活性調節を受けていると考えられる。したがって、Btk29Aの作用機序を明らかにするためには、活性を調節する因子を特定する必要がある。近頃ほ乳類においてSab (SH3-domain Binding Protein Associated Preferentially with Btk) というBtkの抑制分子が発見された。SabはSH3ドメインに結合することでBtkの活性を抑制するとされている。ショウジョウバエゲノム上でサーチしたところ、X染色体12Fと第二染色体51Dにマップされる2つのSabホモログが見い出された。とりわけ51Dのホモログは、SabにおいてBtk29Aとの結合部分とされるN末端領域で、Sabと非常に高い類似性(80.3%)を示した。こうした事からショウジョウバエにおいても、Btk29AがSabによる制御を受ける可能性が考えられる。そこで現在、51DのSabホモログの突然変異体を用いて、fickle変異体との遺伝的相互作用の有無を検討中である。

P-44B
ショウジョウバエ雌の性行動におけるnebula遺伝子の新規機能
江島亜樹*、松尾隆嗣、布山喜章、相垣敏郎
都立大・院理・生物
A novel role for nebula in the female reproductive behavior of Drosophila melanogaster
Aki Ejima, Takashi Matsuo, Yoshiaki Fuyama and Toshiro Aigaki.
(Tokyo Metropolitan University, Department of Biological Sciences)

ショウジョウバエ雌の性行動は交尾により劇的に変化する。未交尾の雌が雄の求愛を受けると雄のマウンティングを受け入れるのに対して、既交尾の雌は産卵管を突き出す行動により再交尾を拒否し、活発な産卵行動を行う。これらの行動パターンの変化は、精液中に含まれる性ペプチドによって誘発されることが分かっているが、雌体内における具体的な作用機構についてはほとんど明らかにされていない。本研究では、雌性行動制御機構に関与する因子を同定することを目的として、強制発現系(Gene Search system)を用いた突然変異体探索を行い、nebula(nla)遺伝子の関与を示唆する結果を得た。塩基配列から推定されるnlaの292アミノ酸配列は、ヒトダウン症原因候補因子であるチロイドホルモン応答蛋白や酸化ストレス応答蛋白と高い相同性を持っており、ショウジョウバエ雌においてもなんらかのシグナル応答因子として働いていると考えられる。Gene Searchベクターを用いてnla ORFを強制転写させた雌では、未交尾でありながら活発な排卵と低い交尾率が観察され、さらに積極的な交尾拒否の行動をとる事が判明した。また、この系統のホモ接合体の雌は不妊であり、かつ、再交尾抑制期間が短くなる表現型を示した。RT-PCRによる転写産物の解析の結果、ベクター挿入系統では遺伝子の発現レベルが低下していることが分かった。DAPI染色法を用いて詳細に観察したところ、不妊雌の産下した卵では減数分裂が途中または完了直前で停止している事が明らかになった。以上の事からnla遺伝子は卵成熟および交尾受容性の制御に関与していると考えられる。

P-45A
ショウジョウバエの味覚受容機構の分子的解析
石元広志*、井下 強、廣井 誠、松本 顕、谷村禎一
九大大学院・理学研究院・生物科学
Molecular analysis of the taste mechanism in Drosophila.
Hiroshi Ishimoto, Tsuyoshi Inosita, Makoto Hiroi, Akira Matsumoto and Teiishi Tanimura (Department of Biology, Faculty of Sciences, Kyushu University)

味覚は食物摂取に必要不可欠な感覚である。最近、我々はショウジョウバエの化学感覚子発生突然変異体を利用したdifferential screeningによって、Gタンパク質共役型の膜貫通タンパク質をコードする糖受容体遺伝子を同定した。また、他のグループはゲノムデータベースの情報に基づいて多数の味覚受容体候補遺伝子を同定した。ショウジョウバエでは体表面にある毛状の化学感覚子が味覚器である。化学感覚子基部には最大4つの味細胞があり、糖、塩、水の味質に対して応答する。嗅覚では、1つの嗅細胞には1〜2種類の嗅物質受容体しか発現しておらず、複数の嗅細胞の応答の組み合わせが匂い物質の決定に関与していると考えられている。味覚では1つの糖受容味細胞で複数の受容体が発現していることが示唆されており、嗅覚情報処理機構を単純に味覚に当てはめる事はできない。唇弁には合計66本の化学感覚子があるが、各化学感覚子の味覚特性は明らかになっていない。また、各味細胞の受容する味物質も明らかになっていない。そこで我々は唇弁における全ての味細胞の味覚受容特性を明らかにするため、まずは味覚受容体遺伝子および候補遺伝子のpromoter-GAL4系統を作製した。また、味細胞でマーカー遺伝子が発現しているエンハンサートラップラインをスクリーニングした。これらの系統でマーカー遺伝子発現細胞を特定し、味覚受容体遺伝子および候補遺伝子の発現パターンを明らかにする。また、エンハンサートラップ系統においてP因子挿入点近傍の遺伝子を明らかにし、味覚受容との関係を考察する。

P-45B
ショウジョウバエ味受容細胞の分化の部位特異性
上野耕平1、磯野邦夫2、城所良明1
1群馬大学・医学部・行動生理、2東北大学大学院・情報科学
Differentiation of response property in Drosophila taste receptor cells.
Kohei Ueno1, Kunio Isono2 and Yoshiaki Kidokoro1
(1 Institute for Behavioral Sciences, Gunma University School of Medicine, 2 Graduate School of Information Sciences, Tohoku University)

ショウジョウバエを含む双翅目の唇弁に存在する化学感覚毛には、二ないし四個の味受容細胞が存在する。それらは刺激により自らインパルスを発生し、二次ニューロンを介さずに直接中枢神経系に情報を伝える。この特性によりハエの唇弁化学感覚毛は古くから味覚の生理学的な研究に用いられ、糖、ナトリウムイオンおよび水をそれぞれ適刺激とする味受容細胞を備えていることが知られている。一方、味受容細胞は唇弁以外にもふ節や咽頭にも存在し、ふ節の化学感覚毛に糖刺激を与えると吻伸展反射を引き起こすことから、ふ節はショウジョウバエの摂食行動において重要な器官であると考えられる。ふ節の背側の感覚毛はその応答特性が報告されており、唇弁感覚毛とよく似ていることがすでに知られているものの、最初に味物質と接触すると思われる腹側の感覚毛の応答特性は明らかになっていない。今回我々はティップレコーディング法により唇弁感覚毛とふ節腹側 の感覚毛それぞれをガラス電極で刺激および記録することで様々な刺激物質に対する応答特性を比較した。その結果、ふ節の最も先端に存在する感覚毛は唇弁とは異なる応答性を備えていることが明らかになった。すなわち、1)唇弁で見られる水応答がふ節先端では見られない。2)ふ節先端には二価陽イオンに対して応答性を示す細胞が少なくとも2種類存在する。これらの結果はふ節の先端の感覚毛は唇弁感覚毛とは少なくとも一部は異なる味受容細胞を備えていることを示唆しており、部位によって味受容細胞の分化が異なると考えられる。

P-46A
Drosophila fasciclinII is required for the formation of odor memories
Yuzhong Cheng, Keita Endo*, Kwok Wu, Ronald L. Davis
(Dept. of Molecular and Cellular Biology, Baylor College of Medicine)

Mushroom bodies are brain regions known to be involved in olfactory associative learning of Drosophila melanogaster. From an enhancer detector screen for genes expressed preferentially in the mushroom bodies, we isolated one line in which the enhancer detector was inserted into the first non-coding exon of the fasII gene. The fasII gene encodes cell adhesion molecules that are similar to the vertebrate NCAM, and has known functions in the axon fasciculation, synapse growth and stabilization, and cell migration. Immunohistochemical analysis confirmed that the FasII protein is expressed along the axons of the alpha/beta neurons of mushroom bodies.
Two hypomorphic fasII mutant alleles, generated via imprecise excision ofthe enhancer detector, showed significantly lower memory than control flies at 3, 20 and 180 min after olfactory classical conditioning, while these mutants have normal sensory functions and have normal morphology of mushroom body neurons or their synapses. The 3-min memory deficit was fully rescued by the expression of a heat inducible fasII transgene. Furthermore, the rescue of the 3-min memory was reversed after switching off the expression of the transgene by reducing temperature. These experiments argue strongly for a physiological role of FasII in olfactory associative learning. We further dissected the role of FasII by asking whether it serves memory formation, memory stability, or memory retrieval. When the 3-min memory of the fasII mutants is normalized with that of control animals by repeated conditioning, the mutants and control animals exhibited an identical memory decay rate, suggesting that memory stability is normal in the mutants. Induction of the fasII transgene after conditioning but just before memory test fails to rescue the memory deficit, showing that memory retrieval is not disrupted in the mutants. These results indicate FasII is required for memory acquisition, but not memory stability or retrieval.

P-46B
ショウジョウバエNMDA受容体のクローニング
宮下知之*1, 村田喜理2, 齊藤実1
1:東京都神経研,2:東京医科歯科大学
Cloning of NMDA receptor homologues of Drosophila melanogaster
Tomoyuki Miyashita*1, Yoshimichi Murata2, Minoru Saitoe1
1:Tokyo Metropolian Institute for Neuroscience, 2: Tokyo Medical and Dental University Graduate school and Faculty of Medicine

 NMDA受容体(NR)は学習記憶の神経機構として認められるシナプスの可塑性に重要な役割を持っていることが知られている。我々は学習記憶の分子メカニズムを明らかにするのに適したモデル動物であると考えられているショウジョウバエを用い,NRが,学習→短期記憶→中期記憶→長期記憶と麻酔耐性記憶といった,学習記憶統合のどの過程で働いているかを知る目的でショウジョウバエのNR (DNR)のクローニングを試みた。ゲノムデーターベースの情報により,すでにクローニングされているDNR-1加え,新たにDNR-2に相当すると考えられる遺伝子をクローニングした。 マウスやラットのNRでは膜電位依存性にMg2+ブロックがかかることが知られており,その分子基盤はポアを形成すると考えられているM2領域に保存されているアミノ酸,Asnであることが知られている。 DNR-1はこのアミノ酸がマウスやラットのNRと同じAsnであったが, DNR-2はMg2+ブロックを受けないAMPA受容体と同様,Glnになっていた。また我々はDNR-1に対する抗体を作成した。頭部と身体の分画を用いてウエスタンブロッティングを行ったところDNR-1は頭部に発現していた。さらにショウジョウバエの脳の切片を作成し免疫組織化学行ったところ,シナプスの多く存在すると考えられるNeuropilに強い発現が見られた。

P-47A
シナプス小胞の自発開口放出機構と受容体集積過程との相関の解析
齊藤 実*1,2、Thomas L. Schwarz3、Joy A. Umbach4、Cameron B. Gundersen4、城所良明2
1: 東京都神経研・分子神経生理部門、2: 群馬大学医学部・行動生理部門、3:Dept of Molecular and Cellular Physiology, Stanford University Medical Center、4: Dept. Molecular and Medical Pharmacology, UCLA, School of Medicine
Absence of Junctional Glutamate Receptor Clusters in Drosophila Mutants Lacking Spontaneous Transmitter Release
Minoru Saitoe*1, 2, Thomas L. Schwarz3, Joy A. Umbach4 Cameron B.Gundersen4 and Yoshiaki Kidokoro2
(1: Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience 2: Institute for Behavioral Sciences, Gunma University School of Medicine 3: Dept of Molecular and Cellular Physiology, Stanford University Medical Center、4: Dept. Molecular and Medical Pharmacology, UCLA, School of Medicine)

 受容体のシナプス部位への集積は、シナプスが機能を獲得するための重要な過程である。1952年FattとKatzは神経終末から神経活動が無くとも微小終板電位が発生することを見出した。微小終板電位は一つのシナプス小胞が自発的にシナプス前膜と融合(自発開口放出)して(素量)神経伝達物質を放出することで発生するものである。この現象はシナプス伝達の理論的基礎となる「シナプス伝達の素量説」の確立に大きく寄与した。しかしながら今日に至るまでシナプス小胞の自発開口放出が生理的にどのような意義を持つのか不明であった。我々は自発開口放出のシナプス形成における役割を調べるため、シナプス伝達に異常が見られるショウジョウバエ変異体を用いてシナプス形成過程の解析を行った。その結果、神経活動に応じた放出が抑制されているが自発開口放出は正常な変異体(n-syb, csp)では受容体がシナプス部位に正常に集積する一方で、神経活動に応じた放出、自発開口放出いずれもが抑制された変異体(syx, shi)では受容体のシナプス部位への集積が著しく抑制されていることを見出した。これらの結果は自発開口放出機構がシナプス部位への受容体集積というシナプス機能の獲得過程に重要な役割を果たしていることを示唆している。

P-47B
カルレティキュリン遺伝子発現とショウジョウバエの麻酔感受性
蒲生寿美子1*、冨田純也2、田中良晴1、大高友美1、鮫島貴則1、山元大輔3
1:大阪府立大学・総合、2:京大・医、3:早稲田大・人間
Calretichurin and anesthetic sensitivity in Drosophila
S. Gamo1*, J. Tomida2, Y. Tanaka1, Y. Ootaka1, T. Samejima1 and D. Yamamoto3
(1:Dept Earth & Life Sci, Osaka Prefecture Univ. 2:Sch Med, Kyoto Univ. 3:Human Sci, Waseda Univ.)

カルレティキュリンは小胞体腔に存在する多機能性Ca結合蛋白質で、種を超えてよく保存されている。我々はショウジョウバエのカルレティキュリン遺伝子(crc)の構造と機能を調べるために、crcのcDNA cloning、遺伝子発現、P因子挿入突然変異体eth^as311等へのレスキュー実験を行った。 crcは4エキソンからなり、406アミノ酸残基をコードしている。この転写物(1.4kb)は、全発生段階において発現し、細胞内局在性は核周囲の小胞体と一致している。その発現量は形態変化を伴う蛹期に最大となり、特に脳での発現は顕著である。その後発現は低下するもののCRCは成虫脳で確認されている。Crc+形質転換したeth^as311の表現型(エーテル麻酔高感受性)は野生型に復帰したことから、crcはエーテル麻酔の感受性を支配している遺伝子と考えられる。
 哺乳類のカルレティキュリンは多くの蛋白質と結合して多機能性を示す事がin vitroで知られている。同蛋白質は3 domain (N,P,C-domain)からなる。N-domainはインテグリンに結合してCaイオンの流入やCaイオンのシグナル伝達を調節して細胞接着に、またステロイド受容体に結合して遺伝子発現に関係する。P-domainは小胞体腔でcalnexinと共に糖タンパク質のシャペロン作用を示す。またCaイオンの低容量高親和性な結合部位を持ち、C-domainの高容量低親和性なCaイオンの結合部位と共に細胞内Caイオンの調節に関わっている。ヒトでは、自己免疫疾患の自己抗原でもある。CRCのin vivoにおける機能を調べるために、現在、ショウジョウバエの突然変異体間の遺伝的解析を行っている。

P-48A
ショウジョウバエキノコ体前駆細胞で発現する遺伝子のスクリーニングと発現解析
河内浩*1、安達在嗣1、加藤正行1、林誠1、塩野克宏1、Walldorf, Uwe2、古久保―徳永克男1
1:筑波大学・生物科学系 2:ホーエンハイム大学・遺伝学研究所(ドイツ)
Functional analysis of evolutionary conserved regulatory genes in the development of the mushroom bodies, centers for learning and memory in the Drosophila brain
Kawauchi, H., Adachi, Y., Kato, M., Hayashi, M., Shiono, K.,Walldorf, U.,Furukubo-Tokunaga, K.
(1:Institute of Biological Sciences, University of Tsukuba 2:Institute of Genetics, University of Hohenheim, Germany)

キノコ体は、節足動物の脳において学習・記憶等の高次機能を担う神経構造体である。これまでに、その形成を制御する遺伝子としてey, toy, dac, tll等が明らかにされており、キノコ体形成はPax6遺伝子に支配されるものの、複眼形成とは異なる遺伝子機構により支配されていることが示唆されている。我々は、キノコ体形成に関与する新たな遺伝子を探索する目的で、胚発生中期においてGal4エンハンサートラップの発現をスクリーニングし、これまでにキノコ体前駆細胞で発現のある系統を60系統同定した。また平行して、BDGP及びFlyViewデータベースの検索をおこない、これまでに20個のESTクローンと35系統のエンハンサートラップ系統を同定した。一方、DRx, ap Dplx, Six3, Six4等の既知遺伝子のキノコ体における発現解析を行っている。キノコ体前駆細胞におけるこれらの転写因子の発現を比較検討することによりキノコ体特異的な遺伝子機構について考察する。

P-48B
ショウジョウバエをモデルとしたボケの行動遺伝学的解析
田村拓也*1,2、齊藤実1
1:東京都神経研・分子神経生理、2:群馬大院・医・行動生理
Age-related memory decay in Drosophila
Tamura T. 1,2, Saitoe M. 1
(1:Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience, 2:Gunma University School of Medicine, Institute for Behavioral Sciences)

ショウジョウバエは寿命が約60日と短く、適切な系で学習記憶行動の解析も可能であるためボケの分子メカニズムを解析するに適したモデル動物となり得る。様々な変異体の解析からショウジョウバエにおいて、一回の匂い条件付けで学習獲得(LRN)した記憶情報は短期記憶成分(STM)から中期記憶成分(MTM)へとプロセスされ、最終的に安定した麻酔耐性記憶成分(ARM)に統合されると考えられている。匂い条件付け学習行動により、加齢に伴うこれら記憶成分の変化を調べたところ、羽化後10日からLRNに若干の障害が現われるものの、ボケの本質は羽化後15日から始まるMTMの特異的な形成能障害であることが分かった。さらに、LRN、MTMを含むいくつかの学習記憶関連遺伝子の発現が加齢に伴い脳で上昇することを見出した。そこでこれらの遺伝子がボケに関与しているなら、その変異体では野生型とボケかたが異なると考え、MTMの指標となる1時間記憶の加齢に伴う変化を野生型とこれらの学習記憶変異体で比較した。しかしLRN関連遺伝子、MTM関連遺伝子を含むいずれの遺伝子についてもボケへの関与を示唆するような結果は得られなかった。一方、寿命とボケの関連を調べるため、低温(18℃)で飼育したハエを用いてMTMの加齢に伴う変化を調べたところ、これらのハエでは有意にボケが抑制されていた。これらの結果からボケが単なる学習記憶関連遺伝子群の発現変化により起こるものではないこと、寿命と何らかのメカニズムを共有していることなどが示唆された。

P-49A
ショウジョウバエの極細胞の維持に関わる新規母性効果突然変異体の解析
羽生賀津子*1,3、中村輝1,3、小林悟2,3
1:筑波大・遺伝子実験センター、2:統合バイオサイエンスセンター、3:科技団・ CREST
A novel maternal-effect mutation affecting pole cell maintenance in Drosophila embryos.
Kazuko Hanyu*1,3, Akira Nakamura1,3, and Satoru Kobayashi2,3
(1: Gene Research Center, University of Tsukuba, 2: Center for Integrative Bioscience, 3: CREST, JST)

 多くの動物において,生殖系列の細胞は胚発生過程の初期に体細胞から分離し,独 自の発生プログラムに従って分化することが知られている。ショウジョウバエにおい ては、予定始原生殖細胞(極細胞)の形成、さらに極細胞が生殖巣まで移動し始原生 殖細胞へと分化するために必要十分な母性因子が、受精卵後極の細胞質(極細胞質) 中に存在していることが知られている。 
 私たちは、極細胞の生殖細胞への分化機構を明らかにすることを目的として、遺伝 学的手法を用いてアプローチしている。まず、極細胞の分化に影響を及ぼす母性効果 突然変異体を単離するため、第二染色体右腕に劣性致死突然変異を持つ系統に対して 生殖系列モザイク雌個体を作製した。これらの生殖系列に由来する胚の表現型を極細胞を特異的に染色することのできるVasaタンパク質の抗体染色を用いて解析し、突 然変異の母性効果を評価した。1150系統についてスクリーニングを行った結果、突然変異系統N14において、極細胞は正常に形成されるが、その後の生殖巣への移動過程で極細胞が急激に失われることが明らかとなった。生殖巣へ取り込まれる極細胞がほとんどなくなるため、これらの胚から発生した成虫は高い不稔性を示す。このような表現型を示す母性効果突然変異体は現在までに報告されておらず、N14系統は、極細胞の維持に関わる新規の突然変異体であると考えられる。

P-49B
ショウジョウバエ神経筋結合系における1回膜貫通タンパク質Capriciousによる標的認識過程の解析
高坂洋史*、能瀬聡直
(東大院・理・物理)
Analysis of function of a transmembrane protein Capricious during neuromuscular junction target recognition
Hiroshi Kohsaka, Akinao Nose
(Dept.of.Physics,Univ.of Tokyo)

 1回膜貫通タンパク質Capricous(Caps)は、ショウジョウバエの神経筋結合系において標的認識に関わる。野生型では、Capsを発現している運動神経RP5は、Capsを発現している筋肉細胞M12にシナプスを作るがM12に隣接するCapsの発現のない筋肉細胞M13にはシナプス形成しない。M13にCapsを強制発現させると、RP5はM13にもシナプス形成するようになる。この系に注目してCapsによる神経細胞の標的認識過程を追跡することを計画した。まず、共焦点レーザー顕微鏡による観察から、RP5の糸状仮足がM12に到着した直後に、M12上のCapsが糸状仮足の先端付近に凝集することがわかった。Capsの標的認識過程での挙動を可視化するために、CapsのC末端にGFPをつないだタンパク質(Caps-GFP)を作成した。ところが、Caps-GFPは異所的シナプスの誘導能を失った。このことから、CapsのC末端付近がその機能に関与していると予想した。CapsのC末端にはPDZタンパク質の認識モチーフがある。そこで、この認識モチーフの変異タンパク質を作成した。しかし、野生型Capsと同様にこの変異タンパク質もM13に異所発現するとRP5の異所的シナプスを誘導した。現在、PDZタンパク質との結合の可能性の再検討とTwo-Hybrid法によるCapsの下流因子の探索を行っている。

P-50A
ショウジョウバエ増殖細胞核抗原(DPCNA)やDNA複製関連エレメント結合因子(DREF)のArmadillo, Pangolin/dTcfによる転写制御
権恩貞1,2*,林裕子1、広瀬冨美子1、西田育巧2 、劉美愛3、山口政光1
1愛知県がん研・発がん制御 2名大・院理・生命 3釜山大・分子生物
Transcriptional regulation of Drosophila proliferating cell nuclear antigen (DPCNA) and DNA replication-related element binding factor (DREF) genes by Drosophila homologs of b-catenin and T-cell factor, Armadillo and Pangolin/dTcf
Eun-jeong Kwon1,2*, Yuko Hayashi1, Fumiko Hirose1, Yasuyosi Nishida2, Mi-ae Yoo3, Masamitu Yamaguchi1,
(1Division of Biochem., Aichi Cancer Ctr. Res. Int., 2Division of Biol. Sci., Grad. Sch. of Sci., Nagoya Univ. 3Dept. of Mol. Biol., Pusan Univ.)

The Wingless(Wg) signaling pathway directs many developmental process in Drosophila by Armadillo (Arm) accumulation and transcriptional activation of specific downstream target genes by providing its transactivation domain to Pangolin (Pan), a sequence specific DNA binding factor. Drosophila CREB-binding protein (dCBP) has been shown to bind to Pan and lowers the affinity of Arm binding to Pan. The inhibitory role of dCBP so far appears to be specific for Drosophila. In mammals, inappropriate activation of the Wnt signaling pathway plays a role in variety of human cancers. Recently, C-Myc and cyclin D1 were identified as a key transcriptional target of this pathway. Here we now find that Arm/Pan transactivate the important DNA replication related genes, DPCNA and DREF. From the published reports, it is deduced that this activation could be interfered with dCBP. However this effect was just observed in case of DREF but not DPCNA. In the case of DPCNA, like mammals, dCBP can potentiate Arm-mediated activation of this target gene. We thus found differential effects of dCBP on different gene promoters, although we couldn’t figure out what makes them. On the other hands, we examined the relation with other Pan associate protein such as histone deacetylase Rpd3, which is known to repress the Wg-regulated promoters. DREF promoter is more affected by deacetylation activity. It is thought that in a gene specific manner, transactivation of Arm via CBP destabilize repressive chromatin structures established by Groucho family and HDAC. The results emerging form all of our studies suggest that first, PCNA and DREF genes are new targets of Arm/Pan complex and second, dCBP modulates Wg signaling in a gene specific manner.

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