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Drosophila Newsletter No. 3

The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)

25 October 1994

Call for Support for the Japanese Drosophila Research Conference
---- by YAMAMOTO Masatoshi
Results of the Enquate at the First JDRC meeting
---- by MATSUURA Etsuko
Crete Meeting
---- by Hayashi Shigeo
Netnews, Gopher, Mosaic, Flybase
---- by MOGAMI Kaname
Volume Purchase of Plastic Bottles
---- by UEDA Ryu


ショウジョウバエ通信 No.3

1994/10/25


この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるよう
ご配慮お願いいたします。


「日本ショウジョウバエ研究会」の運営とご協力のお願い  山本 雅敏
第1回研究集会でのアンケートの結果について       松浦 悦子
クレタ島ミーティングに参加して             林  茂生
Netnews, Gopher, Mosaic, Flybase           最上  要
Drosophila plastic vialのお知らせ           上田  龍
事務局より 編集後記


「日本ショウジョウバエ研究会」の運営とご協力の
お願い

山本 雅敏(京都工繊大・遺伝)


 「日本ショウジョウバエ研究会」は日本でショウジョウバエを用いて研究を進めて
いる研究者の方々が,さらなる発展をめざして集い,討論あるいは共同研究の輪を広
げるための場として1992年に発足しました(「ショウジョウバエ通信」No.O参照).
そのための最も大きな特徴として,若手の研究者を中心に,未完成の研究も発表の対
象になるものとし,それに対する批判,提言を授受することで将来の発展に資する,
またそういった場とするという点です.昨年7月には多くの参加者を得て,非常に活
発な若々しい集会を持つことができました.参加者の皆様方ひとりひとりに厚く感謝
します.運営にあたった委員にとってもたいへんに喜ばしいことでした.これからは
,「日本ショウジョウバエ研究会」の活動を継続し,より意義のあるものにして行か
なければならないと考えています.そのためここでもう一度初期の目的を振り返りこ
れからの運営とそれに対する皆様のご協力をお願いしたいと思います.今年度の運営
委員は後記のとおりですので,当研究会に関するご意見・ご質問等ありましたら何な
りと運営委員に申し出てください.特に当研究会は会員制をとっていないため皆さん
全員の意見交換で運営している点を理解していただき,より一層のご協力をお願いい
たします.

【ショウジョウバエ通信】

 「日本ショウジョウバエ研究会」が開かれもうすでに1年以上が過ぎました.その
間ショウジョウバエ通信を発行しなかったことは非常に残念でして,せっかくの皆さ
んの熱い援助と期待とそして推進して行く情熱を冷ましてしまったようで,申しわけ
なく思っております.これからは,できるだけ頻繁にショウジョウバエ通信を発行し
て行きたいと考えております.その内容としましては,当初の目的に沿って,ショウ
ジョウバエの情報に関するあれこれということにつきると思います.当初の目標とし
ては,プロトコール集作成(西田育巧担当),ストックリスト(山本雅敏担当),そ
の他の情報等がその主な点だったのですが,これらは実現していません.ストックリ
ストに関しては,再三の呼びかけとお願いに対して,リストを送って下さった方々も
多いのですが,依然リストを公開して下さらない研究室も多いのです.アメリカとヨ
ーロッパの系統維持と分譲依頼に対する対応がすでに限界に近づいているという現実
(信頼できる情報による)を踏まえて今一度皆様方に系統リストの提出をお願いした
いと思います.皆さんへの依頼は,国立遺伝学研究所の館野義男さんと私からの共同
の依頼という形になる予定ですので,ぜひともよろしくお願いしたいと思います.今
回のこのお願いをひとつの区切りとして,とにかく日本で維持されている系統として
皆さんにお知らせしたいと思います.分譲は不可能であるという系統に関しましては
,その旨コメントとしてあわせて公開することにより,より充実した情報になると考
えます. プロトコールその他の情報に関しては,これまでにどの程度収集が進んで
いるのかはさだかではありませんが,この種の情報は迅速性もさることながら,的確
な内容であることも要求されます.迅速なコミュニケーションの方法として,コンピ
ユーターによる通信が重要な位置を占めることとは思いますが,すべての人が可能と
いう訳でもありません.そこで,将来のショウジョウバエ通信に,ラフな形式のDIS
に類似した情報を載せるのも,ひとつの方法ではないかと思います.例えば,publis
hされていない基本的な技術に関する問い合わせや最近の方法などに加えて,「ある
実験の過程で複眼形態異常(その特徴の記載)を発見し系統として維持しているが,
われわれの研究室では扱う予定はないので,興味のある方に分譲したい」とか,「セ
イシェル島に旅行に行った際に,ショウジョウバエを採集してきたが欲しい人はいな
いか」など.情報が多くなると,日本版ミニflybaseとして,どこかのサーバで扱っ
てもらうことも考慮してはどうかと考えています.これらも,皆さんひとりひとりの
参加が基本になります.

【研究集会】

次期研究集会の計画をたてなければなりません.この通信にも研究集会のアンケート
結果が報告されていますが,第1回の「日本ショウジョウバエ研究会」に満足された
参加者が多いため,次期開催はなかなか大変です.当研究会は会員制ではないため,
参加者の予定を推定することも難しく,会費の徴収がないため経済的基盤がありませ
ん.そのような状態で計画を立てなければならない困難さがあります.開催の形式で
すが,主に経済的理由から昨年同様,八王子での開催は困難と思われますので,将来
の研究会の在り方を議論する意味をも含め昨年と趣を変えて,会場を大学に移し,発
表は主に講演形式とし,宿泊は会場とできるだけ近い位置にある宿泊施設を利用して
いただくという方法です.あるいは,参加費が昨年より高くなりますが,昨年同様,
八王子で行うことも考慮しています.詳細が決定次第,皆さんにショウジョウバエ通
信を通じてお知らせし,参加を呼びかけたいと思いますので,よろしくお願いします
.アンケート結果に沿って研究会は春か夏に研究会を開きたいと思います.

【電子通信について】

コンピュータによる通信が急速に発展してきました.電子通信による連絡の方法も考
慮しなければならないと思います.これを実現するために,電子メールにアクセス可
能な方は,山本雅敏宛(jpn-fly@ipc.kit.ac.jp)に,Helloかこんにちはを送ってくだ
さい.大学等研究機関でアクセスが不可能な方で,Nifty serve等に加入しておられ
る方は,そのaddressが使用できますので,お知らせください.


 第1回研究集会でのアンケートの結果について

松浦 悦子(お茶の水女子大・理・生物)


 日本ショウジョウバエ研究会の第1回研究集会には、201名の方々が参加され、
たいへん活気のある会となりました。今後の運営の参考のためにアンケートをお願い
しましたところ、75名の方から回答をいただきました。運営に携わった者としての
コメントも含めて、結果を以下にまとめました。( )内の数字は、答えられた方の実
数です。また、集会に参加されなかった方でも、ご意見がございましたら、ぜひ新旧
の運営委員までお知らせ下さい。

1.会期について

 集会をもつ頻度については、6割以上の方(47)が隔年を希望されましたが、毎年を
望む方(28)もかなり多く、このような集会の必要度の高さを示しています。会の運営
が軌道に乗るまでは、毎年というのはむずかしいかも知れません。また、多くの方に
参加していただくためには、多少間隔があるのもよいのではないかと思います。集会
の期間については、2泊3日を良いと答えた方(69)が9割以上でした。開会の時期に
ついては、複数の回答をしていただきましたが、夏(52/88)、春(22/88)、秋(9/88)、
冬(5/88)の順となりました。他の学会との兼ね合いのためと考えられますが、今後も
春か夏の開催が適当と思います。内容、企画にも工夫が必要でしょうが、日程的にあ
まり負担にならず、かつ充分な討論の時間をもつことが、たくさんの方に参加してい
ただけるためのポイントとなるでしょう。

2.会場について

 会場と宿泊を同じ場所にするかどうかは、会場の設定の際の大きな問題です。今回
は寝食を共にして親睦を図るということも考え、また安価な場所ということで、八王
子セミナーハウスとなりました。宿泊を同じ場所にするかについては、こだわらない
という方(32)と、同じ場所がよいという方(32)が同数で、違う方がよいとする方(9)
は1割強でした。常に同じ会場を使うことについては、6割の方(46)が賛成で、こだ
わらない方(25)は約3割でした。また、今回の八王子セミナーハウスは、適していた
(65)との評価をいただけました。このことから、八王子セミナーハウスを今後も利用
するという考えもあり、そのようなコメントもいただきましたが、運営委員が交代す
ることを考えると、むずかしい側面もあります。さらに、参加費の金額がなるべく負
担にならないことも、考えていかねばならないと思います。このような大きさの集会
に適した会場をご存知の方は、ぜひご教示下さい。

3.内容について

 集会の内容は、今回はシンポジウムとポスターとしました。この構成は、ほとんど
の方(73)が良いと答えられました。この他に、テーマを決めた口頭発表や、ワークシ
ョップ形式のものも入れてほしいというご意見がありました。シンポジウムの数も、
良いとされた方(58)が多く、多いと感じた方(12)を大きく上回りました。その内容も
、良い(39)とまあまあ(28)を併せると、約9割の方に認めていただけたようです。た
だし、あまり詰め込みすぎないことや、専門外の人にもわかるような講義的な内容の
もの、さらに技術的なことや教育的な解説を求めるご意見もありました。今後の内容
を考えるうえで、参考にしたいと思います。ポスターに割り当てた時間は、良いと思
われた方(52)が7割で、多いと思われた方(13)は2割未満でした。プログラムの組み
方によって、説明の時間を設けるようにすることは可能でしょう。

 全体としては、たくさんの方が積極的に参加して下さり、たいへん活気のある会と
なったという印象を、多くの方がもたれたようです。今回の集会は、たくさんのボラ
ンティアによって運営されました。ショウジョウバエに関わる研究という一点で、こ
のように多くの人が集まることのできる現在の状況をさらに発展させるためにも、今
後もより多くの方が運営に参加されることを、お願いしたいと思います。そして、「
いろいろなモデル生物を用いる人たちの集まる大きな会へと発展させてほしい」とい
うご期待に答えられるよう様々な活動をおこしていければと考えています。



クレタ島ミーティングに参加して

林 茂生 (国立遺伝学研究所)


 EMBOワークショップ「Molecular and Developmental Biology of Drosophila 」は
6月19日より26日まで、実質一週間にわたってギリシャ・クレタ島の小さな漁村Koly
mbariにあるギリシャ正教会で行われました。アテネより夜行のフェリー、バスを乗
り継いでたどり着いた会場は周辺に簡素なホテルとレストランのほかには地中海しか
見えない静かなところです。そこに日本からの私、堀田先生、西田先生の三人を含む
100名あまりのショウジョウバエ研究者が毎日缶詰になって午前、午後4時間ずつの
セッションが行われました。会議はタイトルが示すとおり広い意味での発生生物学を
カバーするもので、ゲノム、シグナル伝達、神経、転写、ホルモン、細胞周期などの
話題について各人20分の持ち時間で発表、討議した。
 話題に関してまず気づいたのは前後、背腹軸やsegmentationに関する話題はほとん
どなくNusslein-Volhartらが提唱した初期胚のパターン形成のモデルに沿った仕事は
峠を越した感があった。それに代わってwingless、hedgehog(hh)などを介した細胞間
相互作用によるパターン形成と、sevenlessレセプターからMAPカイネース、そしてpo
intedなどの転写調節因子ヘ至るシグナル伝達経路とその周辺にhotな話題が集中した
。それらの多くはすでに原著論文が発表されており、またNature(Vol.370 414-415
)などでも取り上げられているのでここではふれない。ただ一つだけ述べておくとK.
Basler(Zurich)はflp組み替え酵素を用いたモザイク解析を利用して翅原基のパター
ン形成を解析した結果を報告した。それによるとすでに発表されているように前部コ
ンパートメントで発現したhh遺伝子は翅のパターン重複を引き起こす。さらに彼等は
decapentaplegic(dpp)を同様な方法で発現させると前部でも後部でもパターン重複を
起こさせることを示した。これはengrailed→hh→dppのカスケードによってパターン
形成が行われることを視覚的に訴える見事なデータで示したもので、長年の謎であっ
たコンパートメントの存在の意味に回答を与えてくれた。この仕事はflpという技術
を利用した新しい方法を開発して、それを適切な材料に応用して古い問題を解きあか
した非常にスマートなもので、私にとって最も印象的な発表であった。彼は最近dpp
のレセプターのクローニングの仕事を発表しており今後の展開に目の離せない研究者
の一人である。
 技術的なものに関してはP形質転換法のような目新しいテクニックはなかったがゲ
ノムプロジェクトの進展は今後の研究の方向性までをも左右する可能性を感じさせた
。U.C.Berkeleyのゲノムセンターのポストを兼任しているGerald Rubinは、彼とAlan
Spradling の率いる米国のショウジョウバエゲノムプロジェクトの進行状況を報告し
た。彼等の仕事は主に二つに分けられる。まず1)Pエレメント挿入による致死変異
のセットを第二、第三染色体についてそろえて、挿入位置と近傍の塩基配列を決定す
る。これらの情報は新しい遺伝子のクローニングと物理的地図作成の際のSTS(seque
nce tagged site)マーカーとして利用される。2)約100kbをクローン化できるP1フ
ァージベクターによってゲノム上の整列クローンのセットを得る。これらの情報はFl
yBaceを通じて公開されており、自由に入手できる。Rubinらはさらにこうして得られ
たP1ファージクローンをプラスミドにサブクローン化し、塩基配列を決定するスト
ラテジーを確立しており、モデルケースとしてbithorax complexの約250kbの塩基配
列をすでに決定している。さらに35B-Cのalchohol dehydrogenaseを含む領域約2.2Mb
の配列決定に着手している。また彼はこの方法を大規模に適用して全ゲノムの塩基配
列決定を計画しているともきく。Rubinをよく知る人の話では彼の指導力をもってす
ればeuchromatinの50%ぐらいの配列決定は十分可能だろうとの意見であった。ゲノム
プロジェクトの効用はすでに現れている。複眼形成に関わるシグナル伝達系の仕事で
は、新しいコンポーネントを複眼形成異常のエンハンサー、サプレッサー変異を利用
して同定することが盛んである。Rubinらはゲノムプロジェクトの情報を十二分に活
用し、EMSによって誘起された変異を元に原因遺伝子を非常に迅速にクローン化し、
同定している。ゲノムプロジェクトの是非は別にして、我々も欧米のグループと同じ
タイプの仕事をする限りはこういった情報にアクセスして活用していかなければ到底
太刀打ちできないと強く感じた。またこういった塩基配列の情報が蓄積してくれば、
今までのようなmutant huntingやエンハンサートラップのような「宝探し」的なタイ
プの仕事にとって変わって、ゲノムの情報を元に、ある生命現象に関わる遺伝子カス
ケードを予想し、それを実験で証明するようなタイプの理詰めのアプローチが可能に
なるだろう。二十一世紀のショウジョウバエ遺伝学は今とはかなり違っものになるよ
うな気がする。
 レベルの高い話が多いミーティングであったが、帰国後三ヶ月たってみてみると競
争の激しい分野の話のほとんどはすでに論文が発表されており、論文にin pressの状
態の話しか出していなかったことがよくわかる。伝え聞いていたような昔のopenな雰
囲気からは少し後退しているようだ。また常連の人でもあまり良いdataが出せない場
合にはかえって印象を悪くしてしまうケースも見られた。そのせいかはわからないが
大物と呼ばれる人でも顔を出さなかった人が何人か居た。組織委員会でも殺到する参
加申し込みを整理してベテラン、中堅、若手のバランスをとるのに苦労していたよう
だ。会議中は密度の高い話が真剣勝負といった感じで次々と出てくるので緊張の続く
毎日であった。私自身の発表は最終日であったので、終わった後はもう誰とも話す気
がせず後はただ茫然と海を眺めるばかりであった。しかし各talkの後には必ず力強い
拍手が送られていたし、特によい話の後には個人的に"nice talk!"と声をかけあうの
がよくみられた。このように素直に自分の感想を相手に伝えるのは欧米人の良い点で
あると感じた。またセッションの合間にはワインを飲みながらの長い食事と自由時間
があり個人的にdiscussionを深めるよい機会であった。新しい情報を得ることよりも
、多くの人々と個人的な面識を持つことができたのが最大の成果であった。次回のミ
ーティングは二年後の七月中旬に行われる予定である。そのときにはより多くの人々
が日本から参加されることを期待しています。


Netnews、Gopher、Mosaic、Flybase

 最上 要 (東京大学理学部物理)

mogami@tkyvax.phys.s.u-tokyo.ac.jp

 前々号のこの通信に「ショウジョウバエ研究者のためのコンピュータネットワーク
」と題してアカデミックネットワークのご紹介をさせていただいてから2年近くたち
ました。その後のネットワークの普及は著しく、今やアカデミックなもののみならず
商用をも含めて全てのコンピュータは結合されつつあります。以前はほとんどなかっ
たインターネットの解説書も、雰囲気を伝えるだけの入門書から技術情報を満載した
専門書までが本屋さんにならんでいます。読者の皆さんも日々電子メールなどを活用
されている方も多いことと思います。この記事では研究に役立つNetnewsと、ショウ
ジョウバエのデータベースFlyBaseについて、またこのようなデータベースを利用す
る時に便利なソフトであるGopherとMosaicについてご紹介いたします。
 インターネットの中には日々無数の情報が行き交っていますが、その中に不特定多
数の人にメッセージを伝えることを目的としたものがあります。それらはNetnewsと
呼ばれ、共通の興味や内容を持つものどうしがNewsgroupとしてまとめられています
。我々に関係が深いのはその名のとおりbionet.drosophilaでしょう。毎日数件の記
事があります。実験技術についての質問と答えもありますが、よく見かけるのは特定
の座位の欠損や突然変異がないかたずねるものです。あとでご紹介するように、こう
いった情報はFlyBaseにまとめられていますので、ここに書き込まれるのは「いろい
ろ探したけど見つからないので」という最後の手段的意味合いが強いようです。その
せいか出した記事の反応はあまりよくないようにも見えますが、回答は個人的に電子
メールで伝えられているかもしれませんので、本当のところはわかりません。皆さん
ももし同じような状況に陥ったらこのNewsgroupに書き込んでみてはいかがでしょうか。
 bionet.drosophila以外のNewsgroupではbionet.molbio.methds-reagnts(ヘンな省
略ですがこれが正式です)がお勧めです。これは分子生物学関係の情報交換の場で、
いろいろな手法のコツ、また最新の機器、試薬に対する率直な評価などを読むことが
できます。ただ毎日数十件近い記事がありますので、全部に目を通すのはたいへんで
す。題名を見て興味のあるものを選べばいいでしょう。あるいは、よく出る質問と回
答をまとめたFAQ(Frequently Asked Question)listというのが時々出ますのでそれ
を読むだけでもけっこう勉強になります。以上のNewsgroupは全て英語ですが、日本
語主体のものもあります。しかし趣味としてならともかく、学問的にはあまり期待し
ないほうがよいでしょう。Netnewsはどこかに中心が有るというわけではなく、書き
込まれた記事は隣接するマシンを次々に伝わって全世界に広がります。これを一時的
にとっておいて読み書きしているわけですが、Newsを維持するのはマシンにとっても
保守する人にとっても負担となります。そのためNewsを全くあるいは一部しかとって
いないところも多いのです。もし自分の読みたいものが読めない時には、管理人さん
にお願いしてみるか、読めるマシンの使用許可をもらう必要があります。またNewsを
読むソフトにもいろいろ有りますので、自分の環境に合ったものを教えてもらって下
さい。
 我々がネットワークの恩恵を感じる機会としてIndiana大学にあるFlyBaseにアクセ
スする時があげられます。これはもともとはMichael Ashburnerが個人で始めたショ
ウジョウバエ専門のデータベースですが、その後コンソーシアムが作られて、新しい
データを積極的に取り込むようになりました。その充実ぶりは後ほどご紹介するとし
て、まずはその利用法をお話します。一つの方法としてはFlyBaseのファイルを自分
のパソコンにコピーすることができます。(研究のためのコピーは自由、無料です。
)画像ファイルなどを除くと、データベース本体は単純なテキストファイルですので
中身をワープロで読んだり、パソコン用データベースソフトで利用できるように整形
することも可能です。しかし、全部のファイルを持ってこようとすると50MB以上のス
ペースが必要となります。またファイルは頻繁に更新されていますので、それに合わ
せるとなるとたいへんです。したがって、検索をIndiana大学のコンピューターにや
らせ、結果だけをもらってきた方が楽です。もともとFlyBaseは Gopher というソフ
トによって読んだり検索することを前提に作られています。
 Gopherはデータベースを作ってネットワーク上で公開するサーバー用と、それを読
むためのクライアントからなり、我々に必要なのは後者の方です。UNIX用、PC用(PC
Gopher III)、Macintosh用(TurboGopher)などがあります。UNIXにはあまりなじみが
ないという方はパソコン用を利用するとよいでしょう。もちろんそのパソコンはUNIX
マシンを経てネットワークにつながっている必要がありますが、いったんインストー
ルしてしまえばUNIXを全く意識せずに使うことができます。これはたいへん便利です
ので、ぜひ試してみて下さい。GopherはFlyBaseのあるftp.bio.indiana.eduのutil/g
opherから、あるいは開発元であるboombox.micro.umn.eduのpub/gopherからも持って
これます。なおGopherの最新版はGopher+という、より複雑な操作ができます。既に
あるものを使うときは注意して下さい。(これを書いている段階で遺伝研のGopherは
古くてGopher+を扱えないようです。)
 Gopherは便利ですが、操作性でその上を行くのが最近話題のMosaicです。Science
の8月12日号はMosaicの画面を表紙にしていましたので覚えておいでの方も多いでし
ょう。MosaicにはXWindow、Microsoft Windows、Macintosh用があります。富士通が
日本語版を売り出しているようですが、日本語を扱う必要がなければ開発元であるft
p.ncsa.uiuc.eduのWeb/Mosaicから無料で最新版を持ってくることができます。今の
ところMosaicはGopher+の全ての機能を代行することはできませんが、頻繁にバージ
ョンアップしていますのでそのうち追いつくかもしれません。
 すでに電子メールやファイル転送にネットワークを利用している場合には、Gopher
、Mosaicともにインストールは簡単です。なおアメリカに接続するということでずい
ぶん時間がかかるのではないかと想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、私
の所からですとGopherなら起動も含めて7秒程度で返事が帰ってきます。Mosaicはま
ず起動に30秒位かかるのですが、接続だけなら5秒程度です。検索結果を受け取るの
にかかる時間はどれだけ当たりがあるかによるのですが、最初の応答が返ってくるの
にかかる時間はやはり同じようなものです。
 GopherでIndiana大学に接続するための情報は以下のようなものです。
Name=IUBio
Biology Archive, Indiana University(experimental)、
Type=1、
Port=70、
Path=1/、H
ost=ftp.bio.indiana.edu。
しかし、たいていはこの情報全部を必要とするわけで
はなく、例えばUNIX用ではgopher ftp.bio.indiana.edu 70で接続されます。また多
くのマシンでは単にgopherを起動するとあらかじめ設定されたサーバーに接続します
が、Other_Gopher/といった項目を選択すると、例えば国立ガンセンターのサーバー
が紹介され、さらにOther gophers etcを指定することによって以後World wide goph
er list .../、North America/、USA/、indiana/、IUBio Biology Archive,...と芋
づる式にたどりつくこともできます。FlyBaseにたどりついたら、Alternate Views/
、Gopher+ door with .../を開けてみて下さい。ここで設定を保存すれば以後は簡単
に接続できます。
 MosaicでFlyBaseを見るにはURLをftp://ftp.bio.indiana.edu/flybaseとすれば接
続されます。つながったら.only.htmlを開いて下さい。ここでの設定をHotlistに保
存しておけば次回からはこれをLoadするだけで済みます。またgopher同様とりあえず
どこかのサーバーに接続してからたどりつくことも可能です。
 FlyBaseのファイルはGopherあるいはMosaicで開いてやると中身を見ることができ
ます。テキストファイルだけではなく、画像ファイルでもそれを見るためのソフトが
用意されていれば見せてくれます。原則として***.txtまたは***.textというのがデ
ータベース本体、***.docというのがその説明です。***searchというのはデータベー
スの検索です。これを指定すると何をさがすのかたずねてきますので、入力します。
検索結果の一覧が帰ってきたら、望みのものを指定すると詳しい情報が得られます。
検索にはand、or、notも使えます。理由は不明ですがA and BとB and Aの結果が同じ
にならなかったこともあることを書いておきます。
 つぎにFlyBaseに含まれるデータの主なものをご紹介します。ファイルは階層構造
に整理されていますので一番上の分類に従ってご説明します。まずDocumentsにマニ
ュアルがあります。Redbookの本文とその訂正もここにあります。GenesはFlybaseの
中核であり、各遺伝子の説明を読むことができます。名前やキーワードで検索するこ
とができ、染色体の領域ごとにまとめた情報を得ることもできます。遺伝子を機能の
アルファベット順にしたのがFunctionsに、位置の順でソートしたものがMapsにあり
ますが、これらはGenesで検索した方が便利でしょう。Redbookのdeficiencyリストは
なぜかMapsにあります。Clonesにはいろいろなクローンの情報がまとめられています
が、重複していたりもしてちょっと不満です。Genesにもクローンの情報は書かれて
いますので、そちらが充実してくれた方が便利なのですが。欠損や重複、転座といっ
た染色体異常をまとめたのがAberrationsです。Sequencesは核酸とアミノ酸配列です
が、配列そのものではなく、GenBank/EMBL/DDBJといったデータベースでのaccession
numberが記されています。Referencesはショウジョウバエ関係の全文献リストです。
 ショウジョウバエ研究者の所属、住所などをまとめたのがPeopleです。名簿の常で
移動した人のデータがそのままになっていたりすることもあります。このリストのみ
はgopher+を使って名前を登録したり、住所を訂正したりできます。あまりに簡単な
ので不心得者対策がちょっと心配になります。FlyBaseで一番便利なのはStocksかも
しれません。各地のセンターおよび個人ラボのストックリストです。最後にAllied f
ly dataというのがあり、主にボランティア提供のものが入っています。例えばCosmi
dライブラリー、Pエレメントの入ったハエの一覧、melanogaster以外の突然変異、コ
ドン頻度表、脳の解剖図(伊藤啓氏による)などなど。Flybaseの中味は以上のよう
ですが、ちょっとわかりにくいところもあります。またこの構造は時々変更されてい
ますので、全体および最新の情報を確認する場合にはDocumentsのUser-manualをご覧
下さい。
 FlyBase はかなり大規模なデータベースですが、最近は各地の大学や研究所でも M
osaic で読める小さなデータベースを公開する動きが広まっています。MosaicではGo
pherのような文字主体のものと異なり、絵を扱うことができます。アクセスするとラ
ボの一覧とともに大学の写真とかがあらわれ、ラボを指定するとその研究概要がきれ
いな挿絵とともにあらわれるというようなものが多く見られます。このような動きが
広まると我々の研究スタイルにもかなりの変化が生じるでしょう。現在でもシーケン
スのデータは論文にはのせず、データベースに登録することが求められています。論
文を雑誌に発表するかわりに、Mosaicで読める形にしてネットワーク上に公開すると
いう人たちが出てくるかもしれません。もし有力な研究室が成果をこのような形で発
表するようになれば、無視するのは難しいでしょう。また学術雑誌の中には赤字のも
のも多いようです。印刷したものを頒布するかわりにネットワーク上で公開すれば購
読料はとれなくても結局安上がりかもしれません。ネットワークは「あれば便利」な
ものから、「ないと困る」ものへと着実に変化しつつあります。


 Disposable Plastic Vial のお知らせ

 上田 龍 (三菱化学生命研)


 最近ガラス製の飼育瓶の価格が高騰しています。低価格のディスポバイアルの必要
性を皆様お感じのことと思いますが,このほど「日本ショウジョウバエ研究会規格」
のバイアルを試作しました。まだサイズは26.5x100x1mm(内径x高さx肉厚)の1種類
のみです。縁には最大1mm程度のリムをつけます。材質はポリスチレン(PS)で透明
ですがオートクレーブ不可です。肝心の価格ですが,おそらく遠隔地(北海道や九州)
までの運送料込みで1本8円70銭程度で手にはいると推定しています。価格は年間生
産量に依存し,全体で50万本いけば1円ほど下がります。何人かの方には既に個別に
消費量見込みをお聞きしましたが、おそらくそれぐらいの量はいくのではないかとの感
触を得ています。
 実際にはまだいろいろと検討する余地があります。例えばサイズです。より小さい
バイアル(23x90mm)をお使いの方も多数おられるので,太い方のバイアルの生産が軌
道に乗ればそちらの方の検討も早速始めるつもりです。また材質なのですが,当初は
透明なポリプロピレン(PP)を利用できるはずでした。PPは強度が高くまたオート
クレーブにも耐えられます。ところが業者の勘違いで材料費が3倍程かかることが判
明したため今回は見送りました。幾分乳白色がかったPP(ファルコンのブルーキャ
ップチューブ#2070よりわずかに透明)はPSと同程度の価格で利用できます。もち
ろん透明なPPも皆様のご希望(量)次第ではある程度価格を高くして販売できるでし
ょう。価格に関しては先程述べましたように生産量に依存するのですが,それは金型
の制作費(2〜300万円)の減価償却費が含まれるからなのです。ここの所がクリヤー
できるともう少し安価なものが提供されるのではないかと私自身は期待しています。

 安価なスポンジ栓についてもお問い合わせが多かったのですが,これに関しては
まだ全く手つかずの状況です。ただ,私のところでは、より耐久度の高い(15円/1
個と少々高価ですが)スポンジ栓に換えることでコストの問題を解決しています。こ
のスポンジ栓の材質は良くわかりませんが色の黒いもので密な手触りがします。洗浄
,熱処理を繰り返しても弾力性が長持ちをするため非常に経済的です。茨城大学の仁
木先生,お茶の水女子大の松浦先生も使われています。私までご連絡いただけたらサ
ンプルをお送りいたします。スポンジ栓リサイクルの手間を省くためにはできるだけ
安くあってほしいわけですが,材質と密度の関係がどこまで妥協できるのかは、おそ
らくバイアル本体よりも好みに左右される度合いが大きいと思われ,私自身決めかね
ている状況です。皆様の中でこの点についてなにか良い情報をお持ちの方がいらっし
ゃったら是非お知らせください。
 ディスポバイアルはまだ試作品がやっとできた状況で本格的生産が始まるのは10
月の末です。その時になれば研究会に登録されている皆様には試供品をお届け致しま
す。またこのような試みに関してのご意見ご希望等を是非お聞かせいただきたいと思
っています。
   連絡先:三菱化学生命科学研究所 神経発生遺伝学研究グループ 上田 龍



「日本ショウジョウバエ研究会」運営委員

木村 正人
 006 札幌市北区北10条西8丁目 北海道大学 地球環境科学研究科 生態遺伝学講座
 Tel: 011-716-2111 Fax:011-717-9394

最上 要    [編集・通信担当]
 113 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
 e-mail: mogami@tkyvax.phys.s.u-tokyo.ac.jp Tel: 03-3812-2111 内線4614
 Fax: 03-3814-9717

青塚 正志
 192-03 東京都八王子南大沢1-1 東京都立大学理学部 生物学教室 進化遺伝学講座
 Tel: 0426-77-1111 内線3727 Fax: 0426-77-2559

上田 龍    [事務局担当]
 194 東京都町田市南大谷11 三菱化学生命科学研究所 神経発生遺伝学研究グループ
  e-mail : ryu@libra.ls.m-kasei.co.jp Tel: 0427-24-6234  Fax : 0427-24-6314

山本 雅敏   [代表]
 606 京都市左京区松ケ崎御所海道町 京都工芸繊維大学 応用生物学科 遺伝学教室
 e-mail: yamamoto@ipc.kit.ac.jp Tel:075-724-7781 Fax: 075-724-7710, 075
-724-7760

日下部 真一
 724 東広島市鏡山1-7-1 広島大学 総合科学部 自然環境研究講座
 Tel: 0824-24-6507 /6512 Fax: 0824-24-0758

原田 光
 812 福岡市東区箱崎6-10-1 九州大学 理学部生物学教室 細胞遺伝学講座
 e-mail: kharascb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp Tel: 092-641-1101 内線4407 F
ax: 092-632-2741

谷村 禎一   [編集・通信担当]
 810 福岡市中央区六本松4-2-1 九州大学 理学部生物学教室 細胞機能学講座
 e-mail: tanrcb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp Tel: 092-771-4161 内線433 Fax
: 092-712-1587

  事務局より

前回ショウジョウバエ研究会の名簿を作成してからしばらくたち変更もあると思いま
す。最新版の名簿を作成したいと思いますので、変更を事務局上田までお知らせくだ
さい。また、名簿に加えてほしい方も紹介してください。次回からは、e-mailでこの
通信をお送りすることも考えていますので、アクセス可能な方は、jpn-fly@ipc.kit.
ac.jpまでメールを送ってください。その際、ご使用のコンピューターの機種、通信
ソフトをお知らせください。


  編集後記

・通信の発行が遅れたことをおわびします。今後は、もっと頻繁に発行できるように
努力します。みなさまからの原稿をお待ちしています。次回は、来年1月に発行予定
です。・最上さんに書いていただいたように、Internetはすでに研究に不可欠なもの
になっています。・この10月にフランスのモンペリエでVth European Symposim on D
rosophila Neurobiologyが開かれましたが、この時のアブストラクトは、dbm.ulb.ac
.be [IPアドレス134.184.80.31]で公開されています。興味のある方は、pub/neurof
lyのファイルをのぞいてみてください。・最上さんが紹介されているbionetのIntern
etアドレスは、net.bio.net[134.172.2.69]です。電子メールで利用したい場合は、b
iosci@net.bio.netに空のメッセージを送ると(Subjectも空欄でよい)情報が送られて
きます。・ストックセンターからの系統のリクエストがe-mailで簡単にできるように
なったのですが、山本さんの記事にありますようにセンターの能力にも限界がありま
すから、注文を出す前に身近な心当たりにたずねてみることも必要でしょう。(TT)



編集: 谷村禎一・最上 要  発行:「日本ショウジョウバエ研究会」 三菱化学
生命科学研究所内

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