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Drosophila Newsletter No. 2

The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)

18 June 1993

Announcement of the First Japanese Drosophila Research Conference
and the Monbusho Meeting
---- by KOANA Takao and NISHIDA Yasuyoshi
On the 34th Drosophila Research Conference
---- by Furukawa Takahisa

ショウジョウバエ通信 No.2

1995/6/18


この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるよう
ご配慮お願いいたします。


  「日本ショウジョウバエ研究会」第一回研究集会
   および重点領域研究「ショウジョウバエ」班班会議のご案内

   第34回 Drosophila Research Conference に参加して (古川貴久)


「日本ショウジョウバエ研究会」第一回研究集会
および重点領域研究「ショウジョウバエ」班班会
議のご案内

   日本ショウジョウバエ研究会運営委員長     小穴孝夫
   重点領域研究「ショウジョウバエ」班領域代表者 西田育巧


 来る7月9、10、11日に開催される日本ショウジョウバエ研究会の第一回研究
集会には、これまでに201人(♀44、♂157)の参加、83件のポスター発表
が予定されています。新しい研究会の第一回の集会に、こんなに多くの方々が集まっ
て下さることを、たいへんうれしく思います。なお、この研究集会は科研費重点領域
研究「ショウジョウバエ」班の班会議との合同開催とし、ハエ以外の材料を使ってお
られる方々にも参加をお願いしています。ぜひ、活気のある有益な研究集会となるよ
う、皆様のご協力をお願いいたします。
 以下に、研究集会のスケジュールとセミナーハウスでの生活について、ご案内いた
します。
 なお、プログラムの冊子などは、当日会場にてお渡しいたします。

 日 程

7月9日

12:30〜18:00  受付・チェックイン(講堂受付)
13:00〜21:00  ポスターI受付(大学院セミナー館)
13:30〜13:45  開会(講堂)
13:45〜18:00  シンポジウムA(講堂)

   シグナル伝達カスケード解明へのアプローチ
      ―Ras, Raf, MAPKを中心に―
                     西田育巧(愛知県がんセンター研究所)

    1.岡山博人(東京大学医学部)
       細胞内癌化シグナルの伝達経路

    2.松本邦弘(名古屋大学理学部)
       酵母をモデルとしたMAP キナーゼカスケードとシグナル伝達経路
    3.西田栄介(京都大学ウィルス研究所)
       MAP キナーゼカスケードと細胞内シグナル伝達
    4.貝淵弘三(神戸大学医学部)
       ras p21 の標的蛋白質の生化学的検索
    5.井上喜博(愛知県がんセンター研究所)
       ショウジョウバエのRaf・MAPキナーゼカスケードによる細胞分化の制御
    6.古賀誠人・武内昌哉・為石起司・大島靖美(九州大学理学部)
       線虫C.elegans のチロシンキナーゼ遺伝子と細胞間相互作用
    7.岡野栄之(東京大学医科学研究所)
       ショウジョウバエ神経系の発生・分化の分子遺伝学的解析と
       哺乳類神経系への応用

18:00〜18:30  事務連絡
18:30〜20:30  懇親会(本館食堂)
23:00        消灯

7月10日

 8:00〜 9:00  朝食
 9:00〜12:00  ポスターセッションI(大学院セミナー館)
12:00〜13:00  昼食
13:00〜19:00  ポスターII受付(大学院セミナー館)
13:00〜16:00  シンポジウムB(講堂)

   細胞の発生運命を決める遺伝子ネットワーク
                     上田 龍(三菱化成生命科学研究所)

    1.磯田和良(理化学研究所分子遺伝)
       背腹極性形成の分子メカニズム
    2.中野芳朗(三菱化成生命科学研究所神経発生)
       セグメントポーラリティー遺伝子群 ―体節内での極性の形成―
    3.杉山伸(Max-Planck Institute, Biophysical Chemistry)
       ショウジョウバエ内胚葉の決定と分化に関わる遺伝子の解析
    4.冨樫伸(三菱化成生命科学研究所細胞生物)
       ショウジョウバエの感覚器形成を調節する遺伝子ネットワークについて

16:30〜17:30  特別講演(講堂) ― Prof. Jean-Marc Jallon ―

      Jean-Francois Ferveur and Jean-Marc Jallon
                  (Universite de Paris-Sud)
         Genetic Dissection of Pheromone Production

18:00〜19:00  夕食
19:00〜23:00  ポスターセッションII(大学院セミナー館)
23:00        消灯


7月11日

 8:00〜 9:00  朝食
 8:45〜 9:15  チェックアウト(講堂受付)
 9:15〜 9:30  事務連絡(講堂)
 9:30〜11:45  シンポジウムC

   種内変異から種分化へ
                     松浦悦子(お茶の水女子大学理学部)
  1.猪股伸幸・柴田弘紀・奥山栄策・山崎常行*(九州大学医学部・*理学部)
   キイロショウジョウバエ亜群における重複アミラ−ゼ遺伝子の分子進化学的研究
   Drosophila melanogasterにおけるアイソザイム多型の問題とDrosophila erecta       における適応的進化の可能性
  2.比嘉勇也・布山喜章(東京都立大学理学部)
   ホスト選択と種分化:セイシェルショウジョウバエDrosophila sechelliaの食物選択   3.都丸雅敏・松林宏・小熊譲(筑波大学生物科学)
   カオジロショウジョウバエ類における性的隔離の要因としての求愛歌の役割
  4.澤村京一(早稲田大学教育学部)
   D.melanogaster complexにおける雑種致死の機構

11:45〜12:00  閉会(講堂)
12:00〜13:00  昼食


 ポスターセッションについて

●会場の都合により、ポスターセッションは2回に分けて行います。
 I、IIのどちらかは、当日お渡しするプログラムをごらん下さい。
●ポスターIは9日21:00までに掲示し、10日13:00までに片付けて下さい。
 ポスターIIは、10日19:00までに掲示し、11日11:00までに片付け
て下さい。
●ポスターを掲示できる面積は、120cm(横)x85cm(縦)です。
 掲示に必要な画鋲などは、会場に用意してあります。


 大学セミナーハウスでの宿泊について

●宿泊は、長期セミナー館、国際セミナー館、記念館、教師館、ユニットハウスに分
かれます。 受付時に各部屋ごとの鍵をお渡ししますので、鍵の管理には充分注意し
て下さい。
 最終日の午前9時までに部屋を片付け、鍵を受付(講堂)に返却して下さい。
●セミナー室や宿舎での禁酒、夜間の静粛にご協力下さい。
●洗面道具や寝巻をご持参下さい。


 大学セミナーハウスまでの交通

   JR線東京駅新宿駅八王子駅


         京王線新宿駅北野駅


             京王相模原線南大沢駅野猿峠大学セミナーハウス
                    京王バス   徒歩


JR中央線/新幹線または飛行機を利用の場合は、東京駅よりJR中央線に乗り換え

     ・八王子駅下車(東京−八王子・特別快速55分、快速65分)
     ・新宿駅京王線乗り換え(東京−新宿・快速15分)

  京王線/北野駅下車(新宿−北野・急行40分、通勤快速50分)
  京王相模原線/南大沢駅下車(橋本−南大沢、多摩センター−南大沢・約5分)

京王バス

    ・JR八王子駅(南口2番)または京王線北野駅(北口3番)より
     由木折返場・南大沢駅・南大沢循環行きの京王バス
         (北野から約10分、八王子から約25分)
    ・南大沢駅より北野駅・E八王子駅行きの京王バス(約15分)
  いずれも野猿峠下車、徒歩5分

●車/駐車場は約40台分しかありません。
●7月11日の帰り/北野駅経由八王子駅までの専用バス(2台)が13:30に出
発の予定


第34回 Drosophila Research Conference に参加して

古川 貴久 (京都大学 医学部医化学)


 「mainland」に行くんだと思うとわくわくする気持ちと、なぜだか少々緊張も湧き
上がってくる。筆者にとっては初めてのアメリカ本土行きなのだ。それにしてもDros
ophila Research Con-ference なんて、オタクの集まりじゃないのかな。しかも、ハ
エ屋の研究環境は3K(暗い、細かい、くさい)ときてるし。この吉本系大阪人には
向いていないんじゃないだろうか、と訳のわからない不安を乗せつつ、San Francisc
o 経由でSan Diego へ。会場となったのは、San Diego 市内のTown & Country Hotel
。なんと3エーカー(約3600坪)の敷地に、数多くの部屋が分散して建てられている
という贅沢なホテル。Conferenceはこのホテルの会議場で3月31日―4月4日に開催
された。Plenary Session が13人、Slide Session が38人、後はすべてPoster Sessi
onで 696題の発表が行われた。テーマも発生から進化まで、ハエに関することなら何
でも来いであった。「若き労働者の祭典」と言われるだけあって、大御所は会頭の R
ubin(目の前で見ても渋くてかっこいいオヤジ)や Jan夫妻など少数で、ほとんどは
やや汚げな"blue worker" 達であった。
日本からも20人弱の方々が参加されたのではないだろうか。筆者がアメリカの学会に
参加したのは初めてだったせいか、まず驚いたのは女性研究者の多さであった。半分
とはいかずとも3−4割は女性といった感じだ。しかも、彼女達は日本の女性のよう
なかわいさはない代わり、キビキビとかっこいいのだ。そして中には非常にかわいい
人もいるので、そういう人のポスター発表の所へ行きしっかり説明してもらって、目
を見つめながらdiscussionするのは精神衛生上極めて有意義だと思われる。中には赤
ちゃん連れの人もいて、slide session 中に子供が泣き出すなんてハプニングもあっ
た。次に印象深かったのは、アメリカの研究者のパワフルさであった。毎晩11時頃に
なっても多くの人がポスターの前でdiscussionを続けている姿は、日本の学会では見
られないものであった。ベxビーカーを押しながらポスターを見てまわる研究者の姿
を見て、リラックスしながらも熱心な雰囲気には感心させられた。
 学問に関する印象としては、やはりsaturationしているなあということに尽きる。
様々なmutantや発現パターンから遺伝子がクローニングされていたが、中枢神経系一
つとっても沢山あるし、「ふーん、あーそー」てなことになってしまう。今は色々な
系で役者が揃ってきて、これからはそれらの相互関係が着実に明らかにされていくで
あろうと思われる。saturated mutagenesis, maternal factor, homeotic gene とい
ったものに並ぶような新しいものが、これからもDrosophilaからでてくるであろうか
、興味あるところだと思う。個人的に興味深く聞いたのはUCB の Rubinのグループに
よるFLP recombinase による新しいモザイク作成法で、染色体の端にFLP recombinas
e のターゲットを組込んでおき、hs-FLPで高頻度な染色体の組換えを起こしモザイク
を作成するものである。このlineはstock centerに登録されており、誰でも使えると
のこと。また、今の流行と言えばやはりapoptosis。MITのSteller のグループはX-ra
y でとったcell death defective なmutantの遺伝子マッピングを行い、第3染色体
上約300kb の領域まで狭めており、この領域にある4つの転写産物のどれか、もしく
は複数がapoptosis geneではないかと言っていた。
 3日目の午後はconferenceを抜け出し、世界的に名高いSan Diego 動物園へ足を伸
ばした。広いわ、珍しい動物は多いわ、檻が少ないわで、子供っぽい私には非常に楽
しめた。海岸の方へ行くとヌーディストビーチも有名らしいが、残念ながら今回は行
き損ねてしまった。市内のレストランではメキシコ料理の店に観光客が集まっており
、筆者は土曜の夜に行ったためか3時間近く待ってようやくテーブルに着けるという
、大阪名物の行列並び顔負けの貴重な体験ができた。ちなみにその挙げ句、変に甘っ
たるいメキシコ料理はまったく口に合わなかった。テキーラでしこたま酔いながら、
心地良い夜風を感じつつSan Diego の夜は更けていくのであった。筆者のような新参
者にはポスターを見てまわるだけでも非常に良い勉強になったし、若い院生の方が参
加されることを強くお勧めします。色々な人とも知り合いになれるし。ステーキをた
らふく食べワインを楽しんだ後、ほろ酔い加減でポスターを見てまわるのもなかなか
乙なものですよ。



編集後記
◆研究集会の参加者が200名(女性2割強)を越え、ポスターセッションは2部制
となりました。古川氏の印象記にもありますように、パワフルでかつリラックスでき
る集まりとしたいものです。参加されるすべての方にとって、実り多い研究集会とな
ることを願っています。
◆「ショウジョウバエ通信」では、ショウジョウバエを使って研究を進めている人に
役立ちそうな情報を、お待ちしています。また、会員の移動についてもお知らせしま
すので、編集担当または事務局までご連絡下さい。
                          (谷村禎一・松浦悦子)


 ショウジョウバエ通信 No.2  1993年6月18日発行
               編集者:谷村禎一(九州大学教養部)
                   松浦悦子(お茶の水女子大学理学部)

               発 行:日本ショウジョウバエ研究会事務局
              〒194 町田市南大谷11 三菱化成生命科学研究所内
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