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Drosophila Newsletter (Japanese) No. 8
The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)
June 1996
From the Former Office Manager
---- by UEDA Ryu
Tips for Drosophila Experiments Discussed on the Jfly Mailing
List (Excerpts)
---- compiled by MOGAMI Kaname
ショウジョウバエ通信 No.8
1996年 6月
この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるようご配慮お願いいたします。
事務局交代のご挨拶 上田 龍
Jfly での議論から
Encyclopedia of Drosophilaの販売について
事務局交代のご挨拶
三菱化学生命科学研究所 上田 龍
1991年の秋にそれまでの「ドロソフィラミーティング」から発展した「日本ショウジョウバエ研究会」が発足し、初代の事務局を引き受けました。最初の仕事は研究会名簿の作成でしたが当時国内でも色々な方たちがハエを材料とした研究に新たに参画されている状況で、どのようにしてこれらの方たちに連絡するかに頭を悩ませました。幸いなことに多くの皆様のご協力を得て、現在では日本でショウジョウバエを材料とした生命科学に携わっていらっしゃる方たちのほとんどを網羅することが出来たと思っています。
ショウジョウバエ通信0号に掲載されている「設立にあたって」のなかに、1)研究集会の隔年開催、2)情報交換ネットワークの整備、3)ニュースレターの発行、という計画が書かれています。5年間で漸くこれらの活動が軌道に乗ってきたと言えるのではないでしょうか。2)に関しては伊藤啓氏の努力によるJflyの実現が大きかったですね。これからは国外の研究者との交流を計るなど研究会が更なる発展を遂げてくれるといいなあと思います。
ところで事務局としては通信の発送および会計をも受け持って参りましたが、これらの現況をこの機会に報告させていただきます。ショウジョウバエ通信の発送先は郵送代を節約するために各研究機関/研究室の代表の方にのみお送りするという方式を採って参りました。6号は国内100カ所、国外7カ所に配布されました。費用は6号のように名簿と一緒ですと定形では送れないので1回に2万円ほどかかります。これにコピー代、封筒代、細かくは宛名ラベル費用等が加算されます。最初に黒田先生から「ドロソフィラミーティング」の残金を355,043円お預かりしました。2回の研究集会の後、事務局の手元には329,429円残っています。現在の時点では早急に会費(あるいは通信発送費)を徴収する必要はありませんが研究会が将来にわたって継続して活動を行うには(特に研究集会を開催するには)、その費用をどのように捻出するかという経済的基盤が問題になるでしょうから遅かれ早かれ研究会の資金については検討しなければいけないと思います。
前号から丸尾さんに事務局が交代いたしました。通信のコピーや袋詰め、名簿の更新など大変だと思いますがくれぐれも宜しくお願いいたします。
Jfly での議論から
ショウジョウバエ研究者のメーリングリストであるJflyでは電子メールによって情報交換がなされています。その中から広く有用であると思われるものを編集担当の責任でいくつか選び、要約してご紹介します。より詳しい情報をご希望の方は編集担当までお問い合わせ下さい。またJflyのアーカイブで元のやりとりを読むこともできます。
Q: インキュベーターの中が湿っぽくて、綿栓にかびが出てしまうんです。
A: 近くのスーパーで「みずとりぞうさん」みたいな家庭用の除湿剤を買って、入れておけば結構効果があります。これが一番安上がりでしょう。
Q: 餌のコーンミールを変えてからハエの調子がよくありません。
A: 多くの人が推薦したものは「オリエンタル酵母のコーンミール No.9」「富士ディベロップメント特製」「サニーメイズ製コーングリッツ(Y)No.4M」。ただし富士ディベロップメント製のものは分注器につまりやすい傾向があります。
Q: 餌の調子が悪く、数匹の掛け合わせのような場合、数日後には培地の表面にネバネバした層ができハエがくっついたり、卵が産み落とされても幼虫まで育ちません。
A: もし、蔗糖をお使いのようでしたら、グルコースに変えれば解決すると思います。餌の表面のネバネバの原因は、空気中にただよっている
Leuconostoc というイーストの一種によるものが大部分だそうです。
Q: ハエの餌作りに便利な「たこ焼き分注器」はどこで手に入るでしょうか。
A: 三木商店(TEL 03-3844-1259,1044; FAX 03-3844-6690; 台東区西浅草2-22-5;
かっぱ橋道具街中央)で買いました。ものは EBMの「柄付種落し」という商品ですが、合羽橋の人々は「チャッキリ」と呼びます。先端に板が付いていてスライドするものと、先端の内側に円錐形の穴ふさぎが付いていてこれが上下するタイプの2種類売っていますが、先端が管瓶に入る後者の方がよいでしょう。
Q: 高校の先生方がショウジョウバエを遺伝実習に使う場合の飼育飼料を探しています。
A: Carolina Biological Supply の Formula 4-24 が便利です。和光純薬(株)が輸入販売しています。なお大宮西高校の藤江正一先生が高校向けの解説を出して下さっています。「詳しい解説の生物課題実験マニュアル」教材生物研究グループ著、東京書籍、1995年刊、¥1500。1章がショウジョウバエになっており、上記のインスタント飼料を使う際の要領など、初心者にもわかりやすく解説されています。
Q: 殺ダニ剤の Tedradifon (Tedion 誘導体)を探しています。
A: 日本では、アグロ・カネショウが販売。(商品名Tedeon V-18; テデオン乳剤)。小型の白くて動きの鈍いダニにはよく効き、一回で全滅します。但し、ダニの種類によってはまったくききません。
Q: 麻酔瓶がそこをついてきました。これは発注すると非常に高価だし、学生がよく割ってしまうので不経済です。
A: サンプラテックから「しょうじょうばえ麻酔ロート」がでています。(コード
9838CB; 呼称 DR-1; 直径40x高さ68; 材質PE; 1700円)。外から中が見えにくくて不便ですが、エーテルが長持ちします。エーテルを入れる口を0.5mlのエッペンのふたで栓をしておくといいです。普通の飼育瓶の底にスポンジ栓をつめて、もう一つのスポンジ栓でふたをするという方法もあります。使用しないときは逆さまに立てておけばエーテルのもちも悪くないし、とても安価なのが魅力です。
Q: バランサーのlethal pointを教えてください。
A: 元が同一でも系統によって異なっているのではないかと思われます。もし何らかの
mutant のlethal phase をお知りになりたいのでしたら、CS と cross して +/lethal
の雌雄どうしを交配した卵の hatch 率を調べる方がよいと思います。
Q: 第2染色体において、ホモの幼虫を区別できるようなバランサーを探しています。
A: 系統の元気さから言うとやはりCyO-y+が一番ですが、バックグラウンドが y-
で困るならばIn(2LR)Gla, Bc Elp が使えます。あとCyO-TM6BとSM6a-TM6BでTbを使う方法もありますが、どうしても弱くなるので特に必要でなければあまりおすすめしません。
Q: 胚からタンパク質を抽出するとき、yolk のコンタミが邪魔になります。
A: 胚の抽出液を 0.45-μm の cellulose nitrate filter を通しています。Dev.
Biol. 165, 716-726 をご覧下さい。
Q: P1 clone を使おうと考えているのですが。
A: 日本での窓口は九州大学理学部の仁田坂英二さんです(電話: 092-642-2616、FAX:
092-642-2645)。 使用上の注意も含めて仁田坂さんにお尋ね下さい。
Q: クローニングした遺伝子が唾腺染色体上にシグナルを検出できません。
A: その後質問者である京大上村匡さんご自身の努力で解決しました。何かの原因で、シグナルが検出されにくい遺伝子のようです。同様な事態に陥ったら上村さんに相談されるといいでしょう。
Q: 抗-βgal 抗体はどこのものが良いでしょう。
A: これは発足直後の Jfly で大論争になりました。主に Promega の mouse mono-clonal
と Cappel の rabbit polyclonal の比較ですが、ラボ毎にどちらがよいかの結果が異なります。ロットによるばらつきがたいへん大きいようです。
Q: 抗-HRP 抗体はどこのものが良いでしょう。
A: CappelのFITC conjugated anti-HRP (Goat) を使っています。非常に強いシグナルが再現性よく得られます。
Q: 抗-GAL4 抗体の存在について教えてください。
A: Santa Cruz Biotechnology, Inc. のものを TOYOBO が扱っています。Upstate
Bio-technology Incorporated, NY, US. のものもありますが日本代理店は不明です。
Encyclopedia of Drosophila の販売について
昨年末に共同購入しました、 Encyclopedia of Drosophila (EofD), Release
2.0 (Sep. 1995) の CD-ROM があと2セットあります。
EofD は Berkeley Drosophila Genome Project (BDGP) と FlyBase の遺伝子や変異体の情報を唾線染色体の画像をクリックするだけで引き出せる、グラフィカルインターフェースをもったデータベースです。System
7.1 以上が動く Macintosh コンピュータが必要です。ご希望の方は、以下の要領で申込んで下さい。
先着順に受け付けます。(申し込み多数の場合は、共同購入の手配をいたします。)
申込み先: 筑波大学生物科学系 ショウジョウバエ研究会事務局 丸尾 文昭
FAX: 0298-53-6669 (下記の住所をご参照下さい。)
お名前、送付先、希望枚数をご記入下さい。
代金は商品に同封の郵便振替用紙でお振込願います。
1枚2500円です。($20.00+送金発送代金)
なお、先日から WWW版が Release
3.0 として公開されております。
http://shoofly.berkeley.edu/
ネットワークでWWWを利用可能な方は、こちらをご利用下さい。
日本ショウジョウバエ研究会
代表:谷村禎一 〒810 福岡市中央区六本松4-2-1 九州大学理学部生物学教室
TEL: 092-726-4759 FAX: 092-712-1587
E-mail: tanimura@rc.kyushu-u.ac.jp
事務局: 丸尾文昭 〒305 つくば市天王台1-1-1 筑波大学生物科学系
TEL: 0298-53-4909 FAX: 0298-53-6669
E-mail: maru@biol.tsukuba.ac.jp
編集: 最上要 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学理学部物理 TEL: 03-3812-2111
(内線)4614 FAX: 03-3814-9717
E-Mail: mogami@bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp
Jfly:伊藤啓 〒194 町田市南大谷11 三菱化学生命科学研究所内 新技術事業団山元行動進化プロジェクト TEL:
0427-21-2334 FAX: 0427-21-2850
E-mail: itokei@fly.erato.jrdc.go.jp
Jfly サーバー: http://papageno.jrdc.go.jp/ または http://202.241.18.171/
編集後記
ちょっと間があいてしまいましたが通信8号をお届けします。今号では前事務局の上田さんにお願いして会の財政状態についてご報告をお願いしました。今のところせっぱ詰まった状況というわけではありませんが、収入が保証されているわけではないので、会の運営に差し支えない範囲でなるべく節約することを検討しています。例えば通信を電子メールでも配布する、あるいは印刷原稿をJflyサーバーに置いて、そこから持っていける方には持っていっていただくといった方法です。現在ではこのような手段で節約できる金額はたいしたものではありませんが、将来のネットワークの普及や技術の進展に期待して、いろいろ試行したいと思います。ご意見アイデア等ございましたら、上記世話人の誰かにご連絡いただけるとありがたく存じます。
通信は不定期刊ではありますが、ある程度予定を設定しないと間のあく方向にズレるというのが今回、新米編集担当の得た教訓です。そこで次号は10月刊を目標といたします。mgm