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Drosophila Newsletter No. 7
The Newsletter of the Japanese Drosophila Research Conference
(in Japanese)
October 1995
Current Situation of Our Society
---- by TANIMURA Teiichi
Report of the Second Japanese Drosophila Research Conference
(JDRC: Kyoto, August 1995)
---- by YAMAMOTO Masatoshi
Life as a Student at Brandeis University
---- by KANEKO Maki
ショウジョウバエ通信 No.7
1995年 10月
この通信は研究室単位でお送りしています。研究室の方全員に読んでいただけるようご配慮お願いいたします。
ごあいさつ 谷村 禎一
第2回研究集会を終えて 山本 雅敏
ブランダイス大学での学生生活 金子 真紀
ごあいさつ
谷村 禎一(九州大学・理学部・生物学教室)
第2回ショウジョウバエ研究集会には海外からの方も含めて多くの参加者があり、盛会のうち無事終了しました。山本雅敏さんをはじめ関西地区の方々の御奉仕に感謝いたします。
この会では、2年で運営委員が半数交代することになっていました。これからの担当は、代表者=谷村禎一(九大)、通信担当=最上要(東大)、事務局=丸尾文昭(筑波大)になりました。会が始まって以来、事務局を担当していただいた上田さんごくろうさまでした。これまでは8名の運営委員を決めていましたが、実質的な役割は、代表、通信担当、事務局の3名が行ってきたわけですので、今期からは3名以外の運営委員は決めないことにしてはどうかと思います。これまで役割を担ってきていただいた方々には、アドバイザーになっていただきたいと思います。
代表が私になったことから、1997年の研究集会はおそらくは福岡で開催することになります。開催の時期、形式などについてはこれから考えていきたいと思います。
この会は、学会のような制度をとらず、したがって入退会も自由で、会費もありません。このことは自由で開かれた制度としてよいのですが、研究集会を開催する上では、参加者人数が把握しにくいなどの欠点もありました。特に今回、申し込み締め切り後も、参加希望者が増えていったため、運営に当たられた方はたいへん苦労されたそうです。また、ニュースの郵送については、第1回の時に研究室毎に通信代をいただきましたが、今後どうするかも検討しなければなりません。
最後に、伊藤啓さんが開設されたJflyに多くの方が参加されて、活発な情報交換、議論がなされることを希望します。
第2回研究集会を終えて
山本 雅敏(京都工芸繊維大学・応用生物・遺伝学)
「日本ショウジョウバエ研究会」第2回集会にはたくさんの参加者の出席を得て無事終了することができました。第2回の研究集会でありながら、参加者数は、学生98、有職者85、シンポジウム演者(参加者とオーバーラップしていない方々)6、手伝い兼参加の学生13、参加費支払なしでの参加者(受付への登録はない)が3〜5名で、総計207名にもなりました。第1回の八王子での研究集会には167名が参加されたので、それより40名ほど多い会になり、運営委員一同やりがいのある研究集会となったことを喜んでおります。特に若い人が多かったことと、有職者と学生数がほぼ半々なのは、将来もショウジョウバエの研究が安定して継続して行くのではないかとの期待を抱かせる会でもあったと思います。広い年齢層と広い研究層の参加が得られればより充実したものになって行くことでしょう。これからの当研究会に期待します。
「日本ショウジョウバエ研究会」の機能の一つとして日本のストックリストをまとめるということが発足当時からの計画でありながら、完成したものはでき上がっておりません。これまでに提供していただいた系統に関しては、現在Jflyで公開されています。しかしフォーマットに統一が計られていません。各研究室で独自の表記方法になっています。それはそれとして尊重しますが、ストックリストとする以上共通の表記法での公開を考えたいと思います。また、まだリストを提供して下さっていない研究室も多いのです(これがストックリストが未完成という理由)。かく言う私も全系統を一夜にして失ったあと、2度目のリストは作成ができておりません。しかし、なんとかまとめたいと思いますので、皆さんのご協力をお願いしたいと思います。各研究室宛個別の依頼をして、少しづつ集める方法も考えております。
Jflyへの参加は伊藤啓まで
〒194 町田市南大谷11 三菱化学生命科学研究所内 新技術事業団 山元行動進化プロジェクト TEL:
0427-21-2334 FAX: 0427-21-2850
E-mail: itokei@fly.erato.jrdc.go.jp
山本さんの記事にある日本のストックリストなどを見たい方は
http://papageno.jrdc.go.jp/ または http://202.241.18.171/ まで
ショウジョウバエ通信の配布希望(研究室単位でお願いします)、住所変更等は丸尾文昭まで
〒305 茨城県 つくば市天王台1-1-1 筑波大学 生物科学系
TEL: 0298-53-4909 FAX: 0298-53-6614
E-mail: maru@biol.tsukuba.ac.jp
ショウジョウバエ通信に載せる記事を募集しています。速報性は保証できませんが、皆に知っておいて欲しいことや、海外の話題など歓迎。最上要まで
〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学 理学部 物理
TEL: 03-3812-2111 (内線)4614 FAX: 03-3814-9717
E-Mail: mogami@bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp
ブランダイス大学での学生生活
金子 真紀
ボストン郊外のウォルサムという町にあるブランダイス(Brandeis)大学に正規の学生として留学してから、早くも2年がたとうとしている。編集部の方からこちらの大学について何でもよいから書いてほしいとのお話があったのは、去年のことだったと思う。試験などで忙しいからと延び延びになっていたのを、やっと今になって書いている。さて、最近はドクターを取得後にアメリカの大学に留学する人も多いので、あまり真新しいことも書けない気がする。そこで、主に大学院生の立場から何か書いてみようと思う。とは言っても、あまり他大学のことはわからないので、ブランダイスでこの2年間に経験したことを中心に書こう。
ブランダイス大学は、学生数約4,000人の小さな私立大学である。ボストンというと、ハーバード、MIT、BU(ボストン大学)が有名であるが、それに比べてブランダイスなどは、日本ではなかなか知る人は少ないであろう。終戦直後にユダヤ人によって建てられたということもあり、学部生はユダヤ人が大半を占める。最近は、ロシアから差別を逃れてきたユダヤ人の子弟が多いのが目立つ。これに比べて、大学院生はユダヤ人以外、特に私のような外国からの留学生が多い。通常の祝日に加えてユダヤの祝日が休みになるため、休日が多いのも特色である。勿論、大学院生にとってはあまり意味がなく、図書館が休館になったりするので、かえって不便である。
生物系のプログラムは、Molecular & Cell Biology(Biologyと書くことにする)
Neuroscience、Biochemistry、Bioorganics、Biophysics、の5つがある。名前だけではどう違うのかよくわからないものもなかにはあるが、それぞれコースrequirement、試験などが少しずつ違い、はいる研究室もある程度制限される。例えば、Neuroscienceに入ってimmunologyをやるわけにはいかない。しかし、これもプログラムによっては、かなり融通がきく。BioorganicsやBiophysicsなどには、もともとchemistryやphysicsのmajorであったが、実際はbiologyをやってみたいという学生がいたりする。9月に入学すると、最初の年はrotationといって、いくつかの研究室を(プログラムにより3つか6つ)1年かけて回ることになる。私のいるNeuroscienceでは、3ヶ月のrotationを3回やる。この期間に、その後数年間どの研究室で研究するかを決断させられる。この制度は入学の段階からはいる研究室を決めさせる日本の大学(大学院)に比べて、学生にとってはかなり有利であると私は思う。3ヶ月間あれば、研究室にどんな人がいてどんなことをやっているか、お金はありそうか、ボスはどんな人かなど、かなりのことがだいたい把握できる。しかし、これも大学卒業後すぐ大学院に来たためにほとんど研究経験のない学生には、あまり有効でないこともあるようだ。2、3年で研究室変更、あるいは退学にいたった例はたくさんある。
NeuroscienceとBiologyでは、6つのコースをとることが義務づけられている。コースのなかには、大学院生のみのコースと学部生と大学院生を混ぜたコースとがあるが、どちらを取ってもよい。1つのコースについて1回から4回の試験があり、一応B以上取らなくては、大学院生は単位がもらえないことになっていて、日本の大学よりはやはり厳しい。しかし、やはり大学院生ともなると、気に入れば力もいれるがそうでなければ適当にしている。あまり興味がなければ質問もあまりせず、静かにしている。やはり重要なのはリサーチの方である。
アメリカのPhDコースは、日本のようにマスターとドクターコースに分かれていない。マスターコースがない代わりに、2、3年目でqualifying
examinationという試験がある。それにパスすると、正式にPhD candidateというわけだ。この試験にパスした後退学する場合には、マスターの学位がもらえる。ブランダイスのBiologyとNeuroscienceのプログラムでは、この試験が普通の試験という形式を取らず、模擬grant
proposalのようなものを書かされる。テーマは、自分の研究分野以外なら何でもよい。これを書いた後、facultyのメンバーのなかから選ばれた3人のcommitteeによって審査され、合否が決定される。1回でパスしないと、書き直しや審査のやり直しということになる。実際こういうケースは多い。BiochemistryやBiophysicsでは試験がある。彼らに言わせると試験の方が難しいらしいが、私は実際どちらが難しいかわからないと思っている。私はgrant
proposalを書かせるという実際的なやり方もいいと思う。研究者になれば、grant
proposalは必ず書かなくてはならないからだ。BiologyやNeuroscienceでは、3年目に自分の研究テーマのproposalを書かされ、審査が行われる。これは、ボスが学生を追い出す口実をつくる時以外には、まず落ちることはないらしい。それ以後も、毎年3人のcommitteeのメンバーとdiscussionがある。committeeというのは、ただ学生を評価するだけではなく、ボスとは異なった角度からアドバイスをくれたり、時にはボスの不当な扱いから学生を守る役目をする有り難い制度である。
生物系の学生には、一応必要最低限度はscholarshipがでる。これがminimumかというと、人によって意見が違うと思うが、車、健康保険、アパート(ボストン近郊は家賃が高い)などのことを考えると、やはり多いとはいえない。しかもscholarshipが数年前から課税可能となったので、その分かなり差し引かれる。
仕事の量であるが、これは人によって、または研究室によってさまざまである。週末もいつも”学校に住んでいる”人もいれば、9時から5時までのいわゆるビジネスマンタイプもいる。彼らのなかには子供のいる人も少なくはない。大学院生と一口にいっても、大学卒業したての人から上は30代後半の人までさまざまで、なかなか面白いのである。
(編集担当より:金子さんは現在J. C. Hallのもとで研究をされています。)
編集後記
「特に何もしなくていいから編集やってよ」と言われて気楽に引き受けたのが2年前、確かに今までは編集担当とは名ばかり、ほとんど谷村さんがやってくれていたのが、突然「大丈夫、一人でできるよ」。谷村さん、代表とやらになってしまって一人で編集するはめになってしまいました。さては2年前の誘いはこの日のための深謀遠慮か。心細い編集担当です。
皆様の温かいご教示とご協力をお願いいたします。(京都の集会はたいへん楽しかったです。山本様、上村様、皆様、ありがとうございました。)mgm