デザイン&開発理論
Visualization is the basis of science!
デザイン&開発理論

2. 5 分以内に、3 重染色データから最高品質の画像を作成可能

本問題を解決するためには主に以下の項目を考慮した。
 2-a. ワークフローの見直し
 2-b. パラメータ調整のユーザーインターフェースデザイン
 2-c. Save 機能


2-a. ワークフローの見直し:
 今回、最も考え悩んだのがこの点についてだった。多くの三次元再構成ソフトウェアは、「データを読み込む」→「連続切片を表示」→「複数のチャンネルがあるときにはチャンネルの設定処理」→「3D 画像を表示」という流れをたどる。

 「連続切片を表示」このことについては、そもそも ImageJ や共焦点メーカーからの無料ビューワーがあり、三次元再構成ソフトウェアであえてそのステップを余分に取る必要はないと判断した。またさらに「複数のチャンネルがあるときにはチャンネルの設定処理」という作業は、ソフトウェアがマルチチャンネルを前提で作られていないから生じるものであり、必要な作業では無いと私は考えていたのでこのステップも省いた。

 こうした 2 つのステップを省いて、「データを読み込む」→「3D 画像を表示」と極限までシンプルにデザインした。結果、グラフィックカードの搭載メモリ量が許す限り、いくつでもチャンネルを加えることができるようになった。各チャンネルの色は、最初に表示領域に加えたものから順に赤、緑、青、白と色づけされる。色を変更するときには、色設定ウィンドウをダブルクリックして R, G, B, W, P など一文字打ち込むだけでよい。
 こうしたワークフローの見直し、それに従ったソフトウェアデザインによって、ユーザーの作業時間を劇的に短縮することができた。


2-b. パラメータ調整のユーザーインターフェースデザイン:
 またパラメータ調整のユーザーインターフェースに関して、スライドバーと数値入力の両方を採用した。スライドバーは数値をダイナミックに動かすのに適している。しかしコンピュータの性能が不十分だったり、データが重すぎると、スライドバーの動きがカクカクして目的の位置に合わせることが難しい。また、細かい数値を動かすときに目的の値に合わせるのに手間がかかる。
 しかし数値入力を直接行うことで上記の問題は解決できる。だが数値入力のみでは、パラメータをなだらかに動かして自分の目的の数値領域を見つけ出すのに手間がかかる。そういうスクリーニング的な数値変化を行うにはスライドバーが最も適している。この二つを組み合わせて実装することで、パラメータ調整時のストレスを極力減らし、調整にかける時間の短縮を目指した。

以下で述べる 3 つのことは当たり前といえばそうかもしれないが、言葉では説明しづらい使用感に直結する部分でもあり、私はアフォーダンスにおいて最も重要な要素だと考えている。

  • 各種パラメータは全て、右に最大値を配置している。これによってパラメータ群それぞれの意味は違えど、ユーザーが直感的にパラメータの内容を理解できることを目指した。ガンマのみ、多くの生物学者が使用している Photoshop に合わせ、右に行くほど小さくなるようにした。

  • レイヤー順でチャンネルを表示するモードにおいて、リストで上側にあるチャンネルが下側をカバーするようにデザインした(当初は順番を選択するためのプルダウン式ウィンドウも考えた)。

  • 奥行き方向に影響するパラメータは縦方向に配置し、スライドバーを上に動かすと奥に対してエフェクトがかかるように、飛行機の操縦桿などと同じ向きに一致させた。こうすることで奥行きとパラメータの関係をユーザーが直感的に理解できることを目指した。


2-c. Save 機能:

 5 分以内に最高品質の画像を作成、と言ってもそうならない場合がほとんどである。それは、論文やスライドを作っているときに「この部分がもう少しはっきり見えたら」とか「あとちょっとだけ右に回転できれば完璧な構図なのに」とか人間が後で気が付くからである。そういうときにはまた、写真が既に複数枚図に載っていて、そのうちの数枚のみを変えたいなんていう場合が多い。そのとき他の写真と同じ縮尺、明暗が再現できないと全ての図を作り直すはめに陥る。この問題を解決するために本ソフトウェアでは全パラメータの値を保存できるプロジェクトセーブの機能を実装した。

(プロジェクトファイルは元の tiff データとはリンク形式のため、元データのファイルパス名を変えてしまうと読み込めなくなる。そのような場合は、プロジェクトファイルをテキスト書類として開いて、内部に書き込んであるファイルパス名を書き換えることで対処可能。ユーザーからの要望が多ければ、元データを内部に含んだプロジェクトファイルパッケージの形式にしようかと悩んでいる。その場合はプロジェクトファイル が 100MB 程度になる。しかしリンク形式にも利点があり、元ファイルを ImageJ で編集して上書きセーブすればそのファイルを、保存したパラメータ設定で表示することができる。)

 また各種パラメータを「デフォルトとして Save」できる機能を実装した。人によって共焦点の撮影法は大きく異なる。しかし同一人物が生じるデータ内では大体平均した品質のデータとなっている。この機能によって「毎回パラメータを同じ位置に動かす」という作業から解放される。


3. ユーザーは自分が何をしているのか、状況を「瞬時」に「完全」に把握できる
4. その他
1. 連続切片上に存在するいかなるシグナルも、3D で可視化できる