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視力の低い人への視認性・記号性を保ちつつ景観との調和にも配慮し、車椅子やベビーカー利用者のバリアになりにくい、視覚障碍者用点字誘導ブロックの開発


開発のポイント:
1:ロービジョン者にとって誘導ブロックだと視認しやすく、なおかつ景観と調和しやすい色あい
2:車椅子やベビーカー、キャリーバッグの通過の邪魔にならない突起配置
3:突起を乗り越えても段差の衝撃が少なく、足がつまずきにくい突起形状

東京大学伊藤研究室・株式会社 LIXIL・日本興業株式会社・株式会社キクテック・DICカラーデザイン株式会社・NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構


2018年3月23日

■ 解説文書を作りました。

開発の背景と実証試験の結果を Q and A 形式で解説しました。下記からダウンロードしてごらん下さい。
   ●誘導ブロック解説●



誘導ブロックが開発されてすでに数十年になります。視力の低い方は、「誘導ブロックは黄色いものを敷設して欲しい」と折に触れて要請していますが、現実には、路面の色と紛れて見えないような色の誘導ブロックが施工されるケースが後を絶ちません。

 建築家やデザイナーは、「黄色い誘導ブロックは建物のデザインや周囲の景観にあわないので、どうしても避けたい」と躊躇します。建築家やデザイナーが受け入れにくいような要求をして、それが受け入れられない結果、白や黒やグレーの誘導ブロックや、ステンレスの鋲だけの誘導ブロックなど、視力の低い方にとってはもっと使いずらいものが設置されてしまう。この状況が過去数十年ずっと続いてきました。「建築家が悪い」「規格やガイドラインで強制的に黄色に決めてしまえばいいじゃないか」という意見もありますが、建築家やデザイナーが躊躇するのにも、それなりの理由があります。

 建築家やデザイナーが躊躇せず使えて、なおかつ視力が低い人にも見やすいような誘導ブロックは、作れないのでしょうか?

 こうした観点からの研究は、残念ながらこれまで皆無でした。「黄色いブロックがよい」といっても、どういう黄色ならば見やすいのかという体系的な研究すら、これまでほとんどありませんでした。「黄色」という言葉から各人がイメージする漠然とした印象に基づいて、「これにしてくれ」「これは避けたい」と主張しあってきたのが実情です。

 この研究では、さまざまな色あいの試作サンプルを作成し、実際に施工した試作ブロックの視認性を汚れや褪色の影響を踏まえて検証する、1年にわたる長期実証試験を2回繰り返しました。さまざまな疾患のロービジョン者や、一般視覚者、建築デザイン関係者など、のべ150名の協力者に、いろいろな路面状況や明るさのなかで、誘導ブロックの上を歩くときの見やすさ、道の反対側に誘導ブロックがあるときの見つけやすさ、景観との調和性などを評価していただきました。その結果、「一般的な黄色いブロック」とされるものとほぼ同等の視認性を持ち、しかもさまざまなデザインに合わせやすいようなウォームイエロー、クールイエローの2色のブロックを開発しました。

 景観だけを優先して白・黒・グレーやステンレス鋲の誘導ブロックが施工されるケースが減少し、視力が低い人に視認しやすくなおかつ景観とも調和しやすい今回開発したような誘導ブロックが施工されるケースが増加するよう期待しています。

※誘導ブロックとその両側の路面の間には、明るさの違い(輝度比)を確保することが重要です。屋内では、白いツルツルの床に非常に濃い黄色の誘導ブロックを配置することで、「明るい路面 vs 暗い誘導ブロック」という形のコントラストを作ることも可能です。しかし屋外で使用可能な路面や誘導ブロックの材料では、この形で十分な輝度比を確保することは不可能です。白やカラータイル舗装の明るい路面に誘導ブロックを敷設する場合、「一般的な黄色いブロック」であっても、輝度比を確保できません。たとえ新品のブロックでは輝度比が確保できているように見えても、退色と汚損で輝度比はすぐに低下してしまいますし、雨天時は路面が濡れて暗くなり、ブロックとの明暗差がなくなります。(白い石タイルの路面に黒い誘導ブロックという最も輝度比を確保できるはずの条件でも、屋外環境では退色と汚損で両者の輝度比がほとんど無くなることがあります。)
 白やカラータイル舗装の場合は、誘導ブロックの両側に暗色のタイルやインターロッキングを配し、「暗い路面 vs 明るい誘導ブロック」という形のコントラストを作ることが重要です。今回開発したブロックは、この形で設置したときに従来の黄色ブロックと同等の視認性を確保できるように設計されています。また、従来のブロックよりも明るめの色であるため、路面との輝度比が確保しやすくなっています。



2017年12月22日

■ 開発が完了し、記者発表を行いました。

長期間の試験施工を経て評価の高かった2色を、株式会社 LIXIL(タイル、透水セラミック)、日本興業株式会社(透水コンクリート)・株式会社キクテック(現場施工型アクリル樹脂)、大光ルート産業株式会社(アクリル樹脂計シートタイプ)の4社より発売することになりました。屋外でのブロック敷設に用いられるほとんどの施工法に対応に対応しています。

開発の経緯、完成品の評価など、詳細は下記の文書をご覧ください。

   ●記者発表文書●



2017年4月18日

■ 誘導ブロック試験設置現場の現地見学会・説明会を行います

このような工夫を施した誘導ブロックを実際にご覧いただき、効果をご確認いただくとともに、参考になるご意見があればお寄せ下さい。関心のある方のご来場をお待ちしています。

開催日時:
 2017年4月23日(日)   13時〜16時
 2017年4月29日(土・祝) 13時〜16時
上記の時間内に会場にお越し下さい。
説明(10〜15分程度)は毎時 0 分と 30 分に行います。見学には 30 分程度ご用意下さい。

会場:
株式会社リクシル 大島事業所
構内駐車場(正面から入って右奥の突き当たり)
 136-0072 東京都江東区大島2丁目1−1
   ●グーグルマップ●

地下鉄住吉駅(東京メトロ半蔵門線、都営新宿線)
 徒歩の方はA3出口下車 徒歩8分
(車椅子/ベビーカーの方はエレベーターや途中の坂の関係で、西大島駅の方が便利です。)
地下鉄西大島駅(都営新宿線)
 徒歩の方はA2出口、車椅子/ベビーカーの方はA4出口下車 徒歩8分
   ●会場への行き方案内図●

◆ 事前参加登録は不要ですが、当日受付で参加者を記録しますので、お名刺等があればお持ち下さい。
  車椅子やキャリーバッグ等があれば、参考に持参されるとよいかも知れません。

問い合わせ先:伊藤啓(メール:ito@cudo.jp 携帯電話:090-3452-6362)


■ 開発の背景

 視覚障害者誘導用ブロック(以下:誘導ブロックと略記)は、目が見えない人だけでなく視力の低いロービジョン(弱視)者にとっても、安全な歩行経路を「色のついた明確な帯状のライン」として分かりやすく示すための記号(視覚ガイド)として機能しています。このため、国土交通省のバリアフリーガイドラインや ISO の誘導ブロック規格案では、誘導ブロックは「視認しやすい黄色で、周囲の路面と明確なコントラストを確保して敷設する」ことを推奨しています。

 しかし、黄色の誘導ブロックは視認性が高い反面、非常に目立つ色であるために景観と調和しにくく、都市景観への配慮から路面と同じような色のブロック、白や黒の無彩色のブロック、突起だけをステンレス製の鋲で作ったブロックなどが設置されるケースが増えてきました。視力の低い人にとって、このようなブロックは視認しにくく、白線や歩道の形状や装飾模様とも間違えやすいなど、危険が伴います。

ブロック設置風景 これまで、当事者やバリアフリー関係者は「黄色い誘導ブロック」の設置を求める一方、景観を重視する建築家やデザイナーは「黄色い誘導ブロック」を避けようとする傾向があり、両者のニーズを満たすことが困難でした。この問題は「黄色を使うか?使わないか?」という議論になってしまいがちなのですが、実際は黄色といってもさまざまな色調があります。そこで、黄色の中でも誘導ブロックとしての視認性・記号性を確保しつつ、景観との調和も実現できるような色調の誘導ブロックを開発しています。ロービジョン者による何回もの視認性検証試験を経て絞り込まれた、いくつかの候補色の誘導ブロックを実際に舗装路面に埋め込んで敷設し、褪色や汚れによる影響を見ながら視認性を比較する長期試験を行っています。

 また、誘導ブロックは目が見えない人やロービジョン者にとっては移動の助けになるバリアフリー設備ですが、その一方で、車椅子の利用者やベビーカーの利用者、車輪付きキャリーバッグを引っ張る旅行者、荷物を運ぶ台車を押す人などにとっては、突起の段差がバリアになることがあります。また一般の歩行者も、突起の角が靴に引っかかり、つまずくことがあります。 あるタイプの人へのバリアフリー配慮が他の人にはバリアとして感じられてしまうというのは、難しい問題です。そこで、さまざまな車輪幅の製品がなるべくスムーズに通過できるように突起の形状と配置に配慮を加えた誘導ブロックを試作して、路面に敷設しました。

 このような配慮を加えた誘導ブロック試作品を実地でご覧いただき、ご意見をいただけますと幸いです。


このページの作成・管理は:k.ito@uni-koeln.de